CT angiogram sign(CTアンギオグラムサイン)は、肺の浸潤性病変内に肺動脈が浮かび上がって見える画像所見です。
特にリンパ腫や粘液性腺癌などの浸潤性陰影において出現し、鑑別の手がかりとなるサインの一つです(ただし特異的な所見ではありません)。
先に結論:CT angiogram signとは
- 造影CTで、肺の濃い影(コンソリデーション)の中を肺の血管がそのままの太さ・形で、はっきり白く通って見える所見です。影の中の組織が造影剤で染まりにくく、血管を壊さずに広がっていることを示します
- 主に考える病気:浸潤性粘液性腺癌(以前の粘液産生性BAC)、肺MALTリンパ腫などの悪性リンパ腫。ただし肺炎・閉塞性肺炎・無気肺などでも見られ、特異的な所見ではありません(Shah 1998)
- 肺MALTリンパ腫では64.3%にみられ、MALT以外のリンパ腫(12.5%)より多いと報告されています(Chen 2018)
- 抗菌薬で治らない肺炎のような影にこのサインがある場合は、粘液性腺癌やリンパ腫を疑って気管支鏡などで調べるきっかけになります
肺のCT angiogram signの定義

- 造影CTにおいて、病変(consolidation)内に肺動脈が明瞭に浮かび上がる所見のこと
- 病変が粘液や液体を含んで低吸収になり、その中で気管支・血管の骨組みが保たれているため、造影された血管が目立つ(Im 1990)
- 造影剤により血管が強調されることで“CT angiogram”のように見える
- 血管の構造が保たれていることは病変の破壊性が低いことを示しますが、肺炎や閉塞性肺炎でも高頻度にみられるため、このサインだけで腫瘍性と判断はできません。造影CTで評価した肺葉性コンソリデーション51例の検討では、CT angiogram signは29%にみられ、閉塞性肺炎の37%、閉塞のない肺炎の20%でも陽性でした。もともと浸潤性粘液性腺癌(旧BAC)に特異的とされた所見ですが、この検討では診断の特異度を上げないと結論されています(Shah 1998)。
CT angiogram signの鑑別診断
- 悪性リンパ腫(特にMALTリンパ腫)(Vincent 1992, Chen 2018)
- 浸潤性粘液産生性腺癌(以前の粘液産生性BAC)(Im 1990)
- 肺炎・閉塞性肺炎、無気肺、リポイド肺炎:非腫瘍性だがCT angiogram signを示すことあり(Murayama 1993, Shah 1998)
- がんの肺転移、放射線治療後の線維化、結核性肺炎などの報告もある(Blandino 1996)
など
| 疾患 | CT angiogram sign | 備考 |
|---|---|---|
| 肺MALTリンパ腫 | 多い(64.3%) | air bronchogramも75%にみられた(Chen 2018) |
| MALT以外の肺リンパ腫 | 少ない(12.5%) | halo signが多い(63.6%)(Chen 2018) |
| 浸潤性粘液性腺癌(IMA) | 典型的とされる | 肺葉性のBAC12例で報告された所見(Im 1990) |
| 閉塞性肺炎・肺炎 | 閉塞性37%、閉塞のない肺炎20% | 良性でも珍しくない(Shah 1998) |
鑑別に重要なポイント
CT angiogram signだけでは良性・悪性を決められないため、ほかの所見と合わせて考えます。
- 病変内の泡状の低吸収域(bubble-like low attenuation):BAC(浸潤性粘液性腺癌を含む)でみられ、肺炎との区別に役立った(Kim 2006)
- 病変に接する胸膜の肥厚、病変より手前の気管支壁肥厚:感染性肺炎で多かった(Kim 2006)
- 中枢の気管支の閉塞:閉塞性肺炎でもサインが出るため、腫瘍による気管支閉塞がないか確認する(Murayama 1993, Shah 1998)
画像所見としての観察ポイント
- 肺動脈がconsolidation内を滑らかに走行している
- 血管径が周囲に比べて維持されており、辺縁が明瞭
- air bronchogramを伴うこともある(肺MALTリンパ腫で75%、Chen 2018)
造影CTが重要な理由
CT angiogram signは、造影によって血管が強調されて初めて可視化される所見です。非造影CTでは評価できないため、浸潤影の原因を調べるときは造影CTで確認します。
CT angiogram signでよくある疑問(Q&A)
Q. 「CTアンギオ(CTA)」とは違うのですか?
A. 違います。CTアンギオグラフィ(CTA)は血管そのものを調べる造影CT検査の名前です。CT angiogram signは、肺の濃い影の中の血管が、まるでCTアンギオのように浮かんで見えるという「所見の名前」です。
Q. このサインがあれば、がんやリンパ腫ですか?
A. いいえ。肺葉性の浸潤影51例では29%にみられ、閉塞性肺炎や肺炎でも陽性でした(Shah 1998)。治りにくい浸潤影で、ほかの所見とあわせて腫瘍を疑うきっかけの一つと考えます。
症例 30歳代 肺悪性リンパ腫

引用:Radiopaedia
造影CTにおいて、consolidationを呈する肺実質内に血管構造が明瞭に保持されて描出されており、CT angiogram signと合致。
この所見は、構造を破壊せずに肺実質へ浸潤するリンパ腫の低悪性度腫瘍性病変を示唆する画像所見です。
まとめ:CT angiogram signは腫瘍性浸潤の“穏やかさ”を可視化する所見
- 肺病変内の血管が保たれて明瞭に描出される
- 代表疾患はMALTリンパ腫や粘液性腺癌
- 血管破壊が少ない腫瘍、または特定の炎症性病変で出現
- 評価には造影CTが必要で、肺炎など非腫瘍性病変でもみられる
参考文献:
- Shah RM, Friedman AC. CT angiogram sign: incidence and significance in lobar consolidations evaluated by contrast-enhanced CT. AJR Am J Roentgenol. 1998;170(3):719-21. PubMed
- Hare SS, Souza CA, Bain G, et al. The radiological spectrum of pulmonary lymphoproliferative disease. Br J Radiol. 2012;85(1015):848-64. PubMed
- Maldonado RL. The CT angiogram sign. Radiology. 1999;210(2):323-324. PubMed
- Murayama S, Onitsuka H, Murakami J, et al. “CT angiogram sign” in obstructive pneumonitis and pneumonia. J Comput Assist Tomogr. 1993;17(4):609-612. PubMed
- Vincent JM, Ng YY, Norton AJ, et al. CT “angiogram sign” in primary pulmonary lymphoma. J Comput Assist Tomogr. 1992;16(5):829-831. PubMed
- Im JG, Han MC, Yu EJ, et al. Lobar bronchioloalveolar carcinoma: “angiogram sign” on CT scans. Radiology. 1990;176(3):749-53. PubMed
- Chen Y, Chen A, Jiang H, et al. HRCT in primary pulmonary lymphoma: can CT imaging phenotypes differentiate histological subtypes between mucosa-associated lymphoid tissue (MALT) lymphoma and non-MALT lymphoma? J Thorac Dis. 2018;10(11):6040-6049. PubMed
- Blandino A, Gaeta M, Scribano E, et al. [The angiogram sign in lung consolidation: what is its diagnostic value?]. Radiol Med. 1996;92(4):381-5. PubMed
- Kim TH, Kim SJ, Ryu YH, et al. Differential CT features of infectious pneumonia versus bronchioloalveolar carcinoma (BAC) mimicking pneumonia. Eur Radiol. 2006;16(8):1763-8. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
