
先に結論:「低髄鞘化かどうか」→「病変の分布」→「追加の所見」の3段階で絞る
| 段階 | 見るもの | 例 |
|---|---|---|
| 1. 低髄鞘化か | T1強調像で白質が皮質と同じか少し低い信号・T2高信号が弱い(Schiffmann 2009) | 低髄鞘化の病気 / それ以外 |
| 2. 分布 | 前頭部優位・後頭部優位・皮質下優位・びまん性・深部灰白質の合併 | Alexander病、X-ALD、Canavan病など |
| 3. 追加の所見 | 白質の希薄化・嚢胞・造影効果・石灰化(Schiffmann 2009)、MRS | MRSのNAA上昇(Canavan病)など |
| 4. 画像だけで決めない | 臨床所見と遺伝子検査を組み合わせる(Parikh 2015) | 次世代シークエンサー |
白質疾患をパターンで読む理由
小児の白質疾患は、遺伝性のものだけでも非常に種類が多く、診断の確定が遅れがちです。白質ジストロフィーと遺伝性白質脳症の患者は、確定診断までに約10年かかることがあり、少なくとも半数は診断がつかないままだと整理されています(Parikh 2015)。そのなかで、MRIで侵された脳の構造のパターンは、診断の特異性が高いことが示されてきました(Schiffmann 2009)。パターン認識が診断の中心にあること、そして遺伝子検査と組み合わせて診断することは、現在のレビューでも共通しています(van der Knaap 2019、Parikh 2015)。
非専門の放射線科医にとっては、疾患名を暗記するより、正常な髄鞘化の進み方を知ったうえで、異常な信号の分布を分類する方が実際的です(Davies 2023)。髄鞘化の月齢ごとの変化は髄鞘化のMRI画像診断にまとめています。
手順1:低髄鞘化かどうかを決める
最初の分かれ道は、T1強調像での白質の信号です。低髄鞘化パターンでは、大脳白質が皮質に比べて高信号(正常)・等信号・やや低信号に見えます。それ以外の病変では、白質が皮質よりはっきり低信号になります。どちらの場合もT2強調像では病変の白質が高信号ですが、低髄鞘化では高信号の程度が弱いのが原則です(Schiffmann 2009)。
| 項目 | 低髄鞘化パターン | それ以外(髄鞘の破壊・形成異常・浮腫など) |
|---|---|---|
| T1強調像の白質 | 皮質と同じか、やや低い(髄鞘が足りず本来の高信号が出ない) | 皮質よりはっきり低信号 |
| T2強調像の高信号 | 弱い | 強い |
| 追加で見る点 | 末梢神経の障害を伴うかどうか | 病変が融合しているか、多巣性か |
低髄鞘化の病気は、原因不明の遺伝性白質脳症で最大の群で、MRIで「T2低信号の出現が遅れる・ない」ことで認識されます(Barkovich 2016)。低髄鞘化の重症例は乳児期から幼児期に発症し重い神経症状を示しますが、軽症で思春期以降に発症する例もあります。MRIのパターン認識で診断がつくことが多く、次世代シークエンサーによる確定診断率は80〜90%と報告されています(Wolf 2021)。
実際の落とし穴は「月齢相応の髄鞘化か」の判断です。乳児の白質は、そもそも成人と信号が違います。低髄鞘化と髄鞘化遅延の鑑別は低髄鞘化・髄鞘化遅延の鑑別診断、生理的な髄鞘化の残りはterminal zone of myelination(髄鞘化の遅れる領域)で詳しく扱っています。
手順2:低髄鞘化以外は「分布」で分ける
低髄鞘化以外の病変は、融合する病変と孤立・多巣性の病変に分けます。融合する病変では、異常の分布が診断上とくに重要です(Schiffmann 2009)。代表的な分布と疾患を表にします。
| 分布 | 代表的な疾患 | 見どころ |
|---|---|---|
| 前頭部優位 | Alexander病 | 前頭葉の広範な白質変化。脳室周囲の縁(T1高信号・T2低信号)、基底核・視床、脳幹の異常、特定部位の造影効果(van der Knaap 2001) |
| 後頭部・頭頂部優位(後方から前方へ) | X連鎖性副腎白質ジストロフィー(X-ALD) | 脳梁膨大部と後頭部の傍三角部白質。皮質下U線維は保たれる(Lai 2022) |
| びまん性・皮質下優位 | Canavan病 | 皮質下のU線維を含むびまん性の白質高信号、淡蒼球・視床。線条体は保たれる(Lai 2022) |
| 皮質下U線維を保つ | 異染性白質ジストロフィー(MLD) | 広範な白質病変だがU線維が保たれる(Lai 2022) |
前頭部優位か後頭部優位かは、アキシャル像の最初の1枚で白質の広がりの「前後の傾き」を見ることで拾えます。異常が前方で強ければAlexander病を、後方で強ければX-ALDを先に思い浮かべます。Alexander病では5つのMRI基準(前頭部優位の広範な白質病変、脳室周囲の縁、基底核・視床の異常、脳幹の異常、特定の造影効果)のうち4つを満たすことをMRI診断の基準とし、原因不明の白質脳症の217人から19人がこの基準を満たしました(van der Knaap 2001)。
症例 6歳男児 X連鎖性副腎白質ジストロフィー(論文の図)

引用:Lai LM, Gropman AL, Whitehead MT. Diagnostics (Basel). 2022;12(4):861 (Figure 12). PubMed(CC BY 4.0、加工なし)
論文の図です。aのT2強調像、bの拡散強調像で、脳梁膨大部と後頭部の傍三角部の白質に、融合する高信号と拡散低下(矢印)があります。皮質下のU線維は保たれ、後方から前方、中心から外側へ広がるパターンです。cの磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)では、NAAの低下と、Cho・ミオイノシトール・乳酸の上昇がみられます。ALDの詳しい読み方は副腎白質ジストロフィー(ALD)を参照してください。
症例 生後4か月 Canavan病(論文の図)

引用:Lai LM, Gropman AL, Whitehead MT. Diagnostics (Basel). 2022;12(4):861 (Figure 14). PubMed(CC BY 4.0、加工なし)
論文の図です。aのT2強調像で、皮質下のU線維を含む白質のびまん性高信号、淡蒼球と視床の異常があり、線条体は保たれています。bのMRSでは、酵素による分解が行われないためNAAが高く(正常より210〜240%高い)、ミオイノシトールも上昇し、コリンとクレアチンは低下しています。MLDとの比較は異染性白質ジストロフィー(MLD)を参照してください。
手順3:追加の所見で絞り込む
| 追加の所見 | 意味・使い方 |
|---|---|
| 白質の希薄化・嚢胞 | 融合病変の中に液体に近い信号の領域があるかを見る(Schiffmann 2009) |
| 造影効果 | どの部位が造影されるかが診断の手がかりになる。Alexander病の基準にも含まれる(van der Knaap 2001) |
| 石灰化 | CTやSWIで確認すると鑑別が絞れる(Schiffmann 2009) |
| MRS | NAA、コリン、ミオイノシトール、乳酸などのパターン。Canavan病でNAA上昇(Lai 2022) |
| 拡散強調像 | 急性期の代謝疾患では髄鞘内浮腫による拡散低下が手がかり(Lai 2022) |
代謝疾患の画像診断で白質疾患と並んで押さえておきたいのが、白質より深部灰白質が中心になるタイプです。小児の先天代謝異常のMRIレビュー(Lai 2022)では、次のような型が示されています。
| 型 | 画像の特徴(Lai 2022の症例の説明) |
|---|---|
| 高アンモニア血症(尿素サイクル異常) | 島周囲・島・基底核を中心とする障害(拡散強調像で拡散低下) |
| Leigh症候群の型 | レンズ核などに壊死性の病変。MRSで乳酸ピーク |
| メープルシロップ尿症(新生児) | 髄鞘化している白質路にびまん性の拡散低下 |
| リソソーム病(Sandhoff病など) | 視床の低信号、白質の変化 |
基底核や脳幹が左右対称に侵されるミトコンドリア病の解説はLeigh脳症にまとめています。白質に病変が目立たなくても、深部灰白質だけが主役の代謝疾患があることを意識しておくと、「白質が正常だから異常なし」という読み落としを避けられます。
見間違えやすいもの
- 月齢相応の髄鞘化の途中:未熟な白質は低髄鞘化にも見える。月齢の基準像と比べる。
- 低髄鞘化と髄鞘化遅延:1回のMRIでは決められないことがある。経過を追った再検が手がかりになる。
- 白質ジストロフィーではない白質病変:周産期の低酸素や感染などの後天性の原因は、別に考える(Davies 2023)。
- 年齢で変わる所見:同じ疾患でも発症年齢で画像のパターンが変わる。
- 画像だけで確定:パターンは診断の中心だが、遺伝子検査で確かめるのが現在の流れ(Parikh 2015、van der Knaap 2019)。
チェックリスト
- 月齢相応の髄鞘化の信号か(T1で白質が皮質より高いか、T2の低信号が出ているか)
- 低髄鞘化か、それ以外か(T1とT2の組み合わせ)
- 病変は融合しているか、多巣性か
- 前方優位か、後方優位か、皮質下U線維は保たれるか
- 脳梁、小脳、脳幹、基底核・視床、脊髄は侵されているか
- 造影効果、石灰化、嚢胞、拡散低下、MRSの所見はあるか
- 臨床情報(発症年齢、発達の退行、副腎不全、皮膚・歯・眼の所見など)を確認したか
よくある疑問(Q&A)
Q1. 白質ジストロフィーは何種類くらいありますか?
遺伝子検査の進歩で、原因遺伝子の分かる白質疾患は大きく増えました(van der Knaap 2019)。一つひとつ覚えるより、低髄鞘化かどうか、分布の型、追加の所見という手順で絞るのが実際的です。
Q2. MRIだけで診断できますか?
MRIのパターンは診断の中心ですが、MRIだけで確定するとは限りません。低髄鞘化の疾患でも、確定診断は次世代シークエンサーが80〜90%でつけるとされ、MRIと臨床所見、遺伝子検査を組み合わせます(Wolf 2021、Parikh 2015)。
Q3. 低髄鞘化と髄鞘化遅延はどう違いますか?
低髄鞘化は、髄鞘がそもそも作られない状態で、T2低信号の出現が遅れる・ほとんど出ないことで認識されます(Barkovich 2016)。髄鞘化遅延は、時間とともに追いつく場合があり、見分けるには経過を追う必要があります。詳しくは低髄鞘化・髄鞘化遅延の鑑別診断を参照してください。
Q4. 子どもの発達や歩き方が気になるときは?
発達の遅れ、退行、けいれん、歩き方の変化などが続くときは、小児神経科など専門の医療機関に相談してください。画像だけでなく、診察と検査を組み合わせて診断します。
あわせて読みたい:Fabry病(ファブリー病)の脳MRI、造血幹細胞移植後の中枢神経合併症
参考文献
- Schiffmann R, van der Knaap MS. Invited article: an MRI-based approach to the diagnosis of white matter disorders. Neurology. 2009;72(8):750-9. PubMed
- van der Knaap MS, Schiffmann R, Mochel F, et al. Diagnosis, prognosis, and treatment of leukodystrophies. Lancet Neurol. 2019;18(10):962-972. PubMed
- Barkovich AJ, Deon S. Hypomyelinating disorders: An MRI approach. Neurobiol Dis. 2016;87:50-8. PubMed
- Davies A, Tolliday A, Craven I, et al. An approach to reporting paediatric leukoencephalopathy and leukodystrophies. Clin Radiol. 2023;78(6):401-411. PubMed
- Parikh S, Bernard G, Leventer RJ, et al. A clinical approach to the diagnosis of patients with leukodystrophies and genetic leukoencephelopathies. Mol Genet Metab. 2015;114(4):501-515. PubMed
- Wolf NI, Ffrench-Constant C, van der Knaap MS. Hypomyelinating leukodystrophies – unravelling myelin biology. Nat Rev Neurol. 2021;17(2):88-103. PubMed
- Lai LM, Gropman AL, Whitehead MT. MR Neuroimaging in Pediatric Inborn Errors of Metabolism. Diagnostics (Basel). 2022;12(4). PubMed
- van der Knaap MS, Naidu S, Breiter SN, et al. Alexander disease: diagnosis with MR imaging. AJNR Am J Neuroradiol. 2001;22(3):541-52. PubMed
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