CT angiogram sign(CTアンギオグラムサイン)は、肺の浸潤性病変内に肺動脈が浮かび上がって見える画像所見です。

特にリンパ腫や粘液性腺癌、COPなどの浸潤性陰影において出現し、腫瘍性か非腫瘍性かの鑑別において極めて重要なサインの一つです。

肺のCT angiogram signの定義

  • 造影CTにおいて、病変(consolidation)内に肺動脈が明瞭に浮かび上がる所見のこと
  • 血管の構造が腫瘍の中でも保持され、周辺の濃度差によってコントラストが強調される
  • 造影剤により血管が強調されることで“CT angiogram”のように見える
  • 血管の構造が保たれているということは、破壊性が低く、浸潤性が比較的穏やかな腫瘍性病変である可能性が高いということを示します。

CT angiogram signの鑑別診断

など

疾患 CT angiogram sign 備考
肺MALTリンパ腫 + 明瞭 血管・気管支構造が保たれる
浸潤性粘液性腺癌(IMA) ± 粘液成分の背景で見える場合も
COP(器質化肺炎) ± 非腫瘍性でも出現しうる
壊死性肺炎・出血性病変 血管構造がぼやけて描出困難

鑑別に重要なポイント

以下のような場合は、CT angiogram signが出現しにくい、または見られないことがあります。

  • 肺癌(特に非粘液性の腺癌や扁平上皮癌):組織破壊性が強く、血管構造を破壊しやすい
  • 出血性肺炎・壊死性結核:病変内の濃度が不均一であり、血管の描出が不良
  • mucoid impaction(粘液栓):粘稠性の影により血管が描出されないことが多い

画像所見としての観察ポイント

  • 肺動脈がconsolidation内を滑らかに走行している
  • 血管径が周囲に比べて維持されており、辺縁が明瞭
  • 多くの場合、血管周囲にはair bronchogramも併存する
  • 陰影全体は非収束性で、浸潤性・すりガラスを伴う場合もある

造影CTが重要な理由

CT angiogram signは、造影によって血管が強調されて初めて可視化される所見です。非造影CTでは診断困難な場合も多く、肺腫瘍が疑われる症例においては造影CTの撮影が必須です。

症例 30歳代 肺悪性リンパ腫

引用:radiopedia

造影CTにおいて、consolidationを呈する肺実質内に血管構造が明瞭に保持されて描出されており、CT angiogram signと合致。

この所見は、構造を破壊せずに肺実質へ浸潤するリンパ腫の低悪性度腫瘍性病変を示唆する画像所見です。

まとめ:CT angiogram signは腫瘍性浸潤の“穏やかさ”を可視化する所見

  • 肺病変内の血管が保たれて明瞭に描出される
  • 代表疾患はMALTリンパ腫や粘液性腺癌
  • 血管破壊が少ない腫瘍、または特定の炎症性病変で出現
  • 鑑別には造影CTが必須、非腫瘍性病変との比較が重要

参考文献:

  • Shah R, et al. CT angiogram sign: incidence and significance in lobar consolidation. AJR Am J Roentgenol. 1993;161(4):985–989.
  • Franquet T. Imaging of pulmonary lymphoma. Eur Respir J. 2001;17(3):507–518.
  • 加来ら. 画像診断でわかる肺リンパ腫の画像パターンとCT angiogram signの意義. 画像診断 2013年10月号.

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