神経変性の変性にワーラー変性があります。
この、ワーラー変性(waller変性)とはどのような変性なのでしょうか?
また画像診断のポイントはどのようなところでしょうか?
今回は、ワーラー変性(waller変性)についてまとめました。
ワーラー変性(waller変性)について
- 神経線維が損傷を受け、軸索に連続性を失った時に生じる。
- 断裂部よりも末梢部の軸索及び髄鞘が変性することをWaller変性(wallerian degeneration)と呼ぶ。
- つまり、皮質脊髄路(錐体路)に障害を与える病巣では、その遠位部に変性を生じる。
- 慢性期脳梗塞の変化として知られている他、腫瘍、術後変化など神経細胞や軸索が障害された場合に起こりうる。
MRIで描出可能なWaller変性は2つ。
- 錐体路のWaller変性(大脳皮質や内包などの血管性病変に関連)。
- 橋小脳路のWaller変性(橋底部の病変に関連)。
※皮質脊髄路:中心前回からの神経線維が内包後脚、大脳脚、橋縦束から延髄錐体を経由し、大部分は交叉した後、脊髄内を下行し前角細胞に終止する。
※橋小脳路:橋核神経線維が、橋横走線維、中小脳脚を経由して小脳皮質に至る。
Waller変性の画像診断のポイントは?
- 脳血管障害の病巣と神経連絡を有する遠隔部の二次変性がMRIにより捉えられることがある。T2強調像での高信号変化は、どの障害部位からの二次変性であるかにより見える時期が異なる。
- 錐体路のwaller変性では発症2-3ヶ月以降で高信号として認められる。ただし、発症4週間以降にT2で一旦、低信号化する。
- それより以前の急性期、亜急性期脳梗塞に対してDWIのみで明らかな高信号を呈することがある。これを新たな脳梗塞として診断しないように注意。
指導医
つまり
- 大脳皮質・内包病変→大脳脚・延髄など錐体路に異常信号。
- 橋底部病変→中小脳脚に異常信号。
をそれぞれ生じるということです。
動画で学ぶwaller変性(錐体路のWaller変性)
▶キー画像
左大脳脚に萎縮及び異常な高信号を認めています。
ワーラー変性を疑う所見です。
そのやや尾側の橋の錐体路部分にも異常な高信号を認めています。
これもワーラー変性です。
この症例では、梗塞部位の皮質に沿ってT1強調像で高信号を認めています。
慢性期脳梗塞の変化であるlaminar necrosisを疑う所見です。
指導医
このように離れたところに変性をきたすものはワーラー変性以外にもいくつかあります。
MRIで見える代表的な病巣遠隔部の二次変性
病巣遠隔部の2次変性は、Waller変性(順行性変性)だけではありません。
Waller変性を含め以下のものが重要です。
- 錐体路のワーラー変性←大脳皮質、内包の障害
- 橋小脳路のワーラー変性←橋底部の障害
- 視床の変性←大脳皮質の障害
- 交叉性小脳萎縮←大脳皮質の障害
- 下オリーブ核仮性肥大←中脳、橋、小脳病変といったGuillain-MoIIar‐et三角の関連障害
- 視放線の変性←外側膝状体、後頭葉の障害
- 後頭葉の萎縮←網膜、視覚路の障害
- 乳頭体、脳弓、乳頭体視床路の変性、萎縮←海馬の障害
これらを見た時に新しい病変と間違えないように知っておくことが重要ですね。
参考)東京レントゲンカンファレンス:橋出血の既往→オリーブ核仮性肥大
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