肝臓の画像診断において、腫瘍性病変と紛らわしい所見として頻繁に遭遇するのが、限局性脂肪肝(focal fatty liver / focal fatty infiltration)と限局性非脂肪肝(focal spared area)である。

これらは病的な腫瘍ではなく、血流動態の異常などに起因する局所的な変化であり、その特徴を正しく理解することは不要な精密検査や生検を避ける上で極めて重要である。

先に結論:限局性脂肪肝・限局性非脂肪肝(まだら脂肪肝)

  • 肝臓の一部だけ脂肪がたまる(限局性脂肪肝)、または脂肪肝の中で一部だけ脂肪がたまらない(限局性非脂肪肝)状態で、腫瘍ではありません。エコーやCTで腫瘍と間違えられやすいのが問題です
  • 門脈以外の血液が直接入る決まった場所(胆嚢のまわり・肝臓の内側区S4の背側・肝鎌状間膜の近く)に起こりやすく、中を血管がそのまま通り抜け(押しのけない)、腫瘤のふくらみがないのが特徴です
  • 迷ったときはMRIの化学シフト(in-phase/opposed-phase)で脂肪の有無を確かめると、腫瘍との区別がつきます

呼び名の整理(限局性低脂肪域・focal spared areaなど)

状態 よく使われる呼び名
一部だけ脂肪がたまる 限局性脂肪肝、限局性脂肪沈着、限局性脂肪化域、focal fatty liver、focal fatty infiltration
脂肪肝の中で一部だけ脂肪がたまらない 限局性非脂肪肝、限局性低脂肪域、限局性低脂肪化域、focal spared area、focal (fatty) sparing、spared lesion

健診のエコー報告書では「限局性低脂肪域」と書かれることが多いですが、指しているものは同じです。

 発生機序:「third inflow(第三の流入血流)」

肝臓の血流は通常、門脈(約75%)と肝動脈(約25%)によって支配されている(Lupescu 2006)。しかし、これら以外の経路から肝実質に直接流入して類洞を灌流する血管が存在し、これを「third inflow(第三の流入血流)」と呼ぶ。

third inflowの灌流領域では、正常な門脈血とは栄養状態やインスリン濃度が異なるため、局所的に脂肪化が進展したり(限局性脂肪肝)、逆に脂肪化が免れたり(限局性非脂肪肝)する現象が生じる。主な流入経路と好発部位は以下の通りである。

3カ所覚えておきましょう!

  • Sappey静脈(腹壁傍臍静脈):肝鎌状靭帯周囲、S3/S4腹側
  • 右胃静脈(異所性右胃静脈):S2/S4背側
  • 胆嚢静脈:胆嚢窩近傍(S4/S5)

これらの部分だけ脂肪肝を起こしたり、脂肪肝を免れることがあるので知識として知っておきましょう。特に異所性右胃静脈は、肝左葉外側区(S2/S3境界付近)に、脂肪肝の中で脂肪化を免れた結節状・地図状の偽病変をつくり、腫瘍と紛らわしいことがあります。このような部位では、流入する異常静脈の有無を確認することが鑑別に役立ちます。S4背側の限局性非脂肪肝については、2cmを超える非脂肪化域があった7例の全例で血管造影上の異常な胃静脈還流がみられ、非脂肪化域のない10例では1例も認めなかったと報告されています。門脈本幹からの血流が局所的に減ることが原因と考えられています。

限局性脂肪肝(focal fatty liver)および限局性非脂肪肝(focal spared area)の画像診断の特徴

CT検査

単純CTにおいて、脂肪肝では肝実質の吸収値(CT値)が低下する。肝臓のCT値を脾臓と比べる方法(肝臓−脾臓の差など)は、肝臓のCT値だけで判断するより脂肪肝の診断能が高いと報告されており(Byun 2019)、一般に肝臓が脾臓より低吸収であれば脂肪肝を疑う。

  • 限局性脂肪肝:周囲の正常肝実質と比較して、地図状あるいは楔状の低吸収域として描出される。
  • 限局性非脂肪肝:全体的に脂肪沈着がある肝臓(低吸収)の中で、局所的に正常に近い高吸収域として残る領域である。

いずれの場合も、病変内を走行する血管(門脈や肝静脈)が圧排・屈曲されることなく貫通する「vessel penetration sign」が重要な良性の指標となる。

症例 70歳代男性 

S3、4辺縁に低吸収域を認め、限局性脂肪肝(focal fatty liver)が疑われます。

症例 60歳代女性

S4辺縁に低吸収域を認め、限局性脂肪肝(focal fatty liver)が疑われます。

次に、逆にこれらの部位が脂肪肝から免れているパターンの画像を見てみましょう。

症例 70歳代男性

全体的に脂肪肝を認めますが、S4背側部分および胆嚢床で脂肪肝を免れていることがわかります。限局性非脂肪肝(focal spared area)を疑う所見です。

症例 30歳代女性

全体的に脂肪肝を認めますが、S2背側部分で脂肪肝を免れていることがわかります。限局性非脂肪肝(focal spared area)を疑う所見です。

エコー(超音波)検査

  • 限局性脂肪肝:周囲より白っぽい(高エコー)領域として見えます。
  • 限局性非脂肪肝(focal spared area):脂肪肝で全体が白っぽく(明るく)見える肝臓の中に、黒っぽい(低エコー)領域として残ります。胆嚢のまわりやS4背側(門脈の分かれ目の前)が典型的な場所で、エコーとCTで最もよくみられる部位がS4背側と報告されています(Matsui 1995)。
  • どちらも形が地図状・楔状で、ふくらみ(mass effect)がなく、カラードプラで血管がそのまま中を通るのが腫瘍との違いです。典型的な場所・形でなければ、CTやMRIで確認します。

MRI検査

MRI、特にケミカルシフトイメージング(chemical shift imaging)は、脂肪の含有を証明する上で感度の高い、日常診療で用いやすい手法である。

  • in-phase像:水と脂肪の信号が加算される。
  • out-of-phase像:水と脂肪の信号が打ち消し合う。

限局性脂肪肝では、in-phase像に比べてout-of-phase像で信号が著明に低下する。逆に、限局性非脂肪肝は周囲の脂肪肝がout-of-phase像で信号低下を起こす中で、相対的に高い信号を維持する領域として認識される。

鑑別診断のポイント

限局性脂肪肝や限局性非脂肪肝は、時に肝細胞癌(HCC)や転移性肝癌などの腫瘍性病変との鑑別が問題となる。以下の点は鑑別において非常に有用である。

  • 好発部位の一致:胆嚢床、S4背側、鎌状靭帯近傍など、third inflowの灌流領域と一致しているか。
  • 腫瘍による占拠効果(mass effect)の欠如:周囲の血管を圧排していないか、肝表面を膨隆させていないか。
  • 内部の血管貫通:病変内を血管が正常に走行しているか(vessel penetration)。
  • 造影パターン:ダイナミックCTやMRIにおいて、周囲の実質とほぼ同等の造影効果を示し、明らかなwashoutを認めないことが多い。

転移と紛らわしい多発結節状の脂肪沈着(multifocal nodular steatosis)

  • 脂肪沈着は通常びまん性か地図状ですが、まれに多数の結節として現れ、多発肝転移に似ることがあります。肥満やメタボリックシンドロームがない健康な人でも起こりうるとされ、MRIを含む画像評価で不要な肝生検を避けられることがあります(Dreifuss 2021)。
  • 画像と病理で診断された10例の検討では、全例が超音波かCTで悪性を疑われて精査となり、3例には癌の既往がありました。6例でMRI、4例で画像ガイド下生検が行われ、経過観察では71.5%が不変か改善、28.5%が増悪しました。MRIはこの病態の検出と性状評価に信頼できる方法とされています(Diop 2024)。
  • 実際の読影では、上記のケミカルシフトイメージングで結節がout-of-phase像で信号低下するかを確かめ、好発部位・mass effectの欠如・血管の貫通といった鑑別のポイントとあわせて判断します。癌の既往があり転移の可能性が高い場合は、MRIでも決めきれなければ経過や生検で確認します。

関連記事:肝の血流異常とは?限局性脂肪肝、偽病変、third inflow、AP-shuntの画像診断!

出典:

  • 今日から使える 腹部CT読影ガイド  p.36,p.187-188
  • 画像診断 Vol.42 No.11 増刊号 2022 p.95
  • 画像診断 Vol.36 No.4 増刊号 2016 p.348-349,p.160,p.122-125

あわせて読みたい:肝内血管短絡(APシャント・AVシャント・PVシャント)の分類と特徴、CT画像

参考文献

  1. Hamer OW, Aguirre DA, Casola G, et al. Fatty liver: imaging patterns and pitfalls. Radiographics. 2006;26(6):1637-53. PubMed
  2. Arhire DA, Moraru MC, Maxim R, et al. Transient hepatic attenuation difference or fat sparing? Aberrant right gastric vein determining a pseudolesion at the border of the IInd/IIIrd liver segments. Review of developmental concepts. Folia Morphol (Warsz). 2024;83(3):553-564. PubMed
  3. Matsui O, Kadoya M, Takahashi S, et al. Focal sparing of segment IV in fatty livers shown by sonography and CT: correlation with aberrant gastric venous drainage. AJR Am J Roentgenol. 1995;164(5):1137-40. PubMed
  4. Yoshimitsu K, Honda H, Kuroiwa T, et al. Unusual hemodynamics and pseudolesions of the noncirrhotic liver at CT. Radiographics. 2001;21 Spec No:S81-96. PubMed
  5. Dreifuss NH, Ramallo D, McCormack L. Multifocal Nodular Fatty Infiltration of the Liver: A Rare Benign Disorder That Mimics Metastatic Liver Disease. ACG Case Rep J. 2021;8(2):e00537. PubMed
  6. Diop M, Sharma S, Samuel M, et al. Radiopathologic findings of multifocal nodular hepatic steatosis. Radiol Case Rep. 2024;19(8):3096-3101. PubMed
  7. Lupescu IG, Grasu M, Capsa R, et al. Hepatic perfusion disorders: Computer-tomographic and magnetic resonance imaging. J Gastrointestin Liver Dis. 2006;15(3):273-9. PubMed
  8. Byun J, Lee SS, Sung YS, et al. CT indices for the diagnosis of hepatic steatosis using non-enhanced CT images: development and validation of diagnostic cut-off values in a large cohort with pathological reference standard. Eur Radiol. 2019;29(8):4427-4435. PubMed

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