小児急性脳症のMRI AESD・ANE・MERSの見分け方

子どもが熱を出した翌日にけいれんし、数日後にまたけいれんして意識がぼんやりしています。MRIで「急性脳症」と言われましたが、どんな病気で、画像では何を見ているのですか?
小児の急性脳症は、感染症のあとに意識障害が続く病気の総称で、MRIの形で病型が分かれます。代表がAESD(二相性けいれんと遅発性拡散低下を呈する脳症)、急性壊死性脳症(ANE)、MERS(可逆性脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎・脳症)です。ここでは、研修医が画像を見たときにどの病型を考えるかを整理します。

先に結論:急性脳症は「いつ撮ったか」と「どこに出ているか」で病型を考える

項目 ポイント
AESD けいれん後3〜9日のDWIで、前頭〜頭頂の皮質下白質が高信号(bright tree appearance)。中心溝周囲は保たれる(central sparing)
ANE 両側視床を中心に左右対称の多発病変。出血や嚢胞化を伴うことがある。重症になりやすい
MERS DWIで脳梁膨大部に均一な拡散低下。年長児に多く、回復は良好
落とし穴 AESDは発症1〜2日目のMRIが正常。正常でも脳症を否定できない
考え方 病名を当てるより、病日・年齢・先行感染・病変の分布を並べて整理する

小児の急性脳症とは

急性脳症は、感染症の経過中に急に始まる意識障害(目安は24時間を超えて続くもの)を中心とする病気の総称です。病理の中心は、脳や髄液に炎症細胞が目立たない非炎症性の脳浮腫で、ウイルスが脳に直接入って炎症を起こす脳炎とは区別されます(Takanashi 2023、Mizuguchi 2021)。

日本では年に400〜700人の小児が発症し、0〜3歳の乳幼児に多いと報告されています(Takanashi 2023)。先行感染はインフルエンザ(16%)、ヒトヘルペスウイルス(HHV)6・7(16%)、ロタウイルス(4%)の順です。日本の小児神経科医が、MRIと臨床経過の組み合わせで病型を整理してきた歴史があり、画像が診断の柱になっています(Takanashi 2023)。

全国調査では、2014〜2017年の1,115例のうち、病型別の頻度はAESDが34%、MERSが18%、ANEが3%でした(Kasai 2020、頻度の数字はTakanashi 2023の引用)。2007〜2010年の983例の調査でも、AESDが最多、次いでMERS、ANE、出血性ショック脳症症候群(HSES)の順でした(Hoshino 2012)。

3つの代表病型を一覧で比べる

AESD ANE MERS
MRIの主役 DWIで皮質下白質の高信号(bright tree appearance) 両側視床の対称性病変(T1低・T2高、出血性変化) 脳梁膨大部の均一な拡散低下
平均年齢 1.6歳 2.5歳 5.6歳
多い先行感染 HHV-6・7(32%)、インフルエンザ(7%) インフルエンザ(34%)、HHV-6・7(16%) インフルエンザ(22%)、ロタウイルス(9%)、HHV-6・7(5%)
経過・予後 けいれんが二相性。後遺症は軽度〜中等度が多いが、重度や死亡もある 重症。死亡率は最大25% 1か月以内の回復が典型

(Takanashi 2023。年齢と頻度は全国調査の値の引用)

先行感染との組み合わせにも傾向があります。2007〜2010年の調査では、インフルエンザはANEとMERSに強く関連し、HHV-6はAESDに関連しました(Hoshino 2012)。死亡率が高いのはANEとHSES、後遺症が多いのはAESDとANE、MERSでは後遺症がありませんでした(Hoshino 2012)。

AESD:二相性の経過とbright tree appearance

AESDは最も多い病型で、1歳前後に多く、もともと神経の異常がある子に起こりやすいとされます。日本以外での報告は少なく、遺伝的な要因の関与が示唆されています(Takanashi 2023)。

臨床の特徴は二相性です。発症1〜2日目に熱性けいれん(長く続くことが多い)があり、いったん落ち着いたあと、4〜6日目に焦点性のけいれんが群発し、意識レベルが再び下がります(Takanashi 2023)。これが画像の時間経過と対応します。

病日 臨床 MRI
1〜2日 長めの熱性けいれん(早期けいれん) DWIを含めて異常なし
3〜9日 後期けいれん(群発)・意識障害 DWIで皮質下白質に高信号。前頭〜前頭頭頂に優位で、中心溝周囲は保たれる
9日以降 回復期 DWIの白質高信号は消え、皮質の高信号が目立つことがある。のちにT2延長と脳萎縮

(Takanashi 2023)

読むときの要点は3つです。(1)DWIで脳の表面ではなく、皮質直下の白質が高信号になること、(2)中心溝(ローランド)周囲が保たれること、(3)病日が3〜9日であることです。FLAIRやT2強調像では、皮質下白質のT2延長とU-fiberに沿った線状の高信号が見えます。左右差が強い、あるいは片側性のこともあり、そのような場合は片側けいれん片麻痺てんかん症候群と診断される例もあります(Takanashi 2023)。

症例 1歳男児 AESD(発症4日目)

AESD 発症4日目 拡散強調像 bright tree appearance(1歳男児)
引用:Takanashi JI, Uetani H. Front Neurosci. 2023;17:1235364 (Figure 2) PMC(CC BY 4.0)

発症4日目のMRIです。DWI(A・B)で両側の前頭〜頭頂の皮質下白質が高信号で、ADC(C)は低下しています。中心溝周囲は保たれています。FLAIR(D)ではU-fiberに沿った病変、T2強調像(E)では皮質の腫脹とT2延長を認めます。右下(F)はMRSのグラフです。

灌流画像(ASL)で早期に気づく可能性

AESDの20例でASL(造影剤を使わない灌流画像)を調べた研究では、早期けいれんの8.5〜22時間後に低灌流、後期けいれんの24時間以内に高灌流が見られ、分布はbright tree appearanceと概ね一致しました(Uetani 2020)。発症1〜2日目はDWIが正常なので、ASLが早期の手がかりになる可能性があります。ただし、熱性けいれんとの区別に使えるかは、今後の前向き研究が必要とされています(Takanashi 2023)。

ANE:両側視床の対称性病変

ANEは、1995年に日本の小児で報告された病型で、両側の視床、大脳白質、脳幹、小脳に左右対称の壊死性病変をつくります。報告された13例と既報28例の検討では、先行する呼吸器感染のあとに、昏睡、けいれん、嘔吐、高熱、肝腫大などがみられました(Mizuguchi 1995)。

急性期のCT・MRIでは、びまん性の脳浮腫と、視床・内包後脚・被殻後部・大脳や小脳の深部白質・中脳上部の被蓋に、左右対称で多発する病変が出ます。急性期の視床病変はDWIで拡散が低下し、通常は拡散が上昇するADEMとの区別に役立ちます。3日目以降は、点状出血を反映してT1強調像で視床に輪状や円形の高信号が現れ、T2強調像やT2*強調像では一部が低信号になります(Takanashi 2023)。

症例 1歳男児 急性壊死性脳症(ANE)

急性壊死性脳症 両側視床病変 T1・T2・DWI・T2*(1歳男児)
引用:Takanashi JI, Uetani H. Front Neurosci. 2023;17:1235364 (Figure 5) PMC(CC BY 4.0)

発症4日目のT1強調像(A)で両側視床が低信号、T2強調像(B)で高信号となり、DWI(C)で拡散が低下しています。14日目にはT1強調像(D)で視床が高信号、T2*強調像(E)で一部が低信号となり、出血性の変化を示唆します。

MERS:脳梁膨大部の一過性病変

MERSは、脳炎・脳症の経過中に、少なくとも脳梁膨大部に可逆性の病変が出る病型です。DWIで均一に拡散が低下し、造影効果はありません(1型)。脳梁に加えて左右対称の白質病変を伴うものが2型です。平均年齢は5.6歳とAESDやANEより高く、せん妄様の行動、意識障害、けいれんで始まり、1か月以内に回復するのが典型です。低ナトリウム血症を伴うこともあります(Takanashi 2023)。詳しくはMERS(可逆性脳梁膨大部病変)の記事をご覧ください。

研修医のためのチェックリスト

確認すること 見る理由
発症から何日目に撮ったか 同じ脳症でも病日で画像が変わる。1〜2日目のAESDは正常に見える
DWIの高信号の場所 皮質下白質ならAESD、両側視床ならANE、脳梁膨大部ならMERS
中心溝周囲は保たれているか AESDの特徴。保たれていれば後期けいれん後の脳症を疑う
T1・T2*で出血を示す所見はあるか ANEの視床では点状出血によるT1高信号がある
拡散の方向(低下か上昇か) ANEは低下、ADEMは通常上昇。鑑別に役立つ
先行感染と年齢 インフルエンザはANE・MERS、HHV-6はAESDに多い傾向(Hoshino 2012)

見落としやすい点と、鑑別すべき病気

最も大切なのは、発症1〜2日目のMRIが正常でも、AESDは否定できないことです。後期けいれんが起きない場合(鎮静などで)や、bright tree appearanceが淡い場合もあり、その際はASLなど他の情報を合わせて考えます(Takanashi 2023)。

鑑別では、ウイルスが直接入る脳炎(HHV-6脳炎はHHV6脳炎の記事、日本脳炎は日本脳炎の記事)、ADEM(ADEMの記事)、けいれんそのものによる変化(痙攣後脳症の記事)を考えます。日本小児神経学会の2016年版ガイドラインの要点を英語で紹介した論文では、急性脳症の中心症状を「感染症の経過中に急に始まる意識障害で、期間と重症度が基準を満たすもの」とし、複数の症候群から成ると整理しています(Mizuguchi 2021)。ガイドラインは2023年に改訂されており(Takanashi 2026)、診断・治療の判断は専門施設で行われます。

予後

AESDの全体の転帰は、ほぼ正常が33%、軽度〜中等度の障害が43%、重度の障害が19%、死亡が2%でした。後遺症には知的・運動の障害と、ときに難治のてんかんがあります。ANEの死亡率は最大25%で、MERSは後遺症なく回復するのが一般的です(Takanashi 2023)。AESDの10例の小さな報告では、急性期のクレアチニン高値と血小板減少が重度の後遺症と関連し、病変のMRSで乳酸が増えていた例に重い障害が多い傾向がありましたが(Azuma 2015)、画像だけで予後は決められません。

よくある疑問(Q&A)

Q. 急性脳症と脳炎はどう違いますか?

脳炎はウイルスなどが脳に入って炎症を起こす病気で、髄液に炎症細胞が増えます。急性脳症は、感染症をきっかけにした非炎症性の脳浮腫が中心で、髄液の炎症細胞は通常目立ちません(Takanashi 2023)。画像は似ることがあるため、臨床経過と合わせて判断します。

Q. 熱性けいれんのあと、MRIが正常ならAESDの心配はありませんか?

発症1〜2日目はAESDでもMRIが正常です(Takanashi 2023)。その後に再びけいれんが群発したり、意識が戻らなかったりする場合は、3〜9日目のMRIで確認します。お子さんの様子で気になることがあれば、早めに医療機関に相談してください。

Q. bright tree appearanceとは何ですか?

DWIで、皮質直下の白質が木の枝のように高信号に見える所見です。前頭〜頭頂に多く、中心溝周囲は保たれます(Takanashi 2023)。発症3〜9日目に見えます。

Q. MERSは本当に自然に治りますか?

MERSは1か月以内に回復するのが典型で、全国調査でも後遺症は認められませんでした(Hoshino 2012、Takanashi 2023)。ただし、ほかの病型との区別は画像と経過で慎重に行います。

あわせて読みたい:急性小脳炎のMRI、小児脳梗塞のMRI、新生児・乳児けいれんのMRI

参考文献

  1. Takanashi JI, Uetani H. Neuroimaging in acute infection-triggered encephalopathy syndromes. Front Neurosci. 2023;17:1235364. PubMed
  2. Hoshino A, Saitoh M, Oka A, et al. Epidemiology of acute encephalopathy in Japan, with emphasis on the association of viruses and syndromes. Brain Dev. 2012;34(5):337-43. PubMed
  3. Kasai M, Shibata A, Hoshino A, et al. Epidemiological changes of acute encephalopathy in Japan based on national surveillance for 2014-2017. Brain Dev. 2020;42(7):508-514. PubMed
  4. Mizuguchi M, Abe J, Mikkaichi K, et al. Acute necrotising encephalopathy of childhood: a new syndrome presenting with multifocal, symmetric brain lesions. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1995;58(5):555-61. PubMed
  5. Mizuguchi M, Ichiyama T, Imataka G, et al. Guidelines for the diagnosis and treatment of acute encephalopathy in childhood. Brain Dev. 2021;43(1):2-31. PubMed
  6. Uetani H, Kitajima M, Sugahara T, et al. Perfusion abnormality on three-dimensional arterial spin labeling in patients with acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion. J Neurol Sci. 2020;408:116558. PubMed
  7. Azuma J, Nabatame S, Nakano S, et al. Prognostic factors for acute encephalopathy with bright tree appearance. Brain Dev. 2015;37(2):191-9. PubMed
  8. Takanashi JI, Mizuguchi M, Ichiyama T, et al. Key revisions in the 2023 guidelines for the diagnosis and treatment of acute encephalopathy in childhood. Brain Dev. 2026;48(6):104594. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →