先に結論:脳腫瘍の治療と治療後のMRI

  • 膠芽腫などの悪性神経膠腫の標準治療は手術+テモゾロミド併用放射線治療で、治療後のMRIでは再発と治療による変化を区別することが大切です
  • 治療後3か月以内の造影域の増大(pseudoprogression)や放射線壊死は再発と似るため、拡散強調像(ADC)・灌流画像(rCBV)・経過を組み合わせて判断します
  • ベバシズマブ投与後は造影効果が急に減るpseudoresponseがあるため、FLAIRの広がりも評価します。治療方針は脳腫瘍の診療ガイドラインで確認してください
  • 頭部の放射線治療後には、照射部の局所的な浮腫・壊死と、脳室周囲白質のびまん性のT2高信号という2つの形の晩期変化がみられることがあります(Valk 1991)

脳腫瘍の治療法

  • 脳腫瘍の治療の原則は、手術、放射線治療、化学療法の3つを用いた集学的治療。
  • 膠芽腫を含む悪性神経膠腫の標準治療=手術+術後のテモゾロミド併用放射線治療。ただし、テモゾロミドはリンパ球減少→ニューモシスチス肺炎のリスクがあり、ST合剤の予防内服が推奨されている。
  • 放射線感受性が高い脳腫瘍→髄芽腫と胚細胞腫瘍(特にジャーミノーマ(germinoma))
  • 下垂体神経内分泌腫瘍(PitNET:pituitary neuroendocrine tumor)(機能性下垂体腺腫)→経鼻的経蝶形骨洞手術(TSS:trans-sphenoidal surgery)が第一選択。プロラクチン産生腫瘍では薬物治療(カベルゴリン(ドパミン作動薬))を行う。
  • 転移性脳腫瘍は個数に応じて、放射線治療または手術が行われる。転移巣が4個以下の脳転移に対しては,全脳照射ではなく定位放射線治療が標準治療となりつつある。

脳腫瘍の治療後の画像診断のポイント

  • 術後の腫瘍摘出範囲の評価は術後72時間(神経膠腫では48時間)以内の撮像が推奨されている。

膠芽腫(glioblastoma)

  • MGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化を認める症例では、テモゾロミドの有効性が高く、予後良好因子とされる。
  • 悪性神経膠腫の再発評価で注意すべき病態は、放射線壊死(radiation necrosis)、テモゾロミド併用放射線治療後のpseudoprogression、分子標的治療薬ベバシズマブ投与後の pseudoresponseの3つがある。
  • 放射線壊死(radiation necrosis)は治療後1~2年以内に発生する。MRIでは辺縁優位に造影効果を示し、内部は壊死を認め、周囲には浮腫性変化を認める。腫瘍再発の方が放射線壊死よりもADC低値を示す。灌流画像では、rCBV高値(> 2.6)であれば腫瘍再発,低値(< 0.6)であれば放射線壊死を示唆する。
  • テモゾロミド併用放射線治療後のpseudoprogressionは放射線化学療法終了後から2~3か月以内に生じる造影領域の増大や脳浮腫の増悪。無症状のことが多いが、神経症状の悪化を伴うこともある。画像は再発や放射線壊死に類似するが経時的に縮小することが多い。テモゾロミド併用放射線治療を受けた患者の最大20%に起こり、治療終了後に増大する病変の約半数を説明するとされ、追加治療なしで縮小または安定し、無症状のことが多いと報告されている(Brandsma 2008)。2023年のRANO 2.0では、手術直後ではなく放射線治療後のMRIを効果判定の基準画像とし、偽増悪の多い放射線治療後12週以内の増悪は再検MRIまたは組織学的証拠で確認することが求められている。また、IDH野生型膠芽腫では抗血管新生薬の評価時を除き、非造影病変は評価対象としない(PMID: 37774317)。
  • 分子標的治療薬ベバシズマブ投与後のpseudoresponseは、投与後に造影病変の著明な縮小や周囲のT2WI高信号縮小。短期間で改善している場合はこれを考慮するが、RANO基準では、画像改善が4週間持続しないとtrue responseとはしない。
症例 60歳代(膠芽腫・ベバシズマブ投与後のpseudoresponse)

膠芽腫 ベバシズマブ投与前 造影T1強調像
引用:Radiopaedia(Glioblastoma with pseudoresponse (bevacizumab))

ベバシズマブ投与前の造影T1強調像です。左前頭葉後部〜頭頂葉の白質にリング状に造影される腫瘍があり、前回より造影域が明らかに増大していました。周囲には広い血管性浮腫があり、灌流画像でrCBVが著明に上昇していて、高悪性度腫瘍の進行と判断されました。

膠芽腫 ベバシズマブ投与後 造影T1強調像
引用:Radiopaedia(Glioblastoma with pseudoresponse (bevacizumab))

投与8週後の同じ高さの造影T1強調像です。造影される部分は小さく淡くなり、浮腫も大きく改善しています。一方でADC低値の縁とCBVの上昇は残っており、生きた腫瘍はわずかしか減っていません。血液脳関門の透過性が下がったことによるpseudoresponseが主体と判断された症例です。

転移性脳腫瘍(metastatic brain tumor)

  • 造影MRIで造影効果を認めるのが通常であるが、肺癌の脳転移に対してベバシズマブ使用例に造影効果を認めなかったと言う報告があり要注意。
  • 放射線壊死(radiation necrosis)は通常の全脳照射では稀。定位放射線治療後では最大線量が照射される腫瘍近傍や脳室周囲の白質に多い。腫瘍と離れた部位にも発生することがある。

関連:転移性脳腫瘍(脳転移)のMRI画像診断のポイントは?

髄膜腫(meningioma)

  • 症状がない場合はMRIによる経過観察が行われるが蝶形骨縁内側型に限っては視力障害発症後の回復が困難であるため,予防的な摘出術が勧められている。

関連:髄膜腫とは?CT,MRI画像診断のポイントは?

下垂体腺腫(pituitary adenoma)

  • 再発は非機能性腺腫のサイズが大きかったものについての検討が多く腫瘍を肉眼的に全摘出した症例であっても術後5~10年以内に10~20%が再発する。

関連:下垂体腺腫とは?症状は?MRI画像診断のポイントは?

頭部放射線治療の副作用(晩期障害)のMRI所見

  • 脳への放射線治療の晩期障害は、局所型(focal)とびまん型(diffuse)の2つの形をとり、MRIでしか分からない無症状の変化から明らかな脳壊死まで幅があります(Valk 1991)。
  • 局所型では、照射部位に無症状の浮腫がよくみられ、放射線壊死になると腫瘤のように見え、神経症状や頭蓋内圧の上昇を伴うことがあります(Valk 1991)。
  • びまん型は、脳室周囲の白質がCTで低吸収、T2強調像で高信号になるもので、多くは無症状ですが、症状が出る場合は記憶力・注意力など認知機能の低下が目立ちます(Valk 1991)。
  • 化学療法(放射線治療併用の有無を問わない)のあとに起こる壊死性白質脳症も、画像所見と症状は似ています(Valk 1991)。そのほか、脳萎縮や石灰化(mineralizing microangiopathy)、大血管の晩期障害がみられることもあります(Valk 1991)。
  • PETで再発と局所の放射線壊死を区別する場合、腫瘍に対する陽性・陰性的中率は80〜90%と報告されています(Valk 1991)。

脳腫瘍の治療後MRIでよくある疑問(Q&A)

Q. pseudoresponse(偽効果)とは何ですか?
A. ベバシズマブなどの血管新生阻害薬によって血管の透過性が下がり、腫瘍そのものは小さくなっていないのに造影効果だけが急に弱まる状態です。造影されない腫瘍がFLAIR・T2強調像の高信号として広がっていないかをあわせて確認します。

Q. 治療後のMRIで造影される部分が大きくなったら、すぐ再発ですか?
A. 放射線治療後の早い時期の増大はpseudoprogressionのことがあり、拡散強調像(ADC)や灌流画像、経過のMRIを組み合わせて判断します。頭痛や手足の動かしにくさ、けいれんなど気になる症状が出たときは、次の予約を待たずに主治医に相談してください。

原発性脳腫瘍の遠隔転移の画像診断

  • 髄腔内転移を来しやすい原発性脳腫瘍→胚細胞腫瘍、上衣腫、髄芽腫など
  • 胚細胞腫瘍で最多のジャーミノーマは放射線治療や化学療法への感受性は高いが13%に髄膜や脳室内に転移が生じたとされる。
  • 上衣腫ではgrade2で9%、grade3で33%に認めたと報告があり、大部分は髄軟膜転移。
  • 非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍(atypical teratoid rhabdoid tumor:AT/RT)は診断時に1/3で髄膜内転移あり。
  • grade1の腫瘍でも転移を生じることがあり、毛様細胞性星細胞腫では12%に髄腔内転移を認めた。
  • 原発性脳腫瘍のうち、中枢神経外へ転移を認める頻度は0.96%で、小児のgrade3,4の腫瘍に多く、大脳半球の腫瘍よりは、小脳や脳幹部、硬膜に生じた腫瘍で多い。転移先は、肺・胸膜>リンパ節、骨(中でも脊椎)、肝。
  • 膠芽腫の中枢神経外への転移としては肺>リンパ節、骨(中でも脊椎)。ベバシズマブ投与後では転移先に造影効果を認めないこともある。
  • 髄膜腫の転移は0.1%以下。転移先は肺(境界明瞭な類円形の腫瘤)>肝、リンパ節、骨、胸膜、縦隔。

参考文献:画像診断 Vol.43 No.11 増刊号 2023 P8-18

  1. Stupp R, Mason WP, van den Bent MJ, et al. Radiotherapy plus concomitant and adjuvant temozolomide for glioblastoma. N Engl J Med. 2005;352(10):987-996. PubMed
  2. Hegi ME, Diserens AC, Gorlia T, et al. MGMT gene silencing and benefit from temozolomide in glioblastoma. N Engl J Med. 2005;352(10):997-1003. PubMed
  3. Brandsma D, Stalpers L, Taal W, et al. Clinical features, mechanisms, and management of pseudoprogression in malignant gliomas. Lancet Oncol. 2008;9(5):453-61. PubMed
  4. Valk PE, Dillon WP. Radiation injury of the brain. AJNR Am J Neuroradiol. 1991;12(1):45-62. PubMed

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