中心静脈徴候 多発性硬化症のMRIと他の白質病変の区別

脳のMRIで白質に白い点がいくつかあり、「多発性硬化症かどうか、central vein signを見るためにSWIを撮りましょう」と言われました。central vein signとは何ですか?
central vein sign(中心静脈徴候)は、白質の病変の真ん中を細い静脈が通っているように見える所見です。多発性硬化症の病変は静脈のまわりにできやすいため、ほかの原因の白質病変と見分ける手がかりになります。2024年のマクドナルド診断基準にも取り入れられました。

先に結論:central vein signは「白質病変の中心を静脈が貫く」所見。陽性の病変の割合が高いほど多発性硬化症らしい

項目 ポイント
何か MS病変が静脈周囲にできることを反映し、病変の中心に静脈(点状・線状の低信号)が見える所見
撮像 T2*強調像・SWIなど磁化率に敏感な撮像。FLAIRと組み合わせたFLAIR*や3D-EPI
目安 陽性病変の割合 40%前後がカットオフ(メタ解析)。MSでは平均7割前後が陽性
役割 2024年マクドナルド基準で、特定の状況で診断を支持する補助所見
見分けたい病気 加齢・高血圧などの白質病変(小血管病)、膠原病・血管炎などの中枢神経病変

central vein sign(CVS)とは

多発性硬化症(MS)の脱髄巣は静脈のまわりにできやすく、その静脈が病変の中心に見える所見をcentral vein sign(CVS、中心静脈徴候)といいます。従来のMRI診断基準は感度・特異度が十分でなく、CVSはMSと似た病気(MS mimics)を区別して診断の正確さと速さを高める指標として提案され、北米のNAIMSが定義と撮像の標準化を提言しています(Sati 2016)。

MSのMRI全般とマクドナルド基準の基本は多発性硬化症(MS)のMRI画像診断で解説しています。

どう撮る?SWI・T2*・FLAIR*

静脈はT2*強調像やSWI(磁化率強調像)で低信号に写ります(SWIの原理はT2*強調像・SWIとは?)。病変自体はFLAIRで見えるので、両者を同じ検査で撮って組み合わせます。造影後の3D T2*強調像とT2-FLAIRを1回の検査で撮った研究もあります(Maggi 2018)。

メタ解析では、3D-EPIの撮像で陽性率が高く、FLAIR*などの後処理も検討されています。磁場の強さで陽性率は変わり、MS病変のCVS陽性率は1.5Tで58%、3Tで74%、7Tで82%でした(Castellaro 2020)。2024年のMAGNIMS-CMSC-NAIMSの提言では、MS診断のMRIにはCVSと常磁性リム病変(PRL)を評価するための磁化率に敏感な撮像を含めるべきとされています(Barkhof 2025)。

症例 30歳代女性 多発性硬化症(central vein sign)

多発性硬化症 central vein sign 頭部MRI SWI 横断像(拡大)
引用:Radiopaedia(Central vein and iron rim sign)

左の半卵円中心の白質病変の真ん中に、黒い点(静脈)が見えます。病変のふちにも黒い縁取り(iron rim)があります。

多発性硬化症 頭部MRI FLAIR 横断像(拡大)
引用:Radiopaedia(Central vein and iron rim sign)

同じ病変はFLAIRでは丸い高信号として見えます。症例ページでは、SWIのcentral vein signとiron rimが、症状と合わせて脱髄(多発性硬化症)を支持する所見と記載されています。

2024年マクドナルド基準での位置づけ

2024年改訂のマクドナルド基準では、視神経が5つ目の部位として加わり、CVS・PRL・髄液のκ遊離軽鎖が、利用できる場合に特定の状況で診断を支持し特異度を高める所見として取り入れられました(Montalban 2025)。従来の画像所見だけでは診断が決めきれない場合に特に役立つとされます(Barkhof 2025)。

診断の目安(何%陽性ならMSらしいか)

研究 結果
Castellaro 2020(メタ解析) MS病変のCVS陽性率 73%。感度95%・特異度92%、最適カットオフ40%
Baiamonte 2026(メタ解析・28研究3434人) 陽性病変の割合で判定:カットオフ37.5%で感度97.3%・特異度90.4%。陽性病変の数で判定:4個で感度87.1%・特異度88.2%。造影の有無は結果に影響せず

他の白質病変との見分け

小血管病(加齢・高血圧などの白質病変)

MS 89人と白質病変(leukoaraiosis)80人を比べた研究では、SWIでのCVSはMS病変で有意に多く、MSとの区別のAUCは0.88でした。脳室周囲の病変は、皮質直下や深部白質の病変よりCVS陽性率が高い結果でした(Yavaş 2022)。脳ドックで指摘される白質病変については慢性虚血性変化(大脳白質病変)とは?をご覧ください。

膠原病・血管炎などの中枢神経病変

中枢神経の炎症性血管症31人とMS 52人の比較では、CVS陽性病変の割合の中央値はMS 88%、血管症14%で重なりがありませんでした。血管症の中ではベーチェット病34%、中枢神経原発血管炎14%、抗リン脂質抗体症候群12%、シェーグレン症候群11%、SLE 0%でした。50%を閾値にすると両者を100%区別でき、3Tと1.5Tで差はありませんでした(Maggi 2018)。

視神経脊髄炎との違いは視神経脊髄炎(NMO)とは?多発性硬化症との違いでも解説しています。

読影のチェックポイント

  • 磁化率に敏感な撮像(SWI・T2*・FLAIR*・3D-EPIなど)が撮られているか
  • FLAIRで見える病変ごとに、中心を通る静脈があるかを確認
  • 陽性病変の割合(約40%前後が目安)または陽性病変の数で判断
  • 脳室周囲の病変は陽性になりやすい点に注意(Yavaş 2022)
  • 常磁性リム病変(PRL)の有無もあわせて確認(Barkhof 2025)

高齢者や血管リスクのある人での注意

2024年改訂のマクドナルド基準では、50歳以上の人や併存疾患のある人でのMS診断について指針が示されています(Montalban 2025)。提言では、高齢者、子ども、血管系の併存疾患や片頭痛のある人での画像の読み方と、誤診を避けるための推奨が示されています(Barkhof 2025)。年齢とともに増える白質病変とMSの区別が難しい場面で、CVSは補助的な情報になります。視神経の病変については視神経炎のMRI画像診断もご覧ください。

よくある疑問(Q&A)

Q. central vein signが1つでもあればMSですか?
A. いいえ。MS以外の病変にもみられることがあり、陽性病変の割合や数で判断します(Maggi 2018、Baiamonte 2026)。最終的な診断は症状や他の検査とあわせて主治医が行います。

Q. 1.5TのMRIでも分かりますか?
A. 評価できるとされますが、陽性率は3Tや7Tより低めに出ます(Maggi 2018、Castellaro 2020)。

Q. 造影剤は必要ですか?
A. メタ解析では、造影を使う撮像かどうかは診断精度に影響しませんでした(Baiamonte 2026)。

手足のしびれや見えにくさなど気になる症状があれば、脳神経内科などの医療機関を受診してください。

あわせて読みたい:中枢神経と末梢神経の違い

参考文献

  1. Sati P, Oh J, Constable RT, et al. The central vein sign and its clinical evaluation for the diagnosis of multiple sclerosis: a consensus statement from the North American Imaging in Multiple Sclerosis Cooperative. Nat Rev Neurol. 2016;12(12):714-722. PubMed
  2. Montalban X, Lebrun-Frénay C, Oh J, et al. Diagnosis of multiple sclerosis: 2024 revisions of the McDonald criteria. Lancet Neurol. 2025;24(10):850-865. PubMed
  3. Barkhof F, Reich DS, Oh J, et al. 2024 MAGNIMS-CMSC-NAIMS consensus recommendations on the use of MRI for the diagnosis of multiple sclerosis. Lancet Neurol. 2025;24(10):866-879. PubMed
  4. Castellaro M, Tamanti A, Pisani AI, et al. The Use of the Central Vein Sign in the Diagnosis of Multiple Sclerosis: A Systematic Review and Meta-analysis. Diagnostics (Basel). 2020;10(12):1025. PubMed
  5. Baiamonte L, Sera F, Bellante G, et al. Accuracy of the central vein sign in diagnosis of multiple sclerosis: a systematic review and meta-analysis. J Neurol. 2026;273(2):95. PubMed
  6. Maggi P, Absinta M, Grammatico M, et al. Central vein sign differentiates Multiple Sclerosis from central nervous system inflammatory vasculopathies. Ann Neurol. 2018;83(2):283-294. PubMed
  7. Yavaş HG, Sağtaş E. Central vein sign: comparison of multiple sclerosis and leukoaraiosis. Turk J Med Sci. 2022;52(6):1933-1942. PubMed

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