
先に結論:馬尾・終糸の「T2高信号でよく造影される硬膜内髄外腫瘍」。出血のサインや播種にも気を配る
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 円錐・終糸・馬尾にできる上衣腫の亜型。硬膜内髄外の腫瘍として見える |
| 場所 | 腰椎部に多い(13例の報告で約85%)。1〜3椎体の高さにわたることが多い |
| MRI | T2強調像で高信号、造影で強く染まる。ヘモジデリンの帽子(cap sign)、椎体の骨侵食、血管の流れの空白(flow void)、播種に注意 |
| 注意 | ゆっくり育つが、再発や脊髄・脳への播種がまれではない |
| 似た腫瘍 | 神経鞘腫、傍神経節腫、髄膜腫、血管芽腫、リンパ腫、転移など |
粘液乳頭状上衣腫とは
上衣腫は、脳室や脊髄の中心管、終糸・円錐を覆う「上衣細胞」の名残から生じる腫瘍です。その中で粘液乳頭状上衣腫(myxopapillary ependymoma:MPE)は、終糸や円錐にできる硬膜内髄外の腫瘍で、脊髄にできる髄内の上衣腫とは分けて扱われます(Mu 2023)。上衣腫全般は上衣腫の記事、脊髄腫瘍の位置の分け方は脊椎・脊髄腫瘍の分類で整理しています。
2021年のWHO分類では、他の上衣腫が分子の特徴で再分類される中で、粘液乳頭状上衣腫は分子分類による追加の臨床的な利点がなく、亜型として残されています(Mu 2023)。悪性度は、以前の報告ではWHO grade Iとされ(Kraetzig 2018、Eschbacher 2021)、近年の報告ではgrade 2と記載されています(Hutuca 2025、Abdallah 2022)。成長はゆっくりですが、再発や播種があるため、「何もしなくてよい良性腫瘍」とは扱われていません。
どんな人に、どんな症状で見つかるか
| 報告 | 対象 | 年齢・性別 | 症状・経過 |
|---|---|---|---|
| Abdallah 2022 | 3施設の手術例44人 | 平均36.2歳、男性63.6%、18歳以下は6人 | 最も多い症状は下肢痛(79.5%)。手術前の経過は平均19.2か月 |
| Kraetzig 2018 | 手術例19人 | 中央値32歳(9〜58歳)、18歳以下が26.3% | 原発は下部胸椎〜上部腰椎が84.2%、1〜3椎体にわたるものが94.7% |
| Eschbacher 2021 | 小児8人 | 7.5〜16.9歳、男児6人 | 3人は診断時にすでに播種があった |
小児の3例の報告では、慢性の腰痛が急に悪化して受診しており、症状が出てから診断まで16〜18か月かかっていました(Nagib 1997)。説明のつきにくい強い腰痛が子どもで続くときには、MRIを検討するとされています(Nagib 1997)。腰痛や坐骨神経痛のような下肢痛が長く続いて見つかる点が、神経鞘腫など他の馬尾腫瘍と共通しています。
MRI所見:何を見るか
13人の手術例のMRIの検討では、84.6%が腰椎部に位置し、T2強調像で全例が高信号、92.3%が造影されました(Hutuca 2025)。造影されないMPEもまれにあります。大きな腫瘍は組織が微小な嚢胞状のパターンを示し、2例では播種が見られました。小さな腫瘍は充実性で、信号が均一でした(Hutuca 2025)。
| 所見 | 読み方 |
|---|---|
| 位置 | 円錐・終糸・馬尾。硬膜内髄外。1〜3椎体にわたることが多い(Kraetzig 2018) |
| T2強調像・造影 | 高信号、よく造影される(Hutuca 2025) |
| ヘモジデリンの帽子(cap sign) | ヘモジデリンの沈着によるT2低信号が腫瘍の端に帽子状に見えることがある(Mu 2023) |
| 椎体のscalloping(骨の圧排・侵食) | 腫瘍が椎体の後面を削る。骨の侵食がある腫瘍は進行しやすかった(Abdallah 2022) |
| 血管の流れの空白(flow void) | 硬膜内に目立つ血管の流れの空白が見られることがある(Hutuca 2025が評価した項目) |
| 播種(ドロップ転移) | 下方や他の高さの硬膜内に結節状の腫瘤。全体の撮像で確認する |
読む順番としては、まず矢状断で腫瘍が円錐・終糸・馬尾のどこにあり、何椎体にわたるかをつかみます。次に軸位で、腫瘍が硬膜の中にあり脊髄の外にあることと、馬尾の神経根との位置関係を確かめます。そのうえで造影後の画像で染まり方を見て、最後に腫瘍の上下端のT2低信号(cap sign)や、周囲の骨の変化を確認します。
症例 9歳男児 粘液乳頭状上衣腫(馬尾)

引用:Mu W, Dahmoush H. Front Pediatr 2023 (Figure 7)(CC BY 4.0)
馬尾を中心に、硬膜内・脊髄の外にある腫瘤です。図Aは矢状断のT2強調像で、腫瘤(矢印)は中間の信号です。図Bの造影後は、腫瘤が均一に染まっています(矢印)。論文では、手術後に経過中の播種があり、図C・Dでは第4脳室と両側の内耳道(C)、左側脳室前角(D)に造影される結節(矢じり)が見られています。
子どもの粘液乳頭状上衣腫
成人で比較的多い硬膜内の脊髄腫瘍ですが、子どもにも生じます。円錐・終糸の部位でこの腫瘍が子どもに生じる割合は、8〜12%と報告されています(Nagib 1997)。小児8人(7.5〜16.9歳)の検討では、5人で分裂の盛んさが高く(10高倍率視野あたり5個以上)、そのうち3人は壊死も伴っていました。分裂の盛んさと壊死が重なる場合は経過が速い可能性があり、近い経過観察が必要と報告されています(Eschbacher 2021)。
播種(ほかの高さへの広がり)
ゆっくり育つ腫瘍ですが、播種がまれではありません。19人の手術例では、57.9%で遠隔の転移があり、そのうち36.4%は最初の診断時にすでに見られました。転移の場所は胸椎(38.9%)と仙椎(33.3%)が多く、脳は11.1%でした(Kraetzig 2018)。腫瘍の進行は26.3%にあり(中央値36か月)、全体の生存は100%と良好でした(Kraetzig 2018)。
播種は診断から長い年月ののちに見つかることもあり、19人の報告では、さらなる転移が見つかるまでの期間は中央値20か月(範囲2〜360か月)でした(Kraetzig 2018)。そのため、画像では原発の腫瘍だけでなく、ほかの高さの硬膜内に結節がないかを確認します。手術後の経過観察でも、神経軸全体のMRIを基準として撮り、以後は定期的に画像で比べることが重要とされています(Nagib 1997)。
予後に関わる画像所見
44人の手術例の検討では、2椎体を超える広がり、境界の不明瞭さ、骨の侵食が、悪い予後や腫瘍の進行と関係していました。全体では、機能の転帰が良好だった人が88.7%(39人)、腫瘍の進行は11.4%(5人)でした(Abdallah 2022)。画像診断では、腫瘍がどの高さにまたがり、境界がはっきりしているか、骨を侵食していないかを報告に書くと、治療方針の判断材料になります。
鑑別診断
| 疾患 | 区別のポイント |
|---|---|
| 神経鞘腫 | 神経根から生じて椎間孔へ伸びる亜鈴(ダンベル)型、ターゲットサインが手がかり(脊柱管内の神経鞘腫、神経鞘腫と神経線維腫)。終糸の腫瘍とは位置で区別するが、迷う例もある |
| 傍神経節腫(パラガングリオーマ) | 馬尾・終糸にもまれにでき、強く造影され血管の流れの空白を伴うことがある。画像だけでの区別は難しい(傍神経節腫の記事) |
| 髄膜腫 | 硬膜に付着する腫瘤。胸髄に多く、馬尾にはまれ |
| 血管芽腫 | 強い造影と周囲の血管の流れの空白を伴う結節 |
| 髄内の上衣腫 | 脊髄の中の腫瘍で、位置が髄内。円錐部では区別が難しいことがある |
| リンパ腫・転移 | 馬尾の神経根に沿って造影される。全身の病歴を合わせて考える |
読影のチェックリスト
- 腫瘍の位置(円錐・終糸・馬尾)と、硬膜内髄外であることを確認する
- 上下の広がり(何椎体にわたるか)と、境界の明瞭さを書く
- T2高信号、造影の程度、ヘモジデリンのcap signの有無
- 椎体のscallopingや仙骨の侵食など、骨の変化
- ほかの高さの硬膜内に結節(播種)がないか、全体の画像を見る
- 子どもの強い腰痛では、馬尾・終糸の腫瘍も念頭に置く
腰や足の痛み、足の力の入りにくさ、排尿・排便の異常が続く場合は、整形外科・脳神経外科など医療機関を受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 粘液乳頭状上衣腫は悪性ですか?
A. 成長はゆっくりで、生存の経過は良好な報告が多い腫瘍です(Kraetzig 2018)。一方で、再発や、脊髄・脳への播種がまれではありません(Kraetzig 2018)。悪性度は、以前の報告ではWHO grade I、近年の報告ではgrade 2と記載されています(Hutuca 2025)。
Q. 画像だけで神経鞘腫と区別できますか?
A. 神経鞘腫は神経根から生じ、椎間孔へ伸びる形が手がかりですが、終糸や馬尾の腫瘍では画像だけで区別しにくいことがあり、最終的には組織で確認されます。
Q. 子どもにもできますか?
A. できます。手術例の中に18歳以下が一定数あり(Abdallah 2022で44人中6人、Kraetzig 2018で26.3%)、小児では診断時にすでに播種がある例もあります(Eschbacher 2021)。子どもでも、説明のつかない強い腰痛にMRIが検討されます(Nagib 1997)。
Q. 手術のあとも画像検査は続きますか?
A. 手術後は、神経軸全体のMRIを基準に撮り、以後は定期的に画像で比べることが重要とされています(Nagib 1997)。腫瘍が一度に取れた場合でも、進行や播種が起こりうるためです(Abdallah 2022、Kraetzig 2018)。
あわせて読みたい:神経線維腫症2型(NF2)のMRI、顔面神経鞘腫のCT・MRI、視神経膠腫(視路膠腫)のMRI
参考文献
- Hutuca I, Egervari KL, Merkler D, et al. The Many Faces of Myxopapillary Ependymomas. AJNR Am J Neuroradiol. 2025;46(3):583-588. PubMed
- Kraetzig T, McLaughlin L, Bilsky MH, et al. Metastases of spinal myxopapillary ependymoma: unique characteristics and clinical management. J Neurosurg Spine. 2018;28(2):201-208. PubMed
- Abdallah A, Baloğlu G, Güler Abdallah B, et al. Management of myxopapillary ependymoma: a retrospective study from three institutions. Neurol Res. 2022;44(9):774-785. PubMed
- Eschbacher KL, Rao AN, Greipp PT, et al. Pediatric Myxopapillary Ependymomas: A Clinicopathologic Evaluation. J Pediatr Hematol Oncol. 2021;43(8):e1194-e1200. PubMed
- Mu W, Dahmoush H. Classification and neuroimaging of ependymal tumors. Front Pediatr. 2023;11:1181211. PubMed
- Nagib MG, O’Fallon MT. Myxopapillary ependymoma of the conus medullaris and filum terminale in the pediatric age group. Pediatr Neurosurg. 1997;26(1):2-7. PubMed
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