先に結論:髄鞘化の遅れ・低髄鞘化(hypomyelination)

  • 乳幼児の脳は成長とともに神経線維が髄鞘で覆われ(髄鞘化)、MRIのT1・T2強調像での白質の信号が大人に近づいていきます。年齢に比べてこれが遅れる・進まないのが低髄鞘化です
  • 代表はPelizaeus-Merzbacher病で、ほかに先天代謝異常・染色体異常(18q-症候群)・Cockayne症候群などが原因になります。判定には年齢ごとの正常な髄鞘化の進み方と比べること、間をあけた再検査が大切です
  • Cockayne症候群のように低髄鞘化に石灰化(被殻など)と小脳などの萎縮が加わるときは、石灰化の有無と萎縮の部位が鑑別の手がかりになります。18q-症候群は白質の高信号が低髄鞘化と考えられてきましたが、それだけでは説明できない所見の報告もあります

髄鞘化とは?MRIでの正常な進み方

撮像法 髄鞘化による変化 評価に向く時期
T1強調像 白質が高信号になる 生後6〜8か月ごろまで
T2強調像 白質が低信号になる 生後6か月以降

変化は脳幹→小脳→大脳の順に進み、T1の変化がT2より先に現れます(Barkovich 1988、Welker 2012)。

低髄鞘化と髄鞘化遅延の違い

  • 髄鞘化遅延:遅れてはいるが、経過とともに進むもの
  • 低髄鞘化:経過を追っても進まないもの。T2強調像の高信号がほかの白質疾患より軽いのが特徴です(Schiffmann 2009)

hypomyelinationの鑑別

  • Pelizaeus-Merzbacher病:PMD(119例中79% Ji 2018)
  • PM-like D
  • Salla病
  • H-ABC
  • Fucosidosis
  • セリン合成不全症
  • Oculodentodigital dysplasia:ODDD
  • 18q-症候群
  • GM1、GM2
  • Hypomyelination and congenital cataract:HCC
  • 4H症候群
  • Cockayne症候群
  • trichothiodystrophy with hypersensitivity to sunlight:Tay症候群

低髄鞘化の確定には、間隔をあけたMRIの再検査で髄鞘化が進まないことを確かめ、分子遺伝学的検査で原因を特定するのが基本です。近年はMRIのパターン認識と次世代シーケンスを組み合わせた診断により、定義される白質ジストロフィーの数が大きく増えています(van der Knaap 2017)。病気の見分けには早期の小脳萎縮や基底核・橋の信号異常が手がかりになります(Steenweg 2010)。

Cockayne症候群・18q-症候群:低髄鞘化に何が加わるか

髄鞘化の遅れを起こす遺伝性疾患のうち、Cockayne症候群と18q-症候群は、石灰化の有無と小脳などの萎縮に注目すると整理しやすくなります。

疾患 画像の特徴 見るポイント
Cockayne症候群 低髄鞘化・石灰化・脳萎縮が主な所見。石灰化は被殻に多く、大脳皮質や歯状核にもみられる。テント上白質、小脳、脳梁、脳幹に強い進行性の萎縮(Koob 2010) 低髄鞘化に被殻などの石灰化と小脳萎縮が加わっていないか。石灰化はCTのほうが見つけやすい
18q-症候群 白質のT2高信号。T1では白質がやや高信号だが正常より低い(Tada 2014)。119例の低髄鞘化疾患の集計では、18q欠失症候群は1例(1%)であった(Ji 2018) 低髄鞘化のパターンが基本だが、MRSでは反応性グリオーシスを示唆する所見が報告されている(1例;Tada 2014)
  • Cockayne症候群の発症時期による違い:早期発症の患者では、低髄鞘化がより高度で、大脳皮質の脳溝の深部に目立つ石灰化がみられた。後期発症の患者では萎縮が軽かった(Koob 2010)。
  • 18q-症候群の注意点:リング18染色体症候群の14歳男児では、びまん性の低髄鞘化に加えて、深部白質にまだらで非対称なT2・FLAIR高信号があり、脱髄またはグリオーシスの可能性が指摘されました(Anzai 2016)。T2高信号がすべて低髄鞘化とは限りません。

Cockayne症候群の診断は、画像だけでなく臨床像(神経症状、光線過敏症、低身長ややせなど)をあわせて考えます(Koob 2010)。MRIはこれらを区別する助けになりますが、遺伝学的検査で確定します。

症例 生後6か月の男児(Pelizaeus-Merzbacher病)

Pelizaeus-Merzbacher病 MRI T1強調像矢状断 T2強調像横断
引用:Lu Y et al. Hum Genome Var 2017 (Figure 1)

出生直後から眼振や哺乳障害があり、のちにPLP1遺伝子の変異が見つかった先天型Pelizaeus-Merzbacher病の男児の、生後6か月の頭部MRIです。(a)T1強調像の矢状断では脳梁や小脳に異常はありません。(b)T2強調像の横断では白質が高信号で、低髄鞘化のパターンを示しています。(出典:Lu Y et al. Hum Genome Var 2017, Figure 1, CC BY-NC-SA 4.0)

低髄鞘化・髄鞘化遅延でよくある疑問(Q&A)

Q. 髄鞘化の評価はT1とT2のどちらで行いますか。
A. 生後6〜8か月ごろまではT1強調像、6か月以降はT2強調像が評価に向きます(Barkovich 1988)。Welkerらは、T1とT2を組み合わせて評価することを小児頭部MRIの読影で日常的に行うよう勧めています(Welker 2012)。

発達の遅れ、眼球の動き、けいれんなどが気になるときは、小児科や小児神経科に相談してください。

あわせて読みたい:異染性白質ジストロフィー(MLD)とは?症状とMRI画像所見(tigroid pattern・脳梁病変)、ALDとの違い

参考文献

  1. Steenweg ME, Vanderver A, Blaser S, et al. Magnetic resonance imaging pattern recognition in hypomyelinating disorders. Brain. 2010;133(10):2971-82. PubMed
  2. Pouwels PJ, Vanderver A, Bernard G, et al. Hypomyelinating leukodystrophies: translational research progress and prospects. Ann Neurol. 2014;76(1):5-19. PubMed
  3. van der Knaap MS, Bugiani M. Leukodystrophies: a proposed classification system based on pathological changes and pathogenetic mechanisms. Acta Neuropathol. 2017;134(3):351-382. PubMed
  4. Barkovich AJ, Kjos BO, Jackson DE Jr, et al. Normal maturation of the neonatal and infant brain: MR imaging at 1.5 T. Radiology. 1988;166(1 Pt 1):173-80. PubMed
  5. Welker KM, Patton A. Assessment of normal myelination with magnetic resonance imaging. Semin Neurol. 2012;32(1):15-28. PubMed
  6. Schiffmann R, van der Knaap MS. Invited article: an MRI-based approach to the diagnosis of white matter disorders. Neurology. 2009;72(8):750-9. PubMed
  7. Ji H, Li D, Wu Y, et al. Hypomyelinating disorders in China: The clinical and genetic heterogeneity in 119 patients. PLoS One. 2018;13(2):e0188869. PubMed
  8. Koob M, Laugel V, Durand M, et al. Neuroimaging in Cockayne syndrome. AJNR Am J Neuroradiol. 2010;31(9):1623-30. PubMed
  9. Tada H, Takanashi J. MR spectroscopy in 18q(-) syndrome suggesting other than hypomyelination. Brain Dev. 2014;36(1):57-60. PubMed
  10. Anzai M, Arai-Ichinoi N, Takezawa Y, et al. Patchy white matter hyperintensity in ring chromosome 18 syndrome. Pediatr Int. 2016;58(9):919-22. PubMed

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