先に結論:筋萎縮性側索硬化症(ALS)のMRI

  • ALSは、手足・のど・呼吸の筋肉を動かす運動ニューロンが少しずつ壊れていく病気(指定難病)で、手足の筋力低下・筋肉のやせ・話しにくさ・飲み込みにくさが進みます
  • MRIの主な役割は似た症状の病気(頸椎症・脊髄腫瘍・多発性硬化症など)を除外することで、ALS自体は異常が出ないことも多いですが、皮質脊髄路に沿ったT2/FLAIR高信号や、SWIで中心前回(運動野)の皮質が黒く見える(motor band sign)が手がかりになることがあります
  • 診断は神経診察と筋電図が中心です。現行のGold Coast基準(2020年)では、「進行する運動障害」「上位・下位運動ニューロン障害」「他の病気の除外」の3つがそろうことが必要で、MRIは3つ目の他の病気の除外に使われます(Shefner 2020)
  • 前頭側頭型認知症を合併することもあります

※手足の力が入りにくい・やせてきた・話しにくいなどが進むときは、脳神経内科を受診してください。

筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)

  • 上位および下位運動ニューロンが選択的に障害される神経変性疾患。
  • 中高年での発症が多い。男性にやや多い(集団研究のメタ解析で男女比 約1.3:1、Fontana 2021)。
  • 欧州の集団研究では、年間の発症は人口10万人当たり中央値2.08人(Chiò 2013)。
  • 約85%は孤発性で、約15%は家族性(Ravits 2026)。
  • 初発症状は手足の筋力低下が約65%、話しにくさ・飲み込みにくさが20〜25%とされる(Ravits 2026)。
  • 遺伝性ではSOD1、C9orf72、TARDBP(TDP-43)、FUSなどの遺伝子変異が知られている。
  • 主な死因は呼吸機能障害。
  • 根本的な治療はまだなく、進行を緩やかにする目的の薬(リルゾールなど)の効果は限られる。呼吸・栄養の支援や多職種のチームによるケアが重要である(Ravits 2026)。
  • 欧州の有病率は人口10万人当たり中央値5.40人(Chiò 2013)。日本では紀伊半島に多発地域が知られる(Kokubo 2026)。
  • 50%以上で何らかの認知・行動障害を伴い、一部は前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:FTD)の基準を満たす(ALS-FTSDとして連続的にとらえられている)。

ALSの画像所見

  • ALSに特異的なMRI異常がはっきり見られないことも多く、画像診断の役割は主としてALSと似た症状を示す他疾患の除外。
  • 時にT2強調像、FLAIR像で皮質脊髄路に沿う高信号が認められることがある。正常でも見られることがあるが、目立った高信号が大脳脚レベル以下や中心前回皮質下付近まで続く場合は、より疑わしい。
  • 脊髄病変:両側側索に高信号領域を示す。
  • 認知症を伴うALSの画像所見:前頭葉や側頭葉前方部の萎縮、T2強調像での前頭側頭葉の白質の高信号が報告されている(Kato 1993)。
  • motor band signは、ALSに似た病気との区別で感度59.6%・特異度91.1%と、見つかれば特異的だが見えない例も多い(Zejlon 2024)。皮質脊髄路のFLAIR高信号とそろうと感度70%・特異度81%だった(Rizzo 2020)。
症例 40歳代男性 構音嚥下障害、上肢遠位筋筋力低下あり。

ALS mri findings

両側の一次運動野から錐体路にかけて異常な高信号を認めています。

他の検査などと併せてALSと診断されました。

 

ALSの診断基準(Gold Coast基準)でのMRIの位置づけ

ALSの診断基準は、改訂El Escorial基準やAwaji基準から、2019年のGold Coast会議で提案されたGold Coast基準(Shefner 2020)に変わってきました。次の3つがすべてそろうことがALSの診断の条件です(Shefner 2020、Shrestha 2026)。

条件 内容
1. 進行する運動障害 病歴または繰り返しの診察で確認でき、それ以前は運動機能が正常だったこと
2. 上位・下位運動ニューロン障害 少なくとも1つの領域(球・頸髄・胸髄・腰仙髄)で、上位と下位の両方の障害があること。または、2つ以上の領域で下位運動ニューロンの障害があること
3. 他の病気の除外 症状を説明しうる他の病気を除くための適切な検査。神経伝導検査・筋電図、MRIなどの画像検査、血液や髄液の検査などを、臨床像に応じて行う
  • Gold Coast基準は、感度が高い一方、特異度は低めです。個人データのメタ解析(3007例)では、感度0.96(改訂El Escorial 0.87)、特異度0.68(同0.73)でした(Shrestha 2026)。日本の検討では頸椎症やパーキンソン症候群の患者がALSと誤診されやすいことが指摘されており(Otani 2024)、MRIで似た病気を除くことが重要です。MRIはALSを見つける検査ではなく、似た病気を除く検査として基準に組み込まれています。

MRIで除外したい主な病気

似た病気 MRIで確認すること・補足
頸椎症性脊髄症(変形性頸椎症による圧迫) 頸髄の圧迫やT2強調像での髄内高信号。上肢の脱力・手のやせ・腱反射亢進など、ALSと症状が重なります。両者が合併することもあり、頸椎のMRI異常だけで症状全体を説明できるかを筋電図などと合わせて考えます(Chen 2026)
脳腫瘍・脊髄腫瘍、多発性硬化症など 延髄・脊髄の腫瘍や脱髄病変の有無

motor band signの補足

  • motor band signは、運動野の鉄沈着を反映するとされる所見です。C9orf72変異のある例で高い傾向がありましたが、認知機能、進行の速さ、生存期間との関連はみられませんでした(Zejlon 2024)。皮質脊髄路のFLAIR高信号と運動野のSWI低信号がそろった例は生存期間が短い傾向がありました(ハザード比6.56)(Rizzo 2020)。
  • 感度は6〜7割、陰性的中率は51%なので、所見がないことでALSを否定することはできません。

ALSの検査:MRIでわかること・わからないこと

診断の中心は神経診察と筋電図で、MRIは主に似た症状の病気を除外するために行います。ALSと似た症状を示し、別の病気だとわかることも少なくありません。アイルランドの登録研究では、ALSとして紹介された437例のうち32例(7.3%)が最終的に別の病気と診断され、多巣性運動ニューロパチー(22%)と球脊髄性筋萎縮症(Kennedy病、13%)が多い原因でした(Traynor 2000)。MRIで異常がなくてもALSは否定できず、逆に異常があってもそれだけでは診断できないため、経過と筋電図を合わせて判断します。

ALSのMRIでよくある疑問(Q&A)

Q1. ALSの診断にMRIは必要ですか?

Gold Coast基準の3つ目の条件「他の病気の除外」に、MRIなどの画像検査が含まれます(Shefner 2020)。ALSと似た症状を起こす頸椎症、腫瘍、脱髄疾患などを調べるために行います。MRIが正常でもALSは否定できません。

Q2. motor band signが見られなければ、ALSではありませんか?

いいえ。感度は59.6%で、見えないALSも多くあります(Zejlon 2024)。診断は診察・筋電図・経過とあわせて行います。

参考文献)よくわかる脳MRI(第3版)P639

  1. Brown RH, Al-Chalabi A. Amyotrophic Lateral Sclerosis. N Engl J Med. 2017;377(2):162-172. PubMed
  2. Strong MJ, Abrahams S, Goldstein LH, et al. Amyotrophic lateral sclerosis – frontotemporal spectrum disorder (ALS-FTSD): Revised diagnostic criteria. Amyotroph Lateral Scler Frontotemporal Degener. 2017;18(3-4):153-174. PubMed
  3. Fontana A, Marin B, Luna J, et al. Time-trend evolution and determinants of sex ratio in Amyotrophic Lateral Sclerosis: a dose-response meta-analysis. J Neurol. 2021;268(8):2973-2984. PubMed
  4. Chiò A, Logroscino G, Traynor BJ, et al. Global epidemiology of amyotrophic lateral sclerosis: a systematic review of the published literature. Neuroepidemiology. 2013;41(2):118-30. PubMed
  5. Ravits J, Ferrey D, Gundogdu B, et al. Amyotrophic Lateral Sclerosis: A Review. JAMA. 2026;335(22):1970-1982. PubMed
  6. Kokubo Y. [A New Understanding of the Amyotrophic Lateral Sclerosis/Parkinsonism-Dementia Complex in the Kii Peninsula, Japan, 2026]. Brain Nerve. 2026;78(9):1023-1029. PubMed
  7. Kato S, Hayashi H, Yagishita A. Involvement of the frontotemporal lobe and limbic system in amyotrophic lateral sclerosis: as assessed by serial computed tomography and magnetic resonance imaging. J Neurol Sci. 1993;116(1):52-8. PubMed
  8. Rizzo G, Marliani AF, Battaglia S, et al. Diagnostic and Prognostic Value of Conventional Brain MRI in the Clinical Work-Up of Patients with Amyotrophic Lateral Sclerosis. J Clin Med. 2020;9(8):2538. PubMed
  9. Zejlon C, Sennfält S, Finnsson J, et al. Motor band sign is specific for amyotrophic lateral sclerosis and corresponds to motor symptoms. Ann Clin Transl Neurol. 2024;11(5):1280-1289. PubMed
  10. Traynor BJ, Codd MB, Corr B, et al. Amyotrophic lateral sclerosis mimic syndromes: a population-based study. Arch Neurol. 2000;57(1):109-13. PubMed
  11. Shefner JM, Al-Chalabi A, Baker MR, et al. A proposal for new diagnostic criteria for ALS. Clin Neurophysiol. 2020;131(8):1975-1978. PubMed
  12. Shrestha N, Munn Z, Calma A, et al. Gold Coast criteria for ALS diagnosis: individual participant data meta-analysis. J Neurol. 2026;273(9). PubMed
  13. Otani R, Shibuya K, Shimizu T, et al. Diagnostic utility of Gold Coast criteria for amyotrophic lateral sclerosis in Asia. Amyotroph Lateral Scler Frontotemporal Degener. 2024;25(3-4):264-270. PubMed
  14. Chen D, Shen T, Ren H, et al. Amyotrophic lateral sclerosis and degenerative cervical myelopathy: phenotype-based diagnostic pitfalls, investigative mismatch, and practical clinical reasoning. Front Neurol. 2026;17:1901811. PubMed

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