有機酸代謝異常の脳MRI 基底核のどこに出るかで絞る

赤ちゃんの頭のMRIで「基底核に左右対称の異常」と言われ、有機酸代謝異常を疑って検査すると説明されました。有機酸代謝異常とは何で、MRIではどんな所見が出るのですか?
有機酸代謝異常は、食べ物のたんぱく質などを分解する途中の物質(有機酸)が体にたまってしまう、生まれつきの代謝の病気の仲間です。メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症、グルタル酸血症1型などがあり、脳MRIで基底核が障害されることが多いのが特徴です。研修医の方が画像を見たとき、病気ごとの『出やすい場所』を手がかりにする方法を整理します。

先に結論:有機酸代謝異常のMRIは「基底核のどこか」で病気を絞る。確定は血液・尿の検査

項目 ポイント
画像の位置づけ MRI所見は非特異的で、診断は代謝・遺伝の検査が必要。ただし検査の方向づけに役立つ(Reddy 2018)
淡蒼球が中心 メチルマロン酸血症。両側の淡蒼球の梗塞が40例中19例(Baker 2015)
線条体が中心 プロピオン酸血症(13例中10例)とグルタル酸血症1型。1型は前頭側頭部の開大も特徴
時期 急性の代謝クライシスに一致して拡散低下が出る。のちに萎縮に進むことがある
落とし穴 HIEや敗血症と似る。生化学の値が正常なグルタル酸血症1型も報告がある

有機酸代謝異常とは

有機酸代謝異常は、アミノ酸や脂肪酸などの代謝の途中の経路が先天的に働かず、有機酸が体内にたまる病気の総称です。新生児期から乳児期に、哺乳不良、嘔吐、意識障害、けいれんなどで発症することがあり、血液や尿の検査で診断します。脳にも有機酸やアミノ酸がたまって、神経の障害が起こります(Reddy 2018)。

画像の役割について、放射線科の総説は次のように述べています。神経画像の所見は非特異的で、診断の確定には代謝・遺伝の検査が必要である一方、MRIは検査の流れを方向づける重要な役割を持つ。特に、より頻度の高い低酸素性虚血性障害や新生児敗血症との区別に役立つ、と整理されています(Reddy 2018)。

画像診断の考え方:基底核の「どこ」を見るか

有機酸代謝異常の多くは、両側の基底核(線条体と淡蒼球)を障害します。その中で、病気ごとに出やすい場所が異なります。小児の両側基底核病変201例(34疾患)をMRIで解析した研究では、所見が4つのパターンにまとまりました(Mohammad 2020)。

パターン MRIの特徴 当てはまる疾患の例
1 被殻(線条体)のT2高信号 グルタル酸血症1型、プロピオン酸血症、炎症性疾患
2 淡蒼球のT2高信号または磁化率の上昇 メチルマロン酸血症、Kearns-Sayre症候群、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症
3 淡蒼球・脳幹・小脳のT2高信号と拡散低下 ビガバトリン中毒、Krabbe病
4 基底核のT1高信号 遺伝性のマンガン過剰(SLC39A14・SLC30A10)

(Mohammad 2020。淡蒼球のT1高信号の鑑別は淡蒼球・基底核のT1高信号の鑑別も参考になります)

代表疾患ごとのMRI

メチルマロン酸血症:淡蒼球の梗塞

神経症状のある単独型メチルマロン酸血症40例のMRIでは、19例に両側の淡蒼球の梗塞がありました。すべて両側性で、左側に強い例が多く、淡蒼球外節の後部が最も障害されやすいことが分かりました。梗塞の頻度は型によって異なり、cblAが5/7、cblBが3/7、mut(0)が10/22、mut(-)が1/4でした。さらに、黒質網状部の小さなラクナ梗塞が17例に見つかり、そのうち13例は淡蒼球の梗塞も伴っていました(Baker 2015)。画像では淡蒼球だけでなく、黒質にも小さな病変がないかを見ます。

プロピオン酸血症:線条体、のちに皮質下白質

13例のMRI 45回を詳しく解析した2025年の研究では、線条体の異常が13例中10例で、T2高信号はしばしば軽度でした。急性の代謝失調で撮像した乳児3例では淡蒼球がT2高信号で、2/3で拡散低下がありましたが、追跡できた2例では正常化しました。歯状核は7/13、視床は2/13でT2高信号があり、小脳の分水嶺領域の損傷は4/13、大脳皮質と皮質下の変化は3/13で、後者は代謝失調中にけいれんがあった例に多くみられました。9歳以上の9例中7例では、皮質下白質を中心とする白質脳症が見られ、脳幹の菲薄化は13例中9例でした(Fels-Palesandro 2025)。つまり、プロピオン酸血症は灰白質の病気だけでなく、年長児では皮質下白質も見ます。

グルタル酸血症1型:前頭側頭部の開大と線条体

確定診断された29例(平均年齢16.9か月)のMRIで、最も一貫していた所見は、脳弁蓋(シルビウス裂の周囲)の開大と、低形成な前頭側頭葉の周りのくも膜下腔の拡大でした。海馬の回旋の異常(incomplete hippocampal inversion)も見られ、灰白質では淡蒼球の障害が86%で最多でした。白質は、中心部と脳室周囲の異常が目立ち、中心被蓋路も含まれます。後遺症の重さは、白質ではなく灰白質の異常の程度と関連しました(Mohammad 2015)。

症例 9か月 グルタル酸血症1型(急性期)

グルタル酸血症1型 急性期 T2強調像・拡散強調像・ADC・MRS(9か月乳児)
引用:Gragnaniello V, et al. Ital J Pediatr. 2025;51(1):137 (Figure 1) PMC(CC BY 4.0)

けいれんが続いた9か月の乳児です。T2強調像(A)・拡散強調像(B)・ADCマップ(C)で、尾状核・被殻・淡蒼球に左右対称の高信号と拡散低下があります。MRスペクトロスコピー(D)では、1.3 ppmに小さな乳酸の二重ピーク(矢印)があります。5か月後には基底核病変は萎縮に進み、細胞毒性浮腫は消えていました。

この症例は新生児スクリーニングで見つからず、急性期のグルタリルカルニチンと尿中グルタル酸の値も正常でした。診断は、MRIの基底核の左右対称病変から疑われ、遺伝子検査で確定しました。報告者は、アフリカ系の背景のある患者では、生化学の値が正常でも、臨床とMRIが示唆するときは警戒すべきだと述べています(Gragnaniello 2025)。

メープルシロップ尿症:髄鞘化した白質の拡散低下

メープルシロップ尿症(アミノ酸代謝異常ですが、有機酸と一緒に画像が議論されます)の新生児の症例では、急性の代謝クライシスで、DWIが髄鞘化した白質に高信号を示し(小脳白質、橋、延髄、大脳脚、レンズ核、内包後脚、放線冠、中心溝周囲の皮質)、ADCは著しく低下していました(Kilicarslan 2012)。この所見は、髄鞘内の浮腫や細胞毒性浮腫と考えられています。

HIE・Leigh脳症などとの見分け方

新生児期の基底核の障害は、まず新生児HIEを考えます。分娩時の低酸素のエピソードなどの臨床経過と画像が合うかを確認することが、区別の入り口になります(Reddy 2018)。ミトコンドリア病はLeigh脳症と画像が重なることがあり、高アンモニア血症が目立つ場合は高アンモニア血症(アンモニア脳症)の記事も参考になります。

鑑別 画像の手がかり
新生児HIE 分娩時の低酸素の経過。基底核・視床型と分水嶺型。経過と撮像時期が重要
Leigh脳症 基底核と脳幹の左右対称病変。乳酸の上昇が目安になる
高アンモニア血症 血中アンモニア高値と対応する脳浮腫。原因疾患の検索が必要
有機酸代謝異常 病気ごとに淡蒼球(MMA)、線条体(PA・GA1)、白質(MSUD)など出やすい位置がある

撮像と読影のコツ

一般的には、T2強調像とDWI・ADCで基底核の信号と拡散を見て、T1強調像で出血や石灰化、金属の沈着(淡蒼球のT1高信号など)を区別します。MRスペクトロスコピーで乳酸のピークが見えることもあります(上の症例)。新生児・乳児は髄鞘化が途中なので、同じ年齢の正常像と比べて「基底核が正常より明るいか」を判断します。経過観察のMRIでは、急性期の拡散低下が消えて萎縮に変わる流れを確認します。

時間経過で見え方が変わる

急性期には、細胞毒性浮腫を反映して、拡散低下と信号上昇が出ます。プロピオン酸血症では、乳児の一過性の淡蒼球の変化が、髄鞘形成が活発な淡蒼球に起こる髄鞘の分離(myelin splitting)を反映している可能性が指摘されています(Fels-Palesandro 2025)。グルタル酸血症1型の上の症例では、5か月後に基底核の病変が萎縮に進みました(Gragnaniello 2025)。同じ子でも、撮った時期が急性期か慢性期かで、拡散低下の有無や萎縮の程度が変わります。

読影のチェックリスト

確認すること 見る理由
線条体と淡蒼球のどちらが中心か 線条体はGA1・PA、淡蒼球はMMAが代表(Mohammad 2020)
黒質・歯状核・視床に病変はあるか MMAは黒質網状部、PAは歯状核・視床に出る(Baker 2015、Fels-Palesandro 2025)
前頭側頭部の脳弁蓋が開いていないか GA1の最も一貫した所見(Mohammad 2015)
白質の分布 髄鞘化した白質ならMSUD、年長児の皮質下白質ならPAを考える
拡散低下は急性期の変化か 急性期は拡散低下、慢性期は萎縮・T2の変化(Fels-Palesandro 2025)
HIE・敗血症の経過と画像が合うか 経過と画像が合わないときは、代謝疾患も考える(Reddy 2018)

よくある疑問(Q&A)

Q. MRIだけで有機酸代謝異常と診断できますか?

できません。MRI所見は非特異的で、診断には血液・尿の代謝検査や遺伝子検査が必要です。ただし、基底核のどこに病変があるかは、検査の方向づけに役立ちます(Reddy 2018)。

Q. 新生児マススクリーニングが正常でも、病気は否定できませんか?

グルタル酸血症1型には、血液の指標が正常に出る「低排泄型」があり、新生児スクリーニングで見つからなかった症例が報告されています(Gragnaniello 2025)。症状や画像が疑わせるときは、医療機関で再度の検査について相談してください。

Q. MRIで基底核に異常があれば、すべて代謝の病気ですか?

いいえ。HIE、ミトコンドリア病、ビガバトリンなどの薬剤性、炎症、中毒など多くの原因があります(Mohammad 2020)。パターン分類と臨床を合わせて考えます。

Q. MRIの異常は元に戻りますか?

一部は戻ります。プロピオン酸血症の乳児の淡蒼球の変化は、追跡できた2例で正常化しました(Fels-Palesandro 2025)。ただし、萎縮に進む例もあります(Gragnaniello 2025)。

あわせて読みたい:小児急性脳症のMRI、急性小脳炎のMRI、小児脳梗塞のMRI

参考文献

  1. Reddy N, Calloni SF, Vernon HJ, et al. Neuroimaging Findings of Organic Acidemias and Aminoacidopathies. Radiographics. 2018;38(3):912-931. PubMed
  2. Baker EH, Sloan JL, Hauser NS, et al. MRI characteristics of globus pallidus infarcts in isolated methylmalonic acidemia. AJNR Am J Neuroradiol. 2015;36(1):194-201. PubMed
  3. Mohammad SA, Abdelkhalek HS, Ahmed KA, et al. Glutaric aciduria type 1: neuroimaging features with clinical correlation. Pediatr Radiol. 2015;45(11):1696-705. PubMed
  4. Mohammad SS, Angiti RR, Biggin A, et al. Magnetic resonance imaging pattern recognition in childhood bilateral basal ganglia disorders. Brain Commun. 2020;2(2):fcaa178. PubMed
  5. Fels-Palesandro H, Hörster F, Haas D, et al. Propionic Acidemia: Gray Matter Disease Meets Subcortical Leukodystrophy. J Inherit Metab Dis. 2025;48(6):e70101. PubMed
  6. Gragnaniello V, Puma A, Gueraldi D, et al. Diagnosis of glutaric aciduria type I based on neuroradiological findings: when neonatal screening fails. Ital J Pediatr. 2025;51(1):137. PubMed
  7. Kilicarslan R, Alkan A, Demirkol D, et al. Maple syrup urine disease: diffusion-weighted MRI findings during acute metabolic encephalopathic crisis. Jpn J Radiol. 2012;30(6):522-5. PubMed

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