Spin echo系とGradient echo系のシーケンスは、MRIで使用される基本的な撮影手法であり、それぞれ異なるシナリオで有効です
以下に、それぞれのシーケンスの代表的なものとその特徴を簡単にまとめました。
Spin Echo系
- 基本原理: スピンエコー法は、90度パルスと180度パルスを使用してエコー信号を生成します。最初に90度パルスを適用してスピンを倒し、次に180度パルスでスピンの位相を反転させ、信号を収集します。
- 特徴:
- 高いSNR(信号対雑音比)と均一な画像コントラスト。
- T1WI、T2WI、Proton Density(PD)イメージングに適しています。
- 画像のコントラストが安定しており、アーチファクトが少ない。
Spin echo系は、磁場の不均一性に強く、画像のコントラストが高いため、脳や内臓の詳細な画像を得るのに適しています。
Spin echo系シーケンスの代表的なものには以下のものがあります。
T1WI
T1WIは、脂肪が白く、水が暗く見える画像で、解剖学的な詳細を詳しく見るのに適しています。病変や腫瘍が周囲の組織とどのように異なって見えるかを評価するのに役立ちます。
T2WI
T2WIは、水分が多く含まれる組織や構造(例えば、浮腫や炎症)を白く(明るく)表示します。これは、脳や脊髄などの詳細な画像撮影に使用され、特に病理的変化を見つけるのに有効です。
FLAIR
FLAIRは、多発性硬化症や脳梗塞、脳炎、脳腫瘍など、さまざまな脳疾患の診断に特に有用です。水分の多い異常組織や炎症部位はFLAIR画像で高信号として現れるため、これを用いることで患部の検出と評価が容易になります。
3D-FSE(Three-Dimensional Fast Spin Echo)
3D-FSEは、スピンエコー系の技術を基盤として、撮像速度を向上させた3次元撮像技術です。スピンエコー系の高いSNRと安定したコントラストを維持しつつ、3次元で高解像度の画像を短時間で取得できるという利点があります。
関連:MRIの3D-FSE(Three-Dimensional Fast Spin Echo)とは?
Gradient Echo系
- 基本原理: グラジエントエコー法は、RFパルス(通常は小角度パルス)と傾斜磁場を利用してエコー信号を生成します。位相エンコーディングと周波数エンコーディングにより信号を収集します。
- 特徴:
- 高速撮像が可能で、動きアーチファクトが少ない。
- T2*(T2スター)効果を強調することができるため、微小出血や金属アーチファクトの検出に適しています。
- 撮像時間が短く、動的撮像や機能的MRI(fMRI)に適しています。
Gradient echo系は特にT2*効果(微細な磁場の不均一による信号減衰)を評価するのに有効で、出血や鉄分の蓄積などを検出するのに役立ちます。
Gradient echo系シーケンスの代表的なものには以下のものがあります。
T2*WI
T2*WIは、T2効果に加えて、磁場の不均一による信号減衰を利用します。T2効果により特定の組織や物質(例えば、出血や鉄沈着)がより暗く(低信号)表示されます。この性質は、微小出血や特定の代謝異常を検出するのに特に有効です。
TOF-MRA (Time of Flight Magnetic Resonance Angiography)
TOF-MRAは、血管のイメージングに使用されるMRI技術で、血流の「飛行時間」(blood flowing into a scanned slice)に基づいています。新鮮な血液(未飽和のスピンを含む)が撮影平面に流れ込むと、それが高信号として現れ、周囲の静止した組織(飽和したスピン)とは対照的になります。これにより、血管だけが鮮明に描出されるため、血管の詳細な構造を非侵襲的に評価することが可能です。
MPRAGE (Magnetization Prepared Rapid Gradient Echo)
脳の詳細な3D画像を提供し、特に脳の灰白質と白質の区別、病変の検出に優れています。これにより、アルツハイマー病の診断や脳構造の研究に広く使用されています。
Spoiled Gradient Echo (SPGR) / Fast Low Angle Shot (FLASH)
これらのシーケンスは、高速撮影を可能にし、特に動的な研究や3D画像の取得に適しています。心臓や関節など、動きが速い部位の撮影に有効です。
まとめ
Spin echo系は磁場の不均一性に強く、高い画像コントラストを提供するため、詳細な診断に役立ちます。
Gradient echo系は撮影速度が速いため、動的な撮影や時間制約がある場合に選ばれますが、磁場の不均一には弱いです。