先に結論:Baker嚢胞(膝窩嚢胞)とは
- Baker嚢胞は、膝の裏(腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間)の袋に関節液がたまったもので、変形性膝関節症・半月板損傷・関節リウマチなどで膝に水がたまると起こりやすくなります
- MRIではT2強調像で白い袋が、横断像で腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間から首を出すコンマ形(涙滴形)に見えるのが特徴です
- 破裂すると、ふくらはぎの痛み・腫れが出て深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)とそっくりになるため、超音波などで血栓がないか確認することが大切です
- 症状がなければ経過観察が基本で、症状があるときはまず膝の中の原因(変形性膝関節症・半月板損傷など)の治療を行います。小児では自然に小さくなることが多いとされます
※ふくらはぎが急に痛く腫れたときは、血栓の可能性もあるため早めに受診してください。
Baker(ベーカー)嚢胞(Baker’s cyst)とは

- 膝窩の腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間にある滑液包に液体が貯留したもので膝関節腔と交通がある。
- 関節内圧の上昇に伴い関節液がこの空間に移動することで発生する。
- そのため、変形性膝関節症や半月板断裂など関節疾患を伴っていることが多い。
- 膝窩嚢胞と呼ばれることもある。
- 膝の周囲で最もよくみられる嚢胞の一つ。
- 中年以降に見られることが多いが、小児や若年者に見られることもある。成人では関節内の病変を伴うことが多い一方、小児では膝関節に異常がなく単独でみられることがある(Fritschy 2006)。
- 基本的に無症状であるが、時に破裂することがあり、深部静脈血栓症(DVT)に似た症状を呈する。破裂が疑われる場合はまずデュプレックス超音波でDVTを除外し、MRIや超音波で筋間への液体の広がりと残存する嚢胞を確認する。多くは安静・冷却・圧迫・挙上などの保存的治療で軽快するが、まれにコンパートメント症候群を合併する。破裂すると画像では、腓腹筋内側頭・半膜様筋腱間の滑液包炎、内容液漏出を認める。
Baker嚢胞のMRI画像所見
- 境界明瞭な嚢胞性病変。T2WIで高信号。ただし内部に出血や滑膜肥厚、隔壁を伴うことあり。
- 腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間に突起様構造を認め、横断像では涙滴状(コンマ状)を呈する。超音波でも、半膜様筋腱と腓腹筋内側頭腱の間に低〜無エコーの液体があり後方の嚢胞と連続していればBaker嚢胞と診断でき、MRIを基準にした検討で正診率100%であった(Ward 2001)。一方、この所見を確認しないと半月板嚢胞や粘液型脂肪肉腫をBaker嚢胞と誤ることがある。
症例 70歳代男性

腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間にコンマ型の液貯留を認めています。
Baker嚢腫(Baker’s cyst)を疑う所見です。
症例 80歳代女性

こちらの症例も同様に腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間にコンマ型の液貯留を認めています。
Baker嚢腫(Baker’s cyst)を疑う所見です。
症例 40歳代男性 膝の外傷 4 か月前、患者は膝の痛み、腫れ、動きの制限

引用:Radiopaedia
ベーカー嚢胞は虚脱し、膝窩への液体の漏出を伴い近位端は不規則で、破裂点を示唆します。
Baker嚢腫(Baker’s cyst)(ベーカー嚢胞)の破裂と診断されました。
症例(論文) Baker嚢胞の典型的なMRI

引用:Zmerly H et al. Cureus 2026(Figure 1)
矢状断(A)と横断(B)のMRIです。腓腹筋-半膜様筋滑液包が関節液で広がり(矢印)、後方の関節包の開口部を通じて膝関節とつながっています。(出典:Zmerly H et al. Cureus 2026, Figure 1, CC BY 4.0)
膝の裏のしこり・腫れで見分けたい病気
| 病気 | 見分けるポイント |
|---|---|
| Baker嚢胞 | 腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間に首(頸部)があり、関節とつながる |
| 半月板嚢胞 | 半月板の断裂部と連続し、関節裂隙の近くにある |
| ガングリオン | 十字靱帯や腱の近くにでき、腓腹筋・半膜様筋の間の首をもたない |
| 膝窩動脈瘤 | 拍動する。カラードプラや造影で血流があり、動脈と連続する |
| 軟部腫瘍(粘液型脂肪肉腫など) | 嚢胞のように見えても内部に造影される充実部分がある。首の所見がなければ腫瘍も考える(Ward 2001) |
| 深部静脈血栓症 | ふくらはぎの腫れ・痛みで破裂Baker嚢胞と似る。超音波で静脈内の血栓を確認する |
高齢者の膝MRIではよくある所見:破裂を見分けるポイント
Baker嚢胞は膝のMRIでとてもよく見る所見です。地域住民を対象にした研究では、年齢・膝の痛みの有無にかかわらず集めた358人(平均72歳)のMRIで27.9%にBaker嚢胞があり、膝の痛みがある人では36.3%、ない人でも21.8%にみられました(Kim 2016)。無作為に選んだ900人(平均63歳)の検討でも11.7%にあり、骨棘・軟骨欠損・骨髄病変などの関節の変化と関連していました(Cao 2014)。無症状の人にも多い所見なので、見つけただけで症状の原因と決めることはできません。
問題になるのは破裂です。破裂すると関節液がふくらはぎの筋肉の間に漏れ出し、急なふくらはぎの痛みと腫れで深部静脈血栓症にそっくりの症状になります(Zmerly 2026)。超音波やMRIでは、次の点を確認します(Zmerly 2026)。
- 嚢胞の外、ふくらはぎの筋肉の間に液体が筋に沿って広がっている(fluid dissection)。
- 膝窩には、しぼんだ嚢胞が残っていることがある(上の症例のように、残った嚢胞の端が不整に見える)。
症状が深部静脈血栓症と区別できないため、まずデュプレックス超音波で血栓を除外し、そのうえで超音波やMRIで液体の広がりと残っている嚢胞を確認する流れが勧められています(Zmerly 2026)。

引用:Zmerly H et al. Cureus 2026(Figure 2)
破裂したBaker嚢胞の矢状断MRIです。不整な形の液のたまり(A)と、筋膜に沿って下へ広がる液(B)が見えます(矢印)。(出典:Zmerly H et al. Cureus 2026, Figure 2, CC BY 4.0)
Baker嚢胞の画像の見方(読影の手順)
- 首(頸部)を確かめる:横断像で、腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間から袋が首を出しているかを見ます。エコーでも、この間の液と後方の嚢胞がつながっていればBaker嚢胞と診断でき、MRIと比べた検討で正診率100%でした(Ward 2001)。
- 中身を見る:隔壁、出血、滑膜の厚み、遊離体の有無を確かめます。
- 破裂していないかを見る:嚢胞の外、ふくらはぎの筋肉の間に沿う液(fluid dissection)と、しぼんで端が不整になった嚢胞を探します(Zmerly 2026)。
- 原因になる膝の中の病変を見る:関節液の量、半月板断裂、軟骨の傷み、骨棘を確かめます(Cao 2014、Frush 2015)。
- 広がりを見る:膝窩から離れた、ふくらはぎ側まで伸びることがあります(Anies 2025)。
- 血管の病気を除く:ふくらはぎの腫れでは深部静脈血栓症をデュプレックス超音波で除外し(Zmerly 2026)、拍動するしこりでは膝窩動脈瘤を考えます。
治療の考え方に関わる所見
破裂したBaker嚢胞の多くは自然に落ち着き、安静・冷却・圧迫・挙上などの保存的治療でよくなります。長引く・くり返す場合は画像ガイド下の穿刺などが検討され、手術は、治りにくい症状や、膝の中の病変を治す必要があるときに、関節鏡で膝の中の病変を治療して嚢胞の圧を下げる方法が中心です(Zmerly 2026)。まれなコンパートメント症候群は、すぐの対応が必要です(Zmerly 2026)。そのため画像では、破裂の有無、膝の中の原因、ふくらはぎの腫れの強さをあわせて伝えることが大切です。
見逃しやすい点:膝窩から離れたところまで伸びる嚢胞
半月板の手術から11か月後に膝の裏の腫れをくり返した49歳男性で、腓腹筋内側頭の近位3分の1の高さまで、筋の外(表層)へ伸びたBaker嚢胞がMRIとエコーで確かめられた報告があります(Anies 2025)。膝窩から離れた位置の液のたまりでも、Baker嚢胞の広がりのことがあります。

引用:Anies EP et al. Cureus 2025(Figure 1)
脂肪抑制T2強調像の矢状断です。膝窩より遠位にある、筋の外へ伸びた液のたまり(矢印)が見えます。(出典:Anies EP et al. Cureus 2025, Figure 1, CC BY 4.0)
Baker嚢胞でよくある疑問(Q&A)
Baker嚢胞は自然に治りますか?
小児のBaker嚢胞では、20膝中17膝(85%)が経過観察で縮小または消失したと報告されています(Akagi 2013)。成人では膝の中の病気が原因のことが多く、症状がある場合は保存的治療を基本に、まず関節内の病変を治療します(Frush 2015)。
エコーとMRIのどちらで分かりますか?
どちらでも診断できます。エコーは手軽で、破裂時の深部静脈血栓症の除外も同時に行えます。MRIは嚢胞の広がりに加え、原因となる半月板損傷や軟骨の傷みまで評価できます。
膝の裏から離れた、ふくらはぎの方に袋ができることはありますか?
あります。膝窩より遠位の、腓腹筋の表層まで伸びたBaker嚢胞の報告があり、MRIやエコーで膝窩とのつながりと中身(液)を確かめて診断します(Anies 2025)。
何科を受診すればよいですか?
膝の裏の腫れや違和感は整形外科が窓口です。ふくらはぎが急に痛く腫れたときは、血栓の可能性もあるため早めに受診してください。
関連記事:膝の滑液包の種類と場所/半月板嚢胞のMRI/膝のガングリオンのMRI/滑液包炎・滑膜嚢胞・ガングリオンの違い/半月板断裂のMRI画像診断/下肢静脈瘤のエコー検査とDVT検査との違い/軟部腫瘍の画像診断と鑑別
参考文献
- Zmerly H, Di Lorenzo L, Mahfouz V, et al. Ruptured Baker’s cyst demystified: current evidence, diagnostic strategies, and treatment options for an under-recognized condition. Cureus. 2026;18(1):e101686. PubMed
- Ward EE, Jacobson JA, Fessell DP, et al. Sonographic detection of Baker’s cysts: comparison with MR imaging. AJR Am J Roentgenol. 2001;176(2):373-380. PubMed
- Fritschy D, Fasel J, Imbert JC, et al. The popliteal cyst. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2006;14(7):623-628. PubMed
- Kim IJ, Kim DH, Song YW, et al. The prevalence of periarticular lesions detected on magnetic resonance imaging in middle-aged and elderly persons: a cross-sectional study. BMC Musculoskelet Disord. 2016;17:186. PubMed
- Cao Y, Jones G, Han W, et al. Popliteal cysts and subgastrocnemius bursitis are associated with knee symptoms and structural abnormalities in older adults: a cross-sectional study. Arthritis Res Ther. 2014;16(2):R59. PubMed
- Frush TJ, Noyes FR. Baker’s Cyst: Diagnostic and Surgical Considerations. Sports Health. 2015;7(4):359-65. PubMed
- Akagi R, Saisu T, Segawa Y, et al. Natural history of popliteal cysts in the pediatric population. J Pediatr Orthop. 2013;33(3):262-8. PubMed
- Anies EP, Waltz RA, Lacey S. A Baker’s Cyst With Distal Extramuscular Extension: A Case Report. Cureus. 2025;17(1):e77502. PubMed
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