帽状腱膜下血腫 頭血腫・産瘤との違いとCT・エコー

赤ちゃんの頭がぶよぶよ腫れていて「帽状腱膜下血腫かもしれない」と言われました。頭血腫とは違うのですか?大人でも起こりますか?
帽状腱膜下血腫は、頭蓋骨の表面の膜と頭皮の下の膜のあいだにたまる出血です。広く広がりやすいので、頭血腫より注意が必要です。どの層の出血か、エコーやCTでどう見分けるかを整理します。

先に結論:帽状腱膜下血腫は「頭全体にぶよぶよ広がる」出血で、新生児では命にかかわることがある

項目 ポイント
何か 頭蓋骨を包む骨膜と、頭皮の下の硬い膜(帽状腱膜)のあいだにたまる出血
心配か すき間が広いため大量の血液がたまりやすく、新生児ではショックや凝固異常を起こすことがある
頭血腫との違い 頭血腫は骨膜の下の出血で、骨1枚の範囲にとどまりやすい。帽状腱膜下血腫は縫合線をこえて広がる
画像 エコーで層の区別、CTで広がり・頭蓋骨骨折・頭蓋内出血を確認
次にすること 新生児は小児科(新生児科)で全身状態と血液検査の評価。大人の大きな血腫は救急・脳神経外科へ

帽状腱膜下血腫とは

帽状腱膜下血腫(subgaleal hematoma / subgaleal hemorrhage:SGH)は、頭蓋骨の骨膜と帽状腱膜(galea aponeurotica)のあいだに血液がたまる状態です(Babata 2025)。このすき間は前後左右に大きく広がっているため、出血が短時間で多量になりやすく、新生児では急な循環血液量の減少、ショック、多臓器不全につながることがあります(Babata 2025)。

新生児では吸引分娩(vacuum extraction)との関連が強く知られています(Babata 2025)。新生児集中治療室に入院した34例の検討では、34例中31例(91.2%)が吸引・鉗子などの器械分娩でした(Kilani 2006)。一方で、器械を使わない経腟分娩後に生じた例も報告されています(Liu 2017)。

頭血腫・産瘤との違い(どの層の出血か)

赤ちゃんの「頭のこぶ」には、主に次の3つがあります。区別のポイントはどの層にあるかです。

産瘤(caput succedaneum) 頭血腫(cephalohematoma) 帽状腱膜下血腫
場所 頭皮のむくみ 骨膜の下(骨膜下血腫) 帽状腱膜の下・骨膜の上
縫合線 こえることがある 通常こえない(骨1枚の範囲) こえて広く広がる
重さ 表面の軽い変化 多くは自然に吸収 大量出血・ショックの危険

頭血腫は骨膜の下にたまる血液で、多くは1か月ほどで自然に吸収されますが、一部は骨化(石灰化)して残り、手術が検討されることもあります(Calloni 2020)。

骨膜下血腫は通常は縫合線で止まりますが、まれに縫合線をこえる骨膜下血腫もあり、3D-CT静脈撮影(3D-CTV)で帽状腱膜下血腫と区別できたという報告があります(Matsumura 2022)。

画像検査でどう見えるか

エコー(超音波)

ベッドサイドで繰り返しできるのが利点です。生後11日の新生児の報告では、超音波で帽状腱膜下血腫と診断し、頭血腫や産瘤と区別できています(Liu 2017)。骨の表面にそって液体が広がり、縫合線をまたいで連続しているかを見ます。

CT

CTでは頭蓋骨の外側で、頭皮の下に広がる液体(血液)の層として見えます。帽状腱膜下血腫は縫合線をこえて前頭部から後頭部まで広がることがあります。CTの大きな役割は、合併する頭蓋内出血・頭蓋骨骨折の評価です。34例の検討では、半数(17例)に頭蓋内出血(硬膜下出血11例、くも膜下出血・脳室内出血・脳実質内出血 各4例)がみられ、6例に頭蓋骨骨折(うち3例は陥没骨折)がありました(Kilani 2006)。頭蓋内出血の見え方は 急性硬膜下血腫の記事 や 急性硬膜外血腫の記事 も参考にしてください。

MRI

帽状腱膜下血腫と画像診断された新生児56例の検討では、MRIで帽状腱膜下の液体に血液成分の信号がほとんど、あるいはまったく見られない例が多かったと報告されています(El-Dib 2019)。「血腫」という名前でも、画像では血液らしく見えないことがある点は知っておくとよいでしょう。

症例 10歳代男性 帽状腱膜下血腫

帽状腱膜下血腫 頭部CT 横断像
引用:Radiopaedia(Large recurrent subgaleal haematoma)

頭蓋骨の外側、頭皮の下に、前頭部から側頭部へ広がる厚い血腫があり、内部の濃さがまだらです。症例ページでは、濃さの違う血液が混じることから出血をくり返した大きな帽状腱膜下血腫で、骨折はなく、血液の固まりにくさ(凝固異常)が見つかったと記載されています。

どのくらい起こる?どんな場合が危ない?

  • ある施設の検討では、54,048出生のうち56例(およそ1,000出生に1例)が帽状腱膜下血腫でした(El-Dib 2019)。
  • 56例中13例(23%)に新生児脳症があり、脳症のある群では2例(15%)が死亡、4例(31%)が輸血を必要としました。脳症のない群では死亡・輸血はありませんでした(El-Dib 2019)。
  • 34例の検討では死亡が4例(11.8%)で、死亡例は大量の出血による貧血・凝固異常・ショックを伴っていました。死亡と関係したのは頭蓋内出血ではなく血腫の重症度でした(Kilani 2006)。

つまり画像で見るべきは「頭蓋内出血があるか」だけでなく、帽状腱膜下の血腫がどれだけ広いかです。重症例の管理では循環の維持と、凝固異常・貧血の補正が中心になります(Babata 2025)。

大人の帽状腱膜下血腫

大人ではまれですが、頭部外傷のあとに起こることがあります。肝硬変で凝固異常のある成人で、浅側頭動脈の損傷から帽状腱膜下血腫が顔面・頸部まで広がり、気道閉塞のため緊急挿管と血管内塞栓術が必要になった報告があります(Suzuki 2024)。抗凝固薬を飲んでいる方や肝臓の病気がある方で、頭のふくらみが急に大きくなる場合は早めに受診してください。頭皮そのものが厚くなる病気については 頭皮肥厚の記事、帽状腱膜下に膿がたまる病気は Pott’s puffy tumorの記事 で解説しています。

次にすること

  • 新生児の頭がぶよぶよと広く腫れる・どんどん大きくなる・顔色が悪い・ぐったりしている場合は、すぐに医療スタッフに伝えてください。
  • 大人でも、頭を打ったあとのふくらみが急に大きくなる、まぶたや顔まで腫れてくる場合は救急外来・脳神経外科を受診してください。
  • 気になる症状があれば医療機関を受診し、検査や治療の方針は主治医に相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 赤ちゃんの頭のこぶは全部危ないの?
A. いいえ。多くは産瘤や頭血腫で、頭血腫は多くが1か月ほどで自然に吸収されます(Calloni 2020)。広い範囲にぶよぶよと広がり大きくなるものは帽状腱膜下血腫を考えて評価します。

Q. 吸引分娩でなければ起こらない?
A. 多くは器械分娩に関連しますが、器械を使わない分娩後の報告もあります(Kilani 2006、Liu 2017)。

Q. CTは必要?
A. 層の区別にはエコーが役立ちます。頭蓋内出血や骨折が心配な場合にCTやMRIが検討されます。どの検査をするかは主治医と相談してください。

あわせて読みたい:赤ちゃんの頭のCT・レントゲンで異常に見える正常

参考文献

  1. Babata K, Vadlamudi G, Bailey NA, et al. Subgaleal hemorrhage in neonates: a comprehensive review and summary recommendations. J Perinatol. 2025;45(2):167-179. PubMed
  2. Kilani RA, Wetmore J. Neonatal subgaleal hematoma: presentation and outcome–radiological findings and factors associated with mortality. Am J Perinatol. 2006;23(1):41-8. PubMed
  3. El-Dib M, Parziale MP, Johnson L, et al. Encephalopathy in neonates with subgaleal hemorrhage is a key predictor of outcome. Pediatr Res. 2019;86(2):234-241. PubMed
  4. Liu LY, Antaya RJ. Neonatal Subgaleal Hematoma from Trauma During Vaginal Delivery without Instrument Use. Pediatr Dermatol. 2017;34(1):e40-e41. PubMed
  5. Calloni T, Trezza A, Mazzoleni F, et al. Infant ossified cephalohematoma: a review of the surgical management and technical update. J Neurosurg Sci. 2020;64(6):552-557. PubMed
  6. Matsumura K, Muto J, Tanaka M, et al. Usefulness of three-dimensional computed tomography venography differentiating calvarium subperiosteal hematoma crossing the suture lines due to hair pulling from subgaleal hematoma: case report and review of the literature. Childs Nerv Syst. 2022;38(10):2017-2020. PubMed
  7. Suzuki H, Yonezawa N, Fujisawa M. Airway obstruction resulting from massive subgaleal hematoma caused by superficial temporal artery injuries in an adult patient with liver cirrhosis. BMJ Case Rep. 2024;17(1):e258054. PubMed

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