先に結論:くも膜下出血の原因と原因動脈瘤の推定

  • くも膜下出血の原因の約85%は脳動脈瘤の破裂です。動脈瘤以外では中脳周囲非動脈瘤性くも膜下出血・脳動静脈奇形・脳動脈解離・もやもや病・硬膜動静脈瘻・可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)・アミロイドアンギオパチー・外傷などがあります。脳表(円蓋部)の限局したくも膜下出血では、高齢者ならアミロイドアンギオパチー、若い人ならRCVSや静脈洞血栓症を考えます
  • 破裂した動脈瘤の位置は、①くも膜下出血の分布、②脳実質内血腫の位置、③血腫の中の抜け(filling defect sign)の3つから推定します
  • 脳実質内血腫があれば位置から高い精度で推定でき、前大脳縦裂・透明中隔の血腫はAcom、側頭葉はIC-PC、Sylvius裂・外包はMCA、第4脳室や後頭蓋窩はVA-BA系が目安です
  • 出血の分布は体位などで変わり外れることがあるため、最終的にはCTA・脳血管造影で確認し、多発動脈瘤にも注意します

※突然の激しい頭痛(今までに経験したことのない頭痛)や、意識がもうろうとする・吐き気をともなう頭痛が出たときは、すぐに救急車を呼んでください。


クモ膜下出血(SAH)の原因と、原因動脈瘤の部位を推定する方法についてまとめました。

クモ膜下出血(SAH)の原因

動脈瘤を合併しやすい遺伝性疾患

など

症例 30歳代男性 嘔吐、意識レベル低下、高血圧

くも膜下出血 単純CT 横断像
引用:Radiopaedia(Subarachnoid haemorrhage – aneurysmal)

鞍上槽と両側シルビウス裂に高吸収の血液を認め、右側優位に広がっています。血管造影で右内頸動脈終末部の動脈瘤が見つかり、その破裂によるくも膜下出血と診断されました。

SAHの画像診断!原因動脈瘤の部位を推定する方法を知る。

次に、SAHを見つけたときに破裂している動脈瘤がどこなのかを推定する方法を見ていきましょう。方法は主に3つです。
  1. クモ膜下出血の部位
  2. 脳実質内血腫の部位
  3. filling defect sign

※ 2が最も正診率が高い。逆に1がはずれることがあることを知っておく。∵SAHは急速に脳脊髄液と混ざり拡散し、教科書的な分布にならないことも多い。体位により移動する。

(1)くも膜下出血部位から推測

  • 正診率は報告により差があり、A-com(およびMCA)動脈瘤では比較的信頼できるが、ICAや後方循環の動脈瘤では推定精度が低い。出血量が少ない場合、搬送時の頭部の傾きにより不確実となる。
  • A-com aneurysmが最も診断しやすい。
部位 血腫の分布の特徴
A-com 前大脳縦裂下部-透明中隔腔を中心に左右対称。
ICA 同側の鞍上槽やSylvius谷に多い。Sylvius裂、脚間槽および迂回槽にも認められることが多い。両側性。
MCA 同側のSylvius裂中心。
VA-BA 後頭蓋窩(橋前槽、脚間槽、迂回槽など)中心。両側性、第4脳室内に血腫形成。
動画で学ぶクモ膜下出血①(前大脳縦裂の血腫の量が多い場合→A-com動脈瘤)30歳代女性

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動画で学ぶクモ膜下出血②(右シルビウス裂の血腫の量が多い場合→右MCA M2分岐部動脈瘤)40歳代女性

▶キー画像
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動画で学ぶクモ膜下出血③(延髄-頚髄レベルまでの血腫の量が認められる場合→椎骨脳底動脈系からの出血を疑う→脳底動脈瘤だった)70歳代女性

▶キー画像

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(2)脳実質内血腫の部位より推定

  • 動脈瘤破裂によるSAHの約15%に脳実質内血腫を合併したとの報告がある。この局在は原因動脈瘤の部位を推定する最も優れた手がかりである。
  • 逆に、くも膜下出血を指摘できない脳実質出血や、脳室内出血で発症する脳動脈瘤破裂もある。特に側頭葉皮質下出血の際には注意。また急性硬膜下血腫で発症する例もある。
  • 脳内血腫を合併した場合は、そうでない場合と比較して出血量が多く、重篤となる。
  • 脳実質内に穿破する原因、病態としては、以下の点が考えられている。
    • 動脈瘤とくも膜の間にminor leakなどで癒着を形成し、癒着部位に出血し、くも膜の破綻を来す。
    • 動脈瘤破裂時の圧が高く、くも膜の破綻を来す。
    • 動脈瘤がくも膜下腔以外に存在しており、その部分で破裂をする。
瘤の部位 脳実質内血腫の分布の特徴
A-com 前頭葉下部内側および透明中隔部。
ACA遠位 脳梁および帯状回。
IC-PC 側頭葉。
MCA 外包および側頭葉。
VA-BA系 (第4脳室内)

 

症例 70歳代女性 左MCA動脈瘤の破裂

SAHMCAintraaxialhemorrhage

(3)filling defect sign

  • 破裂動脈瘤自体が周囲に存在する高吸収を呈するくも膜下出血中に相対的な低吸収として描出されることがあり、filling defect signと呼ばれる。
  • 直径10mm以上の大きな動脈瘤に高率に描出される。発症2日以内のCT(10mm厚)100例の検討では、本サインは30例にみられ、直径10mmを超える破裂動脈瘤では19例中13例(68%)に認められた。くも膜下出血の約30%に認められる。
  • 未破裂動脈瘤がfilling defect signとして描出されることがあるため注意。推定した部位は最終的にCTAで確認する。くも膜下出血患者でのCTAによる脳動脈瘤診断は、50研究のメタ解析でプール感度98%・特異度100%と高く、診断の第一選択検査として使えるとされる(出版バイアスによる過大評価の可能性は指摘されている)。
動画で学ぶfilling defect sign

▶キー画像
IC-PC IC-PC1

これら3つの方法を用いて原因となる破裂動脈瘤を推定する癖をつけましょう。

参考&引用改変文献)
・画像診断2007年6月 くも膜下出血の画像診断 大阪市立大学 下野太郎先生
・臨床画像2009年4月増刊号 救急画像診断 くも膜下出血 亀田総合病院 菊池陽一先生
・画像診断2010年8月くも膜下出血の画像所見 富山大学 野口京先生 

参考文献

  1. van der Jagt M, Hasan D, Bijvoet HW, et al. Validity of prediction of the site of ruptured intracranial aneurysms with CT. Neurology. 1999;52(1):34-9. PubMed
  2. Karttunen AI, Jartti PH, Ukkola VA, et al. Value of the quantity and distribution of subarachnoid haemorrhage on CT in the localization of a ruptured cerebral aneurysm. Acta Neurochir (Wien). 2003;145(8):655-61. PubMed
  3. Noguchi K, Ogawa T, Fujita H, et al. Filling defect sign in CT diagnosis of ruptured aneurysm. Neuroradiology. 1997;39(7):480-2. PubMed
  4. Westerlaan HE, van Dijk JM, Jansen-van der Weide MC, et al. Intracranial aneurysms in patients with subarachnoid hemorrhage: CT angiography as a primary examination tool for diagnosis–systematic review and meta-analysis. Radiology. 2010;258(1):134-45. PubMed
  5. Hoh BL, Ko NU, Amin-Hanjani S, et al. 2023 Guideline for the Management of Patients With Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2023;54(7):e314-e370. PubMed
  6. van Gijn J, Kerr RS, Rinkel GJ. Subarachnoid haemorrhage. Lancet. 2007;369(9558):306-18. PubMed
  7. Zedde M, Grisendi I, Assenza F, et al. Spontaneous Non-Aneurysmal Convexity Subarachnoid Hemorrhage: A Scoping Review of Different Etiologies beyond Cerebral Amyloid Angiopathy. J Clin Med. 2024;13(15). PubMed
  8. van Gijn J, Rinkel GJ. Subarachnoid haemorrhage: diagnosis, causes and management. Brain. 2001;124(Pt 2):249-78. PubMed
  9. Claassen J, Park S. Spontaneous subarachnoid haemorrhage. Lancet. 2022;400(10355):846-862. PubMed

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