Leigh脳症(リー脳症)とは 症状・原因とMRI所見

子どもが「Leigh(リー)脳症の疑い」と言われました。どんな病気で、MRIで何がわかるのですか?
ミトコンドリアという細胞の「発電所」がうまく働かないことで起こる病気のひとつです。MRIでは脳の深いところ(基底核や脳幹)に左右対称の変化が出るのが手がかりになります。一緒に整理していきましょう。

先に結論:Leigh脳症(リー脳症)は、乳幼児に多いミトコンドリア病の代表的な病型。MRIでは基底核・脳幹の左右対称な病変が目印

項目 要点
どんな病気か エネルギーを作るしくみ(ミトコンドリアの酸化的リン酸化など)の異常で起こる進行性の神経の病気。別名「亜急性壊死性脳脊髄症」
原因 遺伝子の異常。原因遺伝子はミトコンドリアDNAと核DNAの両方にあり、100近くが知られている
発症年齢 多くは2歳まで(中央値7か月)。ただし年長児・成人で発症する例もある
MRI所見 基底核(被殻・尾状核など)、脳幹、視床、小脳歯状核などに左右対称のT2強調像高信号。MRスペクトロスコピー(MRS)で乳酸の上昇
次にすること 小児神経科などの専門医療機関で、血液・髄液の乳酸、筋肉や皮膚の細胞を使った検査、遺伝子検査を組み合わせて診断

Leigh脳症(リー脳症)とは

Leigh脳症(Leigh syndrome)は、1951年にDenis Archibald Leighが病理所見として報告した病気で、現在は臨床・検査・画像所見を合わせて診断する病気として扱われています(Baertling 2014)。

小児でみられるミトコンドリア病の中でもっとも多い病型とされています(Lake 2016)。

病理では、基底核・視床から脳幹、脊髄後索にかけて左右対称の病変ができ、顕微鏡では毛細血管の増生、グリオーシス、神経細胞の高度な脱落と、比較的保たれる星状膠細胞が特徴です(Rahman 2023)。日本語で「亜急性壊死性脳脊髄症(subacute necrotizing encephalomyelopathy)」と呼ばれるのはこのためです。

原因:ミトコンドリアのエネルギー産生の異常

ミトコンドリアは、細胞の中で酸素を使ってエネルギー(ATP)を作る「発電所」のような小器官です。脳はエネルギーをたくさん使う臓器なので、このしくみが傷むと障害を受けやすくなります(Distelmaier 2023)。

Leigh脳症の原因は1つではありません。

  • 酸化的リン酸化(呼吸鎖)の酵素の構成成分や組み立てに関わる遺伝子の異常
  • ピルビン酸脱水素酵素複合体の異常
  • コエンザイムQ10の代謝の異常
  • ミトコンドリアDNAの維持や遺伝子発現の異常 など

これまでに16のミトコンドリアDNA遺伝子と100近い核遺伝子が報告されており(Rahman 2023)、「1つの病名に75を超える原因遺伝子がある病気」とも表現されます(Lake 2016)。遺伝形式も原因遺伝子によって異なります。

症状:乳児期の発達の後退・運動の異常・目の症状

ヨーロッパ8施設130人の検討では、次のような特徴が報告されています(Sofou 2014)。

項目 報告された内容
発症年齢 中央値7か月。80.8%が2歳までに発症
多い症状 運動面の異常所見がもっとも多く、次いで眼の異常所見
てんかん発作 40%
急性増悪 約44%が前年に入院を要する悪化を経験。主なきっかけは感染症
予後に関わる因子 6か月未満の発症、体重増加不良、画像での脳幹病変、集中治療を要したこと

認知・運動の機能が急に後退していく経過が特徴とされます(Baertling 2014)。一方で、年長になってから、あるいは成人になってから発症する例もあります(Rahman 2023)。

気になる症状があれば医療機関を受診してください。

MRI所見:基底核・脳幹の左右対称な病変

典型的な分布

MRIでは基底核または脳幹の左右対称の病変が特徴です(Baertling 2014)。遺伝子で確定した小児17人の検討では、病変の頻度は次のとおりでした(Bonfante 2016)。

部位 頻度
基底核 13人(76%)
脳幹(中脳・延髄に多い) 9人(53%)
視床 4人(24%)
小脳歯状核 2人(12%)
びまん性萎縮 2人(12%)

この17人では大脳白質病変はみられませんでした。基底核の場所は大脳基底核の解剖の記事も参考にしてください。

経過で変わる

同じ検討では、経過観察で13人中7人に病変の数が増え、6人で初めの病変が変化し、3人では病変が消えていました(Bonfante 2016)。初回MRIで病変が見えなくてもLeigh脳症を否定できない点が大事です。

MRスペクトロスコピー(MRS)

MRSでは病変部の乳酸の上昇、NAA/Cr比の低下、比較的高いCho/Cr比が報告されています(Jurkiewicz 2011)。乳酸はミトコンドリアの働きが落ちたことを示す手がかりとして注目されます(Distelmaier 2023)。

症例 10歳代女性 Leigh脳症

Leigh脳症 MRI FLAIR像 横断像
引用:Radiopaedia(Leigh syndrome)

両側の被殻(基底核)に左右対称の高信号が見えます。脳梁膨大部にも淡い高信号があり、この症例ではMRスペクトロスコピーで乳酸のピークがみられ、筋生検で診断が確かめられています。

MELASなど他の病気との見分け方

同じミトコンドリア病でも、MELAS(ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作)は局所的な病変(脳卒中様病変)が中心で、Leigh脳症の左右対称な深部灰白質病変とは分布が異なります(Distelmaier 2023)。MELASのMRIはMELAS(ミトコンドリア脳筋症)のMRIで解説しています。

ただし、左右対称の基底核病変やMRSの乳酸ピークはLeigh脳症に特有ではなく、似た画像を示す病気は多くあります(Distelmaier 2023)。拡散強調像で高信号を示す深部灰白質病変の見分け方はDWI高信号の鑑別診断、T1強調像で淡蒼球が高信号になる病気は淡蒼球・基底核のT1高信号の鑑別にまとめています。

診断と次にすること

診断は、臨床経過、MRI、血液や髄液の乳酸などの検査に加え、新鮮な筋組織や培養した皮膚線維芽細胞を用いた生化学的検査、遺伝子検査を組み合わせて行われます(Baertling 2014)。髄液の乳酸が高いことは、より重い経過と関連していました(Sofou 2014)。

根本的に治す方法は確立していませんが、原因によっては治療可能なタイプが知られており、支持療法や新しい治療の研究も進んでいます(Rahman 2023)。感染をきっかけに悪化しやすいため、体調の変化があれば早めに相談することが大切です。

よくある疑問(Q&A)

Q1. MRIで異常がなければLeigh脳症ではない?

いいえ。病変は時間とともに出現・変化するため、初回MRIで所見がなくても否定はできません(Bonfante 2016)。症状が続く場合は経過でMRIを見直すことがあります。

Q2. 大人でもLeigh脳症になりますか?

多くは乳幼児期の発症ですが、成人発症の例も報告されています(Rahman 2023)。

Q3. MELASとはどう違うのですか?

どちらもミトコンドリア病ですが、Leigh脳症は基底核・脳幹の左右対称病変、MELASは脳卒中に似た局所病変が中心という違いがあります(Distelmaier 2023)。

診断や治療の方針は、お子さんの状態によって大きく変わります。検査結果の意味や今後のことは主治医に相談してください。

参考文献

  1. Baertling F, Rodenburg RJ, Schaper J, et al. A guide to diagnosis and treatment of Leigh syndrome. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2014;85(3):257-65. PubMed
  2. Lake NJ, Compton AG, Rahman S, et al. Leigh syndrome: One disorder, more than 75 monogenic causes. Ann Neurol. 2016;79(2):190-203. PubMed
  3. Rahman S. Leigh syndrome. Handb Clin Neurol. 2023;194:43-63. PubMed
  4. Sofou K, De Coo IF, Isohanni P, et al. A multicenter study on Leigh syndrome: disease course and predictors of survival. Orphanet J Rare Dis. 2014;9:52. PubMed
  5. Bonfante E, Koenig MK, Adejumo RB, et al. The neuroimaging of Leigh syndrome: case series and review of the literature. Pediatr Radiol. 2016;46(4):443-51. PubMed
  6. Jurkiewicz E, Chełstowska S, Pakuła-Kościesza I, et al. Proton MR Spectroscopy in Patients with Leigh Syndrome. Neuroradiol J. 2011;24(3):424-8. PubMed
  7. Distelmaier F, Klopstock T. Neuroimaging in mitochondrial disease. Handb Clin Neurol. 2023;194:173-185. PubMed

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