MRAとは?

MRAとは MR angiography を略したもので、選択的に血流のみを画像化する方法です。
通常、TOF法で非造影で撮影されますので、造影剤は用いません。
(用いることもありますが、ほとんどの場合使用しません。)

MRAは下から頭側へ流れる血流を画像化します。
そのため、渦流や乱流といった流れの影響を受けやすく、それによる信号低下で真の形態を再現できない場合があります。
例えば、狭窄がないのに狭窄があると過大評価したり、動脈瘤のサイズを過小評価することがあるので、そういった点に注意が必要です。

あくまで下から上に流れる血流を画像化するので、乱流といったくるくる回っているような血流がある所や、横方向に流れるものに対してMRAは弱いということを覚えておいてください。

MRAの意義

MRAは、動脈の病変(狭窄、閉塞、動脈瘤、解離など)を描出することができます。

症例1 50歳代女性

50代女性の方のスクリーニングです。

MRA 症例1-1

このように、血管だけを取り出したものがMRAです。
こちらはMRAのなかでもMIP像といい、通常、縦回転と横回転の2種類が作成されます。

縦回転の画像における、前方循環系の血管(内頸動脈、中大脳動脈、前大脳動脈)と後方循環系(椎骨動脈、脳底動脈、後大脳動脈)です。

MRA 症例1ー2

今回、問題となっているのがここです。


大脳動脈のM1からM2に分岐する所に嚢状動脈瘤を認めています。
画像を縦回転させて左側と見比べてみると、右側に動脈瘤があるのがよく分かります。

次に横回転の画像を見てみましょう。
横回転においても、右の中大脳動脈の分岐部の所に動脈瘤を認めています。

MRA 症例1-4


ただしMRAというのはMIP像だけでなく、必ず元画像でも見ることが大切です。
なぜなら、先ほど述べたようにMRAでは過小評価したり、過大評価したりすることがあるためです。

こちらが元画像です。

MRA 症例1-5

この高信号のものが血管で、これを取り出したものがMIP像ということになります。
こちらを見ていくと、中大脳動脈の分岐部の所に嚢状の動脈瘤があるということが分かります。

MRA 症例1-6

症例2 60歳代男性

60代の男性の方の画像です。
右アテローム血栓性脳梗塞を発症し、その原因を探るためにMRAが撮影されました。

MRA 症例2-1

画像を見ていくと、右側の中大脳動脈のM1に相当する所に狭窄を認めていることが分かります。

MRA 症例2-2

左の中大脳動脈と比べると、明らかに狭窄しており、これが原因でアテローム血栓性の脳梗塞を発症したと推測されます。

MRA 症例2-3

また、左の椎骨動脈は太いですが、右側は細くなっているので、右椎骨動脈の低形成が疑われます。

その点を元画像でも確認してみます。
左側の椎骨動脈と右側の椎骨動脈です。

MRA 症例2-4

右の方はかなり細いということが分かります。
右椎骨動脈は解離ではなく、低形成が存在するということです。

上の方を見てみると、先ほどの狭窄の部位が確認できます。

MRA 症例2-5
MRAと比べると元画像の方がむしろ分かりにくいかも知れませんが、左側の中大脳動脈はしっかり高信号のものを追えるのに対して、右側は少し細いということが分かります。
この点から、右の中大脳動脈の狭窄があるということが疑われます。

症例3 60歳代女性

60代の女性の方のMIP像です。

MRA 症例3-1

両側の椎骨動脈や脳底動脈、後大脳動脈は追うことができますが、前方循環系の血管が追いにくいのが分かります。


まず、左の内頸動脈が細いということです。

MRA 症例3-3

また、右側の中大脳動脈もはっきりせずに途中から追うような状態で、左側も描出が不良となっています。
前大脳動脈も左側A1はあまりはっきりせず、A2も1本しか無いように見えます。

MRA 症例3-4
こういった画像を見たときに考えなければならないのが、もやもや病です。
内頸動脈が狭窄しているということが推測されます。

これを元画像で見てみましょう。
椎骨動脈や脳底動脈、内頸動脈ははっきり見えますが、左の方が少し細いということが分かります。


MRA 症例3-5
上の方を見てみると、右側の中大脳動脈は途中からはっきりせずに、かなり細かい血管になっています。
これが、もやもや血管であるということが分かります。

MRA 症例3-6

左側も小さな血管がプツプツとあるだけで、太い血管がほとんど見えません。

MRA 症例3-7
こういった状態を見れば、もやもや病だと診断することができます。

まとめ

MRAは非常にシンプルです。
狭窄や閉塞、動脈瘤や解離がないか(ただし、解離はMRAだけでは診断が難しく、他のシークエンスとも見ていく必要がある)といった動脈の病変を描出することができます。

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