非外傷性腹直筋血腫とは?
- その本体は急激な腹直筋収縮や過伸展に伴う筋断裂や下腹壁動脈の破綻による血腫形成と考えられている。
- 腹直筋血腫、腹直筋鞘血腫、腹直筋症候群などと呼ばれることがある。
- 原因としては、呼吸器疾患に伴う激しい咳嗽、くしゃみ、排便、排尿、分娩、性交時の腹筋緊張、高血圧、抗凝固療法、血液疾患、腹筋運動、スポーツ、腹部外科手術など。
- 咳嗽が56%と高率、次いで抗凝固療法22%、高血圧12%と報告されている1)。
- スポーツではバレーボール中の発症の報告が散見される。
- 疾患背景として肝硬変、糖尿病、脳梗塞などの基礎疾患があり、抗凝固薬の服用などが多いが、これらがなくても発症する。
- 血腫の発生部位は、右下40%、右上23%、左下17%、左上11%と右下腹部が最多2)。
- 鑑別疾患3)は、腹壁膿瘍、腹壁瘢痕ヘルニア、胆嚢手よう、肝腫瘍、肝被膜下血腫、脾腫、腹壁ヘルニア瘢痕など。
- 治療3)は,安静,局所冷却,止血剤投与,疼痛コントロールなどの保存的加療が原則。
腹直筋血腫のCT画像所見
- 腹直筋領域に広がる内部不均一な高吸収の血腫として認める。レンズ状、紡錘状の場合が多い。
- 造影CTでは出血部が点状の高吸収として描出されることがある。
- 腹直筋鞘内にあって正中線を越えない。
症例 80歳代女性 下腹部痛、外傷歴なし。
右下腹直筋内に高吸収な血腫と認める所見あり。
非外傷性の右下の腹直筋血腫と診断され、保存的に加療されました。
参考文献:
1)Surgery 72: 568-572,1972
2)外科診療 21:499-502,1979
3)北里医学 2013; 43: 133-136