MRIで見えない DWI陰性・MRI陰性てんかんの考え方

症状が続いているのにMRIでは「明らかな異常なし」でした。病気はないと考えてよいのでしょうか?
MRIで病変が見えないことは、病気がないことと同じではありません。発症が早すぎる、病変が小さい、撮り方が合っていない、病変が周りと同じ見え方をしている、といった理由で「見えない」ことがあります。脳梗塞・てんかん・脳炎を例に、考え方を整理します。

先に結論:MRIで病変が見えなくても病気は除外できない。時期・場所・撮り方・見る目を見直し、必要なら再検査や別の検査へ進む

項目 ポイント
脳梗塞 拡散強調像(DWI)が陰性の脳梗塞は一定の割合である。小さな病変や後方循環に多い
てんかん 側頭葉てんかんの最大30%はMRIが正常。再検査や専用の撮り方で見つかることがある
脳炎 自己免疫性脳炎でも、早い時期のMRIは正常のこともある
見直す点 発症からの時間、病変の大きさと場所、シーケンス・磁場強度、過去画像との比較
次の一手 臨床の疑いが強ければ、再撮像、専用プロトコル、PETなど別の検査を考える

MRIで病変が見えない理由

MRIは脳の病変を見つける力が高い検査ですが、病変があっても画像に写らない、あるいは「異常」として認識されないことがあります。理由は大きく5つに分けられます。

理由 例
時期が早い 発症直後の脳梗塞でDWIがまだ陰性。脳炎の初期でMRIが正常
小さい・場所が悪い 脳幹やラクナ梗塞(小さな梗塞)のように小さく、薄いスライスでないと写りにくい病変
撮り方が合っていない 磁場強度が低い、てんかん専用でない撮像、シーケンスやスライス厚の不足
病変が周りと同じ見え方 皮質と同じ信号の小さな異所性灰白質、皮質形成異常など
年齢で見え方が変わる 乳幼児の髄鞘化の途中では、皮質と白質の境界の異常が目立たない

脳梗塞:DWI陰性の脳梗塞

脳梗塞の診断で最も感度が高いのはDWIですが、DWIが陰性の脳梗塞もあります。ふだんのDWIの読み方は拡散強調像(DWI)とはで解説しています。

脳梗塞と臨床診断された16,268人(14研究)をまとめたメタ解析では、DWI陰性の割合は16%(95%信頼区間10〜24%)、感度分析後は11%(8〜15%)でした。軽症(NIHSS 5以下)に絞ると24%(12〜42%)に上がります。DWIが陰性になりやすい要因は、後方循環の梗塞、虚血性心疾患、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)の既往でした(Alkhiri 2024)。

DWIが陰性になりやすい DWIが陽性になりやすい
後方循環の梗塞 心原性脳塞栓症(オッズ比0.62)
虚血性心疾患の既往 心房細動の既往(オッズ比0.56)
脳梗塞・TIAの既往 ―
軽症(NIHSS 5以下) ―

(Alkhiri 2024。表のオッズ比は、心原性脳塞栓症・心房細動があるとDWI陰性になるオッズが低い、つまり陽性になりやすいことを示します)

報告 対象 DWI陰性の割合
Sylaja 2008 脳梗塞・TIA 401人。発症24時間以内に撮像 25.6%(103人)
Makin 2015 日常生活に支障の少ない脳梗塞264人。発症から中央値4日で撮像 29%(76人)。ほかの6研究を合わせた推定は21%
Alkhiri 2024(メタ解析) 14研究・16,268人 16%(感度分析後11%)

割合に開きがあるのは、対象や撮像の時期が違うためです。発症24時間以内にDWIが陰性だった401人を30日後に撮り直した研究では、DWI陰性の脳梗塞の6/26(23.1%)で、追跡のMRIに梗塞が見つかり、その内訳はラクナ梗塞4人と後方循環2人でした(Sylaja 2008)。脳幹の症状またはラクナ症候群(小さな梗塞による症状)の人だけが、最初はDWIが陰性で、その後に梗塞が確認されたか、最終的に脳梗塞と臨床診断されました。小脳梗塞のように、見つけにくい病変は小脳梗塞とはも参考になります。

DWI陰性だと軽症か

メタ解析では、DWI陰性の脳梗塞は、機能的転帰が良く(mRS 0〜1のオッズ比2.26)、再発が少ない(同0.68)ことが報告されました(Alkhiri 2024)。一方、日常生活に支障の少ない脳梗塞264人の追跡では、DWI陰性の人のうち、1年後に脳卒中・TIAの再発と診断された人は14%、認知機能障害は33%、mRSが1を超える人は40%で、DWI陽性の人と差がありませんでした。この研究は、DWI陰性の脳梗塞にも二次予防を行うべきと結論しています(Makin 2015)。DWIが陰性でも、臨床的に脳梗塞が強く疑われる場合は、画像が正常でも脳梗塞として評価・対応されると覚えておくと安全です。

てんかん:MRI陰性てんかん

側頭葉てんかんは成人で最も多い焦点てんかんです。そのうち最大30%で、MRIが正常(非病変性)とされます。MRI陰性は手術前の評価を難しくし、手術の成績が低めと関連すると総説は述べています(Muhlhofer 2017)。

MRIが陰性でも、撮り直すと見つかる病変があります。MRI陰性の焦点てんかんの子ども257人の検討では、再撮像でMRIが陽性になったのは21%(55/257)で、そのうち49%(27/55)がてんかん原性と考えられる病変でした。内訳は、皮質形成異常11人、海馬硬化10人、多小脳回2人、異所性灰白質2人、小頭を伴う滑脳症1人、皮質の腫瘍1人です(Jeon 2017)。

見つかった27人の病変について、最初の画像で見えにくかった要因を調べると、撮像条件(専用でない撮り方、磁場強度など)のみが6人、病変の性質(年齢による変化など)のみが2人、両方が18人、どちらでもないが1人でした。著者らは、撮像技術の向上と、病変の経時的な変化の考慮が、再撮像の診断率を高めうると述べています(Jeon 2017)。

症例 最初のMRIで見えなかった皮質形成異常

皮質形成異常 8か月時のT2強調像と9歳時のFIRMS 左側頭葉の皮質肥厚
引用:Jeon TY, et al. Korean J Radiol. 2017;18(4):729-738(Figure 5)、CC BY-NC 4.0(図は加工していません)

左側頭葉の焦点てんかんの子どもです。A:8か月のとき、1.5テスラでてんかん専用ではない撮り方のT2強調像で、左側頭葉の皮質の厚さは正常に見えました。B:9歳のとき、3テスラでてんかん専用の撮り方(FIRMS)で、同じ部位に皮質の肥厚が見られます。側頭葉切除の病理は、皮質形成異常(type Ia)でした。

てんかんのMRIで見直す点

見直す点 根拠
3D-T1強調像とFLAIRを含む撮像か 通常の1.5・3テスラの撮像でも、type IIの皮質形成異常の多くを見つける(感度50〜91%)(Snell 2026)
磁場強度は 7テスラでは追加の病変が見つかり、black-line signなどが手がかりになる(Snell 2026)
撮像のタイミングは 乳幼児では、髄鞘化が進んだあとの再撮像で見えることがある(Jeon 2017)
再撮像・専用の撮り方を試したか 再撮像で21%に病変が見つかった(Jeon 2017)

どう追加検査を考えるか

皮質形成異常の検出法を68研究でまとめた系統的レビューでは、1.5テスラ・3テスラの3D-T1強調像とFLAIRを含む通常の撮像で、type IIの病変の多くが見つかり、感度は50〜91%と報告されました。7テスラでは追加の病変が見つかり、定量的な撮像や画像の後処理は、MRI陰性の例で検出を高めました。著者らは、まず通常のMRI、疑いが続くなら高磁場や高度な定量・計算の方法へ進む段階的な診断の流れを勧めています(Snell 2026)。

3テスラでもMRI陰性の焦点てんかん26人で手術を行った検討では、側頭葉の例で、FDG-PETの低代謝が一側にそろっていることが、よい転帰と関連していました(Kogias 2017)。MRIが陰性のてんかんは、脳波・PET・脳磁図などと合わせて、多方面から評価されます。

脳炎:MRIが正常でも除外できない

自己免疫性脳炎の診断指針では、脳炎の患者の多くは早い時期にMRIを撮るが、所見は正常か非特異的のことがあるとされます。自己免疫性脳炎の患者は、発熱や意識障害がなくても、記憶や行動の異常で発症し、脳MRIや髄液が正常なことがあるため、診断は症状や検査を合わせた段階的な方法で行います(Graus 2016)。MRIの正常は、脳炎の除外にはなりません。

見えないときの考え方

状況 考えること
発症直後の脳梗塞が疑わしい DWIが陰性でも、症状が続けば再撮像や血管・灌流の画像を考える
脳幹・小脳・ラクナの症状 DWIの陰性率が高い部位。薄いスライス、別の断面、時間をおいた再撮像
てんかんで通常のMRIが正常 てんかん専用のプロトコルで、高磁場や専門医の読影で再評価。PETなども検討
乳幼児の焦点てんかん 髄鞘化が進んだあとに撮り直すと見えることがある
脳炎が疑わしい MRI正常でも、髄液・脳波・抗体の検査を合わせて判断する

読むときのチェックリスト

確認すること 理由
どの症状で何の質問か 臨床の問いがあると、見る場所が絞れる
発症からの時間 早すぎる時期は陰性になりうる
撮像条件(磁場、シーケンス、スライス厚、専用プロトコルか) 撮り方で病変の見え方が大きく変わる
症状に対応する部位を、薄いスライスで見たか 脳幹・小脳・皮質下の小さな病変を見落としやすい
皮質の厚さ、皮質と白質の境界、脳回の形に左右差はないか 皮質形成異常などは信号ではなく形で気づく
過去の画像と比べたか 見えにくい変化も、比べると気づきやすい
レポートの「明らかな異常なし」の意味 「今回の撮り方で見えるものはなかった」という意味で、病気の除外ではない

過去画像の比べ方は比較読影とは、頭部MRIの全体の見る順番は頭部MRIの読み方、MRIで脳梗塞に見える別の病気は脳梗塞に似た病気で解説しています。

よくある疑問(Q&A)

Q. MRIで異常なしなら、脳梗塞ではありませんか?
A. DWIが陰性の脳梗塞は、研究により11〜29%と報告されています(Alkhiri 2024、Makin 2015)。症状が突然始まった場合は、画像が正常でも、医療機関で診察を受けてください。

Q. 一度MRIが正常でも、撮り直す意味はありますか?
A. あります。MRI陰性の焦点てんかんの子どもでは、再撮像で21%に病変が見つかりました(Jeon 2017)。発症直後の脳梗塞でも、時間をおいた撮像で梗塞が見つかることがあります(Sylaja 2008)。

Q. MRI陰性のてんかんは、原因がない病気ですか?
A. そうとは限りません。通常の撮り方で見えない皮質形成異常などが原因のことがあり、専用のプロトコルや高磁場MRI、PETなどで見つかる場合があります(Snell 2026、Muhlhofer 2017)。専門の施設で相談してください。

あわせて読みたい:ASL(arterial spin labeling)とは、アミノ酸PET(メチオニンPET)とは、血液脳関門(BBB)と造影MRIの仕組み

参考文献

  1. Alkhiri A, Alturki F, Alansari NM, et al. Prognosis and distribution of ischemic stroke with negative diffusion-weighted imaging: a systematic review and meta-analysis. Front Neurol. 2024;15:1376439. PubMed
  2. Makin SD, Doubal FN, Dennis MS, et al. Clinically Confirmed Stroke With Negative Diffusion-Weighted Imaging Magnetic Resonance Imaging: Longitudinal Study of Clinical Outcomes, Stroke Recurrence, and Systematic Review. Stroke. 2015;46(11):3142-8. PubMed
  3. Sylaja PN, Coutts SB, Krol A, et al. When to expect negative diffusion-weighted images in stroke and transient ischemic attack. Stroke. 2008;39(6):1898-900. PubMed
  4. Jeon TY, Kim JH, Lee J, et al. Value of Repeat Brain MRI in Children with Focal Epilepsy and Negative Findings on Initial MRI. Korean J Radiol. 2017;18(4):729-738. PubMed
  5. Muhlhofer W, Tan YL, Mueller SG, et al. MRI-negative temporal lobe epilepsy-What do we know?. Epilepsia. 2017;58(5):727-742. PubMed
  6. Snell A, Du J, Vegh V, et al. MRI techniques for detecting focal cortical dysplasia: A systematic review. Seizure. 2026;135:56-72. PubMed
  7. Kogias E, Klingler JH, Urbach H, et al. 3 Tesla MRI-negative focal epilepsies: Presurgical evaluation, postoperative outcome and predictive factors. Clin Neurol Neurosurg. 2017;163:116-120. PubMed
  8. Graus F, Titulaer MJ, Balu R, et al. A clinical approach to diagnosis of autoimmune encephalitis. Lancet Neurol. 2016;15(4):391-404. PubMed

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