
先に結論:脊柱管・傍脊椎の髄外造血は「慢性貧血や骨髄増殖性疾患のある人の、背骨に沿った多発する腫瘤」で疑う
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 骨髄の外にできた造血組織。脊柱管内では硬膜外や傍脊椎に出る |
| 背景疾患 | サラセミアなどの溶血性貧血、骨髄線維症、真性多血症など |
| 画像の手がかり | 背骨に沿って多発する腫瘤。脂肪を含むことがあり、脾腫を伴いやすい |
| 症状 | 背部痛、下肢の脱力・しびれ、歩行障害、膀胱直腸障害。胸椎に多い |
| 見落とし | 『硬膜外腫瘍』とだけ読むと病歴と結びつかない。貧血・血液疾患の既往を確認する |
髄外造血とは
血液をつくる場所(造血)は、成人では主に骨髄です。ところが、貧血が長く続いて骨髄だけでは血液をつくり切れないときなどに、肝臓・脾臓・リンパ節・傍脊椎など骨髄の外で造血組織が増えることがあります。これが髄外造血(extramedullary hematopoiesis、EMH)です。サラセミア中間型のように、効果の乏しい赤血球産生(ineffective erythropoiesis)が続く病気では、髄外造血による腫瘤が体のいくつかの場所にできます(Haidar 2010)。
背景として報告される病気は、各種の貧血、骨髄線維症・骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患などです(Ginzel 2012)。脾臓にできる場合は脾臓の髄外造血の画像診断で、骨髄線維症そのものは骨髄線維症(myelofibrosis)の画像診断で解説しています。この記事では、背骨のまわりと脊柱管の中にできたものを扱います。
どこにできて、どんな症状が出るか
| 部位 | 特徴 |
|---|---|
| 傍脊椎(椎体の脇) | サラセミア中間型で脊髄圧迫の原因として注目されている(Haidar 2010)。体軸骨格に腫瘤のあった10例中8例にみられた(Ginzel 2012) |
| 仙骨前(presacral) | 仙骨の前。体軸骨格に腫瘤のあった10例中4例にみられた(Ginzel 2012) |
| 硬膜外(脊柱管内) | 脊髄や神経根を圧迫して症状が出る。後方の硬膜外に見られる例が報告されている(Abbarh 2022) |
傍脊椎の腫瘤は、サラセミア中間型で脊髄圧迫の原因として注目されています(Haidar 2010)。硬膜外の髄外造血による脊髄圧迫の報告を集めた系統的レビュー(54例)では、診断時の平均年齢は37.9歳で83.3%が男性でした。症状は運動・感覚障害、背部痛、膀胱直腸障害、歩行障害で、腫瘤の部位は胸椎が87.0%、腰椎25.9%、仙骨16.7%、頸椎5.6%、複数の部位に及ぶものが24.1%でした(Lam 2025)。
症状が出る人は一部です。サラセミアの患者60人を調べた検討では、CTとMRIで脊椎の髄外造血が13.3%に見つかり、サラセミア中間型で重症型(major)より多くみられました。髄外造血のある人は血清フェリチンが高く、輸血前のヘモグロビンが低い傾向がありました(Tantawy 2009)。一方、輸血に依存する重症型でも起こり、系統的レビューでは253例が集められ、最も多い症状は下肢の脱力でした(Subahi 2022)。『輸血をしているから起こらない』と決めつけないことが大切です。
画像所見:MRIとCTで見るポイント
診断にはMRIが最もよく使われます。骨髄に近い信号をもつ腫瘤が背骨に沿って連なる、という見え方がヒントになります。
| 見るところ | 読み方 |
|---|---|
| 分布 | 背骨(体軸骨格)に沿って多発する。1か所だけで判断しない |
| 部位 | 傍脊椎・仙骨前・硬膜外 |
| 内部 | CTやMRIで脂肪を含むことがある |
| 骨髄 | 慢性の溶血性貧血では椎体の骨髄がT2強調像で暗く見えることがある(Abbarh 2022) |
| 合併所見 | 脾腫(脾臓が腫れている)を伴いやすい |
| 脊髄 | 腫瘤が脊髄を押している程度と、脊髄内の信号変化を確認する |
腫瘤様の髄外造血44例中12例を詳しく検討した報告では、10例が体軸骨格に沿った腫瘤で、そのうち90%が多発、70%に内部の脂肪を認めました。傍脊椎の腫瘤が80%、仙骨前の腫瘤が40%、脾腫が70%(いずれも体軸骨格に腫瘤のあった10例での割合)で、原因疾患のある患者に『多発し、脂肪を含む体軸骨格の腫瘤』があれば髄外造血を強く考えるとされています(Ginzel 2012)。
診断に使われる検査はMRIが中心です。輸血依存性の重症型サラセミアの髄外造血253例のまとめでは、画像診断にMRIが使われたのは226例でした(Subahi 2022)。一方、腫瘤様の髄外造血の検討では12例すべてにCTが行われ、MRIは3例でした(Ginzel 2012)。胸腹部のCTで偶然見つかる傍脊椎腫瘤が、髄外造血の最初の手がかりになることもあります。CTで脂肪を含む多発する傍脊椎腫瘤を見たら、背景の血液疾患を確認し、症状があれば脊柱管への進展をMRIで確かめる流れが考えやすいでしょう。
なお、MRIで見えるのは『腫瘤の形・場所・脊髄への影響』であり、細胞の種類までは画像だけでは分かりません。このため、症状が強い、背景疾患が不明、悪性腫瘍との区別が難しいといった場面では、組織の確認が加わることがあります(Hawkins 2024)。
症例 19歳男性 サラセミアに伴う硬膜外髄外造血

引用:Abbarh S, et al. Medicine (Baltimore) 2022(Figure 1)、CC BY 4.0(PMC9276436)
胸椎のT2強調矢状断(A)と造影脂肪抑制矢状断(B)で、T2からT9レベルに脊柱管内の後方(硬膜外)の病変が連なり、軸位像(C・D)で脊髄が中等度から高度に圧迫されています。症例ページ(論文)では、慢性の溶血性貧血のため椎体の骨髄はT2強調像で暗いと記載されています。
なぜ脊柱管の中にできるのか
髄外造血は、長く続く低酸素などに対して、骨髄の外で血液をつくって補おうとする代償反応と考えられています(Subahi 2022)。サラセミアで脊椎の髄外造血があった人は、貧血が強い、輸血が足りない、鉄が多く溜まっている(フェリチンが高い)といった背景をもつ傾向がありました。つまり『造血の需要が高く、供給が追いついていない状態』が続いているサインとも読めます(Tantawy 2009)。
そのため、画像で髄外造血が見つかった場合は、血液疾患のコントロール状況も合わせて主治医が見直すきっかけになります。画像診断は、背景疾患の把握と神経症状の評価を結びつける役目を担います。
『硬膜外腫瘍』と読んだあとに考えること
硬膜外に腫瘤を見たときは、腫瘍、血腫、膿瘍などが頭に浮かびます。髄外造血はその中で、病歴と全身の所見で絞り込める病変です。多血症の治療歴のある43歳男性で、胸椎と仙骨に多発する硬膜外病変が見つかり、生検で髄外造血と診断され『硬膜外腫瘍に似る』と報告されています(Hawkins 2024)。画像だけで腫瘍と決めると、血液疾患との結びつきを見落とします。
| 見たとき | 確認すること |
|---|---|
| 背骨に沿って多発する腫瘤 | サラセミア・溶血性貧血・骨髄線維症・多血症などの既往、ヘモグロビンの推移 |
| 脾腫・肝腫大がある | 髄外造血が他の場所にもないか(脾臓・肝臓・傍脊椎・仙骨前) |
| 腫瘤の内部に脂肪がある | 髄外造血を鑑別に入れる(Ginzel 2012) |
| 症状が急に進んでいる | 脊髄圧迫の程度を最優先に伝え、緊急度を担当医と共有する |
脊椎・脊髄の腫瘍の分け方(硬膜内髄外・髄内・硬膜外)は脊椎・脊髄腫瘍の分類、傍脊椎にできる神経由来の腫瘤は神経原性腫瘍とはも参考になります。
読影の流れ(頭から足まで)
| 順番 | 見ること |
|---|---|
| 1 | 依頼票・カルテで貧血、血液疾患、脾腫、既往の手術・放射線治療を確認する |
| 2 | 矢状断で脊柱管内の腫瘤の範囲(何椎体にわたるか)を測り、脊髄の圧迫度を見る |
| 3 | 軸位断で腫瘤が脊柱管のどこにあるか(後方・前方・両側)と、神経孔への広がりを見る |
| 4 | 椎体の骨髄信号が全体に変化していないか(T1・T2・脂肪抑制を比べる) |
| 5 | 傍脊椎・仙骨前・肋骨周囲など、他の場所の腫瘤を探す |
| 6 | 可能なら脾臓・肝臓の大きさも触れる(脾腫の有無) |
治療方針はどう決まるか(読影の立場から)
治療は、原因となる血液の病気と神経症状の重さによって、血液内科や脊椎外科などで決められます。硬膜外の髄外造血を集めた系統的レビューでは、手術(併用療法を含む)と、症状が出てから1か月以内の早期の治療が、転帰不良の減少と関連していました。ただし報告のばらつきは大きいとされています(Lam 2025)。読影では、脊髄圧迫の範囲と程度を明確に書いて、早く主治医に伝えることが役に立ちます。
研修医向け:読影チェックリスト
- 脊柱管内・傍脊椎の腫瘤は、依頼票や電子カルテで貧血・血液疾患・脾腫の既往を確認する
- 1か所の腫瘤で終わらず、背骨全体(傍脊椎・仙骨前・硬膜外)を見て多発の有無を書く
- 椎体の骨髄信号が全体に暗い(慢性の溶血性貧血など)ときは、背景の貧血を疑う
- 腫瘤内の脂肪、脾腫の有無を拾う
- 脊髄の圧迫の程度と信号変化を記載し、症状があれば緊急性を伝える
よくある疑問(Q&A)
Q. 輸血を続けていても髄外造血は起こりますか?
A. 起こります。重症型サラセミアでも報告があり、系統的レビューでは253例が集められました。ただし頻度は1%未満とされています(Subahi 2022)。
Q. 髄外造血があるといつも症状が出ますか?
A. いいえ。サラセミアの患者60人で脊椎の髄外造血は13.3%に見つかりましたが、症状は脊髄圧迫の程度によって異なります(Tantawy 2009)。足の力が入りにくい、しびれる、排尿が変わったなどがあれば早めに受診してください。
Q. 画像だけで腫瘍と区別できますか?
A. 背骨に沿って多発し、脂肪を含み、脾腫があるなどの所見は手がかりになります(Ginzel 2012)。それでも硬膜外腫瘍に似ることがあり(Hawkins 2024)、確定には病歴や必要に応じた組織診断が加わります。
あわせて読みたい:減圧症(潜水病)の画像診断、高所脳浮腫(HACE)のMRI所見、透析患者の脳症のMRI
参考文献
- Lam NG, Ahmadpour A, Gimelfarb A, et al. Epidural Spinal Cord Compression due to Extramedullary Hematopoiesis: Systematic Review of the Literature with an Illustrative Case. World Neurosurg. 2025;193:119-130. PubMed
- Haidar R, Mhaidli H, Taher AT. Paraspinal extramedullary hematopoiesis in patients with thalassemia intermedia. Eur Spine J. 2010;19(6):871-8. PubMed
- Ginzel AW, Kransdorf MJ, Peterson JJ, et al. Mass-like extramedullary hematopoiesis: imaging features. Skeletal Radiol. 2012;41(8):911-6. PubMed
- A Subahi E, Ata F, Choudry H, et al. Extramedullary haematopoiesis in patients with transfusion dependent β-thalassaemia (TDT): a systematic review. Ann Med. 2022;54(1):764-774. PubMed
- Tantawy AA, Adly AA, Mahdy SA, et al. Spinal cord compression and extramedullary hematopoiesis in young Egyptian beta-thalassemia patients. Hemoglobin. 2009;33(6):448-62. PubMed
- Abbarh S, Al-Mashdali AF, Abdelrazek M, et al. Recurrent spinal cord compression due to extramedullary hematopoiesis in thalassemia patient: Case report. Medicine (Baltimore). 2022;101(25):e29334. PubMed
- Hawkins AN, Breton JM, Bhatnagar A, et al. Spinal extramedullary hematopoiesis mimicking an epidural tumor in a patient with high-risk polycythemia vera: illustrative case. J Neurosurg Case Lessons. 2024;8(2). PubMed
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