
先に結論:たこつぼ心筋症は「血管の支配域を超えた壁運動異常」と「MRIの浮腫+LGEなし」。最終的には冠動脈の評価と経過で診断する
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 心エコー・左室造影 | 心尖部がふくらみ、動きが悪い(apical ballooning)。中部型・基部型などもある |
| 心臓MRI | 壁運動異常の部位に浮腫があり、LGEは通常ない。心筋炎や心筋梗塞との区別に役立つ |
| 心筋梗塞との違い | 動きの悪い範囲が冠動脈1本の支配域に収まらないことが多い。確定には冠動脈の評価が必要 |
| 経過 | 左室機能は多くが回復する。診断は「回復の確認」も含めて考える |
たこつぼ心筋症(たこつぼ症候群)とは
たこつぼ心筋症(takotsubo syndrome:TTS)は、急に左心室の収縮が悪くなる、一過性の心臓の病気です。胸痛や息切れ、失神など、急性心筋梗塞とよく似た症状で発症します(Ghadri 2018 Part I)。
国際的な専門家の合意文書(InterTAK、2018年)では、次のような特徴が示されています(Ghadri 2018 Part I)。
- ST上昇型心筋梗塞が疑われて受診する患者さんの約1〜3%、女性では5〜6%を占める。
- 患者さんの約90%は女性で、平均年齢は67〜70歳。
- 感情的・身体的なストレスが引き金になることがあるが、引き金がないこともある。
- 再発は1人あたり年1.8%と推定される。
診断の考え方(InterTAK診断基準)
InterTAK診断基準(2018年)では、一過性の左室機能異常(心尖部のふくらみ、または中部・基部・局所の壁運動異常)があることが中心になります。壁運動異常は、通常は冠動脈1本の支配域を超えて広がります。心電図の変化や心筋トロポニンなどの心筋マーカーの中等度の上昇がみられ、有意な冠動脈疾患があっても診断を否定しません。診断には感染性心筋炎がないことが必要で、確認のために心臓MRIが勧められています(Ghadri 2018 Part I)。
注意したいのは、冠動脈に狭窄が合併していても、たこつぼ心筋症は否定されない点です。合併の頻度は10〜29%とされています(Ghadri 2018 Part I)。
画像検査ごとの見え方
| 検査 | 何がわかるか | ポイント |
|---|---|---|
| 左室造影(冠動脈造影と同時) | 心尖部のふくらみ、収縮の悪い範囲 | ST上昇があれば緊急で冠動脈造影と左室造影を行い、心筋梗塞を除外する(Ghadri 2018 Part II) |
| 心エコー | 壁運動の異常パターン、左室流出路の圧較差 | ベッドサイドで行え、急性期の評価に向く |
| 心臓MRI | 浮腫、LGE、右室の関与、血栓・心嚢液 | 心筋炎や心筋梗塞との区別。急性期は難しく、亜急性期に有用(Ghadri 2018 Part II) |
| 冠動脈CT | 冠動脈の狭窄の有無 | 安定した患者さんで、冠動脈疾患を除外する目的に用いられる(Ghadri 2018 Part II) |
左室造影・心エコーの所見
左室造影や心エコーでは、拡張期から収縮期にかけて心尖部が風船のようにふくらみ、動きが悪くなる心尖部バルーニング(apical ballooning)が典型です(Ghadri 2018 Part II)。典型的な心尖部バルーニングの患者さんの約3分の1では、最も先端に収縮が保たれた小さな部分が残り、apical nipple signと呼ばれます(Ghadri 2018 Part II)。また、約20%の患者さんで左室流出路の閉塞(LVOTO)がみられるため、圧較差の評価が勧められています(Ghadri 2018 Part II)。
壁運動異常のパターン
たこつぼ心筋症は、心尖部だけが動かない型ばかりではありません。256人の多施設研究のうち、心臓MRIを撮影できた239人で、動きの悪い部位は心尖部型が82%、両心室型が34%、中部型が17%、基部型が1%でした(Eitel 2011。両心室型は他の型と重複)。
| 型 | 動きの悪い部位 | メモ |
|---|---|---|
| 心尖部型(典型) | 心尖部〜中部 | 最も多い。「たこつぼ」の形になる |
| 中部型 | 左室の中部 | 輪状に動きが悪く、カフのように見えることがある |
| 基部型 | 左室の基部 | まれ。くも膜下出血、エピネフリン、褐色細胞腫に関連する報告がある |
| 局所型 | 前側壁など一部 | 心筋炎・心筋梗塞との区別に心臓MRIが必要(Ghadri 2018 Part II) |
(Ghadri 2018 Part II)
症例 60歳女性 たこつぼ心筋症(心エコー)

引用:Radiopaedia(Takotsubo cardiomyopathy (echocardiography))
心尖部四腔像で、矢印の部位(左室心尖部)が膨らんで動きが著しく悪くなっています。症例ページでは、心尖部の高度な壁運動低下とふくらみがあり、左室駆出率は目視で約30%と著しく低下していると記載されています。この患者さんは、支持的な治療で回復し、3週間後の心エコーでは心尖部の収縮が改善し、左室駆出率は約50%に回復したと報告されています。
心臓MRI:浮腫があり、LGEは通常ない
心臓MRIは、動きの異常を調べるだけでなく、心筋の性質(組織性状)を見られるのが強みです。2011年の多施設研究では、たこつぼ心筋症は、典型的な左室の動きの異常、心筋の浮腫、有意な壊死・線維化がないこと、そして心筋の炎症を示すマーカーという組み合わせで診断できると示されました(Eitel 2011)。1〜6か月後の再検では、左室駆出率は平均48%から66%に回復し、有意な線維化は全例で見られませんでした(Eitel 2011)。
| MRIの所見 | たこつぼ心筋症での見え方 |
|---|---|
| シネMRI | 典型的な壁運動異常(心尖部のふくらみなど) |
| T2強調像・STIR | 動きの悪い部位に浮腫(高信号)がある |
| 遅延造影(LGE) | 通常はない |
国際合意文書は、動きの悪い部位にLGEがないことが、たこつぼ心筋症を急性冠症候群や多くの急性心筋炎と区別する手がかりになるとしています(Ghadri 2018 Part II)。
心臓MRIはたこつぼ心筋症の診断と経過観察に有用で、特に急性心筋梗塞や急性心筋炎との区別に役立つとする総説があります(Abbas 2016)。右室の関与は、心エコーより心臓MRIのほうが見つけやすいとされています(Ghadri 2018 Part II)。
LGEがある人もいる
一方で、LGEが「全くない」わけではありません。たこつぼ心筋症の患者さん370人(症状が出てから10日以内にMRIを撮影)を調べた多施設研究では、58人(15.7%)にLGEが認められました。LGEがあることは、症状からMRIまでの日数が短いことと、T2強調像の浮腫が広いことに関連していました(Cau 2026)。LGEの有無だけで診断を決めず、壁運動、浮腫、冠動脈、経過を合わせて考えることが大切です(Cau 2025の総説も参照)。
急性冠症候群・心筋炎との見分け方
たこつぼ心筋症は、症状も心電図も心筋梗塞と区別がつきにくいため、画像での区別が大切です(Ghadri 2018 Part I)。
| 項目 | たこつぼ心筋症 | 急性冠症候群(心筋梗塞) | 急性心筋炎 |
|---|---|---|---|
| 壁運動異常の範囲 | 冠動脈1本の支配域を超えることが多い | 責任血管の支配域に一致する | 症例により異なる |
| 冠動脈 | 有意な狭窄がないことが多い(ある場合もある) | 責任病変がある | 原因は冠動脈の閉塞ではない |
| MRIのLGE | 通常ない | 血管の支配域に一致する心内膜下〜貫壁性 | 心外膜側・まだら状のことが多い(全例ではない) |
| MRIの浮腫 | 動きの悪い部位にある | 梗塞の部位にある | 炎症のある部位にある |
| 経過 | 左室機能は回復することが多い | 壊死した心筋は線維化として残る | 原因や重症度により異なる |
LGEのパターンの違い(梗塞では血管の支配域に一致する心内膜下〜貫壁性、心筋炎では心外膜側・まだら状)は、国際合意文書に記載されています(Ghadri 2018 Part II)。心臓MRIの読み方は、心臓MRIの遅延造影(LGE)とは?パターンでわかる心筋梗塞・心筋症・心筋炎、心筋バイアビリティ評価、梗塞後の変化は陳旧性心筋梗塞のCT画像所見も参考にしてください。
臨床スコアも補助になる
InterTAK診断スコアは、急性期にたこつぼ心筋症と急性冠症候群を区別する7項目のスコアです。女性、感情的な引き金、身体的な引き金、ST低下がない(aVR誘導を除く)、精神疾患、神経疾患、QTc延長が項目で、40点をカットオフにすると感度89%、特異度91%でした(Ghadri 2017)。国際合意文書(2018年)では、70点を境に、70点以上を高確率、それ以下を低〜中等度の確率として、検査の流れに組み込んでいます(Ghadri 2018 Part II)。ただし、スコアは画像診断の代わりではなく、診断の確率を見積もる補助です。
診断までの流れ
国際合意文書(2018年)が示す流れは、おおよそ次のとおりです(Ghadri 2018 Part II)。
| 状況 | 勧められる検査 |
|---|---|
| ST上昇がある | 緊急で冠動脈造影と左室造影を行い、急性心筋梗塞を除外する |
| ST上昇がない | InterTAK診断スコアを考慮する。確率が低〜中等度なら冠動脈造影と左室造影、高ければ心エコーを考慮する |
| 安定していて、全周性のバルーニングがある | 冠動脈CTで冠動脈疾患を除外することが好まれる |
| 不安定な患者さん | 心エコーで左室流出路閉塞などの合併症を評価し、冠動脈造影で心筋梗塞を除外する |
実際の流れは、患者さんの状態や施設の体制によって異なります。
他の心筋症との違い
心尖部の動きが悪くなる病気には、心尖部肥大型心筋症などもあります。肥大型心筋症の画像は肥大型心筋症の画像診断で解説しています。心筋シンチで脂肪酸代謝を見る検査(BMIPP)でのたこつぼ心筋症の位置づけは、BMIPP心筋シンチとはで解説しています。
よくある疑問(Q&A)
Q. たこつぼ心筋症は治りますか?再発しますか?
A. 256人の研究では、1〜6か月後の再検で左室駆出率が平均66%に回復しました(Eitel 2011)。再発は1人あたり年1.8%と推定されています(Ghadri 2018 Part I)。
Q. 男性や若い人にもありますか?
A. 患者さんの約90%が女性で、平均年齢は67〜70歳ですが、男性や若い人にも起こります(Ghadri 2018 Part I)。256人の研究でも男性は11%、50歳以下の女性は8%でした(Eitel 2011)。
Q. 冠動脈に狭窄があるとたこつぼ心筋症ではありませんか?
A. 冠動脈疾患の合併はたこつぼ心筋症の診断を否定しません。合併は10〜29%とされ、このときは動きの悪い範囲が支配域を超えているかなどを丁寧に比べます(Ghadri 2018 Part I)。
Q. 心臓MRIは全員に行うのですか?
A. 国際合意文書は、感染性心筋炎の除外と診断の確認のために心臓MRIを勧めています(Ghadri 2018 Part I)。ただし、急性期のすぐには撮りにくく、亜急性期に撮ることも多いとされています(Ghadri 2018 Part II)。実際の検査は主治医の判断に従ってください。
胸の痛みや息苦しさなど気になる症状があるときは、早めに医療機関を受診してください。
参考文献
- Ghadri JR, Wittstein IS, Prasad A, et al. International Expert Consensus Document on Takotsubo Syndrome (Part I): Clinical Characteristics, Diagnostic Criteria, and Pathophysiology. Eur Heart J. 2018;39(22):2032-2046. PubMed
- Ghadri JR, Wittstein IS, Prasad A, et al. International Expert Consensus Document on Takotsubo Syndrome (Part II): Diagnostic Workup, Outcome, and Management. Eur Heart J. 2018;39(22):2047-2062. PubMed
- Eitel I, von Knobelsdorff-Brenkenhoff F, Bernhardt P, et al. Clinical characteristics and cardiovascular magnetic resonance findings in stress (takotsubo) cardiomyopathy. JAMA. 2011;306(3):277-86. PubMed
- Ghadri JR, Cammann VL, Jurisic S, et al. A novel clinical score (InterTAK Diagnostic Score) to differentiate takotsubo syndrome from acute coronary syndrome: results from the International Takotsubo Registry. Eur J Heart Fail. 2017;19(8):1036-1042. PubMed
- Abbas A, Sonnex E, Pereira RS, et al. Cardiac magnetic resonance assessment of takotsubo cardiomyopathy. Clin Radiol. 2016;71(1):e110-9. PubMed
- Cau R, Arcari L, Pontone G, et al. Late Gadolinium Enhancement on Cardiac MRI in Patients With Takotsubo Syndrome: Insights From the Multicenter EVOLUTION Registry. AJR Am J Roentgenol. 2026;226(6):e2634546. PubMed
- Cau R, Suri JS, Saba L. Late Gadolinium Enhancement in Takotsubo Syndrome: Mechanism and Its Clinical Significance. Echocardiography. 2025;42(12):e70321. PubMed
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