Spin echo系とGradient echo系のシーケンスは、MRIで使用される基本的な撮影手法であり、それぞれ異なるシナリオで有効です

以下に、それぞれのシーケンスの代表的なものとその特徴を簡単にまとめました。

先に結論:スピンエコー(SE)系とグラディエントエコー(GRE)系の違い

スピンエコー系 グラディエントエコー系
エコーの作り方 90°パルス+180°再収束パルス 180°パルスを使わず傾斜磁場の反転
長所 画質・コントラストが安定、磁場の乱れ(金属・空気)に強い 撮影が速い、3D撮影・息止め・ダイナミックに向く、出血・鉄・石灰化に敏感
代表例 T1WI・T2WI・FLAIR・PD・3D-FSE T2*WI・SWI・TOF-MRA・MPRAGE・SPGR・in/opposed-phase

Spin Echo系

  • 基本原理: スピンエコー法は、90度パルスと180度パルスを使用してエコー信号を生成します。最初に90度パルスを適用してスピンを倒し、次に180度パルスでスピンの位相を反転させ、信号を収集します。
  • 特徴:
    • 高いSNR(信号対雑音比)と均一な画像コントラスト。
    • T1WI、T2WI、Proton Density(PD)イメージングに適しています。
    • 画像のコントラストが安定しており、アーチファクトが少ない。

Spin echo系は、磁場の不均一性に強く、画像のコントラストが高いため、脳や内臓の詳細な画像を得るのに適しています。

スピンエコー法をわかりやすく言うと、「ばらばらに散った足並みを、180°パルスで折り返させてもう一度そろえる」方法です。90°パルスで倒れたスピンは、磁場のわずかなむらによって少しずつ足並み(位相)がずれていきます。そこで180°パルスを当てると、速いスピンと遅いスピンの順番が入れかわり、一定時間後(エコー時間TE)に再び足並みがそろって信号(エコー)が出ます。このため、装置や組織による磁場のむらの影響が打ち消され、組織本来のT2の差が画像に表れます。

現在の臨床で使われるT2強調像の多くは、1回の励起で180°パルスを何回も当てて複数のエコーを集める高速スピンエコー法(FSE、TSEとも呼ばれます)で撮られています。

Spin echo系シーケンスの代表的なものには以下のものがあります。

T1WI

T1WIは、脂肪が白く、水が暗く見える画像で、解剖学的な詳細を詳しく見るのに適しています。病変や腫瘍が周囲の組織とどのように異なって見えるかを評価するのに役立ちます。

関連:MRIにおけるT1強調画像とその意義は?

T2WI

T2WIは、水分が多く含まれる組織や構造(例えば、浮腫や炎症)を白く(明るく)表示します。これは、脳や脊髄などの詳細な画像撮影に使用され、特に病理的変化を見つけるのに有効です。

関連:MRIにおけるT2強調画像とその意義は?

FLAIR

FLAIRは、多発性硬化症や脳梗塞、脳炎、脳腫瘍など、さまざまな脳疾患の診断に特に有用です。水分の多い異常組織や炎症部位はFLAIR画像で高信号として現れるため、これを用いることで患部の検出と評価が容易になります。

関連:MRIにおけるFLAIRとその意義は?

3D-FSE(Three-Dimensional Fast Spin Echo)

3D-FSEは、スピンエコー系の技術を基盤として、撮像速度を向上させた3次元撮像技術です。スピンエコー系の高いSNRと安定したコントラストを維持しつつ、3次元で高解像度の画像を短時間で取得できるという利点があります。装置メーカーごとにCUBE(GE)、SPACE(Siemens)、VISTA(Philips)と呼ばれ、短いエコー間隔と再収束パルスの可変フリップ角によってぼけを抑え、広い範囲を臨床的に許容できる時間で3D撮像できます。

関連:MRIの3D-FSE(Three-Dimensional Fast Spin Echo)とは?

Gradient Echo系

  • 基本原理: グラジエントエコー法は、RFパルス(通常は小角度パルス)と傾斜磁場を利用してエコー信号を生成します。位相エンコーディングと周波数エンコーディングにより信号を収集します。
  • 特徴:
    • 高速撮像が可能で、動きアーチファクトが少ない。
    • T2*(T2スター)効果を強調することができるため、微小出血や鉄沈着・石灰化の検出に適しています(その反面、金属によるアーチファクトは強く出ます)。
    • 撮像時間が短く、動的撮像や機能的MRI(fMRI)に適しています。

Gradient echo系は特にT2*効果(微細な磁場の不均一による信号減衰)を評価するのに有効で、出血や鉄分の蓄積などを検出するのに役立ちます。

グラディエントエコー法をわかりやすく言うと、180°パルスの代わりに傾斜磁場をいったん逆向きにかけて足並みをそろえる方法です。傾斜磁場でつくったずれは戻せますが、磁場のむらによるずれは戻らないため、信号はT2*で減衰します。これが、出血・鉄・石灰化に敏感な一方で、金属や空気の境界でゆがみや信号低下が出やすい理由です。また、小さいフリップ角を使うと短い繰り返し時間(TR)で撮れるため、撮影が速くなります。

Gradient echo系シーケンスの代表的なものには以下のものがあります。

T2*WI

T2*WIは、T2効果に加えて、磁場の不均一による信号減衰を利用します。T2*効果(磁化率効果)により特定の組織や物質(例えば、出血や鉄沈着)がより暗く(低信号)表示されます。この性質は、微小出血や特定の代謝異常を検出するのに特に有効です。

関連:T2*強調像・磁化率強調像(SWI)の意義とは?

TOF-MRA (Time of Flight Magnetic Resonance Angiography)

TOF-MRAは、血管のイメージングに使用されるMRI技術で、血流の「飛行時間」(blood flowing into a scanned slice)に基づいています。新鮮な血液(未飽和のスピンを含む)が撮影平面に流れ込むと、それが高信号として現れ、周囲の静止した組織(飽和したスピン)とは対照的になります。これにより、血管だけが鮮明に描出されるため、血管の詳細な構造を非侵襲的に評価することが可能です。

関連:頭部MRAの撮影の意義は?わかることは?

MPRAGE (Magnetization Prepared Rapid Gradient Echo)

脳の詳細な3D画像を提供し、特に脳の灰白質と白質の区別、病変の検出に優れています。これにより、アルツハイマー病の診断や脳構造の研究に広く使用されています。

Spoiled Gradient Echo (SPGR) / Fast Low Angle Shot (FLASH)

これらのシーケンスは、高速撮影を可能にし、特に動的な研究や3D画像の取得に適しています。腹部の息止め撮影や造影ダイナミック撮影、関節などの3D撮影に広く使われています。

「spoiled(スポイル)」とは、毎回のTRの終わりに残った横磁化をわざと崩して(スポイルして)次の信号に持ち越さない工夫のことです。これにより画像がT1強調になり、造影剤による増強を見やすくなります。

balanced SSFP(TrueFISP・FIESTA・balanced FFE)

横磁化をスポイルせずに保ったまま繰り返すグラディエントエコー法です。撮影が非常に速く、水や血液が明るく写るため、心臓のシネMRIなどに使われます。

主なシーケンスの種類と装置メーカーごとの呼び名

同じ原理のシーケンスでも、メーカーによって呼び名が異なります。

種類 系統 GE Siemens Philips
高速スピンエコー SE系 FSE TSE TSE
3D高速スピンエコー SE系 CUBE SPACE VISTA
spoiled GRE GRE系 SPGR FLASH T1-FFE
balanced SSFP GRE系 FIESTA TrueFISP balanced FFE

なお、拡散強調像(DWI)の多くは、スピンエコーで信号をつくり、エコープラナー法(EPI)で高速に読み出す方式(SE型EPI)で撮られています。

スピンエコー法・グラディエントエコー法でよくある疑問(Q&A)

Q1. SE法とGRE法の一番の違いは?
180°再収束パルスを使うかどうかです。使うSE法は磁場のむらに強く、使わないGRE法は速い代わりに磁場のむらの影響(T2*効果)を受けます。

まとめ

Spin echo系は磁場の不均一性に強く、高い画像コントラストを提供するため、詳細な診断に役立ちます。

Gradient echo系は撮影速度が速いため、動的な撮影や時間制約がある場合に選ばれますが、磁場の不均一には弱いです。

あわせて読みたい:MRIの基本シーケンスを部位別に

参考文献

  1. Bitar R, Leung G, Perng R, et al. MR pulse sequences: what every radiologist wants to know but is afraid to ask. Radiographics. 2006;26(2):513-37. PubMed
  2. Markl M, Leupold J. Gradient echo imaging. J Magn Reson Imaging. 2012;35(6):1274-89. PubMed
  3. Chavhan GB, Babyn PS, Thomas B, et al. Principles, techniques, and applications of T2*-based MR imaging and its special applications. Radiographics. 2009;29(5):1433-49. PubMed
  4. Hargreaves BA. Rapid gradient-echo imaging. J Magn Reson Imaging. 2012;36(6):1300-13. PubMed
  5. Mugler JP. Optimized three-dimensional fast-spin-echo MRI. J Magn Reson Imaging. 2014;39(4):745-67. PubMed

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