視神経脊髄炎(NMO:neuromyelitis optica)とは?
- 球後視神経炎+急性横断性脊髄炎。
- 通常型MSに対して視神経脊髄型MS、もしくはDevic病といわれるタイプに共通した抗体「NMO-IgG」が発見され、NMOとして区別されるようになった(2004年)。MSは細胞性免疫、NMOは液性免疫。
- MSとは根本的に異なる疾患概念。
- 通常型MSと治療法が異なる(MSはインターフェロンβ、NMOはステロイド)ため、鑑別は重要。
- 女性に多く(男女比1:10)、通常型多発性硬化症よりもオリゴクローナルバンドの陽性頻度が低い、他の自己抗体陽性例を認める。
- MSでは通常まれな50歳以上の高齢での初発もしばしばみられる。また、MSより再発頻度が高い(>80%)。
- 視力障害は両側性、初発は片側性のことも。
- 抗アクアポリン4抗体(NMO-IgG抗体)陽性。
- 視神経炎または脊髄炎のみ+抗アクアポリン4抗体陽性→NMO Spectrum disorder(視神経脊髄炎関連疾患)
- 臨床的および視覚誘発電位(visually evoked potential:VEP)にて診断される視神経炎のうち、MRI所見として視神経の腫脹、造影効果が見られる例は半数程度。
- 従来頭部病変がないことが診断基準の一つであったNMOでも頭蓋内病変がしばしば見られることがあり、その部位として視床下部、視交叉、第三脳室や第四脳室〜延髄脊髄中心管の周囲、脳幹が多いとの報告あり。
- この分布は視神経、脊髄以外の中枢神経系でアクアポリン4(AQP4)が多く発現する部位と一致。
- AQP4は脳内と脳脊髄液・血液間の水交換を行っており、脳梗塞や低浸透圧時の脳浮腫形成にも大きく関与している。
- AQP4抗体陽性者の7%でPRESを合併するとの報告もあり、一過性の血管性浮腫との関連も推測されている。
NMOの診断基準
▶確定的NMO
- 視神経炎
- 急性脊髄炎
▶補助的基準(以下の3項目のうち2項目以上が陽性)
- 3椎体以上の連続脊髄病変。
- 初発時の頭部MR※がMSの診断基準を満たさない。
- 血中NMO-IgG(抗アクアポリン抗体)陽性。
臨床的特徴は多発性硬化症に比べ、男女比が1 :6と女性優位で、好発年齢が30歳台半ばと年長である。
※多発性硬化症の脳MRI診断基準:
・T2強調像で3mm以上の大きさの高信号領域を示す以下の病変があるときには、多発性硬化症を強く示唆する。
a, 4カ所以上の大脳白質病変
b, 脳室周囲に1つの病変がある場合には3カ所以上の大脳白質病変
NMOの画像所見
▶NMOの脳MRI所見
- 元来脳病変は少ないといわれてきたが、MRIの発達により60~80%以上で脳病変が検出可能であると報告されるようになった。
- 白質の病変は小さく、3mm以下の病変が皮質下/ 深部白質にみられることが多い。
- 特にAQP4の発現頻度が高い視床下部や脳幹部、第四脳室下端周囲の延髄最後野の病変がNMOに特徴的であるとされる。(水際に多い。)
- 急性期は病変の一部に遅延増強効果(cloud-like enhancement)
▶視神経MRI所見:
- 視神経のT2延長。視神経鞘の拡張、肥厚。視神経の萎縮、腫大。
▶脊髄病変のMRI所見:
- 頭尾径:3椎体以上
- 脊髄中心部にT2WIで高信号、 T1WIで低信号を示す。プロトン密度強調像やSTIRでの撮像にて脱髄巣がより明瞭になる。強いT2WI高信号を認めることがあり、Bright spotty lesionと呼ばれNMOに特徴的。一方でT2WIで中心管に知った強い高信号を示す線状の病変が形成されることがあり、linear lesionと呼ばれる(MSとの比較では、NMOSDに48.3% vs MS 0%と報告されている)。
- 急性期の病変の一部は遅延増強効果。
- 急性期は脊髄が腫大。慢性期は萎縮。時に空洞形成。
症例 50歳代女性 右下肢片麻痺および右上肢片麻痺の急性発症
引用:radiopedia
C5-8レベルで3椎体以上におよぶ脊髄に異常高信号あり。
中心部にはT2WI高信号が目立ちbright spotty lesionを認めており、NMO/NMOSDを疑う所見。