先に結論:石灰沈着性腱板炎(肩の石灰化)とは
- 肩の腱板(主に棘上筋腱)にカルシウムの結晶(ハイドロキシアパタイト)がたまり、炎症を起こす病気です。30〜60歳の女性に多く、突然の激しい肩の痛み(夜も眠れないほど)・腕が上がらないといった症状で受診することが多いです。石灰があっても痛みのない人もいます
- 五十肩(凍結肩)との違い:石灰沈着性腱板炎は急に激しく痛み、レントゲンで石灰が写るのに対し、五十肩は痛みと肩の固さがゆっくり進み、レントゲンでは異常がないのが基本です
- 痛みは、たまった石灰が崩れて周りの滑液包に流れ出すときに強くなると考えられています。治療は痛み止め・注射(ステロイド)・石灰の吸引などで、多くは数週間で落ち着きます。なお、超音波ガイド下で石灰を針で砕いて洗い流す治療(バルボタージュ)に肩峰下滑液包へのステロイド注射を組み合わせると、ステロイド注射だけの場合より1年後の肩の機能が良かったとするランダム化比較試験があります
- レントゲン(やCT)で腱板付着部の石灰化が見えれば診断は容易で、急性期はぼんやりした大きな石灰、慢性期は輪郭のはっきりした小さな石灰になります。MRIでは石灰は黒く(低信号)写り、周りのむくみがわかります。同じ結晶が首の前の筋肉にたまると石灰沈着性頸長筋腱炎(のどの痛み・首が動かしにくい)になります
石灰沈着性腱板炎/石灰性腱炎(calcific tendinitis)
- 腱板に沈着したハイドロキシアパタイト結晶を主体としたリン酸カルシウム塩によって誘発される炎症性変化。
- 原因不明の疾患で棘上筋腱に最も多い。肩の痛みがある人の6.8〜40%、痛みのない人の2.7〜20%に石灰沈着がみられる(Kaplan 2026)。
- 有症状例では、急性炎症による強い疼痛が見られる。
- 症状は夜間に強いことが多い。患者は30〜60歳の女性が中心(Guido 2025)。
- 腱内の石灰沈着が滑液包に破綻して滑液包炎を来すことが痛みの原因と考えられている。
- 肩MRIで石灰沈着性腱板炎86例と対照86例を比べた研究では、腱板断裂の頻度は27.9%と34.9%で差がなかった(Beckmann 2019)。
石灰沈着性腱板炎/石灰性腱炎の画像所見
- レントゲンやCTで腱板石灰沈着を確認できれば診断は容易。
- 急性期には大型の淡い石灰化、慢性期には比較的小さく辺縁明瞭な石灰化として認めることが多い。
- MRIでは腱板内の石灰化はT1WI低信号、T2WI低信号で、T2*WI、SWIでより明瞭な低信号となる。(T2*WI、SWIは石灰化の検出に優れている。)。レントゲンで石灰化がはっきりせず、MRIのみで認められることもあるので注意。
- 脂肪抑制T2WIでは炎症性変化を反映して、石灰沈着部周囲の軟部組織信号が上昇する。
症例40歳代女性

肩関節レントゲンで右棘上筋腱付着部に石灰化を認めており、石灰沈着性腱板炎を疑う所見です。

MRIではT1WI,脂肪抑制T2WIともに低信号として同定できます。
石灰沈着性腱板炎と診断されました。
実際の画像:レントゲンとMRIで見た棘上筋腱の石灰沈着(断裂なし)

引用:Tonkaz et al. Eurasian J Med 2026(Figure 2)
50歳代女性の右肩です。Aのレントゲンで棘上筋腱の付着部に約15mmの石灰(矢頭)があり、BのT1強調冠状断像でも同じ場所に低信号の石灰がみられます。Cの矢状断プロトン密度強調像でも石灰がはっきり見え、棘上筋腱の明らかな断裂はありません。(出典:Tonkaz et al. Eurasian J Med 2026, Figure 2, CC BY 4.0)
実際の画像:石灰と同じ場所に腱板の全層断裂を伴った例

引用:Tonkaz et al. Eurasian J Med 2026(Figure 3)
60歳代男性の右肩です。Aのレントゲンで棘上筋腱付着部に約17mmの石灰(矢頭)があり、Bの矢状断プロトン密度強調像とCのT1強調冠状断像では、低信号の石灰(矢頭)と同じ高さに棘上筋腱の全層断裂(矢印)がみられます。(出典:Tonkaz et al. Eurasian J Med 2026, Figure 3, CC BY 4.0)
石灰沈着性腱板炎の画像の見方(どこを見るか)
- レントゲンで石灰の場所を確かめる:上腕骨の大結節のすぐ上(棘上筋腱の付着部)にある石灰が典型です。肩峰と骨頭の間にあれば棘上筋腱、骨頭の前や後ろに重なれば肩甲下筋腱・棘下筋腱のこともあるため、向きを変えた撮影もあわせて見ます。
- 石灰の形と濃さ:輪郭がはっきりして濃い石灰は落ち着いた時期、輪郭がぼんやりして淡い石灰は崩れて吸収されつつある時期のことが多いと考えられています。淡い石灰は痛みが強い時期と重なりやすいので、見落とさないようにします。
- MRIでは「黒い塊」と「まわりのむくみ」:石灰はどの撮像でも低信号で、小さいと腱と区別しにくいことがあります。T2*強調像では低信号がより目立ちます。脂肪抑制T2強調像で、石灰のまわりの腱・滑液包・骨の高信号(むくみ)を確認します。
- 腱板断裂の有無:石灰があると断裂を合併しやすいと思われがちですが、肩MRIの症例対照研究では、腱板断裂の頻度は石灰あり群21.9%、石灰なし群35.3%で、石灰あり群の方が少なく、石灰と断裂が同じ部位で重なっていたのは7.3%だけでした(Tonkaz 2026)。石灰とは別に、断裂の有無を独立して評価します。
- 滑液包・骨への広がり:石灰が肩峰下滑液包に流れ出すと滑液包炎の像に、骨の中に入り込むと骨髄のむくみや骨皮質のびらんのように見えることがあります。
見逃しやすい点・まぎらわしいもの
- MRIだけで読むと腫瘍や感染に見えることがある:石灰が上腕骨の中へ入り込んだ例では、MRIで骨幹端に広い骨髄のむくみと骨皮質のびらんがみられ、悪性腫瘍を疑われて紹介されましたが、その後のCTなどで石灰沈着性腱炎と診断された症例報告があります(Khabaz 2026)。著者らは、MRIでは見えにくい石灰を見つけるためにレントゲンやCTを照らし合わせることが必要だとしています。
- 剥離骨折の骨片との区別:けがの後に大結節の近くに小さな骨のかけらがある場合は、骨折(大結節骨折など)のこともあります。けがの有無と、骨の欠けた部分があるかを確認します(関連記事:上腕骨近位部骨折の画像所見)。
- 五十肩(凍結肩)との区別:凍結肩はレントゲンで異常がないのが基本で、MRIでは烏口上腕靱帯や腋窩陥凹の関節包の肥厚がみられます(関連記事:凍結肩(五十肩)のMRI)。
- 他の部位の同じ病気:同じ結晶は股関節・ひじ・手首・首の前の筋肉など全身の腱にたまることがあり(関連記事:ハイドロキシアパタイト結晶沈着症)、腎不全などで関節の近くに大きな石灰ができる病気もあります(慢性腎不全に伴う関節周囲の転移性石灰化)。
CT・MRIが役立つ場面
- CT:石灰の大きさ・形・位置(どの腱か、骨の中に入り込んでいないか)を詳しく見たいとき、レントゲンでははっきりしないときに役立ちます。
- MRI:腱板断裂や他の病気が疑われるとき、痛みが長引くときに、腱・滑液包・骨髄のむくみをまとめて評価できます。
- エコー:石灰の位置を確かめながら注射や石灰の吸引・洗浄を行うときに使われます。
関節周囲に石灰化を来す疾患1)
- 石灰沈着性腱板炎/滑液包炎
- 副甲状腺機能亢進症あるいは腎性骨異栄養症:関節近傍に腫瘤状石灰化
- 強皮症や皮膚筋炎などの膠原病:筋肉、皮膚、関節周囲など広汎な石灰化
- ピロリン酸カルシウム結晶沈着症:関節軟骨、半月板、関節周囲の石灰化
石灰沈着性腱板炎でよくある疑問(Q&A)
Q. 原因は何ですか?
A. はっきりとは分かっていません。加齢・女性・糖尿病・脂質異常症・甲状腺の病気などが危険因子とされています(Kaplan 2026)。
Q. 石灰は自然に消えますか?
A. 自然に吸収されて治ることがあるため、まず痛み止めや注射などの保存療法を行い、効かないときに衝撃波や石灰の洗浄、手術を検討します(Avendano 2023)。急に強い痛みが出たときは整形外科を受診してください。
Q. 石灰があると、腱板が切れやすくなりますか?
A. 肩MRIの研究では、石灰がある人の方が腱板断裂の頻度は低く(21.9%と35.3%)、石灰と断裂の場所が重なることも少なかったため、石灰は腱板断裂の危険因子ではないと考えられています(Tonkaz 2026)。ただし両方がある人もいるため、MRIでは断裂の有無も確認します。
Q. MRIで「骨の中にむくみ」と言われました。腫瘍ですか?
A. 石灰が骨の中に入り込むと、MRIで腫瘍のように見えることがあると報告されています(Khabaz 2026)。レントゲンやCTで石灰の位置を確かめると区別しやすくなります。心配な点は主治医に確認してください。
関連記事:
参考文献:
- 1)画像診断別冊 KEY BOOKシリーズ 骨軟部疾患の画像診断 第2版 P170-171
- 臨床画像 Vol.38 No.2 2022 P130-133
- 八田 卓久, 常陸 真, 井樋 栄二. 凍結肩(肩関節周囲炎). 画像診断 33(2):168-174, 2013(本記事の参照: P171)
- Siegal DS, Wu JS, Newman JS, et al. Calcific tendinitis: a pictorial review. Can Assoc Radiol J. 2009;60(5):263-272. PubMed
- de Witte PB, Selten JW, Navas A, et al. Calcific tendinitis of the rotator cuff: a randomized controlled trial of ultrasound-guided needling and lavage versus subacromial corticosteroids. Am J Sports Med. 2013;41(7):1665-1673. PubMed
- Guido F, Venturin D, De Santis A, et al. Clinical features in rotator cuff calcific tendinopathy: A scoping review. Shoulder Elbow. 2025;17(2):121-129. PubMed
- Kaplan R, Berni M, Caliogna L, et al. Pathogenesis of Shoulder Calcific Tendinopathy. Int J Mol Sci. 2026;27(5):2178. PubMed
- Beckmann NM, Tran MQ, Cai C. Incidence of rotator cuff tears in the setting of calcific tendinopathy on MRI: a case controlled comparison. Skeletal Radiol. 2019;48(2):245-250. PubMed
- Avendano JP, Pereira D. Treatment of Calcific Tendonitis of the Rotator Cuff: An Updated Review. Orthopedics. 2023;46(6):e326-e332. PubMed
- Tonkaz G, Erkal D, Aksoy İ, et al. Is Calcific Tendinitis a Risk Factor for Rotator Cuff Tears? A Retrospective Magnetic Resonance Imaging-Based Case-Control Study. Eurasian J Med. 2026;58(2):1-8. PubMed
- Khabaz K, Safinia C, Alananzeh R, et al. Calcific tendinitis with intraosseous migration mimicking malignancy. Radiol Case Rep. 2026;21(9):3573-3577. PubMed
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