
先に結論:DSAは「時間を追って流れを見る検査」。偏位・濃染・早期の静脈描出の3つを時相ごとに探す
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| DSAとは | カテーテルから造影剤を入れて連続撮影し、骨や軟部の影を差し引いて血管だけを強調する検査 |
| 時相 | 動脈相(狭窄・閉塞・動脈瘤・偏位)→毛細血管相(実質の染まり・腫瘍濃染)→静脈相(静脈・静脈洞) |
| 見る3点 | 血管の偏位、腫瘍濃染、動脈相での早期の静脈描出(動静脈シャント) |
| CTA・MRAとの違い | CTA・MRAは動脈瘤の拾い上げに優れ、流れの時間経過とシャントの詳細評価はDSAの強み |
脳血管造影(DSA)とは
脳血管造影は、カテーテルという細い管を血管の中から目的の動脈まで進め、造影剤を直接注入しながらX線で連続撮影する検査です。DSA(digital subtraction angiography)は、造影前の画像(マスク)を造影後の画像から差し引くことで、頭蓋骨や軟部組織の影を消して血管だけを強調する方法です。内頸動脈、外頸動脈、椎骨動脈など、見たい血管ごとに撮影します。
CTAやMRAは、ある瞬間の血管の形を撮る検査です。これに対してDSAは、造影剤が血管を流れる様子を連続した画像で見られる点が大きな違いです。詳しい使い分けはCTAとMRAの違いで解説しています。
時相ごとに見るもの
造影剤は、動脈、毛細血管(脳実質)、静脈の順に流れます。この流れを画像の順に追います。
| 時相 | 見えるもの | 探す所見 |
|---|---|---|
| 動脈相 | 内頸動脈・椎骨動脈とその枝(前・中・後大脳動脈など) | 狭窄・閉塞、動脈瘤、血管の偏位、栄養動脈の拡張 |
| 毛細血管相(実質相) | 脳実質がうっすら染まる | 腫瘍の濃い染まり(腫瘍濃染)、血管のない領域(無血管野) |
| 静脈相 | 皮質静脈→上矢状静脈洞・横静脈洞・S状静脈洞→内頸静脈 | 静脈洞の描出不良(血栓など)、静脈の拡張、流出の異常 |
画像を見る前に、どの血管を、どの方向(正面か側面か)で撮った画像かを確認します。左右の内頸動脈と椎骨動脈では、造影される血管の領域が違うためです。動脈の分枝名は覚えにくいので、まず「前方に伸びるのが前大脳動脈、外側へ広がるのが中大脳動脈」という大きな区別から入るとよいでしょう。
合併症とリスクを知っておく
DSAはカテーテルを使う検査で、頭部CT・MRIとは違って合併症の可能性があります。1981年から2003年までの19,826人を調べた報告では、神経学的な合併症が2.63%(522検査)、永続的な障害を残す脳卒中が0.14%、死亡が0.06%でした。最も多かった合併症は穿刺部の血腫(4.2%)でした(Kaufmann 2007)。脊髄の血管造影を含む2,340人を10年間調べた別の報告では、神経学的な合併症が0.68%、永続的な障害を残す脳卒中が0.13%、穿刺部の血腫が1.32%で、検査が原因の死亡はありませんでした(Tafelmeier 2023)。緊急の検査ではリスクが高いことも示されています(Tafelmeier 2023)。
このため、現在はCTAやMRAなどの非侵襲的な検査で足りる場面ではそちらを先に行い、DSAは治療方針に直結する場面に絞って行われます。
血管の偏位:腫瘤による押され方
脳腫瘍や血腫などの腫瘤は、周りの血管を押して位置を変えます。血管が本来の場所からずれていれば、その近くに腫瘤があるという間接的な所見になります。現在は腫瘤そのものをCTやMRIで直接見られるため、DSAで偏位だけを目的に撮ることは少なくなりましたが、血管のずれ方の考え方は他の画像でも役立ちます。
| 状況 | 偏位の例(一般的な傾向) |
|---|---|
| 大脳半球の大きな占拠性病変 | 前大脳動脈が正中を越えて反対側へ寄る(正面像) |
| 前頭葉の腫瘤 | 中大脳動脈の枝が下方へ押される |
| 側頭葉の腫瘤 | 中大脳動脈の枝が上方へ持ち上げられる |
| 凸面の硬膜外・硬膜下血腫 | 脳表の血管が頭蓋骨の内板から離れ、血管のない領域(無血管野)ができる |
偏位の方向は病変の位置や大きさで変わるため、上の表は目安です。正常な血管の位置を知っていることが前提になります。
腫瘍濃染(tumor stain)
毛細血管相で、血流の豊富な腫瘍が周囲より濃く染まる所見を腫瘍濃染と呼びます。栄養する動脈が太く、腫瘍に向かって枝が集まる様子も動脈相で見えます。
| 腫瘍の例 | 血管造影での見え方(一般的な傾向) |
|---|---|
| 髄膜腫 | 硬膜からの栄養動脈(外頸動脈の枝が多い)と、均一で持続する濃染 |
| 血管芽腫(小脳) | 嚢胞の壁在結節が強く染まる |
| 血流豊富な転移 | 腫瘍濃染と、栄養動脈の増加 |
濃染の程度や栄養動脈は、手術の前に腫瘍への血流を減らす治療(塞栓術)を考えるときの手がかりになります。血流を画像の上で調べる灌流画像は脳のCT perfusion・MR perfusionの見方で解説しています。
早期静脈描出:動静脈シャントを見つける
最も重要な所見の一つが、動脈相のうちに静脈や静脈洞が染まることです。正常では、造影剤が毛細血管を通って静脈に達するまでにはある程度の時間がかかります。動脈から静脈へ毛細血管を飛ばして直接つながる異常な経路(シャント)があると、静脈が早く染まります。
| 項目 | 脳動静脈奇形(AVM) | 硬膜動静脈瘻(dAVF) |
|---|---|---|
| 場所 | 脳実質の中(ナイダス) | 硬膜・静脈洞の壁 |
| 見え方 | 塊状の異常血管(ナイダス)と拡張した栄養動脈・流出静脈 | 脳実質に塊はなく、硬膜の動脈から静脈洞や皮質静脈へ直接流れ込む |
| 栄養動脈 | 脳の動脈(前・中・後大脳動脈など) | 外頸動脈・硬膜枝などの硬膜の動脈 |
| 評価のポイント | ナイダスの大きさ・位置・静脈の流出路 | 静脈の流出パターン(皮質静脈への逆流の有無) |
脳AVMは、画像でナイダス(異常血管のかたまり)と早期の静脈描出を特徴とする病変です。出血のリスクや治療の方針は、位置や血行動態(血液の流れ方)で決まります(Mokin 2014)。
症例 35歳男性 脳動静脈奇形(Spetzler-Martin grade 2)

引用:Radiopaedia(Cerebral arteriovenous malformation – Spetzler-Martin grade 2)

引用:Radiopaedia(Cerebral arteriovenous malformation – Spetzler-Martin grade 2)
右上前頭回に、大きさ1.9cmのコンパクトなナイダスがあります。症例ページでは、右の前大脳動脈と中大脳動脈の遠位枝から栄養され、表在の皮質静脈を経て上矢状静脈洞に流出すると記載されています。ここでは、栄養動脈とナイダスが写る画像と、ナイダスが濃く染まり、流出静脈が見える画像を示します。CTでは急性出血を示す所見はないと記載されています。
硬膜動静脈瘻は「静脈の流れ方」で危険度が決まる
dAVFは、瘻孔の大きさよりも静脈の流出パターンが経過を左右します。Cognardらは、静脈の流出パターンで5つに分類しました(Cognard 1995)。
| 型 | 静脈の流れ | 経過(Cognard 1995) |
|---|---|---|
| I | 主要な静脈洞内で順行性 | 経過は良好 |
| II | 静脈洞内で逆流(IIa)、皮質静脈へ逆流(IIb)、両方(IIa+b) | 静脈洞への逆流で頭蓋内圧亢進が20%、皮質静脈への逆流で出血が10% |
| III | 皮質静脈へ直接流出(静脈の拡張なし) | 出血が40% |
| IV | 皮質静脈へ直接流出(静脈の拡張あり) | 出血が65% |
| V | 脊髄の静脈へ流出 | 進行性の脊髄症が50% |
その後の検討では、皮質静脈への流出がある高リスクの群のなかでも、出血や神経症状で見つかった「症状のある皮質静脈流出」の年間出血率は7.4〜7.6%、偶然見つかったり拍動性耳鳴・眼症状で見つかったりした群では1.4〜1.5%と報告されています(Zipfel 2009)。皮質静脈への流出があるかどうかが、読影で最も確認したい点です。耳鳴りの症状からの画像検査の選び方は拍動性耳鳴の原因と画像検査で解説しています。
CTA・MRAとの使い分け
| 目的 | 最初に行う検査 | DSAを考える場面 |
|---|---|---|
| 動脈瘤の拾い上げ | CTAまたはMRA | CTA・MRAで判断が難しいとき、治療方針を決めるとき |
| AVM・dAVFの疑い | MRI・MRA・CTA(時間分解のあるものもある) | シャントの詳細・流出静脈の評価、治療計画 |
| 血管の狭窄・閉塞 | CTAまたはMRA | 詳細な評価や治療の直前 |
脳動脈瘤を、DSAや手術所見と比べたCTAのメタ解析(45研究・3,643人)では、1人ごとの感度97.2%、特異度97.9%でした。1つの動脈瘤ごとでは感度95.0%、特異度96.2%でした。16列・64列のMDCTは単列より精度が高く、特に4mm以下の小さな動脈瘤で差がありました(Menke 2011)。MRAのメタ解析(12研究・960人)では、感度95%、特異度89%で、偽陰性や偽陽性は頭蓋底と中大脳動脈に多い結果でした(Sailer 2014)。未破裂動脈瘤の見つかり方は未破裂脳動脈瘤が見つかったらで解説しています。
dAVFは、時間分解能のあるMRA(3テスラ、TRICKS法)とDSAを比べた研究(40人・42検査)で、読影者3人が一致して正しく診断したのが93%(39/42)でした。この研究は、一部の場面でのスクリーニングと経過観察に有用と結論しています。一方で著者は、dAVFが「カテーテル血管造影が必要とされる数少ない適応」の一つであるとも述べています(Farb 2009)。
感染によってできる動脈瘤など、形が特殊な動脈瘤の見方は感染性脳動脈瘤のMRI(MRA)画像所見も参考になります。
DSAを読むチェックリスト
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 造影した血管(左右の内頸・椎骨など)と撮影方向を確認する |
| 2 | 動脈相で狭窄・閉塞・動脈瘤を探す |
| 3 | 血管の偏位と、血管のない領域がないか見る |
| 4 | 毛細血管相で、濃く染まる部分(腫瘍濃染)がないか見る |
| 5 | 動脈相の間に静脈や静脈洞が染まっていないか(早期静脈描出)を見る |
| 6 | 静脈相で、静脈洞の描出や流出の左右差を見る |
よくある疑問(Q&A)
Q. CTAやMRAがあるのに、なぜDSAが行われるのですか?
A. DSAは造影剤の流れを連続して見られ、シャントや静脈への流出の評価に向いています。dAVFは、カテーテル血管造影が必要とされる数少ない適応の一つとされています(Farb 2009)。動脈瘤の拾い上げでは、CTAやMRAの精度が高く(Menke 2011、Sailer 2014)、CTAがDSAを補う、あるいは一部で置き換える可能性が示されています(Menke 2011)。
Q. DSAの危険性はどのくらいですか?
A. 19,826人の報告では、神経学的な合併症が2.63%、永続的な障害を残す脳卒中が0.14%でした(Kaufmann 2007)。2,340人の報告では、それぞれ0.68%、0.13%でした(Tafelmeier 2023)。報告ごとに、対象の患者さんや検査の時期が異なります。検査の必要性とリスクは担当医とよく相談してください。
Q. AVMと硬膜動静脈瘻はどう違いますか?
A. AVMは脳実質の中のナイダスを持つ病変、dAVFは硬膜や静脈洞の壁にできるシャントです。dAVFでは皮質静脈へ流出するかどうかが危険度を左右します(Cognard 1995、Zipfel 2009)。
Q. 頭痛や耳鳴りが気になるとき、すぐにDSAが必要ですか?
A. いいえ、まずはMRIやMRA、CTAなど負担の少ない検査から始めるのが一般的です。気になる症状があれば、医療機関で相談してください。
参考文献
- Cognard C, Gobin YP, Pierot L, et al. Cerebral dural arteriovenous fistulas: clinical and angiographic correlation with a revised classification of venous drainage. Radiology. 1995;194(3):671-680. PubMed
- Zipfel GJ, Shah MN, Refai D, et al. Cranial dural arteriovenous fistulas: modification of angiographic classification scales based on new natural history data. Neurosurg Focus. 2009;26(5):E14. PubMed
- Mokin M, Dumont TM, Levy EI. Novel multimodality imaging techniques for diagnosis and evaluation of arteriovenous malformations. Neurol Clin. 2014;32(1):225-236. PubMed
- Farb RI, Agid R, Willinsky RA, et al. Cranial dural arteriovenous fistula: diagnosis and classification with time-resolved MR angiography at 3T. AJNR Am J Neuroradiol. 2009;30(8):1546-1551. PubMed
- Menke J, Larsen J, Kallenberg K. Diagnosing cerebral aneurysms by computed tomographic angiography: meta-analysis. Ann Neurol. 2011;69(4):646-654. PubMed
- Sailer AM, Wagemans BA, Nelemans PJ, et al. Diagnosing intracranial aneurysms with MR angiography: systematic review and meta-analysis. Stroke. 2014;45(1):119-126. PubMed
- Kaufmann TJ, Huston J 3rd, Mandrekar JN, et al. Complications of diagnostic cerebral angiography: evaluation of 19,826 consecutive patients. Radiology. 2007;243(3):812-819. PubMed
- Tafelmeier S, Kesseler E, Iancu AM, et al. Spectrum of Complications and Complication Rates After Diagnostic Catheter Angiography in Neuroradiology. Clin Neuroradiol. 2023;33(3):763-768. PubMed
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