
先に結論:ガレン大静脈瘤は「脳の深部の動静脈シャント」。年齢で症状が変わり、画像では静脈洞の太さと脳の傷みを見る
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 胎生期の静脈(Markowski静脈)と深部の脈絡叢動脈の間にできる動静脈シャント。静脈側が嚢状にふくらむ |
| 現れ方 | 胎児:妊娠後期の超音波で発見。新生児:高拍出性の心不全。乳児:頭囲拡大・水頭症・顔面の静脈怒張 |
| 画像の目安 | 正中の拡張した静脈嚢と、そこへ流れ込む動脈、拡張した直静脈洞(または胎生期の鎌静脈洞)。ドプラで乱流 |
| 型 | 脈絡叢型(choroidal)と壁型(mural)。壁型は巨大な静脈嚢と関連 |
| 予後の手がかり | 直静脈洞・鎌静脈洞の最も細い部分の太さ、頸静脈の閉鎖や狭窄、脳実質の損傷 |
ガレン大静脈瘤とは
ガレン大静脈(vein of Galen)は、脳の深部から血液を集め、直静脈洞を通って外へ流す太い静脈です。ガレン大静脈瘤(vein of Galen aneurysmal malformation、VGAM、またはvein of Galen malformation)は、胎生期の静脈であるMarkowski静脈(median prosencephalic vein)と、深部の脈絡叢動脈との間に動静脈瘻(動脈が毛細血管を介さず静脈へ直接つながる異常)ができた病気です。ガレン大静脈そのものが「瘤」になるわけではなく、名前に反して、胎生期の静脈が残ってふくらんだものと説明されます(Alektoroff 2022)。
まれな先天性の脳血管奇形で、新生児では心臓以外が原因の高拍出性心不全として最も多い原因とされます。出血、けいれん、髄液の吸収障害による水頭症の原因にもなります(Alektoroff 2022)。
年齢によって現れ方が違う
同じ病気でも、見つかる年齢で症状と画像の見え方が違います。
| 時期 | 主な現れ方 | 文献での数字 |
|---|---|---|
| 胎児 | 妊娠後期の超音波で発見。脳室拡大、心拡大、胎児水腫 | 226例すべてが妊娠後期に発見。脳室拡大31.8%、心拡大など心臓への負担23.1%、胎児水腫7.3%(D’Amico 2022) |
| 新生児 | 高拍出性の心不全、肺高血圧 | 新生児の高拍出性心不全の原因として、心臓以外で最も多い(Alektoroff 2022) |
| 乳児 | 頭囲拡大(macrocrania)、顔面の静脈の怒張、水頭症 | 生後28日以降に見つかった31人では、年齢の中央値は9.6か月。頭囲拡大24人、顔面の静脈の怒張9人、水頭症24人、脳白質の減少15人、心不全7人(Gopalan 2018) |
| 小児・成人 | 頭痛、けいれんなど。まれ | 36人の施設報告では、新生児6人、乳児18人、2〜10歳7人、成人5人。最も多い所見は頭囲拡大(Agarwal 2017) |
新生児期の心不全では、胸部X線で心拡大や肺うっ血が見られます。新生児の胸部X線の見方は新生児の胸部X線で整理しています。乳児で頭囲が大きく、顔の静脈が目立つときは、静脈の圧が高いこと(静脈高血圧)が背景にあると考えられます(Gopalan 2018)。水頭症は、髄液の吸収が妨げられることで起こり、頭蓋内の出血やけいれんとあわせて、この病気の合併症として知られています(Alektoroff 2022)。
画像所見:超音波・MRI・血管造影
超音波(胎児・新生児)
胎児では、脳の正中の深部に、嚢状に拡張した無エコーの構造が見え、カラードプラで強い血流信号と乱流が確認できます。この乱流は、つながる直静脈洞にも及びます(Puvabanditsin 2017)。新生児・乳児では大泉門(頭の前の骨の隙間)から同じ所見が追えます。
MRI
MRIでは、正中の拡張した静脈嚢(流れの速い血液のためflow voidになる)、そこへ向かう拡張した動脈、拡張した直静脈洞や、胎生期の鎌静脈洞(falcine sinus)の遷延が見えます(Puvabanditsin 2017)。胎児MRIは、脳実質の損傷や出血の評価にも使われます。
症例 胎児期の超音波とMRI

引用:Puvabanditsin S, Mehta R, Palomares K, et al. World J Clin Pediatr. 2017;6(1):103-109 (Figure 1). PubMed(CC BY-NC 4.0、加工なし)
論文の図です。Aは妊娠36週5日の超音波で、ガレン大静脈瘤にカラードプラで乱流が見られ、つながる直静脈洞にも乱流が及んでいます。Bは胎児MRIで、著しく拡張したMarkowski静脈(矢印)を示します。Cは胎生期の鎌静脈洞が残っている所見(矢印)です。
深部の静脈との交通
血管造影やMRIでは、静脈嚢が内大脳静脈(脳の深部から血液を集める静脈)など、正常な深部静脈とつながっているかどうかも確認します。治療を受けた患者を調べた研究では、深部静脈と静脈嚢との交通は、26人中8人(30.8%)で確認されました。内大脳静脈の交通をMRIで確実に同定できたのは23人中14人(61%)、血管造影では25人中8人(32%)でした(Kortman 2021)。高流量のシャントや血管の蛇行のために、この評価は難しいとされ、治療の前に専用の画像で調べておくことが大切だとされています(Kortman 2021)。
型の分類:脈絡叢型と壁型
血管造影での分類では、動脈と静脈嚢の接し方で2つの型に分けます。
| 型 | 特徴 |
|---|---|
| 脈絡叢型(choroidal) | 脳槽内の多数の動脈が静脈嚢に流れ込む。36人中18人 |
| 壁型(mural) | 動脈が静脈嚢の壁に直接つながる。36人中14人。直径4cmを超える巨大な静脈嚢と有意に関連した |
(Agarwal 2017。ほかに血栓化した静脈嚢が4人。静脈嚢が深部静脈系とつながっていたのは3人)
詳しい血管の動きは血管造影で評価します。見方の基本は脳血管造影(DSA)の見方で解説しています。
予後を考えるうえで見る所見
直静脈洞・鎌静脈洞の太さ
新生児32人(新生児期に緊急の介入が必要だった・死亡した群21人、乳児期まで待てた群11人)の検討では、直静脈洞または鎌静脈洞の最も細い部分の最大左右径と断面積が、新生児期に重症化するかどうかを最もよく予測しました(左右径の曲線下面積0.866、断面積0.836)。胎児MRIがある15人では、左右径の曲線下面積は0.980でした(Arko 2020)。静脈嚢の大きさだけでなく、出口にあたる静脈洞の最も細い部分の測定が有用と報告されています。
頸静脈の狭窄・閉鎖と巨大な静脈嚢
36人の施設報告では、両側の頸静脈閉鎖が9人、狭窄が6人に見られ、頸静脈閉鎖は転帰不良と有意に関連しました(Agarwal 2017)。静脈の出口の問題は、静脈の圧を上げて脳へ負担をかけます。
脳の損傷と転帰
新生児期に集中治療室へ入った24人では、15人が入院中に亡くなり、生存した9人のうち神経発達が正常だったのは1人でした(Malarbi 2019)。胎児期に診断された226例のまとめでは、新生児死亡が23.8%、神経発達の異常が36.7%で、神経学的な障害がなかったのは29.7%でした(D’Amico 2022)。一方、生後28日以降に見つかった31人では、29人が血管内治療を受け、生存した28人のうち20人の転帰は良好でした(Gopalan 2018)。新生児期に重症で見つかるか、乳児期以降に見つかるかで見通しが大きく異なります。治療は小児の血管内治療に対応した専門施設で行われます(Alektoroff 2022)。
他の病気との見分け方
| 鑑別 | 見分けるヒント |
|---|---|
| 脳動静脈奇形(AVM) | 脳実質内のナイダス(異常血管の塊)がある。ガレン大静脈瘤は静脈嚢が正中で、動脈は脈絡叢などから流れ込む |
| 硬膜動静脈瘻(dAVF) | 硬膜上のシャントで、静脈洞への逆流が問題になる。成人の発症が多い |
| くも膜嚢胞・松果体部の嚢胞 | ドプラやMRIで血流信号やflow voidがない |
胎児で脳室が大きいときは、ガレン大静脈瘤以外にも原因があります。正中の嚢胞状の構造に血流があるかをカラードプラで確認することが、鑑別の第一歩です。新生児の脳の低酸素・虚血による損傷は新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)のMRI所見で解説しています。
読影のチェックリスト
- 正中の嚢状の構造に、ドプラでの乱流やMRIでのflow voidがあるか
- 流れ込む動脈(脈絡叢動脈など)と、流れ出る直静脈洞・鎌静脈洞を追えるか
- 直静脈洞・鎌静脈洞の最も細い部分を測定したか
- 頸静脈の狭窄・閉鎖がないか
- 脳室拡大、脳白質の減少、出血・梗塞がないか
- 胎児・新生児では心拡大・肺うっ血など心不全の所見がないか
- 脈絡叢型か壁型か、静脈嚢の大きさ(4cm)を記載する
よくある疑問(Q&A)
Q. 生まれたばかりの赤ちゃんが心不全になるのはなぜですか?
A. 脳の深部で動脈と静脈が直接つながり、大量の血液がシャントを流れるため、心臓の負担が大きくなります。新生児では、心臓以外が原因の高拍出性心不全として最も多い原因とされます(Alektoroff 2022)。
Q. 胎児のうちに分かれば安心ですか?
A. 胎児期に診断された226例では、脳の損傷、心臓への負担、神経発達の異常が高い割合で見られました(D’Amico 2022)。出生後の経過を予測するために、胎児MRIでの評価が役立つとされます(Arko 2020)。
Q. 乳児の頭が大きいと言われました。ガレン大静脈瘤でしょうか?
A. 頭囲拡大は乳児期のガレン大静脈瘤で最も多い症状のひとつですが(Agarwal 2017、Gopalan 2018)、原因はほかにもたくさんあります。気になる症状があれば小児科や脳神経外科を受診してください。
Q. 大人でも見つかりますか?
A. まれですが、成人例も報告されています(Agarwal 2017では成人5人)。
あわせて読みたい:膠肉腫(gliosarcoma)とは?MRI所見と膠芽腫・髄膜腫との見分け方、WHO分類2021での位置づけ、pituicytoma(下垂体後葉の腫瘍)とは?症状・MRI所見と下垂体腺腫との見分け方
参考文献
- Alektoroff K, Papanagiotou P. [Vein of Galen aneurysmal malformation]. Radiologie (Heidelb). 2022;62(8):671-674. PubMed
- Agarwal H, Sebastian LJ, Gaikwad SB, et al. Vein of Galen aneurysmal malformation-clinical and angiographic spectrum with management perspective: an institutional experience. J Neurointerv Surg. 2017;9(2):159-164. PubMed
- Gopalan V, Rennie A, Robertson F, et al. Presentation, course, and outcome of postneonatal presentations of vein of Galen malformation: a large, single-institution case series. Dev Med Child Neurol. 2018;60(4):424-429. PubMed
- Malarbi S, Gunn-Charlton JK, Burnett AC, et al. Outcome of vein of Galen malformation presenting in the neonatal period. Arch Dis Child. 2019;104(11):1064-1069. PubMed
- Arko L, Lambrych M, Montaser A, et al. Fetal and Neonatal MRI Predictors of Aggressive Early Clinical Course in Vein of Galen Malformation. AJNR Am J Neuroradiol. 2020;41(6):1105-1111. PubMed
- D’Amico A, Tinari S, D’Antonio F, et al. Outcome of fetal Vein Galen aneurysmal malformations: a systematic review and meta-analysis. J Matern Fetal Neonatal Med. 2022;35(25):5312-5317. PubMed
- Kortman H, Navaei E, Raybaud CA, et al. Deep venous communication in vein of Galen malformations: incidence, Imaging, and Implications for treatment. J Neurointerv Surg. 2021;13(3):290-293. PubMed
- Puvabanditsin S, Mehta R, Palomares K, et al. Vein of Galen malformation in a neonate: A case report and review of endovascular management. World J Clin Pediatr. 2017;6(1):103-109. PubMed
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