骨系統疾患の読み方 軟骨無形成症・ムコ多糖症の見る部位

子どもの全身のレントゲンで「骨系統疾患の疑い」と言われました。骨系統疾患とは何で、写真のどこを見て判断するのですか?
骨系統疾患は、骨や軟骨の形成・成長にかかわる遺伝性の病気の総称です。一つひとつはまれですが、全体では約5,000出生に1人とされ、放射線科医が日常診療でときどき出会います。写真では骨盤・脊椎・手・頭蓋などの「形の組み合わせ(パターン)」を見ます。見る部位とその理由、軟骨無形成症やムコ多糖症などの代表疾患の特徴を整理します。

先に結論:骨系統疾患は「どの骨のどんな形か」の組み合わせで家族(グループ)に分け、そのあと細かい所見で絞ります

項目 ポイント
骨系統疾患とは 骨・軟骨の形成や成長の遺伝性疾患。個々はまれだが全体では約5,000出生に1人(Handa 2023)
撮る順番の例 骨盤正面 → 胸腰椎の正面・側面 → 両手 →必要なら頭蓋側面・膝(Gajarajulu 2016)
読み方 パターンを見て「家族」に分類し、次に重症度の違いや目立たない所見まで観察する(Handa 2023)
代表疾患 軟骨無形成症、ムコ多糖症(dysostosis multiplex)、骨形成不全症、点状軟骨異形成症など
分類 国際分類は「Nosology of genetic skeletal disorders」2023年改訂(第11版)。771項目・552遺伝子(Unger 2023)

骨系統疾患とは

骨系統疾患(骨異形成症)は、骨や軟骨の形成にかかわる遺伝性疾患の総称で、400種類を超えるとされます。1つの病気はまれでも、全体では約5,000出生に1人の頻度です(Handa 2023)。放射線科の試験でもよく取り上げられますが、勉強する資料が少なく、苦手にする人が多い分野です(Handa 2022)。なお、病気の数は文献によって数え方が異なります。

現在の分類:Nosology 2023

国際的な分類は「Nosology of genetic skeletal disorders」で、2023年に第11版へ改訂され、771項目と552の遺伝子が収載されました。大きな変更点は、病気の表現型とその原因遺伝子を組み合わせて名前を付ける「dyadic naming(二つ組の命名)」を採用したことです。人名や通し番号に頼る呼び方より、情報量が多く間違いにくいと説明されています(Unger 2023)。この分類の病気と遺伝子の一覧は、診察で鑑別を考えるときや、遺伝子解析の結果を読むときの土台として使えるとされています(Unger 2023)。

画像診断の側からは、「パターンが似た病気を1つの家族としてまとめる」考え方が整理されています。代表的な家族として、dysostosis multiplex家族、軟骨無形成症家族、先天性脊椎骨端異形成症家族、Larsen症候群−otopalatodigital症候群家族があります。まず家族を決め、次に重症度の差や見落としやすい細かい所見を見て診断に近づけます(Handa 2023)。

全身骨撮影で見る部位とその理由

全身の骨を撮る検査(skeletal survey)では、すべての写真を同じ重みで見るのではなく、情報量の多い順に見ていくと効率的です。Gajarajulu 2016は、骨盤正面像から始め、胸腰椎の正面・側面像、両手の正面像の順に見ることを勧めています。頭蓋の側面像と両膝の正面像は必要に応じて追加します。骨盤の写真は骨盤だけでなく、腰椎の一部と大腿骨の上端(骨端・骨幹端・骨幹の一部)まで写るため、1枚で診断に至ることもあります。

部位 見ること 理由・疾患の例
骨盤正面 腸骨の大きさと形、坐骨切痕、寛骨臼の形、大腿骨近位の透亮・骨端の骨化 軟骨無形成症は骨盤だけで診断できることがある。ムコ多糖症では腸骨がコンマ状になる(Gajarajulu 2016、Handa 2022)
脊椎(正面・側面) 椎体の形(扁平・弾丸状・鉤状・洋梨状)、椎弓根間距離、脊柱管の幅 椎体の形はムコ多糖症・先天性脊椎骨端異形成症・軟骨無形成症で違う(Handa 2022)
両手 中手骨・指節骨の形、骨端の形、指の長さ 手の写真だけで手がかりが得られる疾患がある。ほかの目的で撮った手のX線が診断のきっかけにもなる(S DD 2024)
頭蓋(側面) 頭の大きさ、縫合、蝶形骨のトルコ鞍、縫合骨(Wormian bone) 骨形成不全症で縫合骨が多い。ムコ多糖症では頭蓋が厚くトルコ鞍がJ字状(Handa 2022)
胸郭・鎖骨 肋骨の幅と形、胸郭の大きさ ムコ多糖症は肋骨が幅広い(paddle状)。Jeune症候群は肋骨が短い(Handa 2022)
長管骨 骨幹端のカップ状変形、骨幹の太さ、弯曲、骨折の跡、骨の濃度 骨折を繰り返す病気か、骨の成長の病気かの手がかりになる(Handa 2022)

骨の読み方の基本は骨のレントゲンの見方|ABCSの読む順番にまとめています。子どもの頭蓋骨の見方は頭蓋骨のレントゲンの見方も参考になります。

骨盤正面像を最初に見る理由

骨盤の写真には、腸骨・寛骨臼・大腿骨近位・腰椎の一部が1枚で写ります。この領域は多くの骨系統疾患で変化が出るため、最初の手がかりになります。軟骨無形成症のようにこの1枚で診断できる病気もあれば、ムコ多糖症のように「この群だ」と見当をつけて脊椎と手で確かめる使い方もできます。大腿骨の上端の形から、骨端異形成や骨幹端異形成の手がかりが得られることもあります(Gajarajulu 2016)。

脊椎で見る形

側面像で椎体の形を見ます。扁平な椎体(platyspondyly)、前縁が弾丸のように丸い椎体、前下方に鉤状に突出する椎体、後ろの骨化が遅れて洋梨のように見える椎体など、疾患ごとに特徴があります(Handa 2022)。正面像では椎弓根間距離(左右の椎弓根の間隔)を見ます。正常では腰椎の下の方ほど広がりますが、軟骨無形成症では広がらず、脊柱管が狭くなります(Handa 2022)。なお、一部の椎体だけに起こる形成異常は半椎体や蝶形椎体などに分けられ、全身の骨系統疾患とは考え方が異なります。

手で見る形

手の写真は、骨盤とは別の角度から診断を支えます。軟骨無形成症では第3指と第4指を合わせられない「trident hand(三叉手)」、ムコ多糖症では中手骨の基部が細くとがる所見と弾丸状の指節骨、偽性副甲状腺機能低下症(Albright遺伝性骨異栄養症)では第4・5中手骨が短い所見などがあります(Handa 2022)。ただし手の写真は全身骨撮影の代わりにはならず、診断の手がかりを与える位置づけです(S DD 2024)。

代表疾患ごとの特徴的所見

疾患 骨盤・脊椎・長管骨 手・頭蓋・胸郭など
軟骨無形成症 腸骨が小さく坐骨切痕が短い。寛骨臼が三叉状。大腿骨近位の卵円形の透亮(新生児・乳児では特徴的)。弾丸状の扁平な椎体、椎弓根間距離が尾側で広がらない、脊柱管が狭い。管状骨は短く太く、骨幹端がカップ状 trident hand。大きな頭蓋。狭い胸郭
ムコ多糖症(dysostosis multiplex) 腸骨がコンマ状。鉤状の椎体と後方のscalloping。長管骨は骨幹が太く骨幹端が細い 中手骨基部の尖り、弾丸状の指節骨、厚い鎖骨、幅広い肋骨、厚い頭蓋とJ字状トルコ鞍
骨形成不全症 全身の骨粗鬆症と多発骨折 多数の縫合骨、大泉門の開大。重症型では肋骨が数珠状、長管骨が蛇腹状
点状軟骨異形成症 骨端軟骨の点状の石灰化(骨端に目立つ) 足根骨・指節骨の点状陰影、鼻上顎の低形成(Binder顔貌)。2〜4歳ごろに不整な骨端骨化へ変わる

(Handa 2022)

軟骨無形成症

軟骨無形成症は最も多い短肢型の骨系統疾患で、FGFR3遺伝子の機能獲得変異で起こります。患者さんの99%を超える人が同じ変異を持つため、症状も画像も揃っています(Handa 2022)。軟骨内骨化が障害される一方、膜内骨化は保たれるため、管状骨は短くて太くなります。新生児・乳児の大腿骨近位に見える卵円形の透亮は特徴的な所見です(Handa 2022)。

「rhizomelic(近位が短い)」という言葉は軟骨無形成症の説明によく使われますが、乳児の骨格撮影22例を調べた研究では、橈骨/上腕骨の長さの比は軟骨無形成症で0.87、正常対照で0.79と有意に高く(上腕が短い)、脛骨/大腿骨の比は0.84と0.83で差がありませんでした。上肢では近位が短い一方、下肢では当てはまらなかったと報告されています(Shelmerdine 2016)。

臨床では、生後に大後頭孔(頭蓋と脊柱の境の穴)が急速に狭くなり、水頭症、無呼吸、四肢麻痺などの原因になることがあると整理されています(Handa 2022)。

症例 4か月男児 軟骨無形成症の骨盤X線

軟骨無形成症 骨盤X線 正面像
引用:Radiopaedia(Achondroplasia – pelvis x-ray)

症例ページでは、軟骨無形成症の骨盤X線の典型的な見え方とされています。小さな腸骨や大腿骨近位の透亮など、本文の表の所見を骨盤の1枚で確かめられます。この症例は、Radiopaediaの「tombstone iliac wings(墓石様の腸骨翼)」の記事にも使われています。

ムコ多糖症(dysostosis multiplex)

ムコ多糖症は、グリコサミノグリカンを分解する酵素が働かないリソソーム蓄積症で、どの型でも重症度は違ってもdysostosis multiplex(多発性骨異形成)と呼ばれる骨格変化を示します。臨床では特徴的な顔貌、角膜混濁、低身長、肝脾腫がみられます。画像の主な所見は、厚い頭蓋とJ字状のトルコ鞍、厚い鎖骨、幅広い肋骨(paddle状・オール状)、後方がえぐれた鉤状の椎体、コンマ状の腸骨、骨幹が太く骨幹端が細い長管骨、中手骨基部の尖り、弾丸状の指節骨です(Handa 2022)。

Morquio症候群(IV型)では、これらに加えて歯突起の低形成、椎体の変形、急な寛骨臼などが典型的に挙げられ、脊髄の圧迫による脊髄症が重要な合併症です(Padash 2023)。

骨のX線は診断のきっかけにもなります。ある病院で、他の理由(感染・外傷・低身長など)で撮られた15,104例の骨X線を小児放射線科医が見直した研究では、67人にdysostosis multiplexがあり、そのうち7人がムコ多糖症と新たに診断されました。診断時の年齢は平均46.2か月(範囲20〜111か月)でした(Bilgin 2024)。臨床症状が目立つ前に、X線の所見が気づきの手がかりになりえます。

引用図 ハーラー症候群(ムコ多糖症I型)の骨X線 11歳男児

ハーラー症候群 dysostosis multiplex 胸部・骨盤・脊椎・手のX線 論文の図
引用:Handa A, Nishimura G, Zhan MX, et al. A primer on skeletal dysplasias. Jpn J Radiol. 2022;40(3):245-261 (Figure 6). PMC、CC BY 4.0

論文の図では、a胸部で厚い鎖骨と幅広い(paddle状)肋骨、b骨盤でコンマ状の腸骨と長管骨の骨幹端のくびれ、c脊椎側面で鉤状の椎体(矢印)と後方のscalloping、d手で中手骨基部の尖り(矢頭)と弾丸状の指節骨が示されています。

骨形成不全症

骨形成不全症は、I型コラーゲンの異常による「遺伝性の骨粗鬆症」で、多くはCOL1A1またはCOL1A2の変異による常染色体顕性(優性)遺伝です。画像では全身の骨粗鬆症と多発骨折、頭蓋の骨化の遅れによる多数の縫合骨と大泉門の開大がみられます。重症型では胎内での骨折により肋骨が数珠状、長管骨が蛇腹状に見えます(Handa 2022)。詳しい所見は骨形成不全症とは?レントゲン所見とWormian bone・青色強膜をご覧ください。軽症型と被虐待児の鑑別は難しいことがあり、古典的骨幹端病変・複雑な頭蓋骨折・後方肋骨骨折は虐待を、多数の縫合骨・頭蓋の変形・骨粗鬆症は骨形成不全症を支持する所見とされます(Handa 2022)。

点状軟骨異形成症

骨端軟骨に点状の石灰化(stippled epiphyses)が見える一群で、Conradi−Hünermann型、近位肢型(rhizomelic)、短指趾(brachytelephalangic)型などがあり、原因遺伝子も異なります。どの型でも鼻上顎の低形成(Binder顔貌)を伴います。点状陰影は出生から2〜4歳ごろに見え、その後に不整な骨端骨化(骨端異形成)へ変わります。ワルファリン胎芽病や母体の膠原病でも点状陰影が出て、短指趾型に似ることがあります(Handa 2022)。

似た所見で迷うときの見分け方

迷う組み合わせ 見分けの手がかり
軟骨無形成症とJeune症候群(窒息性胸郭異形成) どちらも腸骨が三叉状。Jeune症候群は肋骨が著しく短く、大腿骨近位の骨端の骨化が早い。椎弓根間距離の尾側での狭小化と大腿骨近位の卵円形透亮はない(Handa 2022)
骨形成不全症と低ホスファターゼ症 どちらも骨が弱いが、縫合骨があるのは骨形成不全症。低ホスファターゼ症は骨幹端から骨幹へ伸びる舌状の透亮が特徴(Handa 2022)
骨形成不全症と虐待による骨折 骨幹端病変・複雑な頭蓋骨折・後方肋骨骨折は虐待寄り。縫合骨・骨粗鬆症は骨形成不全症寄り(Handa 2022)
点状軟骨異形成症と母体疾患・薬剤 ワルファリン胎芽病や母体の膠原病でも点状陰影が出る(Handa 2022)

初心者向けチェックリスト

  • まず全体像:頭の大きさ、胸郭の大きさ、四肢と体幹の長さのバランスを見る。
  • 骨盤で腸骨・寛骨臼・大腿骨近位を見る。1枚で診断できる疾患がある。
  • 脊椎は側面で椎体の形、正面で椎弓根間距離を見る。
  • 手は指節骨と中手骨の形、骨端の形を見る。
  • 骨の弱さの病気(骨粗鬆症・骨折・縫合骨)と、骨の成長・形の病気(短く太い骨・カップ状の骨幹端)に分けて考える。
  • 見たパターンから「家族」を決め、そのあと軽症・重症の差や細かい所見で絞る(Handa 2023)。
  • 他の目的で撮った胸部・手・骨盤のX線にも注意する。ムコ多糖症では偶然の発見例がある(Bilgin 2024)。

よくある疑問(Q&A)

Q. 骨系統疾患はレントゲンだけで診断できますか?
A. 特徴的なパターンから診断に近づける疾患があります(Handa 2022)。一方、国際分類は病気の表現型と原因遺伝子を組み合わせて名前を付ける方式に変わっており、遺伝子の情報も診断で重視されています(Unger 2023)。

Q. 手のレントゲンだけで分かる疾患はありますか?
A. 手の写真だけで診断の手がかりが得られる疾患はありますが、全身骨撮影の代わりにはならないとされています(S DD 2024)。

Q. 軟骨無形成症の「近位が短い」は本当ですか?
A. 乳児の研究では、上肢では近位(上腕)が短い比率の差が確認されましたが、下肢では差がありませんでした(Shelmerdine 2016)。

Q. 子どもの成長が気になるときは?
A. 身長の伸びや手足の形が気になる場合は、小児科や整形外科で相談してください。

参考文献

  1. Unger S, Ferreira CR, Mortier GR, et al. Nosology of genetic skeletal disorders: 2023 revision. Am J Med Genet A. 2023;191(5):1164-1209. PubMed
  2. Handa A, Nishimura G, Zhan MX, et al. A primer on skeletal dysplasias. Jpn J Radiol. 2022;40(3):245-261. PubMed
  3. Handa A, Grigelioniene G, Nishimura G. Skeletal dysplasia families: a stepwise approach to diagnosis. Radiographics. 2023;43(5):e220067. PubMed
  4. Gajarajulu V, Natarajan B, Muralinath S. The radiograph of the pelvis as a window to skeletal dysplasias. Indian J Pediatr. 2016;83(6):543-552. PubMed
  5. Bilgin H, Ayaz E. The importance of skeletal x-ray screening for dysostosis multiplex in the early diagnosis of mucopolysaccharidosis. Clin Imaging. 2024;105:110018. PubMed
  6. Padash S, Obaid H, Henderson RDE, et al. A pictorial review of the radiographic skeletal findings in Morquio syndrome (mucopolysaccharidosis type IV). Pediatr Radiol. 2023;53(5):971-983. PubMed
  7. Shelmerdine SC, Brittain H, Arthurs OJ, et al. Achondroplasia: really rhizomelic? Am J Med Genet A. 2016;170(8):2039-2043. PubMed
  8. S DD, Chandola S, Jain A, et al. Hand radiographs in skeletal dysplasia: a pictorial review. Indian J Radiol Imaging. 2024;34(2):291-308. PubMed

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