
先に結論:脳神経は「脳からの出口の高さ」で3つに分けて覚える
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 数と分け方 | 12対。嗅神経(Ⅰ)と視神経(Ⅱ)は脳から、Ⅲ〜Ⅻは脳幹から出る |
| 脳幹の高さ | 中脳:Ⅲ・Ⅳ/橋:Ⅴ〜Ⅷ(Ⅵ・Ⅶ・Ⅷは橋と延髄の境目)/延髄:Ⅸ〜Ⅻ |
| 画像の使い分け | 脳の外の神経はMRI(薄いスライスの高分解能T2など)、骨の出口(孔・管)はCT |
| 症状からの考え方 | 脳幹の中・脳槽(髄液の中)・海綿静脈洞や眼窩・頭蓋底の孔・頭蓋外、のどこで障害されたかを考える |
| 見落としやすい所 | Ⅳ・Ⅵなど細い神経、頸静脈孔を通るⅨ・Ⅹ・Ⅺ、症状と画像のずれ |
脳神経12対の一覧:名前・働き・出る場所・頭蓋骨の出口
脳神経は、脳から出て頭や首の感覚・運動を担う神経です。名前と番号、働き、脳から出る場所、頭蓋骨を出る孔をまとめます。この表は解剖学の教科書的な内容で、画像を読むときの地図として使います。1つの表で全体を見渡してから、各神経を画像で確かめていきます。
| 番号・名前 | 主な働き | 脳から出る高さ | 頭蓋骨の出口 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ 嗅神経 | 嗅覚(感覚) | 嗅球(前頭葉の下面) | 篩板 |
| Ⅱ 視神経 | 視覚(感覚) | 眼球から視交叉へ(間脳につながる) | 視神経管 |
| Ⅲ 動眼神経 | 眼球を動かす筋・上まぶたを上げる筋(運動)、瞳孔を小さくする(副交感) | 中脳 | 上眼窩裂 |
| Ⅳ 滑車神経 | 上斜筋(運動) | 中脳(背側から出る) | 上眼窩裂 |
| Ⅴ 三叉神経 | 顔の感覚、咀嚼筋(混合) | 橋 | V1上眼窩裂・V2正円孔・V3卵円孔 |
| Ⅵ 外転神経 | 外直筋(運動) | 橋と延髄の境目 | 上眼窩裂 |
| Ⅶ 顔面神経 | 表情筋(運動)、舌の前方の味覚、涙や唾液の分泌 | 橋と延髄の境目 | 内耳道→顔面神経管→茎乳突孔 |
| Ⅷ 内耳神経(前庭蝸牛神経) | 聴覚・平衡覚(感覚) | 橋と延髄の境目 | 内耳道 |
| Ⅸ 舌咽神経 | 咽頭の感覚・運動、舌の後方の味覚(混合) | 延髄 | 頸静脈孔 |
| Ⅹ 迷走神経 | 咽頭・喉頭の運動、内臓の感覚と副交感(混合) | 延髄 | 頸静脈孔 |
| Ⅺ 副神経 | 僧帽筋・胸鎖乳突筋(運動) | 延髄と上部頸髄 | 頸静脈孔 |
| Ⅻ 舌下神経 | 舌の筋(運動) | 延髄 | 舌下神経管 |
覚えるときは、中脳からⅢ・Ⅳ、橋からⅤ(と橋延髄の境目からⅥ・Ⅶ・Ⅷ)、延髄からⅨ〜Ⅻ、と脳幹を上から下へ「3・4/5〜8/9〜12」と区切ると整理しやすくなります。Ⅰ・Ⅱは脳幹ではなく、嗅球と視神経として別に覚えます。
脳神経は、運動の核・感覚の核・副交感の核が、脳幹の中に縦の列になって並んでいます(Romano 2019)。神経の「核」は脳幹の中、そこから出た後の線維が脳の外を走る、と二段に分けて考えると、後の症状の場所決めがしやすくなります。
画像で見るなら:MRIとCTの役割
脳神経の画像診断では、MRIが標準的な検査とされています。CTは神経そのものを直接見るのは苦手ですが、頭蓋底の孔や骨の中を通る部分、骨の変化を見るのに向いています(Romano 2019)。
| 検査 | 見えるもの | 向いている場面 |
|---|---|---|
| MRI(薄いスライスの高分解能T2、SSFPなど) | 髄液の中を走る神経(脳槽部)を、白い髄液の中の線として | 神経血管圧迫、聴神経鞘腫など腫瘍、神経炎 |
| MRI(造影T1) | 腫瘍・炎症で造影される神経、海綿静脈洞や髄膜 | 神経鞘腫、神経周囲への腫瘍進展、髄膜炎・髄膜播種 |
| CT(骨条件) | 頭蓋底の孔・管の大きさや骨破壊 | 孔の拡大、骨折、骨を侵す病変 |
| MRA・CTA | 神経のそばを走る動脈 | 動眼神経麻痺と動脈瘤、神経血管圧迫 |
症例 脳神経の脳槽部のMRI(正常)

引用:Romano N, et al. Insights Imaging 2019;10:33(Figure 1)。PMC、CC BY 4.0
高分解能T2(SSFP)の軸位像で、髄液の中を走る正常な脳神経が線として見えます。嗅神経(A)から副神経(I)までを順に追えるように並べた図です。細い神経でも、スライスの高さと位置が分かれば「ここに見えるはず」と探せます。
症状から場所を考える:5つの「どこで障害されたか」
脳神経の画像診断の考え方は、脳の中(軸内)の原因か、脳の外(軸外)の原因かをまず分けることです(Klimaj 2020)。さらに細かく、神経の通り道を5つの区間に分けると、撮るべき範囲と見る場所が決まります。
| 区間 | 代表的な病変 | 画像で見る場所 |
|---|---|---|
| 脳幹の中(核・核の近くの線維) | 脳幹の梗塞・脱髄・腫瘍 | 脳幹のT2・FLAIR・DWI。同じ高さの他の神経や長経路の症状も一緒に見る |
| 脳槽部(髄液の中) | 神経鞘腫、神経血管圧迫、髄膜炎・髄膜播種 | 高分解能T2と造影T1の脳槽 |
| 海綿静脈洞・眼窩先端 | 腫瘍、炎症(Tolosa-Hunt症候群など)、動脈の病変 | 造影T1の冠状断・軸位断、MRA |
| 頭蓋底の孔・管 | 骨を侵す腫瘍、骨折、神経鞘腫による孔の拡大 | CT(骨条件)と造影MRI |
| 頭蓋外 | 頭頸部の腫瘍、耳下腺など、神経周囲進展 | 造影MRI(脂肪抑制)で神経の走行に沿って追う |
複数の脳神経が同時に障害されるときは、1か所で説明できる場所(脳幹の1か所、海綿静脈洞、頸静脈孔など)がないかを考えます。「近くを通る神経が一緒に障害された」と考えると、見る範囲が決まります。
脳幹の中の病変では、障害された側の脳神経の症状に、反対側の手足の麻痺が組み合わさることがあります。これは、脳神経の核は障害された側にあり、手足を動かす経路は脳幹の下の方で反対側へ交差するためです。「顔や眼の症状は同じ側、手足は反対側」という組み合わせを見たら、脳幹を重点的に読みます。脳幹の血管障害の画像は脳幹梗塞(橋梗塞・延髄梗塞・中脳梗塞)の画像診断と支配血管にまとめています。
眼を動かす3つの神経(Ⅲ・Ⅳ・Ⅵ)
眼球を動かす神経はⅢ・Ⅳ・Ⅵの3つで、障害の場所は脳幹の核、脳の外を走る経路、眼窩の外眼筋のどこにもありえます(Thatcher 2016)。眼の動きが悪いからといって神経だけを見るのではなく、外眼筋まで見ることが大切です。外眼筋の病変では、画像所見だけでは原因を決められないものが多いため、病歴・症状と合わせて読む必要があります(Thatcher 2016)。
瞳孔が大きくなる動眼神経麻痺では、動脈瘤を考えます。内頸動脈と後交通動脈の分かれ目の動脈瘤が代表で、頻度は低いものの脳底動脈の先端部などにもできます。こうした動脈瘤の大きさは通常4mm以上とされます。CTとMRAによる検出率は、カテーテルによる脳血管造影に近づいています(Chaudhary 2009)。くわしくは動眼神経麻痺の原因とMRI・MRAを参考にしてください。
聴神経鞘腫など神経鞘腫の見え方
脳神経から生じる良性腫瘍の代表が神経鞘腫です。ゆっくり育つため、境界が明瞭で、周囲の構造を押しのけ、孔をなめらかに広げるのが特徴です。造影ではしっかり染まり、内部に嚢胞を伴うことがあり、T2強調像では不均一な高信号になります。両側に多発する場合は神経線維腫症2型の可能性があります(Skolnik 2016)。顔面神経と内耳神経の走行は三叉神経の走行と顔面神経・内耳神経のMRI解剖で、顔面神経麻痺の画像は顔面神経麻痺の画像診断(MRI)で解説しています。
画像を読む順番のチェックリスト
- 症状と左右を確認:どの神経の症状か、左右はどちらか。複数の神経なら、同時に障害される場所を考える。
- 脳幹を見る:中脳・橋・延髄の高さで、核のある場所と周囲の長経路に異常がないか(T2・FLAIR・DWI)。
- 脳槽を見る:高分解能T2で、神経が途中で押されていないか、血管と接していないか、腫瘤がないか。
- 造影で見る:神経・髄膜の造影、海綿静脈洞、眼窩先端。造影のない撮像だけだと見落とすものがある。
- 骨の出口を見る:CTで孔・管の拡大や骨破壊。
- 頭蓋の外まで追う:神経の出口の先(顔面、頸部)に腫瘍がないか。
画像解剖を一から学ぶときは、頭部MRIの解剖|横断像で部位の名前と場所をレベルごとに解説の画像で、脳幹の高さと神経の出る場所を重ねて確認すると、頭に入りやすくなります。脳幹の高さの見分けも合わせて練習するとよいでしょう。
見落としやすいところ・よくある間違い
| 間違いやすい点 | 考え方 |
|---|---|
| 嗅神経と視神経は他の10対と同じ | 嗅神経は嗅球から、視神経は視交叉へつながる経路として、他の脳神経とは出る場所が違う。画像でも嗅球・視交叉まで追う |
| 神経の症状=神経の病変 | 眼を動かす症状は、神経だけでなく外眼筋や眼窩の病変でも起こる(Thatcher 2016) |
| 造影MRIを撮らなくてよい | 腫瘍や炎症、髄膜の病変は造影で見えるものがある。目的に合わせて造影の有無を決める |
| 脳槽だけを見て終わり | 孔・管・頭蓋外まで続く病変がある。神経周囲への腫瘍進展は、神経の走行に沿って追う(Romano 2019) |
| 顔面神経の造影=異常 | 顔面神経は正常でも造影される部分がある。左右差と臨床症状を合わせて判断する |
顔面神経の造影については、症状・左右差・厚みを合わせて判断する必要があります。造影があることだけで病気と決めないようにします。
よくある疑問(Q&A)
Q. 脳神経が12対とは、全部で24本ですか?
A. 左右に1本ずつあり、12の種類(対)があるので、左右合わせて24本です。画像では「どの番号の神経か」に加えて「右か左か」もはっきり区別して見ます。
Q. 嗅神経や視神経は、他の脳神経と何が違いますか?
A. 嗅神経は嗅球へ、視神経は視交叉へつながる神経で、Ⅲ〜Ⅻのように脳幹から出る神経とは出る場所が違います(Romano 2019)。画像で追う範囲も、嗅球から前頭葉の下面、視交叉から視索までと異なります。
Q. 脳神経の症状があるとき、MRIとCTのどちらを撮りますか?
A. 神経そのものや脳幹、髄膜はMRIが標準で、骨の孔や骨の変化はCTが向いています(Romano 2019)。どちらが必要かは症状と疑う場所で決まるため、主治医と画像検査の担当者が相談して決めます。
Q. 顔の動きや眼の動きに急に異常を感じました。どうすればよいですか?
A. 眼の動きの異常、物が二重に見える、顔の動きが悪いなどの症状が急に出たときは、早めに医療機関を受診してください。原因が脳や血管にあることもあるため、自己判断で様子を見ないことが大切です。
あわせて読みたい:脊髄伝導路の解剖、第4脳室の解剖、辺縁系・Papez回路の解剖
参考文献
- Romano N, Federici M, Castaldi A. Imaging of cranial nerves: a pictorial overview. Insights Imaging. 2019;10(1):33. PubMed
- Klimaj Z, Klein JP, Szatmary G. Cranial Nerve Imaging and Pathology. Neurol Clin. 2020;38(1):115-147. PubMed
- Thatcher J, Chang YM, Chapman MN, et al. Clinical-Radiologic Correlation of Extraocular Eye Movement Disorders: Seeing beneath the Surface. Radiographics. 2016;36(7):2123-2139. PubMed
- Chaudhary N, Davagnanam I, Ansari SA, et al. Imaging of intracranial aneurysms causing isolated third cranial nerve palsy. J Neuroophthalmol. 2009;29(3):238-44. PubMed
- Skolnik AD, Loevner LA, Sampathu DM, et al. Cranial Nerve Schwannomas: Diagnostic Imaging Approach. Radiographics. 2016;36(5):1463-77. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
