心臓MRI検査のうち、瘢痕や梗塞の描出に優れている撮像法に遅延造影があります。
今回は、この心臓MRI検査における遅延造影検査について
- どんなものか
- 適応
- パターンからわかる疾患
- 注目される理由
をまとめてみました。
先に結論:心臓MRIの遅延造影(LGE)
- 造影剤を注射して10〜15分後に撮ると、正常な心筋は黒く、傷んで線維化した心筋(梗塞・瘢痕)には造影剤が残って白く写ります。これが遅延造影(LGE)です
- 白くなる場所の形で原因を推定でき、心内膜側から広がる(冠動脈の支配に一致)なら心筋梗塞、壁の真ん中や外側なら心筋炎・肥大型/拡張型心筋症・サルコイドーシスなど、心内膜下にびまん性ならアミロイドーシスを考えます
- 遅延造影の範囲は不整脈や予後のリスク評価、治療方針(血行再建の効果予測など)にも役立ちます。心筋梗塞では、遅延造影の壁の厚さに対する割合(貫壁性)から、血行再建で動きが回復するか(心筋バイアビリティ)を予測できます(50%未満なら回復が期待できる)
- T2強調像の高信号は急性期のむくみを示し、心筋梗塞が急性か陳旧性かの区別に役立ちます
遅延造影検査とは?
正常な心筋の場合、ガドリニウムというMRI造影剤を注入すると、速やかに造影され、洗い出し(wash out)されます。
ところが、瘢痕や梗塞に陥った心筋には、造影剤が残ってしまいます。
これを利用したのが遅延造影です。

具体的には、ガドリニウム造影剤を投与して10-15分後に撮影します。
この間に正常な心筋の造影剤は洗い出し(wash out)されます。正常な心筋の染まりをゼロにするのが重要です。
この検査のメリットは、検査時間が短いということ、薬剤の負荷の必要がないということです。
遅延造影MRIの適応は?
遅延造影MRIの適応疾患ですが、
- 虚血性心疾患:心筋虚血(狭心症)、心筋梗塞
- 心筋症:肥大型心筋症、拡張型心筋症、不整脈源性心筋症、サルコイドーシス、アミロイドーシス、薬剤性心筋症など
- 心筋炎
- 心臓腫瘍
- 心膜炎
などがあります。
遅延造影のパターンからわかる疾患とは?
もちろん大事なのは臨床症状で、症状ありきですが、その上で、遅延造影のパターンからどのような心疾患が疑わしいかある程度診断することができます。
適応疾患は大きく、虚血性心疾患かそうでない非虚血性心疾患に分けることができます。
(下の模式図はいずれもKaramitsos et al. JACC 54;1407-24,2009を引用改変しています。)
虚血性心疾患の場合

このように虚血性心疾患の場合、心筋梗塞は心内膜下から進行していくのが特徴で、遅延造影においてもその様子を描出することができます。遅延造影は冠動脈の支配域に一致して広がります。
心筋梗塞の遅延造影MRI
旧版の冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン(JCS2009)では、造影MRIは、
- 安定狭心症による心筋虚血の検出についてはレベルB
- 血行再建前の遅延造影MRIによる心筋バイアビリティ評価はレベルB
としていました。
- 遅延造影MRIは心筋の組織学的な梗塞領域と高い相関関係があり、高い空間分解能とコントラストを持って、内膜下梗塞であっても描出することが可能です。
- 急性期心筋梗塞であっても、陳旧性の心筋梗塞であっても、高信号領域=造影効果を有する部位として描出されます。
- 一方で、T2強調像における高信号は心筋浮腫を反映し、実際の梗塞領域よりも広い範囲におよび、また急性期の心筋梗塞のみ高信号となります。
- 無症候性の心筋梗塞にも造影MRIは有用です。心筋梗塞の臨床的既往がない糖尿病患者でも約3割(28%)に遅延造影を認め、その存在は心事故・死亡の強い予測因子と報告されています。そのためハイリスク群ではスクリーニングにも遅延造影MRIを使うことができます。
※ちなみに核医学では右室梗塞や内膜下梗塞は評価しにくいところです。実際にSPECTと遅延造影MRIを比べた研究では、MRIで見つかった心内膜下梗塞181区域のうち85区域(47%)をSPECTは検出できず、患者単位でも13%はSPECTで梗塞の所見がありませんでした。
非虚血性心疾患の場合
中層優位に遅延造影を認める疾患

- 拡張型心筋症
- 肥大型心筋症
- 右室負荷
- サルコイドーシス
- 心筋炎
などにおいて中層優位に遅延造影を認めます。
外膜側優位に遅延造影を認める疾患

- サルコイドーシス
- 心筋炎
で外膜側優位に遅延造影を認めます。
これらはともに中層優位に認めることもあるので、サルコイドーシス、心筋炎は中層優位〜外膜側優位に遅延造影を認める疾患として分類しておきましょう。なお、心筋炎のMRI診断基準(Lake Louise Criteria)は2018年に改訂され、T2値上昇やT2強調像の高信号といった浮腫を示すT2系の所見と、T1値上昇・細胞外容積(ECV)上昇・遅延造影といったT1系の所見を少なくとも1つずつ満たすと、心筋の炎症を強く示唆するとされました。どちらか一方だけでも臨床状況が合えば診断を支持しますが、特異度は下がります。
全心内膜下に遅延造影を認める疾患

- アミロイドーシス
- 心移植後
で、全心内膜下に遅延造影を認めます。
遅延造影がなぜ注目されているのか?
一つは上のように、遅延造影されるパターンから、心疾患を診断できることがあるという点です。
心内膜優位なのか、外膜優位なのか、あるいは中層優位なのか、これらが判別できるのは、遅延造影MRIの空間分解能が高いからに他なりません。
これまでのシンチグラフィでは、全層に及ぶような梗塞ならば診断できますが、このような細かな判別はほとんどできません。
また、心筋梗塞において、遅延造影は、予後にも大きく関与します。
遅延造影される壁が厚いほど、心筋のviabilityは低くなり、50%以上の壁厚の遅延造影では心筋viabilityがないという報告(Kim et al.NEJM 2000;343:1445-53)もあります。この研究では血行再建前に造影MRIを撮影した50例で、遅延造影の壁内深達度が大きいほど、血行再建後に壁運動が改善する可能性が段階的に低下しました。遅延造影のない収縮低下部位の78%で壁運動が改善した一方、壁厚の75%を超える遅延造影部位ではほとんど改善しませんでした。
遅延造影MRIにおける梗塞の有無は、将来の心臓死や重大な心事故の発生と密接な相関を有し、予後予測とリスク層別化に役立つと報告されています。
虚血性心疾患だけでなく、拡張型心筋症、心サルコイドーシスにおいても、遅延造影はのちの心血管イベントに関与していると報告されています。
遅延造影される範囲が広いほど予後が悪くなるのです。
参考文献
- Kim RJ, Wu E, Rafael A, et al. The use of contrast-enhanced magnetic resonance imaging to identify reversible myocardial dysfunction. N Engl J Med. 2000;343(20):1445-1453. PubMed
- Karamitsos TD, Francis JM, Myerson S, et al. The role of cardiovascular magnetic resonance imaging in heart failure. J Am Coll Cardiol. 2009;54(15):1407-1424. PubMed
- Mahrholdt H, Wagner A, Judd RM, et al. Delayed enhancement cardiovascular magnetic resonance assessment of non-ischaemic cardiomyopathies. Eur Heart J. 2005;26(15):1461-1474. PubMed
- Ferreira VM, Schulz-Menger J, Holmvang G, et al. Cardiovascular Magnetic Resonance in Nonischemic Myocardial Inflammation: Expert Recommendations. J Am Coll Cardiol. 2018;72(24):3158-3176. PubMed
- Kramer CM, Barkhausen J, Bucciarelli-Ducci C, et al. Standardized cardiovascular magnetic resonance imaging (CMR) protocols: 2020 update. J Cardiovasc Magn Reson. 2020;22(1):17. PubMed
- Kwong RY, Sattar H, Wu H, et al. Incidence and prognostic implication of unrecognized myocardial scar characterized by cardiac magnetic resonance in diabetic patients without clinical evidence of myocardial infarction. Circulation. 2008;118(10):1011-20. PubMed
- Wagner A, Mahrholdt H, Holly TA, et al. Contrast-enhanced MRI and routine single photon emission computed tomography (SPECT) perfusion imaging for detection of subendocardial myocardial infarcts: an imaging study. Lancet. 2003;361(9355):374-9. PubMed
- Nakano S, Kohsaka S, Chikamori T, et al. JCS 2022 Guideline Focused Update on Diagnosis and Treatment in Patients With Stable Coronary Artery Disease. Circ J. 2022;86(5):882-915. PubMed
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