先に結論:非外傷性腹直筋血腫
- 腹直筋血腫は強い咳・抗凝固薬の内服などで下腹壁動脈が破れたり筋肉が切れたりして起こり、高齢者・抗凝固療法中の人に多い病気です
- CTでは腹直筋(鞘)内の紡錘形・レンズ状の高吸収の血腫として見え、造影CTで造影剤の漏れ出しがあれば活動性出血です
- 急な腹痛と腹壁の腫瘤で、腹腔内の病気と間違えやすいため、腹壁も忘れずに確認します。多くは保存的治療で、出血が続けば動脈塞栓術を考えます
- 腹直筋血腫は腹壁血腫・筋肉内血腫の一つで、診断の多くはCTでつきます(126例中83%)
非外傷性腹直筋血腫とは?
- その本体は急激な腹直筋収縮や過伸展に伴う筋断裂や下腹壁動脈の破綻による血腫形成と考えられている。
- 腹直筋血腫、腹直筋鞘血腫、腹直筋症候群などと呼ばれることがある。
- 原因・きっかけとしては、強い咳、腹部への軽い外力、抗凝固療法などがあり、抗凝固薬の使用が増えるにつれて増えると考えられている(Hatjipetrou 2015)。
- 危険因子は女性、高齢、抗凝固療法、咳やその他の腹部への外力とされる(Cherry 2006)。
- はっきりしたきっかけがなくても発症することがある。
- 症状は腹痛(84%)と腹壁の腫瘤(63%)が多い(Cherry 2006)。腹腔内の病気と間違えると不要な開腹手術につながるため、CTで腹壁の血腫であることを確かめることが大切である(Hatjipetrou 2015)。
- 治療は,安静,疼痛コントロール,抗凝固療法の見直しなどの保存的加療が原則。Mayo Clinicの126例の検討では、女性が64%、平均年齢は約68歳、69%が抗凝固療法中、29%に咳があり、診断はCTによるものが83%であった。86%は対症療法と輸血で治療でき、手術または血管内塞栓術を要したのは7.9%、出血による死亡は1.6%であった(Cherry 2006)。
腹直筋血腫のCT画像所見
- 腹直筋領域に広がる内部不均一な高吸収の血腫として認める。レンズ状、紡錘状の場合が多い。
- 造影CTでは出血部が点状の高吸収として描出されることがある。
- 弓状線より上方では腹直筋鞘内にとどまり正中線を越えないが、弓状線より下方では鞘の後葉を欠くため、正中を越えたり膀胱前腔へ広がったりすることがある。
CTでの重症度と治療の考え方
CTでの血腫の広がりから軽症(I型)・中等症(II型)・重症(III型)に分ける分類があり、II型・III型は入院が必要とされます(Berná 1996)。
| CT・全身状態 | 治療の考え方 |
|---|---|
| 造影剤の漏れ出しなし・全身状態が安定 | 保存的治療で足りることが多い |
| 造影CT(CTA)で造影剤の漏れ出しあり・腹痛が続く | 動脈塞栓術(TAE)の主な適応(Becker 2024) |
| 治療に反応しない出血・腹部コンパートメント症候群 | 手術を考える |
症例 80歳代女性 下腹部痛、外傷歴なし。
右下腹直筋内に高吸収な血腫を認める所見あり。
非外傷性の右下の腹直筋血腫と診断され、保存的に加療されました。
腹直筋血腫でよくある疑問(Q&A)
Q. 腹直筋血腫とはどんな病気ですか?
A. お腹の前にある腹直筋の中や、腹直筋を包む鞘の中に血液がたまる病気です。腹痛と腹壁のしこりで気づかれ、高齢の方や抗凝固薬を飲んでいる方に多くみられます(Cherry 2006)。
Q. 原因は何ですか?
A. 強い咳などで腹直筋が急に強く縮んだときの筋肉の断裂や、腹直筋の裏を走る下腹壁動脈の破綻が主な原因と考えられています。抗凝固療法中の方では、軽いきっかけで大きな血腫になることがあります。
抗凝固薬を飲んでいる方で、急なお腹の痛みや腹壁のしこり・あざが出たときは、早めに医療機関を受診してください。
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参考文献:
- Cherry WB, Mueller PS. Rectus sheath hematoma: review of 126 cases at a single institution. Medicine (Baltimore). 2006;85(2):105-10. PubMed
- Berná JD, Garcia-Medina V, Guirao J, et al. Rectus sheath hematoma: diagnostic classification by CT. Abdom Imaging. 1996;21(1):62-4. PubMed
- Hatjipetrou A, Anyfantakis D, Kastanakis M. Rectus sheath hematoma: a review of the literature. Int J Surg. 2015;13:267-71. PubMed
- Becker LS, Dewald CLA, Wacker FK, et al. Spontaneous retroperitoneal and rectus sheath hematomas and their interventional therapy: a review. Rofo. 2024;196(2):163-175. PubMed
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