先に結論:椎間関節嚢腫(滑膜嚢胞)とは
- 椎間関節(facet joint:ファセット)は、背骨の後ろ側で上下の椎骨をつなぐ小さな関節です。この関節の変性(加齢による傷み)によって、関節のそばにできる液体の袋が椎間関節嚢腫(滑膜嚢胞・傍椎間関節嚢胞)で、腰椎のL4/5に最も多く、中高年に見られます
- 脊柱管の中にできると神経(神経根)や硬膜嚢を押して、腰痛・坐骨神経痛(足の痛み・しびれ)を起こし、腰椎椎間板ヘルニアとよく似た症状になります
- MRIでは、椎間関節に接して硬膜嚢の後ろ外側にある丸い袋で、中身はT2強調像で白いことが多く、壁が黒い(低信号)・造影で壁が染まるのが特徴です。治療は痛み止め・ブロック注射、嚢胞の穿刺、症状が強ければ手術で取り除きます
- 硬膜嚢は、脊髄や馬尾神経と脳脊髄液を包む膜の袋で、椎間関節嚢腫はその後ろ外側から押します。椎間板嚢胞(椎間板から出る袋・若い人に多い)や神経根嚢胞(タルロフ嚢胞・仙骨に多い)など、似た袋との区別は場所と「何につながっているか」で行います(下の表)
滑膜嚢胞(傍椎間関節嚢胞)synovial cyst,facet cystとは

- intraspinal synovial/ganglion cyst,facet cyst,degenerative intraspinal cystとも呼ばれる。
- 椎間関節の変性によって発生する嚢胞。
- 椎間関節との連続性が画像で確認できれば、診断可能であるが、画像でこのような所見が確認されることは少ない。
- 椎間関節(facet joint)近傍で、硬膜嚢の後方外側に存在し、L4/5レベルに最も好発する。L5/S1、L3/4レベルにも発生。頸椎レベルでも発生。
中高年に多い(21例の報告で平均54歳、37例の報告で平均62歳)。男女比は報告によって異なる(21例では男性14例・女性7例、37例では男性54%)。
- 変性や外傷に起因するとされる。17研究824例のメタ解析では、嚢胞と同じ高位に変性すべり症を42.5%、椎間関節症を89.3%で伴い、すべり症を伴う例は椎弓切除のみより固定術を受けることが多かった(オッズ比11.5)。このため嚢胞は椎間の不安定性の目印とも考えられている。
- 脊柱管外にも発生することがあり、この場合には神経根症状を伴わない。
- 治療はまず保存的治療(消炎鎮痛薬・理学療法・硬膜外ステロイド注射・嚢胞の吸引など)が行われ、再発が多く効果が乏しい場合は片側椎弓切除などで嚢胞を切除する。CTガイド下の嚢胞破裂とステロイド注入では、91%で直後に痛みが軽減し、約半数は追加治療を要さなかったと報告されており、手術の前に第一選択として試みられることがある。
滑膜嚢胞(傍椎間関節嚢胞)の画像所見
- 小さな単房性の円形ないしは類円形の嚢胞性腫瘤。
- 硬膜嚢の後外側、椎間関節の近傍に位置する。まれに椎間孔に位置することもある。椎間関節造影で、関節腔と嚢胞に連続性を認める。
- 内容物はT1WIで低〜高信号、T2で等〜高信号を示すことが多い。
- 辺縁部はT1、2WIともに低信号を呈し、ヘモシデリン沈着、隔壁の線維組織、石灰化を反映。
- 造影MRIでは嚢胞壁の濃染を認める。
- 画像上はガングリオン(ganglion cyst)との鑑別は困難であり、そのため両者を合わせて椎間関節嚢胞(facet cyst)としてまとめている。
症例 80歳代男性

L5/S1に椎間関節に接して嚢胞性病変あり。
T1WIにて淡い高信号、T2WIにて高信号を示しています。
椎間関節に連続する嚢胞性病変であり、滑膜嚢胞(傍椎間関節嚢胞)を疑う所見です。
症例 70歳代男性

L4/5にて左椎間関節に連続する7mm大の嚢胞性病変あり。
滑膜嚢胞(傍椎間関節嚢胞)を疑う所見です。
症例 40歳代男性

L5/S1左側に椎間関節に連続する嚢胞性病変あり。
左S1の神経根を圧迫しています。
滑膜嚢胞(傍椎間関節嚢胞)を疑う所見です。
椎間関節嚢腫と間違えやすい脊柱管・椎間孔の嚢胞
| 嚢胞 | できる場所・つながり | 特徴 |
|---|---|---|
| 椎間関節嚢腫(滑膜嚢胞・facet cyst) | 硬膜嚢の後ろ外側、椎間関節に接する | 中高年。L4/5に多い。壁が低信号で、造影で壁が染まる。すべり症や椎間関節症を伴うことが多い(Ramhmdani 2019) |
| 椎間板嚢胞(discal cyst) | 硬膜嚢の前外側、椎間板に接してつながる | 118例の系統的レビューで年齢の中央値30歳と若い人に多く、L4/5が44.9%、前外側が94.9%。T2で高信号、造影で壁が染まる(Agosti 2025) |
| 神経根嚢胞(タルロフ嚢胞・perineural cyst) | 神経根を包む膜が袋状にふくらんだもの。仙骨に多い | 13,266人のメタ解析で有病率4.18%、仙骨のS2が最多、症状と対応したのは15.59%(Klepinowski 2021)。中身は脳脊髄液と同じ信号 |
| 椎間板ヘルニア(脱出・遊離片) | 椎間板の高さ、またはその上下に移動 | 袋ではなく椎間板の組織。T2で液体ほど白くならないことが多い |
いずれも腰痛や坐骨神経痛の原因になりえますが、症状のない人に偶然見つかることもあります。足の痛み・しびれや力の入りにくさが続くときは、医療機関(整形外科など)に相談してください。
参考文献
- Bashir el F, Ajani O. Management of lumbar spine juxtafacet cysts. World Neurosurg. 2012;77(1):141-6. PubMed
- Mercer RW, Vicentini JRT, Staffa SJ, et al. CT-guided lumbar facet cyst rupture and corticosteroid injection: technique, approach, and procedural and clinical success rates. Skeletal Radiol. 2024;53(6):1135-1144. PubMed
- Ramhmdani S, Ishida W, Perdomo-Pantoja A, et al. Synovial Cyst as a Marker for Lumbar Instability: A Systematic Review and Meta-Analysis. World Neurosurg. 2019;122:e1059-e1068. PubMed
- Boody BS, Savage JW. Evaluation and Treatment of Lumbar Facet Cysts. J Am Acad Orthop Surg. 2016;24(12):829-842. PubMed
- Agosti E, De Maria L, Belotti F, et al. Lumbar discal cysts: a systematic literature review of diagnostic features and treatment strategies. Eur Spine J. 2025;34(12):5539-5555. PubMed
- Klepinowski T, Orbik W, Sagan L. Global incidence of spinal perineural Tarlov’s cysts and their morphological characteristics: a meta-analysis of 13,266 subjects. Surg Radiol Anat. 2021;43(6):855-863. PubMed
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