先に結論:FLAIR(フレア)像とは

  • FLAIRは、T2強調像から「髄液(水)の白さ」だけを消したMRIの撮り方です。脳の病変(むくみ・梗塞・炎症など)は白く写る一方、脳脊髄液は黒くなります
  • 役立つ場面:脳室や脳の表面など髄液に接した場所の病変(脳室周囲の白質病変、多発性硬化症、脳表の病変)が見やすい。くも膜下出血・髄膜炎では脳溝が白く写ることがあります
  • 中身の見分け:T2強調像で白い袋がFLAIRで黒く抜ければ髄液と同じ水(くも膜嚢胞・古い梗塞の空洞など)、白いままなら蛋白や血液を含む液体やむくみを考えます
  • 脳梗塞:発症からまもない梗塞はFLAIRではまだ白く写らず、拡散強調像(DWI)だけ白いことがあります。古い梗塞(陳旧性脳梗塞)は中が黒く抜け、ふちが白いのが目安です

MRIにおけるFLAIRとその意義とは?

まず、FLAIRとはfluid attenuated inversion recoveryの頭文字を略したものです。
fluid attenuatedとは液体(の信号)を減弱させたという意味があり、inversion recoveryはIR法ということで、(髄液濃度の)液体のみを無信号にしたT2強調画像となります。

つまり、T2強調像では髄液は高信号になりますが、その髄液濃度と同じ液体の高信号を取り払って無信号にしたものがFLAIR像です。

では、なぜFLAIR像が撮られるのでしょう。
FLAIR像は主に頭部(脳)で用いられ、他の部位では使われる場面が限られます。
その理由は、以下のようなFLAIR像の特徴にあります。

脳脊髄液などの液体に接した病変を正確に評価できる

T2強調像においては脳の実質と脳脊髄液は隣接しており、なにか浮腫があった場合、高信号と高信号になるため脳表が評価しにくいことがあります。
そのため、脳表の髄液を消すことによって、病変を正確に評価できるのが利点です。

液化した病変かどうか、その液体が純粋な液体かどうかを評価できる

脳脊髄液と等信号、同じ性質のものかどうかを評価できます。

また、T2強調像において脳脊髄液と同じ高信号を示していても、実は出血や蛋白濃度の高い液体貯留の場合もあるので、それが本当に脳脊髄液と同じ程度の信号なのかを判断するのに、FLAIRは非常に有用になります。

 

症例 70歳代男性

FLAIRとその意義

T2強調像において、左の前頭部に脳脊髄液と同じような高信号を認めています。
だからといって、これが本当に脳脊髄液と同じ性質であるかはわかりません。
出血の可能性もあるわけです。

ここでFLAIR画像が有用となってきます。

FLAIRとその意義

FLAIRで見ると、T2強調像で高信号だった部分は脳脊髄液と同じように抜けており、脳脊髄液と同じような嚢胞であると言えます。
すなわち、くも膜嚢胞が疑われると診断することができます。

症例 60歳代男性

FLAIRとその意義

T2強調像で左被殻に高信号を認めています。
かなり高信号が強いので陳旧性の脳梗塞を疑いますが、T2強調像だけを見ているとこれが白質変性したものなのか、陳旧性のラクナ梗塞なのか少し分かりにくいですよね。

この症例ではおそらくラクナ梗塞であろうと推定されますが、これがFLAIR画像において内部が抜けて辺縁に高信号があればこれは脳梗塞であるというように診断することができます。

FLAIRとその意義

FLAIRで見ると、このように内部が抜けて辺縁に高信号を伴っているので、これは白質変性ではなくて陳旧性のラクナ梗塞であると診断することができます。

症例 40歳代男性

こちらは外傷で来られた方の頭部CTです。

FLAIRとその意義

このように、頭頂部後頭葉の脳溝に沿った高吸収を認めています。
外傷性のくも膜下出血だということがわかります。

このあとフォローのMRIが撮影されました。
6日後のT2強調像になります。

FLAIRとその意義

上顎洞に粘膜肥厚を認めています。
先ほどの頭頂部を見てみましょう。

FLAIRとその意義

くも膜下腔に明らかな出血を疑うような所見は認めていません。
6日後なので外傷性のくも膜下出血はひいてしまったようにも考えられます。
ですが、これをFLAIRで見てみると、

FLAIRとその意義

脳溝に沿った高信号が残っています。
つまり、外傷性のくも膜下出血は完全には消失していないということになります。発症3〜45日の亜急性期くも膜下出血の検討では、FLAIRの検出率は100%で、T1強調像(36%)、T2強調像(0%)、CT(45%)を大きく上回りました。FLAIRでは発症18日以内のくも膜下出血はすべて高信号として描出され、最長45日まで追えたと報告されています。

このように、脳脊髄液に接するところや、まさに脳脊髄液があるところの評価にはFLAIRが非常に適しているということがわかります。

まとめ

FLAIRは、脳脊髄液などの液体に接した部分(脳表や脳溝)の病変を正確に評価することができます。
特に、くも膜下出血や髄膜炎などで有用です。
ただし、脳溝・脳槽のFLAIR高信号は病気以外でも起こります。全身麻酔中の高濃度酸素投与、プロポフォール鎮静下の小児、24〜48時間以内に受けたガドリニウム造影検査の後でも見られると報告されているため、撮像時の状況や直前の検査歴を確認することが大切です。

また、その高信号が本当に液体なのか、脳脊髄液と同じ程度の液体なのかどうかを知るためにはT2強調像だけでは分かりません。
FLAIRをみて脳脊髄液と同じように抜けていれば、それが脳脊髄液と同じような液体であるということが初めて分かります。

このような点がFLAIRの意義だと言えます。

FLAIRで高信号(白く写る)になる主な病気・鑑別一覧

FLAIRの高信号は「どこが白いか」で考えると整理しやすくなります。

白い場所 主な原因 見分けのポイント
脳室周囲・深部白質 加齢・高血圧などによる白質病変(慢性虚血性変化)、多発性硬化症などの脱髄 加齢性の変化は左右対称で点状〜斑状。多発性硬化症は脳室に垂直な楕円形、脳梁や皮質直下にも出やすい
皮質〜皮質下(血管の支配域) 脳梗塞(亜急性期〜慢性期) DWI・ADCで時期を判断。陳旧性は中が黒く抜けてふちが白い
皮質〜皮質下(血管の支配域と合わない) 脳炎(ヘルペス脳炎は側頭葉内側・島)、てんかん発作後の変化、PRES(後頭葉優位)、静脈性梗塞 分布・左右差・症状の経過をあわせて考える
腫瘤のまわり 脳腫瘍・転移・膿瘍のまわりのむくみ(浮腫) 造影MRIで本体を確認
脳溝・脳槽(くも膜下腔) くも膜下出血、髄膜炎、髄膜播種 高濃度酸素・造影剤投与後・鎮静でも白くなる(下のQ&A参照)
脳表の血管に沿った点・線 動脈閉塞・狭窄による遅い血流(FLAIR vascular hyperintensity)、もやもや病のivy sign MRAで閉塞・狭窄がないか確認

脳梗塞はFLAIRでどう見える?(急性期と陳旧性)

  • 超急性期:梗塞はまずDWIで白くなり、FLAIRで白くなるのは少し遅れます。発症4.5時間以内を見分ける検討(543例)では、急性期の病変はDWIで95%に見えたのに対し、FLAIRで見えたのは50%でした。「DWIで白いのにFLAIRではまだ白くない」(DWI-FLAIR mismatch)は、発症4.5時間以内を感度62%・特異度78%・陽性的中率83%で示しました(Thomalla 2011)。発症時刻がわからない脳梗塞で、治療の判断材料として使われる所見です。
  • 血管の中の高信号:閉塞した動脈の先で血流が遅くなると、脳表の血管がFLAIRで白い点や線に見えます(FLAIR vascular hyperintensity)。36研究3,577例のメタ解析では、全体として予後とは関連しませんでしたが、血管内治療を受けた患者ではより良い転帰と関連していました(Zhou 2020)。
  • 陳旧性脳梗塞:組織が抜けて液体(髄液と同じ)に置き換わるため、FLAIRで中が黒く、ふち(グリオーシス)が白く写ります。上の症例のように、T2強調像だけでは白質病変と区別しにくいときに役立ちます。

MRI FLAIRの注意点と使い分け(Q&A)

Q. MRIのFLAIRで脳溝や脳槽が白いときは、必ず病気ですか?
A. 必ずしもそうではありません。全身麻酔中の小児・若年者70例の検討では、吸入酸素濃度が0.60を超えると、脳底槽や脳溝のくも膜下腔が高信号になりやすく、麻酔薬の種類とは関係しませんでした(Frigon 2002)。100%酸素でこの現象が起こり、50%酸素では起こらなかったという報告もあります(Braga 2003)。

Q. この酸素による高信号は減らせますか?
A. 鎮静した小児の検討では、magnetization-prepared 3D-FLAIRで髄液の高信号が有意に少なくなり、出血との区別もしやすくなりました(Jeong 2016)。

Q. くも膜下出血はFLAIRだけで十分に見つけられますか?
A. 41例の検討では、FLAIRの感度は発症4日以内で81%、それ以降で87%で、グラディエントエコーT2*強調像(94%・100%)のほうが高い結果でした(Mitchell 2001)。FLAIRは強力ですが、T2*強調像なども組み合わせて評価します。

Q. 頭部MRIで「FLAIRで高信号がある」と言われました。心配ですか?
A. 年齢に伴う小さな白質の変化など、心配の少ないものも多く含まれます。原因は場所や形、他の撮り方の所見をあわせて判断されるので、結果について気になることがあれば検査を受けた医療機関で相談してください。

あわせて読みたい:MRIの基礎・原則、頭部MRIの解剖

参考文献

  1. Hajnal JV, Bryant DJ, Kasuboski L, et al. Use of fluid attenuated inversion recovery (FLAIR) pulse sequences in MRI of the brain. J Comput Assist Tomogr. 1992;16(6):841-4. PubMed
  2. Noguchi K, Ogawa T, Inugami A, et al. Acute subarachnoid hemorrhage: MR imaging with fluid-attenuated inversion recovery pulse sequences. Radiology. 1995;196(3):773-7. PubMed
  3. Noguchi K, Ogawa T, Seto H, et al. Subacute and chronic subarachnoid hemorrhage: diagnosis with fluid-attenuated inversion-recovery MR imaging. Radiology. 1997;203(1):257-62. PubMed
  4. Frigon C, Shaw DW, Heckbert SR, et al. Supplemental oxygen causes increased signal intensity in subarachnoid cerebrospinal fluid on brain FLAIR MR images obtained in children during general anesthesia. Radiology. 2004;233(1):51-5. PubMed
  5. Morris JM, Miller GM. Increased signal in the subarachnoid space on fluid-attenuated inversion recovery imaging associated with the clearance dynamics of gadolinium chelate: a potential diagnostic pitfall. AJNR Am J Neuroradiol. 2007;28(10):1964-7. PubMed
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  8. Braga FT, da Rocha AJ, Hernandez Filho G, et al. Relationship between the concentration of supplemental oxygen and signal intensity of CSF depicted by fluid-attenuated inversion recovery imaging. AJNR Am J Neuroradiol. 2003;24(9):1863-8. PubMed
  9. Jeong HK, Oh SW, Kim J, et al. Reduction of Oxygen-Induced CSF Hyperintensity on FLAIR MR Images in Sedated Children: Usefulness of Magnetization-Prepared FLAIR Imaging. AJNR Am J Neuroradiol. 2016;37(8):1549-55. PubMed
  10. Mitchell P, Wilkinson ID, Hoggard N, et al. Detection of subarachnoid haemorrhage with magnetic resonance imaging. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2001;70(2):205-11. PubMed
  11. Thomalla G, Cheng B, Ebinger M, et al. DWI-FLAIR mismatch for the identification of patients with acute ischaemic stroke within 4·5 h of symptom onset (PRE-FLAIR): a multicentre observational study. Lancet Neurol. 2011;10(11):978-86. PubMed
  12. Zhou Z, Malavera A, Yoshimura S, et al. Clinical prognosis of FLAIR hyperintense arteries in ischaemic stroke patients: a systematic review and meta-analysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020;91(5):475-482. PubMed

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