肝性脳症(hepatic encephalopathy)

  • 重篤な肝障害あるいは門脈大循環短路により起こる精神神経症状。
  • 肝硬変に伴うものが圧倒的に多い。
  • 急性型と慢性型に分けられる。急性型は劇症肝炎、慢性型は肝硬変によることが多い。
  • 大まかに、肝不全+意識障害=肝性脳症と覚えておく。
  • 睡眠覚醒リズムの逆転、傾眠傾向が初期に認められ、進行すると興奮・せん妄となり、さらに進行すると昏睡となる。
  • 有名な意識障害の鑑別診断(AIUEOTIPS)のEの1つにencephalopathyがあるが、ここには、肝性脳症と、Wernicke脳症が含まれる。
  • 昏睡Ⅱ度で羽ばたき振戦が出現する。ただし、昏睡Ⅳ度以上では消失。

検査所見

  • アンモニア上昇。
  • 分枝鎖アミノ酸減少、芳香族アミノ酸上昇→Fisher比(分枝/芳香)が低下。
  • メルカプタン上昇。
  • 低級脂肪酸上昇。
  • 脳波(徐波、三相波)

治療

  • 内科的治療(誘因の除去、蛋白制限、分枝鎖アミノ酸製剤(アミノレバン)、合成二糖類(楽ツロース)、非吸収性抗菌薬(カナマイシン、ポリミキシンB)、
  • 短絡路閉鎖術(BRTO,PTO,TIO)
  • 門脈大循環分流術
  • 肝移植

画像診断

  • 両側基底核(特に淡蒼球)にT1WIで高信号を認める。
  • この高信号は肝性脳症を直接反映するものではないが、慢性肝機能障害を示唆する。特に門脈-体循環短路を伴う場合に認められる。
  • 基底核の他、大脳白質もT1WIにてびまん性に高信号となることがある。他、大脳脚、四丘体や下垂体に高信号を呈することあり。

関連記事)淡蒼球を中心とした基底核にT1強調像で高信号を呈する鑑別疾患

症例  60歳代 男性 肝硬変

hepatic encephalopathy MRI findings1

両側基底核(特に淡蒼球)にT1WIで高信号を認めており、肝性脳症を疑う所見です。

症例  70歳代 男性 肝硬変

hepatic encephalopathy MRI findings2

両側基底核(特に淡蒼球)にT1WIで高信号を認めており、肝性脳症を疑う所見です。


症例 40代男性 肝硬変、肝性脳症疑い。

hepatic encephalopathy MRI findings3

hepatic encephalopathy

両側の淡蒼球に淡い高信号を認めています。

肝性脳症に矛盾しない所見です。

 動画で学ぶ慢性肝障害のMR所見
ちなみに正常例の淡蒼球のT1WIの画像は次のようになります。
▶30代男性 正常例

hepatic encephalopathy1

正常例では確かに等信号を示していることがわかりますね。

 

両側淡蒼球の異常所見の鑑別診断

関連記事:高アンモニア血症による脳症の画像所見のポイント

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