
先に結論:クラッベ病は「年齢で画像が変わる白質ジストロフィー」。乳児は大脳・小脳の白質と歯状核門、成人は錐体路が目印
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | GALC遺伝子の異常によるライソゾーム病(常染色体潜性遺伝)。髄鞘が障害される白質ジストロフィー |
| 乳児型 | 生後12か月未満に、強い易刺激性、哺乳困難、筋緊張の変化、発達の遅れ。MRIは大脳深部白質・小脳白質・小脳歯状核門の異常と視神経の肥厚 |
| 成人型 | 錐体路(中心前回から内包後脚・脳幹)、側脳室後方の白質、脳梁膨大部に限局する異常が典型 |
| CTの手がかり | 視床の高吸収(乳児型の一部)。乳児では脳の萎縮も目立つ |
| 診断 | 白血球のGALC酵素活性の低下、血中psychosine高値、GALC遺伝子の変異 |
クラッベ病とは
クラッベ病(Krabbe disease、globoid cell leukodystrophy)は、GALC遺伝子の異常により、ガラクトセレブロシダーゼという酵素が足りなくなるライソゾーム病です。常染色体潜性(劣性)遺伝で、両親が保因者のとき、兄弟姉妹が発症する確率は妊娠のたびに25%とされます(Orsini GeneReviews)。中枢神経では髄鞘が壊れ、末梢神経も障害されます。
| 病型 | 発症の時期 | 主な経過 |
|---|---|---|
| 乳児型 | 生後12か月未満 | 強い易刺激性、哺乳困難、筋緊張の変化、発達の遅れ。最初の数か月は正常に見えたあと急速に悪化し、2年目までに多くが対麻痺となる。死亡年齢の平均は24か月(8か月〜9年) |
| 後発型 | 生後12〜36か月以降、遅い場合は70歳代まで | 歩行の変化、不随意運動、けいれん、眼の症状、神経機能の低下など。症状と経過の幅が広い |
(Orsini GeneReviews)
診断は、血液(白血球)でGALCの酵素活性の低下を確認し、乾燥血のpsychosine(障害の目印となる物質)の上昇、GALC遺伝子の両アレルの変異を確かめて行います。新生児スクリーニングで見つかる場合もあり、発症前や症状がごく軽い乳児型では、画像や神経生理の所見が治療の判断に使われます(Orsini GeneReviews)。治療や経過は専門施設で相談してください。
画像所見:MRIとCT
年齢別の4つのパターン
インドの施設で2009〜2018年に診断された27人のMRI 38検査を検討した報告では、病型に対応した4つのパターンが確認されました(Muthusamy 2019)。
| パターン | 内容 | おもに見られる病型 |
|---|---|---|
| 1 | 大脳深部と小脳の白質が融合する信号異常。内包後脚と脳幹の錐体路にも及ぶ | 早期・後期乳児型 |
| 2 | 側脳室後方の深部白質の融合する高信号。錐体路や脳梁膨大部を伴うことも | 成人型、若年型の一部 |
| 3 | 錐体路だけの異常 | 成人型、若年型の一部 |
| 4 | 大脳の斑状の白質病変と歯状核門の高信号で、小脳深部白質は保たれる | 若年型の一部 |
(Muthusamy 2019)
この報告では、早期・後期乳児型の全例で、大脳と小脳の深部白質、小脳歯状核門に異常があり、視神経の肥厚は早期乳児型で多く見られました。成人型は、錐体路、側脳室後方の白質、脳梁膨大部だけに異常が限られていました。若年型は混在し、78%が成人型のパターン、22%が大脳深部白質の斑状の異常と歯状核門の信号変化を示しました(Muthusamy 2019)。同じ報告の図では、視床の容積の減少とT2強調像での低信号、視神経・脳神経の肥厚と造影効果も示されています。
症例 乳児型・若年型のT2強調像(歯状核)

引用:Muthusamy K, Sudhakar SV, Thomas M, et al. J Clin Imaging Sci. 2019;9:25 (Figure 2). PubMed(CC BY 4.0、加工なし)
論文の図です。a・bは早期乳児型の10か月男児のT2強調像(axial・coronal)で、歯状核門と周囲の小脳白質が高信号を示し、歯状核が挟み込まれたように見える「サンドイッチ」状の所見です。cは若年型の5歳女児のT2強調像(coronal)で、歯状核門だけが高信号です。
拡散強調像・スペクトロスコピー・その他の所見
同じ報告の図では、拡散強調像(DWI)で錐体路、側脳室周囲の白質、脳梁膨大部、小脳白質に左右非対称の拡散制限が見られる例が示されています。MRスペクトロスコピーでは、N-アセチルアスパラギン酸(NAA)の低下、小さな脂質のピーク、コリンとミオイノシトールの相対的な上昇が示されています(Muthusamy 2019)。乳児型では、視床の容積の減少とT2強調像での低信号、中脳のhummingbird(ハチドリ)状の形態と橋の容積の減少、頸髄と下位脳幹の腫大も図で示されています。若年型の経過観察では、錐体路の拡散制限が左右の別の時期に出現したり、斑状の白質病変が融合してtigroid pattern(縞状の所見)になったりする例も報告されています(Muthusamy 2019)。
CTで見えること
MRIが主役ですが、CTにも手がかりがあります。乳児のクラッベ病6例を含むCT・MRIの検討では、早期から脳の萎縮が見られ、脳や小脳の白質の濃度の異常と脳内の石灰化は、クラッベ病だけで見られました(同じ臨床像をとるほかの2疾患との比較)。視床の高吸収は、クラッベ病4例中1例で、文献では30検査中12検査に見られ、いつも見られるわけではありません(Vanhanen 1994)。
症例 CTの視床高吸収(論文の図)

引用:Muthusamy K, Sudhakar SV, Thomas M, et al. J Clin Imaging Sci. 2019;9:25 (Figure 8). PubMed(CC BY 4.0、加工なし)
論文の図です。aは早期乳児型の9か月女児の単純CTで、両側の視床が高吸収(矢印)で、大脳の容積が著しく減少しています。bは若年発症例で、内包後脚に沿う左右対称の高吸収(矢印)、cは成人発症例で、視放線に沿った両側の高吸収(矢印)です。
拡散テンソル画像(DTI)
発症前の新生児でも、画像で変化が見つかることがあります。家族歴のため生後4週以内にMRIを受けた乳児型の新生児6人では、錐体路の異方性比率(FA)の比が、左0.89、右0.87で、年齢と性別を合わせた対照45人より有意に低い結果でした(Escolar 2009)。この方法は標準化と検証が必要とされています。
成人発症のクラッベ病
成人発症(10歳以降の初発症状)21人の脳MRI(FLAIR)の解析では、錐体路は全例(100%)で異常でした(Cousyn 2019)。
| 部位 | 異常の割合 |
|---|---|
| 中心前回 | 100% |
| 放線冠 | 95% |
| 内包後脚 | 81% |
| 中脳 | 57% |
| 橋 | 52% |
| 延髄 | 5% |
| 側脳室後方外側の白質 | 95% |
| 視放線 | 86% |
(Cousyn 2019)
典型的でないパターンもあります。同じ研究では、典型的なパターンだが異常が広い例が3人、後天性の病気に似た斑状の分布を示した例が2人、錐体路の異常がごくわずかな例が1人いました(Cousyn 2019)。成人発症型は臨床医にも見過ごされやすい病気として、酵素、遺伝子、臨床像、画像、治療を整理した総説もあります(Wu 2022)。
見分けたい病気
成人の白質疾患の画像では、まず「左右対称の白質病変か」を確認し、次に分布のパターンに当てはめ、造影効果、脳脊髄液と同じ信号の病変、SWIの信号異常、MRスペクトロスコピーのピーク、脊髄病変を調べる手順が提案されています(Resende 2019)。
| 鑑別疾患 | 見分けるヒント |
|---|---|
| 異染性白質ジストロフィー(MLD) | びまん性の白質高信号で、脳梁や内包にも及び、T2強調像で縞状(tigroid)の所見が出る。ただしクラッベ病の若年型でも経過中にtigroid patternを示した例がある(Muthusamy 2019) |
| 副腎白質ジストロフィー(ALD) | 側脳室後方(頭頂・後頭)の白質から始まり、造影される前縁を持つことが多い |
| 乳児の神経セロイドリポフスチン症(NCL) | 視床のT2低信号と、側脳室周囲の高信号の縁が13か月以降の全例に見られる。クラッベ病では小脳の信号異常が見られる(Vanhanen 1994) |
| 皮質下白質を侵す疾患 | U-fiberを含む皮質下白質を侵す疾患の分布と比べる |
画像の見る順番は頭部MRIの読み方も参考にしてください。
読影のチェックリスト
- 乳児なら、大脳深部白質、小脳白質、小脳歯状核門の信号異常があるか
- 視神経の肥厚、脳神経の肥厚・造影効果がないか
- 視床・基底核の信号(T2低信号など)や、脳の萎縮の程度
- CTで視床や内包後脚に高吸収がないか(いつも見られるとは限らない)
- 成人なら、中心前回から放線冠、内包後脚、脳幹へ続く錐体路の高信号があるか
- 側脳室後方の白質、脳梁膨大部、視放線に左右対称の異常がないか
- 造影効果、拡散制限、SWI、スペクトロスコピーなど、他の白質疾患との違いを見る
- 疑ったら、画像だけで決めずに酵素活性や遺伝子検査を勧める
よくある疑問(Q&A)
Q. クラッベ病は遺伝しますか?
A. 常染色体潜性遺伝です。両親がともに保因者のとき、子どもが発症する確率は妊娠のたびに25%とされます(Orsini GeneReviews)。遺伝について心配なときは遺伝外来で相談してください。
Q. 大人になってから発症することはありますか?
A. あります。成人で診断された例の解析では、錐体路の異常が全例に見られました(Cousyn 2019、Wu 2022)。手足の動かしにくさや歩きにくさなど気になる症状があれば、神経内科を受診してください。
Q. 症状が出る前に診断できますか?
A. 家族歴や新生児スクリーニングで見つかる場合があります。発症前の新生児でも、DTIで錐体路の変化が見つかったとの報告があります(Escolar 2009)。
Q. CTだけで診断できますか?
A. CTだけでは難しいです。視床の高吸収は一部にしか見られず、MRIでの白質・歯状核の所見と酵素・遺伝子検査で診断します(Vanhanen 1994、Orsini GeneReviews)。
参考文献
- Orsini JJ, Escolar ML, Wasserstein MP, et al. Krabbe Disease. In: Adam MP, Bick S, Mirzaa GM, et al, editors. GeneReviews. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-2026 (2000 Jun 19 [updated 2026 Sep 8]). PubMed
- Muthusamy K, Sudhakar SV, Thomas M, et al. Revisiting magnetic resonance imaging pattern of Krabbe disease – Lessons from an Indian cohort. J Clin Imaging Sci. 2019;9:25. PubMed
- Cousyn L, Law-Ye B, Pyatigorskaya N, et al. Brain MRI features and scoring of leukodystrophy in adult-onset Krabbe disease. Neurology. 2019;93(7):e647-e652. PubMed
- Wu G, Li Z, Li J, et al. A neglected neurodegenerative disease: Adult-onset globoid cell leukodystrophy. Front Neurosci. 2022;16:998275. PubMed
- Vanhanen SL, Raininko R, Santavuori P. Early differential diagnosis of infantile neuronal ceroid lipofuscinosis, Rett syndrome, and Krabbe disease by CT and MR. AJNR Am J Neuroradiol. 1994;15(8):1443-53. PubMed
- Escolar ML, Poe MD, Smith JK, et al. Diffusion tensor imaging detects abnormalities in the corticospinal tracts of neonates with infantile Krabbe disease. AJNR Am J Neuroradiol. 2009;30(5):1017-21. PubMed
- Resende LL, de Paiva ARB, Kok F, et al. Adult Leukodystrophies: A Step-by-Step Diagnostic Approach. Radiographics. 2019;39(1):153-168. PubMed
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