
先に結論:ASLは「造影剤なしの脳血流マップ」。ただし血流の遅さで見え方が変わるので、他の画像と合わせて読む
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 首の動脈の血液の水に磁気で目印を付け、脳に届いた量から脳血流量(CBF)を出す方法。造影剤は不要 |
| 標準的な撮り方 | pseudo-continuous標識・背景信号の抑制・3D撮像が推奨されている(2015年のコンセンサス) |
| 使う場面 | 脳梗塞・血管の狭窄、動静脈奇形、脳腫瘍、認知症、てんかん、小児 |
| 最大の落とし穴 | 血流が遅いと目印が組織に届く前に撮像され、血管内が白く写り、組織の血流が低く見える |
| 読み方の基本 | MRIの形態画像・血管画像と並べ、左右差と血管支配域を見る |
ASLとは:自分の血液を目印にする灌流画像
ASL(arterial spin labeling)は、首の動脈を流れる血液の水に、磁気の力で「目印(ラベル)」を付けるMRIの撮像法です。しばらく待って脳に目印付きの血液が届いたところを撮像し、目印を付けない画像との差から、脳の組織にどれだけ血液が届いたか(脳血流量:CBF)を求めます。造影剤を使わず、非侵襲的にCBFを定量できるのが特徴です(Grade 2015)。
画像は、目印あり・なしの引き算の画像と、それをCBFの数値に換算したマップとして表示されます。2015年のISMRM(国際磁気共鳴医学会)の灌流研究グループとヨーロッパの認知症ASLコンソーシアムのコンセンサスでは、標準的な撮り方として、pseudo-continuous標識、背景信号の抑制、血管内の信号を消す傾斜磁場を使わない分割3D撮像を推奨し、引き算の画像とCBFマップの両方を提示することを勧めています(Alsop 2015)。
用語を整理
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ラベル(標識) | 血液の水に磁気で付ける目印。内因性のトレーサーとして働く |
| CBF | 脳血流量。ASLマップの色や濃さが表す値 |
| PLD(post-labeling delay) | 目印を付けてから撮像するまでの待ち時間。短いと血液が組織に届き切らない |
| ATA(動脈通過時間アーチファクト) | 目印付きの血液がまだ血管内にあるうちに撮像され、血管が高信号に写る現象 |
どんなときに撮るのか
ISMRMの灌流研究グループは2023年に、ASLを日常診療で使うときの病態別の手引きを出しています。対象は、急性期脳梗塞と主幹動脈の狭窄・閉塞、動静脈奇形・動静脈瘻、脳腫瘍、神経変性疾患、けいれん・てんかん、小児の神経放射線です(Lindner 2023)。診断に欠かせない情報をASLだけが与える場面もあるとされています。
脳梗塞では、血管支配域ごとの血流低下や、側副血行路を通った血流の様子がわかります。慢性の血管狭窄では、血流が落ちている範囲と程度を視覚化でき、治療方針の検討に使えます(Grade 2015)。造影剤を使わずに撮れるので、ふだんのMRIに追加しやすい検査です(Grade 2015)。脳の血流のしくみ自体は脳のCT perfusion・MR perfusionの見方でも解説しています。
ほかの灌流画像との違い
脳の血流を見る検査には、MRIのDSC灌流、CT perfusion、ASLがあります。違いを表にまとめます。
| 方法 | 造影剤 | 特徴 |
|---|---|---|
| ASL(MRI) | 使わない | CBFを定量。血液脳関門の破綻に影響されにくい。血流が遅いとATAが出る |
| DSC灌流(MRI) | ガドリニウム造影剤を静脈から注入 | rCBVなどを得る。腫瘍の評価で広く使われる。造影剤の漏れの補正が必要な場合がある |
| CT perfusion | ヨード造影剤を静脈から注入 | 急性期脳梗塞でペナンブラ評価に使う。X線を使う |
ASLは「造影剤を使わない」「繰り返し撮れる」ことから、日常のMRIに足しやすい検査です。ただし、脳転移ではDSCのほうが診断精度が高かった報告があるように(Lavrova 2022)、疾患によっては他の灌流画像のほうが向く場合があります。どの方法を選ぶかは、疾患と、その施設で標準化されている撮り方によります。
落とし穴:血流が遅いと何が起きるか
ASLで最も大切な約束事は、「目印付きの血液が組織に届くまでに時間がかかる」ということです。血管が狭い、側副血行路を通っているなど、血流が遅いと、撮像の時点でまだ目印が血管内に残っています。すると血管の中が線状・点状に白く写り(ATA)、肝心の組織には目印が届いていないため、実際より血流が低く見えます。
3D pseudo-continuous ASLのアーチファクトを整理した総説では、画像を劣化させたり、病変に似て見えたりするものがある一方、病変を見つけやすくする役立つアーチファクトもあると述べられています(Amukotuwa 2016)。
血管内のATAは、それ自体が狭窄を示すサインになりえます。主幹動脈の狭窄を伴う45人の検討では、狭窄部の血管内にATAが見られることは、狭窄率56%以上を予測し、感度・特異度はともに100%でした。また、ATAがあった群では支配域の脳梗塞が86.4%、なかった群では26.1%でした(Peer 2023)。ただしこの検討は小規模な1施設の報告なので、数字は割り引いて受け取ってください。
読むときのチェックリスト
形態画像の見方は頭部MRIの読み方にまとめています。ASLはその上に重ねて確認します。
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 左右差か、血管支配域に一致するか | 血管性の血流低下は支配域に沿う。腫瘍や炎症は支配域と無関係に広がる |
| 血管内の高信号(ATA)はないか | 血流の遅い血管の印。近くの組織の血流は低めに見える |
| PLDなど撮像条件は何か | 条件により見え方が変わる。同じ施設の過去画像と比べる |
| 形態画像・MRAと合っているか | ASLだけで診断せず、梗塞・出血・腫瘍の有無を形態画像で確かめる |
| けいれんの直後ではないか | てんかん発作の前後は血流が増えることも減ることもある |
脳腫瘍でのASL
脳腫瘍では、ASLのCBFが高いところは血流が豊富な部分を示し、腫瘍の評価に使われます。ASLの利点は、血液脳関門が壊れて造影剤が漏れても測定値に影響されにくいことと、数値で定量できるため施設間や経時の比較がしやすいことです(Grade 2015)。
3テスラMRIで115人・178病変を、ASLと造影を使うDSC灌流(rCBV)で比べた検討では、病変と対側の正常白質のCBF比を比較して、腫瘍の進行を診断する精度(AUC)がASLでもDSCでも0.73〜0.78とほぼ同じでした。造影される神経膠腫ではAUC 0.78〜0.80、造影されない神経膠腫では0.56〜0.62で、後者は精度が下がります。脳転移ではASLのAUCは0.72、DSCは0.87〜0.93で、ASLのほうが低めでした。リンパ腫ではASLとDSCの相関が認められませんでした(Lavrova 2022)。著者らは、神経膠腫と脳転移ではASLがDSCの代わりになりうると結論しています。
症例 造影される脳腫瘍の灌流画像(ASLとDSC)

引用:Lavrova A, et al. Front Oncol. 2022;12:849657(Figure 1)、CC BY 4.0(図は加工していません)
症例は左後頭葉の造影される病変で、A:造影T1強調像、B:ASLのCBFマップ、C:DSCのrCBVマップ、D:漏れを補正したDSCのrCBVマップです。各画像で、病変と反対側の正常に見える白質に測定の枠を置いています。図の数値は病変側が反対側より高く、Bでは病変側の枠が反対側より明るく写っています。
治療後の腫瘍では、再発と治療による変化の見分けにも灌流画像が使われます。治療後の変化は脳腫瘍の治療後MRI:放射線壊死・pseudoresponseと再発の見分け方を参照してください。
認知症でのASL
アルツハイマー病や前頭側頭型認知症では、脳血流が低下するパターンがFDG-PETの代謝低下パターンと似ていることから、ASLはPETの代わりになりうる検査として提案されています。ふだん撮る形態画像のMRIに追加するだけで撮れる点が利点です(Grade 2015)。
アルツハイマー病の診断精度をまとめたメタ解析では、10研究・494人(アルツハイマー病262人、健常者232人)で、統合した感度0.83、特異度0.81でした。ただし含まれた研究の質は低いと評価されており、結果の確認にはさらなる研究が必要とされています(Zhang 2024)。認知症の血流低下のパターンは認知症の脳血流SPECT・FDG-PETパターン早見が参考になります。
てんかんでのASL
てんかんの焦点は、ASLで血流の変化として見えることがあります。てんかん焦点の局在診断のメタ解析(6研究・174人)では、統合した感度は0.74、特異度は0.35(信頼区間0.03〜0.90と幅が広い)でした。焦点は血流が増えて見えることも、減って見えることもあり、発作の時期とパターンに関係すると報告されています(Zeng 2021)。発作のどの時期に撮ったかで見え方が変わるため、撮像と発作の時間関係を確認して読みます。
報告書でよく見る言葉
| 言葉 | 読み方 |
|---|---|
| ASLで高灌流・低灌流 | 周囲や反対側と比べてCBFが高い・低いという意味。原因は別に考える |
| ATAを認める | 血流の遅い血管がある可能性。MRAなどで狭窄・閉塞を確認する |
| 左右差 | 血管支配域に一致するか、片側の血管病変の影響か、検査の条件によるものかを分けて考える |
| ASLでは有意な所見なし | ASLで目立つ血流の異常がなかったという意味。病気がないとは限らない |
よくある疑問(Q&A)
Q. ASLは造影剤を使うDSCより劣りますか?
A. 脳腫瘍の監視では、神経膠腫と脳転移でASLとDSCの診断精度はほぼ同等と報告されています(Lavrova 2022)。一方、造影されない神経膠腫や脳転移では精度が下がる傾向があり、状況によって使い分けます。
Q. 血管の中が白く写っているのは血栓ですか?
A. 血管内の高信号は、血流が遅いために目印付きの血液が血管の中に残るATAのことがあります(Amukotuwa 2016)。血栓かどうかはMRAなど他の画像で確認します。
Q. ASLの数値で病気が決まりますか?
A. 決まりません。撮像条件や血流の遅さで値が変わるため、形態画像・血管画像・症状と合わせて評価します(Lindner 2023)。気になる症状があれば医療機関に相談してください。
あわせて読みたい:アミノ酸PET(メチオニンPET)とは、血液脳関門(BBB)と造影MRIの仕組み、MRIの定量値(T1・T2マッピング)とは
参考文献
- Alsop DC, Detre JA, Golay X, et al. Recommended implementation of arterial spin-labeled perfusion MRI for clinical applications: A consensus of the ISMRM perfusion study group and the European consortium for ASL in dementia. Magn Reson Med. 2015;73(1):102-16. PubMed
- Lindner T, Bolar DS, Achten E, et al. Current state and guidance on arterial spin labeling perfusion MRI in clinical neuroimaging. Magn Reson Med. 2023;89(5):2024-2047. PubMed
- Amukotuwa SA, Yu C, Zaharchuk G. 3D Pseudocontinuous arterial spin labeling in routine clinical practice: A review of clinically significant artifacts. J Magn Reson Imaging. 2016;43(1):11-27. PubMed
- Peer S, Singh P. Intraluminal arterial transit artifact as a predictor of intracranial large artery stenosis on 3D time of flight MR angiography: Expanding the application of arterial spin labeling MRI in ischemic stroke. J Clin Imaging Sci. 2023;13:17. PubMed
- Lavrova A, Teunissen WHT, Warnert EAH, et al. Diagnostic Accuracy of Arterial Spin Labeling in Comparison With Dynamic Susceptibility Contrast-Enhanced Perfusion for Brain Tumor Surveillance at 3T MRI. Front Oncol. 2022;12:849657. PubMed
- Zhang XY, Zhang H, Bao QN, et al. Diagnostic value of arterial spin labeling for Alzheimer’s disease: A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2024;19(11):e0311016. PubMed
- Zeng JY, Hu XQ, Xu JF, et al. Diagnostic Accuracy of Arterial Spin-Labeling MR Imaging in Detecting the Epileptogenic Zone: Systematic Review and Meta-analysis. AJNR Am J Neuroradiol. 2021;42(6):1052-1060. PubMed
- Grade M, Hernandez Tamames JA, Pizzini FB, et al. A neuroradiologist’s guide to arterial spin labeling MRI in clinical practice. Neuroradiology. 2015;57(12):1181-202. PubMed
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