腸間膜リンパ節炎 子どもの腹痛:虫垂炎との見分け方

子どもがお腹が痛いと言い、エコーで「腸間膜リンパ節が腫れている」と言われました。虫垂炎ではないのでしょうか?手術は必要ですか?
腸間膜リンパ節炎は、おへその右下あたりの腸間膜(腸を支える膜)にあるリンパ節が腫れて、虫垂炎に似た腹痛を起こす状態です。大切なのは、手術が必要な虫垂炎ではないことを画像で確かめることです。エコーとCTで何を見るのか、虫垂炎や回腸末端炎との違いを整理します。

先に結論:右下腹部のリンパ節の腫れ+「虫垂が正常」が決め手。リンパ節が見えるだけで病気とは限らない

項目 ポイント
何か 右下腹部の腸間膜リンパ節が腫れて腹痛を起こす状態。虫垂炎に似た症状で受診する子どもが多い
画像の目安 右下腹部にリンパ節が3個以上集まり、短径が5mm以上(Macari 2002)。ただし子どもでは5〜10mmは健康な子でも珍しくない(Karmazyn 2005)
見分けの決め手 虫垂が正常で、周囲に炎症がないこと。虫垂が腫れて押しても潰れなければ虫垂炎(Vignault 1990)
回腸末端炎との関係 Yersinia(エルシニア)感染などで、リンパ節炎と回腸末端炎が一緒に見られる(Fonnes 2022)
検査の順番 まずエコー。迷うときにCTやMRIを追加する(Swenson 2018)

腸間膜リンパ節炎とは

リンパ節は、細菌やウイルスなどの異物から体を守る小さな関所で、腸のまわりの腸間膜にもたくさんあります。腸の感染や炎症に反応してリンパ節が腫れ、お腹の痛みの原因になることがあります。これが腸間膜リンパ節炎(mesenteric lymphadenitis、mesenteric adenitis)です。

特に右下腹部のリンパ節が腫れやすく、右下腹部痛を訴えるため虫垂炎と間違えられやすいのが特徴です。エコーで腸間膜リンパ節炎と診断された子ども33人の検討では、年齢の中央値は9歳で、エコーを行った理由は虫垂炎の疑い、腸重積の疑い、原因のはっきりしない腹痛などでした。その後4週間の経過では、手術が必要な腹部の病気で再受診したのは1人でした(Tsung 2024)。ただし腸間膜リンパ節炎は、手術が必要な病気を除いたうえでつける「除外診断」の側面が強い病名です(Tsung 2024)。

原因は?

CTで右下腹部の腸間膜リンパ節炎を認めた60人では、他の異常がない「原発性」は18人(30%)、残りの42人(70%)はCTで別の炎症性疾患が見つかり、それに伴うリンパ節炎(続発性)でした(Macari 2002)。つまりリンパ節が腫れて見えたときは、腸炎や回腸末端炎、虫垂炎など、背景の病気が隠れていないかを探すことが大切です。

エコーで見るポイント

子どもの右下腹部痛では、放射線をかけないエコーが最初の検査として使われます。小児の虫垂炎が疑われる622人を対象に、エコーを第一の検査として振り分けた報告では、201人がエコーで腸間膜リンパ節炎・腸炎と診断され、その後に虫垂炎で戻ってきた人はいませんでした(Hernandez 2005)。画像の評価は、圧迫して潰れない腫れた虫垂があるかから始め、なければリンパ節や腸の壁を観察します(Vignault 1990)。

観察する場所 腸間膜リンパ節炎で見えるもの
リンパ節 右下腹部(右腸骨窩)に、卵円形の低エコーのかたまりが複数集まる。中心に血流が見えるとリンパ節らしい
虫垂 見えれば正常。圧迫で潰れる。見えない場合は慎重に判断する
周囲 脂肪織の腫れや液体が目立たない
回腸末端・盲腸 壁の肥厚の有無を確認する

症例 6歳男児 腸間膜リンパ節炎

腸間膜リンパ節炎 超音波 右腸骨窩 横断像
引用:Radiopaedia(Mesenteric adenitis)

右腸骨窩に、卵円形の低エコーの構造が複数集まっています。症例ページでは、複数の卵円形のかたまりが右腸骨窩に集簇し、中心に線状の血流があることからリンパ節と考えられると記載されています。

CTで見るポイント

CTでは、右下腹部の腸間膜に複数のリンパ節が集まって見えます。診断の定義として、短径5mm以上のリンパ節が3個以上、右下腹部の腸間膜に集まっているものを腸間膜リンパ節炎とした報告があります(Macari 2002)。

ただし、リンパ節が見えること、少し大きいことだけでは異常と言えません。小児の腹部CT(外傷後)152人の検討では、腸間膜のリンパ節は99%で確認できました(Spijkers 2020)。腎結石の疑いでCTを受けた61人の子どもでは、短径5mm以上のリンパ節が33人(54%)に見られ、そのうち29人(88%)で最大のものが右下腹部にありました。最大の短径は10mmで、小児の正常上限は8mm程度としたほうがよいかもしれないと述べられています(Karmazyn 2005)。

なお、同じ定義で調べると、外傷でCTを受けた60人には腸間膜リンパ節炎が1人も見られず、急性の腹部症状でCTを受けた60人では5人(8.3%)に見られました(Macari 2002)。腹痛のない人に偶然見つかることは少ない一方、リンパ節が見えるだけで病気と決められない点に注意が必要です。そのため、CTでは大きさより「虫垂が正常か」「回腸末端や盲腸に炎症がないか」が大切になります。虫垂の見つけ方や6mmの目安は急性虫垂炎のCT所見のポイントに詳しくまとめています。

虫垂炎・回腸末端炎との見分け方

腸間膜リンパ節炎 急性虫垂炎 回腸末端炎
主な所見 右下腹部のリンパ節の集簇 腫れた虫垂、周囲の脂肪織の炎症 回腸末端の壁肥厚(リンパ節炎を伴う)
虫垂 正常 径の拡大・圧迫で潰れない 正常
背景 腸の感染・炎症に伴う(続発性が7割) 虫垂そのものの炎症 エルシニアなどの感染

(Vignault 1990、Macari 2002、Fonnes 2022)

小児のエコーでは、圧迫しても潰れない外径6mmを超える虫垂を陽性とすると、虫垂炎の診断は感度94%、特異度89%でした。エコーが陰性だった子どもでは、腸間膜リンパ節炎、回腸炎、腸重積、クローン病、バーキットリンパ腫などの別の病気も見つかっています(Vignault 1990)。

回腸末端炎との関係

腸間膜リンパ節炎と回腸末端炎は、同じ感染(エルシニアなど)で一緒に見られることがある病気です。エルシニア(Yersinia)の感染について調べた系統的レビューでは、血清検査でエルシニアが陽性だった割合は、腸間膜リンパ節炎で51%、回腸末端炎で65%、正常な虫垂で8%でした(Fonnes 2022)。エルシニア感染が、虫垂炎を疑った手術につながる原因の1つになりうるとされています(Fonnes 2022)。回腸末端炎の原因や画像は回腸末端炎(回盲部炎)とは?原因とCT画像所見、虫垂炎との違い、回盲部の腸炎の鑑別は回盲部炎の鑑別とCT画像所見にまとめています。

読影のポイント(医療者向け)

  1. まず虫垂を探す:同定できて正常なら虫垂炎の可能性は低くなる。見えないときは「正常」と書かず、評価できなかったと明記する
  2. リンパ節の数と分布:右下腹部に集簇しているか。1個だけ大きいのか、多数が小さく腫れているのか
  3. 回腸末端・盲腸の壁:肥厚があれば回腸末端炎や回盲部炎を考える
  4. 背景の病気:腸炎、憩室炎、クローン病など、リンパ節炎を起こす原因が別にないか(続発性は70%、Macari 2002)
  5. 大きさだけで判断しない:5〜10mmは健康な子どもにもよく見られる(Karmazyn 2005)

リンパ節の腫れが長く続く場合や、短期間で急に大きくなる場合、全身症状を伴う場合は、腸間膜リンパ節炎で片づけず、リンパ腫を含む別の病気も考えます。小児のエコーで虫垂炎が否定された子どもの中にも、クローン病やバーキットリンパ腫が見つかった例が報告されています(Vignault 1990)。腹部のリンパ節炎の別の原因として、腹部の結核(結核性リンパ節炎・腸結核・結核性腹膜炎)もあります。

どの検査をどの順番で?

小児の虫垂炎の画像診断は、圧迫をかけるエコーから始め、必要なときだけCTやMRIに進む段階的な方法が、現在のよい方法とされています(Swenson 2018)。エコーで虫垂炎でも別の病気でもなく、リンパ節の集簇だけが見えれば、腸間膜リンパ節炎が考えられます。エコーを先にするのは、放射線を使わずに繰り返し行えるためです。CTやMRIには、エコーだけでは判断できないときなど、必要な場合に絞って進みます(Swenson 2018)。右下腹部痛の鑑別全体は腹痛・急性腹症の部位別鑑別疾患のまとめも参考にしてください。

こんなときは早めに受診を

  • 痛みが強くなる、右下腹部に痛みが移っていく
  • 嘔吐が続く、熱が続く、ぐったりしている
  • 歩いたり飛び跳ねたりするとお腹に響く
  • 血便が出る、お腹が張る

気になる症状があれば、医療機関を受診してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 腸間膜リンパ節が腫れていると言われました。手術が必要ですか?
A. 腸間膜リンパ節炎そのものは手術で治す病気ではなく、大切なのは虫垂炎など手術が必要な病気を除くことです。ただし、リンパ節炎の背景に腸炎や回腸末端炎などの病気が隠れていることがあります(Macari 2002)。経過の見方は主治医に確認してください。

Q. リンパ節が5mm以上あると異常ですか?
A. 子どもでは5〜10mmのリンパ節は、腸間膜リンパ節炎が疑われない子どものCTでも半数以上に見られました(Karmazyn 2005)。大きさだけでなく、虫垂や腸の状態、症状と合わせて判断します。

Q. 大人でも起こりますか?
A. 起こります。急性の腹部症状でCTを受けた60人のうち、5人(8.3%)に腸間膜リンパ節炎が見られました(Macari 2002)。子どもで話題になることの多い病気ですが、大人でも画像で見つかります。

Q. エコーだけで虫垂炎は除外できますか?
A. エコーで虫垂が評価できて正常なら、虫垂炎の可能性は低くなります。ただし虫垂が見えない場合などは判断が難しく、症状の経過を見たり、CTやMRIを追加したりします(Swenson 2018)。

あわせて読みたい:消化管エコー(腸管エコー)の見方

参考文献

  1. Macari M, Hines J, Balthazar E, et al. Mesenteric adenitis: CT diagnosis of primary versus secondary causes, incidence, and clinical significance in pediatric and adult patients. AJR Am J Roentgenol. 2002;178(4):853-8. PubMed
  2. Karmazyn B, Werner EA, Rejaie B, et al. Mesenteric lymph nodes in children: what is normal? Pediatr Radiol. 2005;35(8):774-7. PubMed
  3. Tsung JW, Stone DE, Sanders JE. Clinical Characteristics, Outcomes, and Interobserver Agreement of Point-of-Care Ultrasound Detected Mesenteric Adenitis in Nonsurgical Pediatric Abdominal Pain: A Retrospective Cohort Study. Pediatr Emerg Care. 2024;40(10):722-725. PubMed
  4. Fonnes S, Rasmussen T, Brunchmann A, et al. Mesenteric Lymphadenitis and Terminal Ileitis is Associated With Yersinia Infection: A Meta-analysis. J Surg Res. 2022;270:12-21. PubMed
  5. Vignault F, Filiatrault D, Brandt ML, et al. Acute appendicitis in children: evaluation with US. Radiology. 1990;176(2):501-4. PubMed
  6. Hernandez JA, Swischuk LE, Angel CA, et al. Imaging of acute appendicitis: US as the primary imaging modality. Pediatr Radiol. 2005;35(4):392-5. PubMed
  7. Swenson DW, Ayyala RS, Sams C, et al. Practical Imaging Strategies for Acute Appendicitis in Children. AJR Am J Roentgenol. 2018;211(4):901-909. PubMed
  8. Spijkers S, Staats JM, Littooij AS, et al. Abdominal lymph node size in children at computed tomography. Pediatr Radiol. 2020;50(9):1263-1270. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →