新生児の腹部腫瘤 臓器ごとに考える・最初はエコー

生まれたばかりの赤ちゃんのお腹に、しこり(腫瘤)があると言われました。どんな病気が考えられますか?
新生児や乳児の腹部腫瘤は、まず「どの臓器から出ているか」を考えます。新生児期は腎臓や尿路の病気が多く、次いで副腎の神経芽腫、肝臓の血管性の腫瘍などがあります。最初に行うのは、体に負担の少ないエコーです。臓器ごとの鑑別を整理します。

先に結論:新生児の腹部腫瘤は腎・尿路が多い。最初はエコーで嚢胞性か充実性かを見て、臓器を絞る

項目 ポイント
多い原因 新生児の腹部腫瘤は腎臓由来が大半で、腎臓以外で最も多いのは副腎の神経芽腫(McVicar 1991)
最初の検査 エコー。腫瘤が嚢胞性か充実性かと、由来する臓器を調べる
腎・尿路 水腎症、多嚢胞性異形成腎(MCDK)、先天性間葉芽腎腫(CMN)など
肝臓 血管性腫瘍(乳児血管腫・先天性血管腫)と肝芽腫。用語は現行のISSVA分類で整理する
受診の目安 お腹が張る、しこりに触れる、哺乳が悪い、元気がないときは小児科へ

新生児の腹部腫瘤は「臓器」と「年齢」で考える

新生児期(生後1か月まで)の腫瘤は、胎児期から存在する先天性の病気が中心です。大人や年長児とは原因の分布が違い、新生児で多い病気が年長児では少なくなります。新生児の腹部腫瘤では、腎臓に由来する原因が大半を占め、腎臓以外で最も多いのは副腎の神経芽腫とされています。画像診断の流れを整理した総説による記述です(McVicar 1991)。この総説は1991年のもので、胎児エコーの普及で発見の経路は変わっています。それでも、「まず腎・尿路を考え、次に副腎、肝臓」という考え方の骨組みは今でも使いやすいものです。

由来 主な病気 エコーでの大まかな見え方
腎・尿路 水腎症(腎盂尿管移行部閉塞など)、多嚢胞性異形成腎、先天性間葉芽腎腫、腎芽腫(まれ) 水腎症・多嚢胞性異形成腎は嚢胞性、腫瘍は充実性
副腎 神経芽腫、副腎出血 充実性〜嚢胞性が混在する
肝臓 血管性腫瘍(乳児血管腫・先天性血管腫)、肝芽腫、間葉性過誤腫 低エコーの腫瘤、嚢胞性の腫瘤など
消化管・腸間膜 腸管重複嚢胞、腸間膜嚢胞、腸閉塞による腸管の拡張 嚢胞性、または拡張した腸管
骨盤・生殖器 卵巣嚢胞、水腟症・子宮留水症、仙尾部奇形腫 骨盤内の嚢胞性〜混合性の腫瘤

腫瘍かどうかを考える前に、拡張した腸管や、たまった尿、膨らんだ膀胱が「腫瘤」に見えていることもあります。エコーでは、腫瘤と正常な臓器の位置関係(腎臓が腫瘤の外に押されているか、腫瘤の中に含まれるか)を見て、由来を判断します。

最初の検査はエコー:嚢胞性か、充実性か

新生児の腹部腫瘤では、エコーが最初の検査です。放射線を使わず、ベッドサイドで行えます。総説では、腎臓由来の腫瘤の大半と副腎の神経芽腫は、エコーで嚢胞性か充実性かに分けられるとされ、その後の検査は、腫瘤の種類に合わせて選びます。充実性の腎腫瘍で、腎静脈血栓の特徴がないときはCTが次の検査になりやすく、腎臓の機能や尿路の通りは核医学検査で調べます(McVicar 1991)。

エコーの所見 考える病気 次の検査の例
腎盂・腎杯が拡張した水腎症の形 水腎症(閉塞性尿路疾患) 尿路のエコーの経過観察、腎機能と尿の流れを調べる検査
大小の嚢胞が集まり、腎実質が乏しい 多嚢胞性異形成腎 反対側の腎・尿路の評価
腎の充実性腫瘤 先天性間葉芽腎腫、腎芽腫 CT・MRI
副腎の位置の腫瘤 神経芽腫、副腎出血 経過のエコー、尿の検査、MRI
肝臓の腫瘤 血管性腫瘍、肝芽腫、間葉性過誤腫 血流評価(ドプラ)、AFPなどの血液検査、MRI

腎・尿路が由来の腫瘤

水腎症

水腎症は、尿の流れが妨げられて腎盂・腎杯が拡張する状態です。1979〜1985年に診察された重い水腎症の新生児142人では、78%が胎児エコーで見つかり、原因は腎盂尿管移行部の閉塞が41%、遠位尿管の閉塞(主に原発性巨大尿管)が23%、重複腎の上半分の水腎症が13%、後部尿道弁が10%でした。同じ報告で、多嚢胞性異形成腎は17人、水腎症の8人に1人の割合でした。昔(1947〜1977年)は、腹部の腫瘤や尿路感染で見つかる例が中心でしたが、胎児エコーの普及で、症状のない時期に見つかるようになりました(Brown 1987)。水腎症のグレード分類とCTでの見方は水腎症とは?に書いています。

多嚢胞性異形成腎(MCDK)

腎臓が、互いにつながらない大小の嚢胞の塊になり、正常な腎実質がほとんど残らない先天性の病気です。胎児エコーで見つかることが多く、新生児期は大きな腹部腫瘤として触れることもあります。時間とともに小さくなる例が知られており、反対側の腎臓と尿路に異常がないかを調べるのが診療の中心です。詳しくは多嚢胞性異形成腎(MCDK)とは?を参照してください。

症例 生後5日男児 多嚢胞性異形成腎(MCDK)

多嚢胞性異形成腎 生後5日男児 左腎 超音波像
引用:Radiopaedia(Haouimi A, rID: 76822)

出生前の超音波で左腎の異常を指摘されていた男児の腎臓の超音波像です。互いにつながらない複数の大きな嚢胞が見られ、左の多嚢胞性異形成腎に典型的な所見とされています。症例ページでは、本症は左腎に多く、男児にやや多いと説明されています。

先天性間葉芽腎腫(CMN)と腎芽腫

新生児・乳児の腎臓の充実性腫瘍で最も多いのが先天性間葉芽腎腫です。切除された腎腫瘍101人のうち6か月以下は11人(11%)で、内訳は先天性間葉芽腎腫が7人、腎芽腫(Wilms腫瘍)が3人、腎の骨化性腫瘍が1人でした。10人が腹部腫瘤で見つかり、6人に高血圧がありました。診断時の平均年齢は72日で、全員がI期またはII期でした。追跡できた10人は無病で生存しています(Glick 2004)。腎芽腫については腎芽腫(Wilms腫瘍)の症状・CT所見にまとめています。

副腎が由来の腫瘤:神経芽腫と副腎出血

神経芽腫は、交感神経のもとになる細胞から出る腫瘍で、副腎に最も多く発生します。新生児の副腎の腫瘤は、神経芽腫だけでなく、副腎出血などの良性の病変との区別が問題になります。胎児期・新生児期の副腎腫瘤9人の報告では、神経芽腫が確認されたのは4人で、残りは良性病変4人と副腎皮質癌1人でした。6人は自然に小さくなり、4人は増大傾向や悪性の疑いなどから手術を受けています。この報告では、最初の画像所見よりも、時間とともに大きさがどう変わるかのほうが、方針の決定に役立ったとされています(Mastrangelo 2026)。ただし、症例が9人と少ないため、割合を一般化することはできません。神経芽腫の症状・転移・予後は神経芽腫の症状、画像診断、転移、予後を参照してください。

肝臓が由来の腫瘤:血管性腫瘍と肝芽腫

肝の血管性腫瘍:乳児血管腫と先天性血管腫

肝の血管腫は、乳児の肝臓の良性腫瘍で最も多いものです。画像では、限局型(1個)、多発型、びまん型の3つのパターンに分けられ、エコーが最初の検査です。腫瘤は低エコー(暗く)に見えることが多く、ドプラで、肝の血管の拡張、血流の増加、抵抗指数の低下が見られます。CTやMRIは、エコーで決まらないときの二次的な検査です(Esposito 2023)。

ここで大切なのが用語です。かつては「血管内皮腫」などと書かれた腫瘍が、今はISSVA(国際血管腫・血管奇形学会)分類に基づき、肝の乳児血管腫と先天性血管腫に分けて呼ばれます。文献によって用語が揺れているため、ISSVA分類で整理することが勧められています(Putra 2024、Esposito 2023)。

名前 特徴
乳児血管腫 生後数週間以内に現れ、生後しばらく大きくなってから小さくなる。多発例では皮膚の血管腫を伴うことがある
先天性血管腫 出生時にすでに完成した状態の腫瘤。急速に縮小するもの(RICH)、部分的に縮小するもの(PICH)、縮小しないもの(NICH)に分かれる

肝の先天性血管腫25人を長期に調べた報告では、8人(32%)が出生後に一度大きくなってから小さくなり、17人(68%)は出生後から一方的に小さくなりました。初期のエコーの特徴だけでは、どちらの経過をたどるかを予想できませんでした(Rutten 2022)。つまり、初回のエコーだけで経過を決めつけず、経過を追うことが大切です。

症例 生後22日男児 肝の血管腫(多発)

乳児肝血管腫 生後22日男児 肝臓の超音波像
引用:Radiopaedia(Thibodeau R, rID: 208410)

皮膚に複数の血管腫がある生後22日の男児の肝臓のエコーです。左肝に、周囲より暗い腫瘤が見えます(画像内の計測値は4.01cm)。症例ページでは、この所見を超音波で経過を見て、治療の前後に肝臓の病変の大きさと数が減っていったと説明されています。

肝芽腫

肝芽腫は小児で最も多い肝臓の悪性腫瘍で、診断は画像検査(エコー、CT、MRI)、血液のAFP(α-フェトプロテイン)、組織検査を組み合わせて行います(Cao 2024)。新生児はもともとAFPの値が高く、年齢とともに下がっていくため、数字は月齢に合わせて解釈します。肝芽腫の症状や分類は肝芽腫とは?を参照してください。

受診の目安:保護者の方へ

妊娠中の健診や新生児の診察でお腹のしこりを指摘されたら、不安になるかと思います。多くの先天性の腫瘤は、エコーで大まかに種類が分かり、経過を見ていく病気も少なくありません。お腹がだんだん張ってくる、哺乳が悪い、吐く、元気がない、息が苦しそう、尿が少ない、顔色が悪いなどがあるときは、すぐに小児科を受診してください。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q1. 新生児の腹部腫瘤は、がんが多いのですか?

いいえ。新生児期は腎臓や尿路の病気(水腎症、多嚢胞性異形成腎など)が多く、腫瘍は一部です(McVicar 1991)。腫瘍の中でも、先天性間葉芽腎腫のように予後のよい病気や、自然に小さくなる病変もあります(Glick 2004、Mastrangelo 2026)。

Q2. 最初の検査にCTを使わないのはなぜですか?

エコーは放射線を使わず、嚢胞性か充実性か、どの臓器かを調べるのに向いているからです。CTやMRIは、エコーで決まらないときや、腫瘍の広がりを調べるときに追加します。

Q3. 「血管内皮腫」と「血管腫」は同じものですか?

古い文献の「血管内皮腫」は、今のISSVA分類では乳児血管腫・先天性血管腫として整理されます。用語が混在しているため、診断書や文献では、どの名前が使われているかを確認してください(Putra 2024)。

Q4. 生後に見つかった腫瘤は、経過を見るだけでよいのですか?

病気によります。肝の先天性血管腫のように経過を追う病気もあれば、腫瘍の可能性があり詳しい検査が必要な腫瘤もあります。腫瘤のある赤ちゃんの方針は、画像と血液の検査をふまえて、小児科・小児外科などで決めます。

参考文献

  1. McVicar M, Margouleff D, Chandra M. Diagnosis and imaging of the fetal and neonatal abdominal mass: an integrated approach. Adv Pediatr. 1991;38:135-49. PubMed
  2. Brown T, Mandell J, Lebowitz RL. Neonatal hydronephrosis in the era of sonography. AJR Am J Roentgenol. 1987;148(5):959-63. PubMed
  3. Glick RD, Hicks MJ, Nuchtern JG, et al. Renal tumors in infants less than 6 months of age. J Pediatr Surg. 2004;39(4):522-5. PubMed
  4. Mastrangelo S, Fuccillo F, Maurizi P, et al. Conservative management of perinatal adrenal masses in a single institution retrospective study. Discov Oncol. 2026;17(1). PubMed
  5. Esposito F, D’Auria D, Ferrara D, et al. Hepatic hemangiomas in childhood: the spectrum of radiologic findings. A pictorial essay. J Ultrasound. 2023;26(1):261-276. PubMed
  6. Rutten C, Ladarre D, Ackermann O, et al. Spontaneous evolution patterns of focal congenital hepatic hemangiomas: a case series of 25 patients. Pediatr Radiol. 2022;52(6):1048-1060. PubMed
  7. Putra J, Kim GE. Diagnostic approach to hepatic vascular lesions: a paediatric perspective. Histopathology. 2024;85(6):835-845. PubMed
  8. Cao Y, Wu S, Tang H. An update on diagnosis and treatment of hepatoblastoma. Biosci Trends. 2024;17(6):445-457. PubMed

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