骨外に出る骨髄病変 皮質の壊れ方で鑑別

骨外に軟部腫瘤を作る骨髄病変とは、骨のそばに軟部腫瘤を作る骨髄の病気の総称で、骨髄の腫瘍が皮質を越えて外へ出るものと、髄外造血のように骨の外で血液がつくられてかたまりになるものがあります。骨のそばの軟部腫瘤を見て「骨の破壊が軽いから骨の病気ではなさそう」と考えたことはありませんか。研修医のハジメくんと一緒に、皮質の壊れ方と腫瘤の大きさの釣り合い、腫瘤の中身、臨床情報から、形質細胞腫・リンパ腫・骨髄肉腫・髄外造血・Ewing肉腫・骨転移を見分ける手がかりを整理します。

先に結論

  1. 骨のそばの軟部腫瘤は、骨髄の腫瘍が骨の外へ出たものと、髄外造血のように骨の外でできるものを分けて考える。骨髄の腫瘍は、皮質を壊して出るか、皮質の細い通り道をすり抜けて出るかで、骨の外に軟部腫瘤を作る。皮質の破壊が少ないのに軟部腫瘤が大きいときは、リンパ腫やEwing肉腫などの小円形細胞腫瘍を考える。
  2. 腫瘤の中身と背景で絞る。脂肪を含む傍椎体の腫瘤は髄外造血、白血病の経過中なら骨髄肉腫、M蛋白と多発する溶骨病変なら形質細胞腫・骨髄腫、がんの既往と多発なら骨転移。
  3. 画像は候補を絞る道具で、腫瘍の確定には通常、組織診断(生検)が必要。典型的な髄外造血は画像と背景の病気から診断できることがあり、出血しやすいので、生検は非典型な例などで必要性を検討する。

目的から読む: 骨外に出るしくみ / 鑑別の比較表 / 形質細胞腫・骨髄腫 / 悪性リンパ腫 / 骨髄肉腫(緑色腫) / 髄外造血 / Ewing肉腫・骨転移 / 見る順番

骨髄の病変が骨の外に軟部腫瘤を作るしくみ: 皮質を「壊す」か「すり抜ける」か

骨髄で増えた腫瘍細胞が骨の外に出る道は2つあります(髄外造血は骨の外で血液がつくられてできるもので、この2つの道とは別に考えます)。皮質を溶かして(破壊して)出る道と、皮質の中を走る細い血管の通り道に沿って出る道です。後者では、皮質がほとんど壊れていないのに、骨の外に大きな腫瘤ができます。

ハジメハジメ(研修医)
先生、骨のすぐ横に大きな軟部腫瘤があるCTを見たんですが、骨はほとんど壊れていなかったので「軟部の腫瘍で、骨の病気ではなさそう」と書きました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこが落とし穴になりやすい所です。ハジメくん、壁に穴をあけずに部屋の外へ出るとしたら、どこを通りますか?
ハジメハジメ(研修医)
えっ…換気口とか、配管のすき間ですか。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです。皮質にも、血管が通る細い管がたくさんあります。小さな丸い細胞が密に増える腫瘍は、そのすき間に沿って外へ広がることがあります。だから「骨が壊れていない=骨の病気ではない」とは言えません。見るのは皮質の壊れ方と、骨の外の腫瘤の大きさの釣り合いです。
図1 皮質を壊して出るか、すり抜けて出るか 骨髄の腫瘍が骨の外へ出る2つの道の模式図です。左は皮質を溶かして出る型、右は皮質の中の細い通り道に沿って出る型で、皮質はほぼ保たれます。
図1 皮質を壊して出るか、すり抜けて出るか 骨髄の腫瘍が骨の外へ出る2つの道の模式図です。左は皮質を溶かして出る型、右は皮質の中の細い通り道に沿って出る型で、皮質はほぼ保たれます。

皮質の構造と、外へ広がる道

骨は、外側の硬い皮質と、内側の骨髄でできています。骨髄の中で腫瘍細胞が増えると、多くの場合は皮質を溶かして(破壊して)外に出ます。一方、小さな丸い細胞が密に増える腫瘍(リンパ腫、Ewing肉腫、白血病の浸潤など)は、皮質の中を走る細い血管の通り道(ハバース管・フォルクマン管)に沿って外へ広がることがあると考えられています。骨原発リンパ腫では、軟部腫瘤と骨髄の変化に比べて皮質の破壊が「意外に少ない」ことが診断を後押しします(Krishnan 2003)。Ewing肉腫では、骨の中と外の腫瘍のつながりが、CT・MRIで皮質を通る細い通り道として見えることが多いとされます(Murphey 2013)。

このため、画像では「皮質の壊れ方」と「骨の外の腫瘤の大きさ」の釣り合いを見ることが、鑑別の手がかりになります。

図2 皮質の壊れ方と軟部腫瘤の大きさ 横軸に皮質の破壊、縦軸に骨の外の腫瘤の大きさを取った目安の比較図です。破壊が少ないのに腫瘤が大きい左上ほど、リンパ腫やEwing肉腫を考えます。
図2 皮質の壊れ方と軟部腫瘤の大きさ 横軸に皮質の破壊、縦軸に骨の外の腫瘤の大きさを取った目安の比較図です。破壊が少ないのに腫瘤が大きい左上ほど、リンパ腫やEwing肉腫を考えます。
ハジメハジメ(研修医)
釣り合いが崩れて、腫瘤のほうが大きすぎるときに、小円形細胞腫瘍を考えるんですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そのとおりです。ただ、これは候補を並べる順番を決める目安です。骨髄腫や転移でも、大きな軟部腫瘤を作ることはあります。次の表で、所見ごとの手がかりを確かめておきましょう。

鑑別の手がかりになる4つの所見

所見 考えること
皮質をあまり壊さない軟部腫瘤 骨原発リンパ腫では、軟部腫瘤と骨髄の変化に比べて皮質の破壊が「意外に少ない」ことが診断を後押しする(Krishnan 2003)
皮質を貫く細い通り道 Ewing肉腫では、骨の中と外の腫瘍が、皮質を通る細い通り道でつながる様子がCT・MRIで見えることが多い(Murphey 2013)
白血病の経過中の腫瘤 骨髄肉腫(緑色腫)。未熟な骨髄系細胞の骨髄外の腫瘍で、AML 93例のFDG-PET/CTでは19%に骨髄外病変があった(Stölzel 2020)
脂肪を含む傍椎体の腫瘤 胸部の髄外造血の典型。生検は出血に注意する(Roberts 2016)

骨外の軟部腫瘤を作る骨髄病変の鑑別: 年齢・背景・画像の比較表

候補は、形質細胞腫・多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、骨髄肉腫(緑色腫)、髄外造血、Ewing肉腫、骨転移の6つです。画像だけで決めにくいときは、年齢と背景の病気が大きな手がかりになります。

ハジメハジメ(研修医)
骨外の軟部腫瘤の鑑別は、画像の形だけで決めるものだと思っていました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
形が似ている病気が多いので、表の「年齢・背景」の列を先に見るほうが早いことがよくあります。依頼票の既往歴と血液検査は、画像を読む前に開いておきましょう。
病気 年齢・背景 画像の手がかり
形質細胞腫・多発性骨髄腫 中高年。M蛋白、腎障害、高カルシウム血症 溶骨性の病変から連続する軟部腫瘤。椎体・肋骨・骨盤に多い。ほかの骨にも溶骨病変がないかを見る
悪性リンパ腫(骨原発・全身性) 骨原発では、30歳以上だとさらに疑いが強まる(Krishnan 2003) 単発の虫食い状の骨病変、層状の骨膜反応、皮質の破壊が少ないわりに大きな軟部腫瘤(Krishnan 2003)
骨髄肉腫(緑色腫) 急性骨髄性白血病の経過中・再発時、またはその前触れ 骨・硬膜外・軟部の腫瘤。リンパ腫と似る。骨髄検査や生検で判断する
髄外造血 サラセミア・骨髄線維症・鎌状赤血球症など(Roberts 2016) 脂肪を含む傍椎体の腫瘤、肋骨の膨らみ。腫瘍のような骨破壊はない
Ewing肉腫 思春期・若年成人 長管骨の骨幹端〜骨幹の強い骨破壊と軟部腫瘤。皮質を通る細い通り道(Murphey 2013)
骨転移 がんの既往。肺癌・腎癌・甲状腺癌など 溶骨性の破壊と軟部腫瘤。多発することが多い

形質細胞腫・多発性骨髄腫: 溶骨病変から連続する軟部腫瘤

形質細胞腫・骨髄腫では、骨を溶かした病変がそのまま骨の外へ続き、骨に接した軟部腫瘤になります。椎体・肋骨・骨盤に多く、ほかの骨にも溶骨病変がないかを探すのが次の一手です。

ハジメハジメ(研修医)
形質細胞腫と多発性骨髄腫は、同じ病気ですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
どちらも形質細胞の腫瘍です。骨髄の中に広く散らばるのが多発性骨髄腫、1か所にかたまりを作るのが形質細胞腫です。画像では、かたまりが1つだけに見えても、ほかの骨を見に行くことが大切です。
図3 胸椎から傍脊椎へ広がる形質細胞腫 胸椎の横断の模式図です。患者さんの右の椎体と肋骨の後部を溶かした腫瘤が、傍脊椎の軟部へ続き、脊柱管にも入り込んで脊髄を押しています。
図3 胸椎から傍脊椎へ広がる形質細胞腫 胸椎の横断の模式図です。患者さんの右の椎体と肋骨の後部を溶かした腫瘤が、傍脊椎の軟部へ続き、脊柱管にも入り込んで脊髄を押しています。

形質細胞(抗体をつくる細胞)の腫瘍は、骨髄の中で広がる多発性骨髄腫と、1か所に腫瘤を作る形質細胞腫に分けられます。骨の形質細胞腫や骨髄腫の病変は、骨を溶かして外に広がり、骨に接した軟部腫瘤を作ることがあります。骨髄の外で増えるようになった骨髄腫(髄外性骨髄腫)は、増殖が速く治療に抵抗しやすい、予後の悪い状態とされ、統一した定義の大切さが指摘されています(Bhutani 2020)。

胸痛で受診し、心臓の検査の途中で胸椎の腫瘤が見つかった多発性骨髄腫の報告では、第8胸椎を中心とする5.6×3.5×3.2cmの腫瘤が、右の傍脊椎の軟部腫瘤として広がり、第8肋骨の後部と椎体を壊して脊柱管に入り込んでいました(Gaibor 2023)。骨の病変が大きくなると、胸痛や背部痛、脊髄の圧迫による症状が出ることがあります。骨髄腫の骨病変の全体像は、多発性骨髄腫の画像診断で説明しています。

引用元の図 胸椎・肋骨から傍脊椎に広がる形質細胞腫(多発性骨髄腫)

多発性骨髄腫のPET。右傍脊椎の軟部腫瘤が第8肋骨後部と椎体を壊して脊柱管に進展
引用:Gaibor C, et al. Cureus 2023(Figure 7)(CC BY)

多発性骨髄腫の患者のPETです。右の傍脊椎の軟部腫瘤が、第8肋骨の後部と隣の椎体を壊して脊柱管に入り込んでいます。前方の右第7肋骨や胸骨など、ほかの小さな骨病変もあります。

ハジメハジメ(研修医)
椎体の中だけで、形質細胞腫らしさが見える手がかりはありますか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
椎体の孤立性形質細胞腫では、溶けた椎体の中に太くなった骨梁が残り、断面が脳の脳溝のように見える「mini brain sign」が手がかりとして知られています(Ferreira-Filho 2014)。ただし、椎体の血管腫でも似た見え方をした報告があり、これだけで決めることはできません(Zhang 2020)。
図4 椎体の形質細胞腫のmini brain sign 椎体の横断の模式図で、左が正常、右が形質細胞腫です。溶けた椎体の中に太い骨梁が曲がって残り、脳の溝のような模様に見えます。
図4 椎体の形質細胞腫のmini brain sign 椎体の横断の模式図で、左が正常、右が形質細胞腫です。溶けた椎体の中に太い骨梁が曲がって残り、脳の溝のような模様に見えます。
マルオマルオ(技師)
撮る側からひとことです!骨の外の腫瘤は、骨条件と軟部条件の両方で再構成しておくと、皮質の細かい途切れと腫瘤の広がりを同時に追えます。椎体の病変なら矢状断・冠状断も付けると、脊柱管への入り込みがわかりやすいです!

骨の悪性リンパ腫: 皮質の破壊が少ないわりに大きな軟部腫瘤

骨原発リンパ腫の手がかりは、単発の虫食い状の骨病変、層状の骨膜反応、そして皮質の破壊が少ないわりに大きな軟部腫瘤です。X線ではほぼ正常に見えることがあり、MRIや骨シンチで広がりをとらえます(Krishnan 2003)。

ハジメハジメ(研修医)
X線で骨が正常に見えたら、骨のリンパ腫は否定してよいですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこは逆です。骨のリンパ腫は、X線でほぼ正常に見えることがある病気です。骨髄の中に細胞が広がっていても、皮質が保たれていればX線ではわかりにくいのです。MRIで骨髄と骨の外を見てください。
図5 骨のリンパ腫は皮質が保たれやすい 大腿骨の横断の模式図です。骨髄の信号が変わっているのに皮質の輪はほぼ連続していて、骨のまわりを大きな軟部腫瘤が取り囲んでいます。
図5 骨のリンパ腫は皮質が保たれやすい 大腿骨の横断の模式図です。骨髄の信号が変わっているのに皮質の輪はほぼ連続していて、骨のまわりを大きな軟部腫瘤が取り囲んでいます。

骨原発リンパ腫は、骨の原発腫瘍の5%未満の、まれな悪性腫瘍です。X線ではほぼ正常に見えることがあるため、骨シンチやMRIなど別の検査が必要になります。X線で単発の虫食い状(permeative)の骨幹端〜骨幹の病変と層状の骨膜反応があり、MRIで軟部腫瘤がある場合、特に30歳以上ではリンパ腫が強く疑われます。軟部腫瘤と骨髄の変化に比べて、皮質の破壊が意外に少ないことも、リンパ腫を疑う根拠になります(Krishnan 2003)。

全身性のリンパ腫が骨や筋肉に広がることもあります。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、ほかの非ホジキンリンパ腫より節外病変が多く、早期の患者の最大40%で少なくとも1か所の節外病変があります。ただし、骨格筋と骨に原発するDLBCLは非常にまれです(Shabbir 2022)。

引用元の図 上腕骨と周りの筋肉に広がったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫

上腕骨と上肢近位の筋肉に広がったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療前後のPET
引用:Shabbir A, et al. Cureus 2022(Figure 2)(CC BY)

(A)治療前のPETでは、右上腕骨と、右上肢の近位の筋肉・右の腱板の筋肉に強いFDG集積があり、右腋窩に少なくとも2個の高代謝のリンパ節があります(矢印)。ほかのリンパ節・骨・筋肉・臓器に目立つ集積はありません。(B)治療後6か月のPETでは、上腕骨の病的骨折が残った皮質の端(矢印)を除いて、代謝が消えた状態(complete metabolic response)です。

骨髄肉腫(緑色腫)とは: 白血病の経過中にできる骨・軟部の腫瘤

骨髄肉腫(myeloid sarcoma)とは、未熟な骨髄系の細胞が骨髄の外に作る腫瘍です。画像はリンパ腫と似るため、急性骨髄性白血病の既往・再発、血液検査の結果がいちばんの手がかりになります。

ハジメハジメ(研修医)
白血病は血液の病気なので、骨の外にかたまりを作ることはめったにないと思っていました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そう思われがちですが、急性骨髄性白血病の患者さんに診断時の全身PET/CTを撮った前向き研究では、約2割に骨髄の外の病変がありました(Stölzel 2020)。白血病の経過中に骨・硬膜外・軟部の腫瘤を見たら、骨髄肉腫を候補に入れてください。
図6 AMLの診断時のPETで見つかった骨髄外病変 急性骨髄性白血病93例で、PETで骨髄外病変が見つかった割合と、組織で確かめたPET陰性の例を加えた割合を比べた棒グラフです。
図6 AMLの診断時のPETで見つかった骨髄外病変 急性骨髄性白血病93例で、PETで骨髄外病変が見つかった割合と、組織で確かめたPET陰性の例を加えた割合を比べた棒グラフです。

骨髄肉腫(myeloid sarcoma)は、未熟な骨髄系の細胞が骨髄の外に作る、まれな腫瘍です。切った断面が緑色に見えることがあるため、緑色腫(chloroma)とも呼ばれます。急性骨髄性白血病の特定の染色体異常、特にt(8;21)では起こりやすいとされています。急性前骨髄球性白血病では、未治療の段階ではまれで、ATRA(全トランス型レチノイン酸)の時代になってから再発時に多くなったと報告されています。脊椎の骨髄肉腫の生検をきっかけに、急性前骨髄球性白血病と診断された例もあります(Shu 2022)。

骨髄肉腫の部位ごとの画像は、骨髄肉腫(Myeloid sarcoma・緑色腫)とはで症例と合わせて見られます。画像だけではリンパ腫と区別しにくいため、白血病の既往や血液検査の結果が大きな手がかりになります。急性骨髄性白血病の骨髄外病変の頻度とPETの成績は、後ろの「根拠(もう少し詳しく)」にまとめました。

髄外造血の画像所見: 脂肪を含む傍椎体の腫瘤

髄外造血とは、骨髄で十分に血液をつくれないときに、骨髄の外で血液がつくられる状態です。胸部では脂肪を含む傍椎体の腫瘤が典型で、腫瘍のような骨の破壊はありません(Roberts 2016)。

ハジメハジメ(研修医)
下位胸椎の両側に傍椎体の腫瘤があったら、まず神経原性腫瘍か転移ですよね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
その前に、2つ確かめてみましょう。腫瘤の中に脂肪はありますか?そして、患者さんに貧血の病気はありますか?サラセミアや骨髄線維症があって、骨が壊れていないなら、髄外造血がいちばんの候補になります。
図7 胸部の髄外造血 下位胸椎の横断の模式図です。椎体の両側に脂肪を含む傍椎体の腫瘤があり、椎体と肋骨の皮質は壊れていません。貧血の病気が背景にあります。
図7 胸部の髄外造血 下位胸椎の横断の模式図です。椎体の両側に脂肪を含む傍椎体の腫瘤があり、椎体と肋骨の皮質は壊れていません。貧血の病気が背景にあります。

髄外造血の原因としては、骨髄線維症、骨髄を置き換えるびまん性の骨転移、白血病、鎌状赤血球症、サラセミアが多いとされています(Roberts 2016)。胸部では、脂肪を含む傍椎体の腫瘤として現れることが多く、典型的なら診断に迷うことは少ない一方、腹部の臓器や軟部に脂肪を含まない腫瘤として現れると、リンパ腫・転移・肉腫との区別に生検が必要になることがあります。出血しやすいため、生検は計画を立てて行います(Roberts 2016)。

髄外造血の腫瘤は、骨の皮質を壊して外に出るのではなく、骨の外の組織で血液がつくられてできるものです。骨の破壊がなく、もとの貧血の病気がわかっていることが手がかりになります。脊柱管内の髄外造血は脊柱管内の髄外造血、脾臓の髄外造血は脾臓の髄外造血の画像診断で扱っています。

マサマサ(技師)
……腫瘤の脂肪を確かめたいなら、T1強調像で高信号の所が、脂肪抑制をかけると黒く落ちるかを見るのがいいですよ。同じ高さで並べて撮っておくと、比べやすいです。

Ewing肉腫と骨転移: 若年者の強い骨破壊と、がんの既往

Ewing肉腫は、思春期・若年成人の長管骨の骨幹端〜骨幹に、強い骨破壊と軟部腫瘤を作るのが典型です。骨転移は、がんの既往があり、多発していれば考えやすくなります。

ハジメハジメ(研修医)
Ewing肉腫も小円形細胞腫瘍なら、リンパ腫と同じように皮質はほとんど壊れないんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
Ewing肉腫では、皮質の局所的な破壊もよく見られます。そのうえで、壊れていない所にも皮質を貫く細い通り道が見えることがある、と覚えてください。年齢も大きな違いで、Ewing肉腫は若い人、骨原発リンパ腫は30歳以上で疑いが強まります。
図8 Ewing肉腫の皮質を貫く細い通り道 大腿骨の骨幹部の横断の模式図です。骨髄の腫瘍と骨の外の大きな軟部腫瘤が、皮質を貫く細い線状の通り道でつながり、局所的な破壊もあります。
図8 Ewing肉腫の皮質を貫く細い通り道 大腿骨の骨幹部の横断の模式図です。骨髄の腫瘍と骨の外の大きな軟部腫瘤が、皮質を貫く細い線状の通り道でつながり、局所的な破壊もあります。

Ewing肉腫

Ewing肉腫ファミリー腫瘍は、小さな丸い青い細胞がびっしり並ぶ腫瘍です。EWSR1::FLI1融合を生じるt(11;22)転座が代表的ですが、EWSR1::ERGなどほかの融合遺伝子を持つ例もあります(Gamberi 2011)。骨のEwing肉腫は、思春期・若年成人の長管骨の骨幹端〜骨幹に強い骨破壊と軟部腫瘤を作るのが典型です。皮質の局所的な破壊がよく見られ、骨の中と外の腫瘍がつながります。このつながりは、CTやMRIで皮質を貫く細い通り道として見えることも多く、病理の所見を反映しています(Murphey 2013)。骨の外にできるEwing肉腫(骨外性)は、傍脊椎や下肢の大きな軟部腫瘤として現れます(Murphey 2013)。年齢・部位・骨膜反応から骨腫瘍を絞る考え方は、骨腫瘍の画像診断|年齢・部位・レントゲン所見で考える鑑別で整理できます。

骨転移

骨転移の多くは、骨髄に入った腫瘍細胞が骨を壊して広がるもので、大きくなると骨の外に軟部腫瘤を作ります。がんの既往があり、多発していれば考えやすくなります。骨を溶かす病変の全体の鑑別は、溶骨性病変を来す疾患の鑑別にまとめています。

骨外の軟部腫瘤を画像で見る順番

腫瘤と骨の関係 → 皮質の壊れ方 → 腫瘤の中身 → ほかの骨 → 全身 → 臨床情報の順に見ると、6つの候補を漏れなく絞れます。

ハジメハジメ(研修医)
最初のCTみたいに腫瘤だけ見て終わらないように、この順番で見直します。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
いいですね。特に「ほかの骨」は見落としやすい所です。脊椎全体の骨髄の信号がびまん性に変わっていないかも見てください。T1強調像での見方は、びまん性骨髄置換性病変のMRI鑑別で確かめられます。
見ること 考え方
腫瘤と骨の関係 骨から連続しているか、骨と離れているか。脊椎なら椎体・肋骨・傍椎体・硬膜外のどこか
皮質の壊れ方 破壊が大きいか、少ないか。皮質を貫く細い通り道があるか
腫瘤の中身 脂肪を含むか(髄外造血)、壊死や出血があるか
ほかの骨 多発する溶骨病変(骨髄腫・転移)、びまん性の骨髄信号の変化(白血病・リンパ腫)
全身 リンパ節腫大、脾腫、ほかの臓器の病変。FDG-PET/CTで広がりを見る
臨床情報 年齢、M蛋白、血球数、白血病・貧血の病気・がんの既往
図9 骨外の軟部腫瘤を絞る流れ図 骨の破壊の有無、皮質の破壊と腫瘤の大きさの釣り合い、臨床情報の3つの分かれ道で、6つの候補を絞る流れ図です。髄外造血に合わない例は、骨の破壊がなくても次の分かれ道へ進みます。腫瘍は組織診断で確かめます。
図9 骨外の軟部腫瘤を絞る流れ図 骨の破壊の有無、皮質の破壊と腫瘤の大きさの釣り合い、臨床情報の3つの分かれ道で、6つの候補を絞る流れ図です。髄外造血に合わない例は、骨の破壊がなくても次の分かれ道へ進みます。腫瘍は組織診断で確かめます。

よくある疑問(Q&A)

Q. 骨の外に腫瘤があると、悪性の病気ですか。
A. 多くは腫瘍ですが、髄外造血のように腫瘍ではないものもあります。髄外造血は、脂肪を含む傍椎体の腫瘤として見えることが多いとされます(Roberts 2016)。最終的には、画像・血液検査・生検をあわせて判断します。

Q. 白血病の治療中に腫瘤ができたら、何を考えますか。
A. 骨髄肉腫(緑色腫)を候補に入れ、感染など腫瘍以外の原因とも比べます。急性骨髄性白血病では、診断時のPETで約2割に骨髄外の病変が見つかったという報告があります(Stölzel 2020)。新しい腫瘤は、生検や骨髄検査で確かめる方針を主治医と相談します。

Q. 生検は必要ですか。
A. 腫瘍の確定と治療方針の決定には、通常、組織の検査が必要です。典型的な髄外造血は画像と背景の病気から診断できることがあり、出血しやすいため、生検は非典型な例などで必要性とやり方を慎重に検討します(Roberts 2016)。

根拠(もう少し詳しく): 急性骨髄性白血病の骨髄外病変とPET/CT

急性骨髄性白血病93例に診断時の全身FDG-PET/CTを撮った前向き研究(Stölzel 2020)では、19%にPET陽性の骨髄外病変があり、組織で確かめられたPET陰性の3例を加えると22%でした。1人あたりの骨髄外病変は中央値2か所(1〜12か所)で、PETの感度は77%、特異度は97%でした。組織で確かめられた骨髄外病変のある10例のうち6例(60%)は、経過観察のPETでも活動性の病変が残っていました。

よくある勘違い

Q. 骨がほとんど壊れていなければ、骨の病気ではない?

いいえ。リンパ腫やEwing肉腫は、皮質の細い通り道に沿って外へ広がり、皮質の破壊が少ないまま大きな軟部腫瘤を作ることがあります。骨原発リンパ腫はX線でほぼ正常に見えることもあります。

Q. 傍椎体の腫瘤は、神経原性腫瘍か転移を考えればよい?

脂肪を含み、骨の破壊がなく、サラセミアや骨髄線維症などの背景があれば、髄外造血を考えます。典型的なら画像と背景から診断できることがあり、出血しやすいので、生検は非典型な例などで必要性を検討します。

Q. 腫瘤が1つなら、ほかの骨は見なくてよい?

形質細胞腫に見えても、ほかの骨に溶骨病変があれば多発性骨髄腫を考えます。転移も多発することが多く、びまん性の骨髄信号の変化は白血病・リンパ腫の手がかりになります。

今日のまとめ

  1. 皮質の壊れ方と軟部腫瘤の大きさの釣り合いを見る。破壊が少ないのに腫瘤が大きければリンパ腫・Ewing肉腫を考える。
  2. 腫瘤の脂肪(髄外造血)、ほかの骨(骨髄腫・転移)、臨床情報(年齢・M蛋白・白血病・貧血の病気・がんの既往)で絞る。
  3. 画像は候補を絞る道具。腫瘍の確定には通常組織診断が必要。典型的な髄外造血は画像と背景から診断できることがあり、生検は非典型な例などで検討する。

参考文献

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症例画像は各図の引用元のとおりです。

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