
先に結論:CTは「大腸炎がある」ことは示せても、C. difficileかどうかは便の検査で決める
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 偽膜性腸炎のCT所見 | 大腸の壁肥厚(粘膜下の浮腫)、accordion sign、target sign、周囲脂肪織の濁り、腹水 |
| CTの限界 | accordion signは重い大腸の浮腫・炎症を示す所見で、C. difficileに特異的ではない。CTだけでは見逃しもある |
| 確定診断 | 便の毒素検査など。内視鏡やCTは便検査より感度が低いとされる |
| 抗菌薬関連出血性腸炎 | C. difficileが陰性で血便が目立つ。右側結腸に限局することが多い |
| NSAIDs腸炎 | 右側結腸に多い。潰瘍・狭窄・血便など。炎症性腸疾患・腫瘍・感染の除外が必要 |
偽膜性腸炎とは
偽膜性腸炎は、C. difficile(クロストリディオイデス・ディフィシル)という細菌が出す毒素によって起こる急性の大腸炎です。抗菌薬で腸内の細菌のバランスが崩れ、C. difficileが増えることがきっかけになります。大腸の粘膜に、黄白色の隆起(偽膜)ができるのが名前の由来で、これは内視鏡や病理で確認できます(Kawamoto 1999)。
抗菌薬に関連した下痢のうち、C. difficileによるものは15〜25%とされます。高齢であることや入院していることが危険因子で、入院後72時間を過ぎてから抗菌薬投与中に出た下痢は、C. difficileが原因である可能性が高いと報告されています(Bartlett 2008)。
偽膜性腸炎のCT所見
偽膜性腸炎のCTでよく見られる所見は、次の通りです(Kawamoto 1999)。
| 所見 | 内容 |
|---|---|
| 大腸壁の肥厚 | 粘膜〜粘膜下層の浮腫を反映した、低吸収の壁肥厚 |
| accordion sign | 肥厚した大腸のひだ(ハウストラ)の間に、腸管内の造影剤や液体が挟まり、アコーディオンの蛇腹のように見える |
| target sign(double halo sign) | 造影される内側の粘膜と、浮腫で低吸収になった粘膜下層が、二重の輪(標的)のように見える |
| 結腸周囲の脂肪織混濁 | 大腸のまわりの脂肪が濁って見える |
| 腹水 | 炎症が強いときに見られる |
壁の厚さは0.5〜1.6cmで、結腸周囲の脂肪織混濁は軽度のものが多かったと報告されています(Srisajjakul 2013)。C. difficile腸炎と診断された15例では、11例(73.3%)が結腸全体(pancolonic)の壁肥厚、4例が一部の区域の肥厚で、accordion signは11例(73.3%)に見られ、小腸の壁肥厚はありませんでした(Srisajjakul 2013)。
症例 45歳男性 偽膜性腸炎

引用:Radiopaedia(Pseudomembranous colitis – accordion sign)
盲腸から横行結腸の近位にかけての右側結腸に、粘膜下の浮腫による壁肥厚とaccordion signがあり、終末回腸にも及んでいます。症例ページでは軽度の周囲脂肪織混濁と、反応性と思われる腸間膜リンパ節腫大も記載されています。左側結腸と直腸S状部は正常です。
accordion signとtarget signは何を意味するのか
ここで大切なのは、accordion signもtarget signも「重い大腸の浮腫・炎症」を表す所見で、原因をC. difficileに絞れるわけではないという点です。
重い大腸炎の57例を調べた研究では、大腸内に経口造影剤が届いていた35例のうち15例でaccordion signが見られましたが、そのうちC. difficile腸炎だったのは4例で、残る11例は別の原因でした(Macari 1999)。同じ報告では、accordion signは重い大腸の浮腫や炎症を示す非特異的な所見と結論づけられています。
CT所見が似る病気には、好中球減少時の盲腸炎(typhlitis)、虚血性腸炎、移植片対宿主病、放射線性腸炎、炎症性腸疾患などがあります(Guerri 2019)。左側の腸炎は左側結腸の腸炎の鑑別診断(虚血性腸炎・潰瘍性大腸炎・偽膜性腸炎など)にまとめています。
CTでどこまで診断できるか
C. difficile腸炎を疑う症状の患者さん(便検査陽性54例)と、便検査が陰性だった抗菌薬関連下痢の56例を比べた研究では、CTでC. difficile腸炎と診断できた割合(感度)は52%、特異度は93%、陽性的中率は88%、陰性的中率は67%でした(Kirkpatrick 2001)。壁肥厚が4mmを超え、かつ結腸周囲の脂肪織混濁・壁の結節状変化・accordion sign・説明のつかない腹水のどれか1つ以上を伴うという厳密な基準にすると、感度は70%に上がり、特異度は変わりませんでした(Kirkpatrick 2001)。
| CTの結果 | 解釈 |
|---|---|
| 典型所見がある | C. difficile腸炎の可能性は高い(陽性的中率88%)。ただし便検査で確認する |
| 所見がない・乏しい | 否定はできない(陰性的中率67%) |
(Kirkpatrick 2001)
診断の中心は便中のC. difficile毒素の検出で、内視鏡とCTは便の毒素検査より感度が低いものの、結果を急ぐ場合や、ほかの病気が鑑別に残る場合に役立つとされています(Bartlett 2008)。
重症例で気をつけること
重症では、大腸が拡張する中毒性巨大結腸や、穿孔による腹腔内の遊離ガスが見られることがあります(Kawamoto 1999)。重症の偽膜性腸炎では、穿孔の危険があるため注腸造影は禁忌とされています(Kawamoto 1999)。強い腹痛や腹部の張りがあるときは、すぐに医療機関を受診してください。
抗菌薬関連出血性腸炎との見分け方
抗菌薬関連出血性腸炎は、C. difficileが陰性の抗菌薬関連大腸炎の一型です。原因菌の1つとして、毒素を作るKlebsiella oxytoca(クレブシエラ・オキシトカ)が報告されています。抗菌薬関連大腸炎が疑われてC. difficileが陰性だった22例のうち6例が内視鏡で抗菌薬関連出血性腸炎に合致し、そのうち5例の便からK. oxytocaが検出されました。5例とも発症前にペニシリン系抗菌薬を使っており、2例はNSAIDsも併用していました。健康な人の便からK. oxytocaが検出されたのは1.6%です(Högenauer 2006)。
特徴は、C. difficile腸炎と違って血便が目立つことと、区域性で右側結腸に出やすいことです。腹痛と、ほとんどの例で血性下痢を伴って発症します(Hoffmann 2010)。原因の抗菌薬を中止して3日ほどで血便がおさまった小児例も報告されています(Hoffmann 2010)。
見分けるための表
| 偽膜性腸炎 | 抗菌薬関連出血性腸炎 | NSAIDs腸炎 | |
|---|---|---|---|
| きっかけ | 抗菌薬(入院・高齢が危険因子) | 抗菌薬(ペニシリン系の報告) | NSAIDsの服用 |
| 便の特徴 | 下痢(重症では偽膜) | 血性下痢が目立つ | 血便(痛みのない出血の報告もある) |
| 範囲 | 結腸全体のことも区域性のこともある | 区域性・右側結腸 | 右側結腸に多い(直腸のこともある) |
| 確認の方法 | 便のC. difficile毒素 | C. difficile陰性+K. oxytocaの培養 | 薬の履歴+他の大腸炎の除外 |
(Kawamoto 1999、Srisajjakul 2013、Hoffmann 2010、Högenauer 2006、Mokhtare 2013)
CTだけで3つを分けることは難しく、薬の履歴・便の検査・症状(血便の程度)を合わせて考えることが大切です。右側結腸の腸炎全般は右側結腸の腸炎の鑑別診断も参考になります。
NSAIDs腸炎(NSAID colopathy)
NSAIDs(解熱鎮痛薬の一群)は、胃や小腸だけでなく大腸にも障害を起こすことがあります。大腸の障害(NSAID colopathy)は、右側結腸に多いとされます。薬の濃度が高くなる場所だと考えられています。直腸が障害されることもあります。障害の形は潰瘍、大腸炎、狭窄です(Mokhtare 2013)。
症状は血便が中心で、報告例には、痛みのない血便(下部消化管出血)で見つかった例もあります(Mokhtare 2013)。
診断では、炎症性腸疾患・悪性腫瘍・感染性腸炎を除外することが必要で、治療の基本は原因薬の中止です(Mokhtare 2013)。潰瘍性大腸炎のCT所見は潰瘍性大腸炎のCT画像診断、免疫抑制状態で起こるウイルス性の腸炎はCMV腸炎のCT画像所見で解説しています。免疫チェックポイント阻害薬による腸炎(irAE)は免疫チェックポイント阻害薬の副作用のCT・PETをご覧ください。
薬をやめてよいかどうかは、主治医に相談して決めてください。自己判断で中断しないことが大切です。
読影のポイント
- 分布を見る:結腸全体か、右側結腸だけの区域性か。小腸や終末回腸に及ぶか
- 壁の層構造:target signのような粘膜下の浮腫か、層構造が崩れた壊死・虚血か
- 合併症:腹水、結腸の拡張、遊離ガスがないか
- 臨床情報:使った薬(抗菌薬・NSAIDsなど)と時期、血便の有無、入院歴
- 結論の書き方:「大腸炎の所見。C. difficile腸炎の可能性を考える(便検査での確認を)」のように、確定できない点を明記する
よくある疑問(Q&A)
Q. CTでaccordion signがあれば偽膜性腸炎と診断できますか?
A. できません。accordion signは重い大腸の浮腫や炎症を示す所見で、C. difficileに特異的ではありません。報告ではaccordion signのあった15例中、C. difficile腸炎は4例でした(Macari 1999)。
Q. CTで異常がなければ偽膜性腸炎は否定できますか?
A. 否定できません。CTの感度は52%、陰性的中率は67%と報告されています(Kirkpatrick 2001)。診断の中心は便のC. difficile毒素の検査です(Bartlett 2008)。
Q. 抗菌薬のあとの血便は、偽膜性腸炎ですか?
A. C. difficile腸炎だけが原因とは限りません。C. difficileが陰性で血便が目立つ抗菌薬関連出血性腸炎という別の病気があります(Högenauer 2006)。血便や強い腹痛、発熱があるときは、医療機関を受診してください。
Q. 痛み止め(NSAIDs)で大腸炎になることはありますか?
A. あります。右側結腸に多く、潰瘍や狭窄、血便などを起こすことがあります(Mokhtare 2013)。服用中の薬は主治医に伝え、自己判断で中止や変更をしないようにしてください。
参考文献
- Kawamoto S, Horton KM, Fishman EK. Pseudomembranous colitis: spectrum of imaging findings with clinical and pathologic correlation. Radiographics. 1999;19(4):887-97. PubMed
- Macari M, Balthazar EJ, Megibow AJ. The accordion sign at CT: a nonspecific finding in patients with colonic edema. Radiology. 1999;211(3):743-6. PubMed
- Kirkpatrick ID, Greenberg HM. Evaluating the CT diagnosis of Clostridium difficile colitis: should CT guide therapy? AJR Am J Roentgenol. 2001;176(3):635-9. PubMed
- Guerri S, Danti G, Frezzetti G, et al. Clostridium difficile colitis: CT findings and differential diagnosis. Radiol Med. 2019;124(12):1185-1198. PubMed
- Bartlett JG, Gerding DN. Clinical recognition and diagnosis of Clostridium difficile infection. Clin Infect Dis. 2008;46 Suppl 1:S12-8. PubMed
- Högenauer C, Langner C, Beubler E, et al. Klebsiella oxytoca as a causative organism of antibiotic-associated hemorrhagic colitis. N Engl J Med. 2006;355(23):2418-26. PubMed
- Hoffmann KM, Deutschmann A, Weitzer C, et al. Antibiotic-associated hemorrhagic colitis caused by cytotoxin-producing Klebsiella oxytoca. Pediatrics. 2010;125(4):e960-3. PubMed
- Mokhtare M, Valizadeh SM, Emadian O. Lower Gastrointestinal Bleeding due to Non-Steroid Anti-Inflammatory Drug-Induced Colopathy Case Report and Literature Review. Middle East J Dig Dis. 2013;5(2):107-11. PubMed
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