MRIにおけるT1強調像とその意義とは?
- どうしてT1強調像を撮影するのか
- T1強調像で何が分かるのか
- とくに高信号だった時にどういったことを考えなければならないのか
といったことについてみていきたいと思います。
T1強調像の特徴には以下のものがあります。
解剖構造の全体の輪郭を捉えることができる
一方で、T2強調像は解剖の具体的な中身をみていくもの。
たとえば、層構造や内膜、粘膜下層や粘膜の筋層といったものはすべてT2強調像しかみられません。T1強調像はあくまでも全体の輪郭を捉えることしかできないので、メリットでありデメリットでもあります。
信号パターンから正体を探ることができる
これはT1強調像だけでなくT2強調像との組み合わせも大事ですが、信号パターンから今ある病変がどういったものなのか、その正体を探ることができます。
造影効果を評価することができる
造影するのは基本的にT1強調像であり、T2強調像などではやりません。
T1強調像の造影前と造影後で比べることによって、造影効果を評価することができます。
(まれにFLAIRで造影することもありますが、基本的に造影といえばT1強調像で造影します。)
そして、造影効果を認めた際にはそこに腫瘍や炎症などの存在が示唆されます。
とりあえず重要ポイントをまとめると
- T1強調像で高信号→まずは脂肪、出血を疑う
- 造影効果がある→腫瘍や炎症を疑う
ということになります。
ではここから具体例を見ていきましょう。
症例 60歳代男性、スクリーニング
中脳左背側のところに高信号を認めています。
T1強調像で高信号でまず考えることは、脂肪と出血。
その他、蛋白濃度の高い液体貯留といったものを考えます。
脂肪抑制のT1強調像が撮影されました。
先ほど中脳左背側に認めていた高信号が消えています。
脂肪抑制で抑制されているので、先ほどの成分は脂肪であったということが分かります。
この部位に脂肪腫、あるいは奇形腫が形成されているということが推測されます。
脳出血においてもT1強調像で高信号を示します。
超急性期と急性期は示さずに、亜急性期早期(3日以降)から後期(1ヶ月程度)にかけて、T1強調像で辺縁から高信号を示していき、1週間以上経てば徐々に徐々に真ん中まで高信号になっていきます。
T1強調像で高信号を見た場合、血腫とくに脳出血の場合では、超急性期ではなくて少し時間が経った(少なくとも3日くらいは経った)脳出血であるということが示唆されます。
症例 50歳代男性のT1強調像
左の被殻に粗大な高信号を認めています。
T1強調像で高信号なので脂肪や出血を疑います。
この方は発症14日目の被殻出血で、亜急性期に相当するので高信号を示しているということが分かります。
症例3 50歳代男性、肺癌
50歳代男性、肺癌の方です。
T1強調像と造影後のT1強調像を比べてみましょう。
T1強調像ではあまりはっきりしない(むしろ低信号で少し浮腫性変化を認めている)ですが、造影すると腫瘍が明確に現れています。
他にもいくつか腫瘍が見られ、多発脳転移の状態です。
このように造影効果を評価して、腫瘍がないかというようにチェックできるのがT1強調像です。
症例4 60歳代男性
60歳代男性、造影のT1強調像です。
左の後頭葉から側頭葉にかけて脳溝に沿った異常な造影効果を認めています。
左右差を見れば明らかですね。
髄膜炎と診断されました。
このように、炎症があっても造影されるので、このT1強調像での造影をみることによって脳腫瘍だけではなく炎症の有無も評価することができます。
T1強調像で高信号ならば、まずは脂肪や出血を疑うということですね。
その他、蛋白濃度の高い液体貯留というのもあります。
ただし脂肪というのは頭部ではあまり少なくて、最も多いのは婦人科の卵巣の成熟嚢胞奇形腫(脂肪を含む奇形腫)になります。
造影効果の有無というのを評価できるのがT1強調像です。
今回のように多発脳転移や髄膜炎があることが浮かび上がってくるというのが、T1強調像で造影効果を評価することのできることの意義ということになります。