錐体路1)とは?
- 中心前回、運動前野、中心後回の錐体細胞から対側の運動性脳神経核と脊髄前角に連絡して随意運動に関与する投射繊維。
- 内包後脚を4等分して、前から3番目のところを通過する。
- 一般には錐体路=皮質脊髄路として使われる。
- 錐体路には、厳密には皮質延髄路、皮質脊髄路(広義の錐体路)の2つがある。
- 皮質延髄路は、顔面域の1次運動野から対側の動眼・滑車・外転神経核、三叉神経運動核、疑核、副神経核、舌下神経核、毛様体に終始する。
- 一方で皮質脊髄路は脊髄まで下行する。
- 皮質脊髄路は80-90%は錐体下部の錐体交叉で交叉して、外側皮質脊髄路となり、交叉しないものは同側の前皮質脊髄路となる。
錐体路はMRI画像で見える?
錐体路は、とくに内包〜大脳脚レベルでT2WIやFLAIRで周囲よりも軽度高信号を示すことがあり、これは、軸索やミエリンの密度が低いためとされている。
症例40歳代女性 正常例
拡散強調像(DWI)およびT2WIで両側の錐体路は淡い高信号を示しています。
これくらいの高信号は正常範囲ですので注意が必要です。
ご自身の施設の装置の特徴を普段からよく見ておきましょう。
関連記事:脳MRIで中脳被蓋(上小脳脚交叉)に左右対称なDWI高信号は異常所見?
錐体路に沿った高信号の鑑別診断2)は?
【錐体路に沿った高信号の鑑別診断】
140文字では収まらないほど鑑別があります😇
(引用:画像診断 Vol.35 No.10 2015 P1256) pic.twitter.com/09PS9xE1Zh— ごろ~にゃ@画像診断cafe (@radiology_cafe) October 3, 2021
正常でも淡く高信号として描出されることがありますが、病的な場合もあり、以下のものが報告されています。
- Waller変性
- 副腎白質ジストロフィー/副腎脊髄ニューロパチー
- 低血糖脳症
- 肝脳変性症
- トルエン中毒
- ヘロイン中毒
- HTLV-1関連脊髄症(HAM)
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- 遺伝性痙性対麻痺
- hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroids(HDLS)
- 脳腱黄色腫症(CTX)
- Krabbe病
- leukoencephalopathy with brainstem and spinal cord involvement and lactate elevation(LBSL)
- 巨大軸索型ニューロパチー(GAN)
- 成人ポリグルコサミン小体病
- 眼歯指症候群(ODDD)
症例 40歳代男性 構音嚥下障害、上肢遠位筋筋力低下あり。
両側の一次運動野から錐体路にかけて異常な高信号を認めています。
他の検査などと併せてALSと診断されました。
先ほどの正常例と比べると明らかに高信号であることがわかりますね。
参考文献:
1)画像診断 Vol.35 No.10 2015 P1255-1257
2)画像診断 Vol.35 No.10 2015 P1256表より引用
とても勉強になっております。
頭部外傷後に左右差のあるT2高信号、FLAIR高信号、DWI高信号を呈しており、高信号が強い方に強い運動麻痺を呈している症例がいた場合は、強い高信号側を病的なものと判断することはできるでしょうか(T2*は低信号なし)。それとも正常でも左右差があるものでしょうか。
コメントありがとうございます。
通常左右対称性なので、左右差のある強い高信号の場合は有意だと思います。