
先に結論:ガスの分布で閉塞の高さを決め、原因は造影検査・エコーで確かめる。胆汁性嘔吐では腸回転異常を見落とさない
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| まず見ること | ガスのたまった腸の数と場所。胃と十二指腸だけなら上位、多数の拡張した腸なら下位の閉塞を考える |
| double bubble | 胃と十二指腸球部のガスが2つの泡に見える。十二指腸の閉塞(閉鎖・狭窄・輪状膵など)のサイン |
| 下位の閉塞 | 空腸・回腸閉鎖、胎便性イレウス、ヒルシュスプルング病など。注腸造影で細い大腸(microcolon)があるかを見る |
| 緊急の病気 | 腸回転異常と中腸軸捻転は腸への血流が障害される。胆汁性嘔吐では上部消化管造影やエコーで急いで調べる |
| 受診の目安 | 緑色(胆汁)の嘔吐、お腹の張り、胎便が出ないときは、すぐに医療機関へ |
新生児の腹部レントゲンは「閉塞の高さ」を見る
新生児の腸閉塞は、症状(胆汁性の嘔吐、お腹の張り、胎便が出ない)が似ていても、原因となる病気は多岐にわたります。放射線科の総説では、腹部レントゲンで腸閉塞があるかどうか、閉塞が上位(近位)か下位(遠位)かをまず判断し、そのあと造影検査やエコーで原因を絞るのが基本の流れとされています。診断には、在胎週数と臨床症状もあわせて使います(Gerrie 2023)。小児と新生児の腸閉塞に対する画像検査の流れは、別の総説でも、画像の種類を使い分ける実践的な手順として整理されています(Hull 2022)。
新生児では、成人のような腸のひだ(ハウストラ)がまだ目立たず、小腸と大腸を形だけで区別するのは困難です。そこで、「どの場所の腸がガスで拡張しているか」「ガスが下のほうの腸まで届いているか」に注目します。仰向けの写真に加え、横向きの写真でガスと液体の境目(鏡面像)や遊離ガス(腸の外に漏れた空気)がないかを確認することがあります。
| ガスの分布 | 閉塞の高さ | 代表的な病気 |
|---|---|---|
| 胃だけが大きく拡張(single bubble) | 胃の出口付近 | 幽門閉鎖など |
| 胃と十二指腸の2つの泡(double bubble) | 十二指腸 | 十二指腸閉鎖・膜様狭窄、輪状膵、腸回転異常(中腸軸捻転) |
| 3つの泡(triple bubble) | 空腸の上部 | 空腸上部の閉鎖 |
| 多数の拡張した腸管、ガスが少ない・液体の多い腸 | 小腸の下のほう | 空腸・回腸閉鎖、胎便性イレウス |
| 拡張した腸管と、直腸のガスが乏しい | 大腸 | ヒルシュスプルング病、結腸閉鎖、小左結腸症候群、肛門・直腸の異常 |
(Gerrie 2023を参考に整理)
新生児の胸部・腹部の撮り方や正常像は新生児の胸部X線の読み方、腹部レントゲンの基本の見方は腹部レントゲン(KUB)の読み方にまとめています。
double bubble:十二指腸の閉塞
double bubbleは、拡張した胃と十二指腸球部のガスが、2つの泡のように並んで見える所見です。胃の泡は左、十二指腸球部の泡は右寄りに見えます。十二指腸閉鎖はこの形の代表で、染色体異常、特に21トリソミー(ダウン症候群)との関連が強い病気です。出生前に見つかることも多く、最大で6割に及ぶとされています(Tam 2025)。
ただし、double bubbleだけでは原因は決まりません。十二指腸の内側の原因(閉鎖、膜様狭窄)に加え、外側から押す原因(輪状膵)、腸の回転の異常(腸回転異常)でも同じ形になります。見分けのポイントは、次の2点です。
- 遠位の腸にガスがあるか:ガスがまったくなければ、高度の閉塞(閉鎖)を考えます。わずかでもガスがあれば、狭窄や膜様の部分的な閉塞、腸回転異常も候補になります。
- 胆汁性嘔吐があるか:緑色の嘔吐を伴うときは、中腸軸捻転を伴う腸回転異常を除外しなければなりません。
症例 新生児男児 十二指腸閉鎖(double bubble)

引用:Radiopaedia(Tschauner S, rID: 49592)
胆汁性嘔吐と腹部膨満のある新生児の腹部X線像です。胃と十二指腸が2つの泡のように拡張しており、遠位の腸にガスは見られません。症例ページでは、十二指腸閉鎖の典型的なdouble bubbleの所見と説明されています。
空腸・回腸閉鎖と胎便性イレウス:下位の閉塞
空腸や回腸の閉鎖では、閉塞部より上流の腸が拡張し、多数のガス像や液体の貯留が見られます。空腸のごく上部の閉鎖では、胃、十二指腸、空腸の3つの泡(triple bubble)になります(Gerrie 2023)。閉塞の場所が下がるほど、拡張する腸の数が増えます。
胎便性イレウスは、粘り気の強い胎便が回腸の末端につまって起こる、新生児の腸閉塞です。嚢胞性線維症との関連が知られています。腹部レントゲンでは、拡張した小腸と、胎便が混じった細かい泡状のガス像が見られ、鏡面像が少ないことが特徴です。胎便性腹膜炎との違いや石灰化の見方は胎便性腹膜炎とは?を参照してください。
注腸造影のmicrocolon
下位の閉塞が疑われたら、造影剤を肛門から入れて大腸を調べる注腸造影を行います。ここで見たいのが、胎児期にほとんど使われなかった結果、細く縮んだmicrocolon(マイクロコロン、細い大腸)です。microcolonは、閉塞が大腸より上流にあるサインで、回腸閉鎖や空腸閉鎖、胎便性イレウスで見られます。
新生児の注腸造影366例を、最終診断(病理などの確定結果)と照らした報告では、診断の内訳はヒルシュスプルング病15.8%、小左結腸症候群14.8%、小腸・結腸の閉鎖12.6%、胎便性イレウス4.4%、正常48.9%でした。microcolonは胎便性イレウスに対する特異度96.6%、感度68.8%で、閉鎖では「急に途絶える像」を伴うmicrocolonの特異度が99.1%、感度が41.3%でした。つまり、microcolonがあれば診断の手がかりになるが、なくても否定はできないという数字です(Baad 2020)。大腸の太さを第1腰椎の椎弓根間の距離と比べてmicrocolonを判定する方法も提案されています(Zenitani 2025)。
症例 新生児女児 胎便性イレウスのmicrocolon

引用:Radiopaedia(Qureshi PAAA, rID: 60958)
胎便が出ず、お腹が張っている新生児に行った、水溶性造影剤による注腸造影です。細い径の大腸が造影されており、microcolonの所見です。症例ページでは、胎便性イレウスに伴うmicrocolonとして掲載されています。
ヒルシュスプルング病:拡張した腸と直腸のガスの乏しさ
ヒルシュスプルング病は、腸の壁の神経細胞が肛門側から連続して欠けているため、その部分の腸が動かずに、手前の腸が拡張する病気です。腹部レントゲンでは、大腸を含む腸管の拡張がありますが、直腸のガスは乏しく、他の下位閉塞との区別がつきにくいことが多くなります。診断は、注腸造影の所見に加え、直腸の組織検査で神経細胞の有無を確認して決めます。
注腸造影では、移行帯(細い腸と拡張した腸の境目)、直腸とS状結腸の太さの逆転(直腸S状結腸比の逆転)、粘膜の不整を見ます。92人の小児の報告(うち50人が組織検査でヒルシュスプルング病)では、粘膜の不整は感度96%・特異度71.4%、移行帯は感度86%・特異度90.5%、直腸S状結腸比の逆転は感度78%・特異度83.3%でした(Vlok 2020)。一方、新生児の注腸造影366例の報告では、ヒルシュスプルング病に対する注腸造影の感度は65.5%と低く、特異度は87.7%でした(Baad 2020)。新生児期は、注腸造影が正常でも、ヒルシュスプルング病は否定できません。詳しい画像診断はHirschsprung病の画像診断にまとめています。
| 注腸造影の所見・対象 | 感度 | 特異度 | 報告 |
|---|---|---|---|
| ヒルシュスプルング病:粘膜の不整 | 96% | 71.4% | Vlok 2020 |
| ヒルシュスプルング病:移行帯 | 86% | 90.5% | Vlok 2020 |
| ヒルシュスプルング病:直腸S状結腸比の逆転 | 78% | 83.3% | Vlok 2020 |
| 新生児のヒルシュスプルング病(造影全体) | 65.5% | 87.7% | Baad 2020 |
| 胎便性イレウス:microcolon | 68.8% | 96.6% | Baad 2020 |
腸回転異常と中腸軸捻転:見逃してはいけない緊急疾患
腸回転異常は、胎児期の腸の回転が途中で止まり、腸が正常と違う位置にある状態です。この状態で腸が上腸間膜動脈を軸にねじれると、中腸軸捻転になり、腸への血流が障害されます。症状は突然の胆汁性嘔吐で、緊急の対応が必要な病気です。腹部レントゲンは正常のこともあり、double bubbleや十二指腸の拡張、ガスの乏しい腹部などがヒントになります。
診断では、上部消化管造影が基本で、「十二指腸と空腸の境目(十二指腸空腸移行部)の位置異常」が重要な所見です。腸回転異常が疑われた子の検討では、この位置異常の感度が0.88、特異度が0.54でした。正面像が診断の役に立ち、側面像は感度0.80、特異度0.33と信頼性が低くなっていました(Girolamo 2024)。エコーも使われ、17件の研究・2,257人のメタ解析では、感度94%、特異度100%と高く、特に新生児で成績が良好でした(Nguyen 2021)。ただし、多くの施設で上部消化管造影が第一選択とされており、どの検査を使うかは施設で異なります。腸回転異常とwhirlpool signは腸回転異常(中腸回転異常)とは?に詳しく書いています。
受診の目安:保護者の方へ
新生児の腸の病気の多くは、出生前の健診や、生後すぐの診察で気づかれます。退院後でも、緑色や黄緑色の嘔吐(胆汁性嘔吐)、お腹が膨らむ、生後しばらくたっても胎便や便が出ない、哺乳が極端に悪い、ぐったりしているときは、様子を見ずにすぐ医療機関を受診してください。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. double bubbleがあれば、十二指腸閉鎖と決まりますか?
いいえ。十二指腸閉鎖のほか、膜様狭窄、輪状膵、腸回転異常でも同じ形になります。遠位の腸のガスの有無や、胆汁性嘔吐があるかをあわせて、造影検査やエコーで原因を確かめます(Gerrie 2023)。
Q2. 注腸造影でmicrocolonがなければ、閉鎖や胎便性イレウスは否定できますか?
否定できません。microcolonは特異度は高い(閉鎖で99.1%)一方、感度は41.3%にとどまりました(Baad 2020)。ガスの分布や臨床症状と合わせて判断します。
Q3. 新生児の注腸造影が正常なら、ヒルシュスプルング病ではありませんか?
いいえ。新生児の注腸造影は、ヒルシュスプルング病に対する感度が65.5%と低く、正常でも否定できません(Baad 2020)。疑いが強いときは、直腸の組織検査で確かめます。
Q4. 胆汁性嘔吐は、なぜ急いで調べるのですか?
中腸軸捻転を伴う腸回転異常が隠れていることがあるためです。腸の血流が障害されるため、緊急で上部消化管造影やエコーが行われます(Girolamo 2024、Nguyen 2021)。
参考文献
- Gerrie SK, Navarro OM. Imaging Features of Neonatal Bowel Obstruction. Radiographics. 2023;43(8):e230035. PubMed
- Hull NC, Kim HHR, Phillips GS, et al. Neonatal and Pediatric Bowel Obstruction: Imaging Guidelines and Recommendations. Radiol Clin North Am. 2022;60(1):131-148. PubMed
- Tam CW, Patel S, Massoumi J, et al. Atypical Presentation of Duodenal Atresia in a Newborn With Trisomy 21: A Simulated Case Report and Narrative Review. Pediatr Ann. 2025;54(4):e139-e143. PubMed
- Baad M, Delgado J, Dayneka JS, et al. Diagnostic performance and role of the contrast enema for low intestinal obstruction in neonates. Pediatr Surg Int. 2020;36(9):1093-1101. PubMed
- Zenitani M, Hiwatashi S, Noguchi Y, et al. Diagnostic significance of microcolon findings in neonatal contrast enema for patients with intestinal atresia. Pediatr Surg Int. 2025;42(1):22. PubMed
- Vlok SSC, Moore SW, Schubert PT, et al. Accuracy of colonic mucosal patterns at contrast enema for diagnosis of Hirschsprung disease. Pediatr Radiol. 2020;50(6):810-816. PubMed
- Girolamo M, Emanuela G, Yu WMC, et al. Diagnostic accuracy of upper gastrointestinal series in children with suspected intestinal malrotation. Updates Surg. 2024;76(1):201-208. PubMed
- Nguyen HN, Kulkarni M, Jose J, et al. Ultrasound for the diagnosis of malrotation and volvulus in children and adolescents: a systematic review and meta-analysis. Arch Dis Child. 2021;106(12):1171-1178. PubMed
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