慢性間質性肺炎の急性増悪(acute exacerbation of UIP)
- もともと慢性型の間質性肺炎がある患者は、非感染性の急性呼吸不全を起す事がある。
- 特別な原因なしに、1ヶ月以内に呼吸困難が急速に悪化する状態。
- IPF/UIPとして管理していた症例に急性増悪を疑わせる臨床像を呈したときは、可能な限り気管支肺胞洗浄(BAL)を行い、感染症などを否定→速やかにステロイドパルスを行なうのがよい。
- IPF/UIPにおける急性増悪の合併は1年で8.5%、2年で9.6%。
▶︎臨床診断基準:IPF の経過中に、1カ月以内の経過で,
- 呼吸困難 の増強
- HRCT 所見で蜂巣肺所見+新たに生じたすりガラス陰影・浸潤影
- 動脈血酸素分圧の低下(同一条件下でPaO2 10 mmHg 以上)
のすべてがみられる 場合を“急性増悪”とする。
明らかな肺感染症、気胸、悪性腫瘍、肺塞栓や心不全を除外する。
参考所見:①CRP,LDH の上昇,②KL-6,SP-A, SP-D などの上昇。
- 誘因としては、IPFに対するステロイドの減量、手術後、BALなどの検査、肺癌に対するgefitinibの投与などが言われている。
- 感染症の除外が重要で、ステロイドや免疫抑制剤投与中では免疫抑制状態であるため、日和見感染の頻度が上がる。特に、カリニ肺炎、サイトメガロウイルス、他の真菌、ウイルス、レジオネラなど。
- 治療は明らかに有効と言える治療はない。一般的にはステロイドと免疫抑制剤が用いられる。
急性増悪の画像診断
- すりガラス影と浸潤影。(びまん性54%、多発21%、末梢25%)
- Baseに網状影がある。蜂窩肺は7割に見られる。
- 病理所見:DAD > OP
※病理学的には間質性肺炎の急性増悪も急性間質性肺炎(AIP)も急性呼吸促迫症候群(ARDS)もいずれもDADを呈する。
※DAD(diffuse alveolar damage):肺の広い領域に障害がおよぶという意味ではなく、肺内皮細胞、肺胞壁内間質、肺胞上皮細胞の全層に障害が及ぶという意味。(Silva CIS,et al.J Thorac Imagin 2007;22:221-229) - なので、AIPか慢性間質性肺炎の急性増悪かの鑑別は、典型的な蜂巣肺を認める場合や、過去に蜂巣肺の存在を確認されている場合は、慢性間質性肺炎の急性増悪と考える。
症例 70歳代 男性 UIP/IPFにて経過観察中、呼吸苦出現あり
baseに間質性肺炎あり。
左下葉のすりガラス陰影の増強あり。
慢性間質性肺炎の急性増悪と診断されました。
症例 70歳代男性 呼吸苦
baseに間質性肺炎あり。
両肺野のすりガラス陰影の増強あり。
慢性間質性肺炎の急性増悪と診断されました。
急性増悪の鑑別
- 肺炎と鑑別することは非常に難しい。PCPに注意。IPでPSLが投与されていることがある。
- その他、ARDS(感染症、外傷など)、薬剤性肺炎など。