
急性リンパ性白血病(ALL)の骨病変とは、骨髄で増えた白血病細胞が骨を内側から押し広げ、弱くして起こる変化で、子どもの骨痛・跛行が最初の症状になることがあります。研修医のハジメくんと一緒に、X線の骨幹端透亮帯・椎体の圧迫骨折、MRIの骨髄の信号、骨髄炎やJIAと見誤らないための手がかりを順に整理します。
先に結論
- ALLの骨病変とは、骨髄で増えた白血病細胞による骨・関節の変化。小児の急性白血病では診断時に約4割に骨・関節の症状、約4割にX線の異常がある(Sinigaglia 2008)。
- X線は溶骨・骨幹端の透亮帯・骨減少・骨膜反応・椎体の圧迫骨折。MRIは骨盤・脊椎・長管骨に多発・びまん性に広がるT1低信号の骨髄が手がかり。
- 血液検査がほぼ正常でも否定できない。夜間の痛み・軽い血球の低下・多発する病変は、骨髄炎やJIAより白血病を考えるきっかけになる。
目的から読む: ALLの骨病変とは / 骨痛・跛行の頻度 / X線所見 / MRI所見 / 骨髄炎との違い / JIAとの違い / 疑う手がかり
急性リンパ性白血病(ALL)の骨病変とは? なぜ骨が痛むのか
骨髄の中で白血病細胞が増え、骨の中の圧が上がる・骨膜が持ち上がる・骨が弱くなることで、骨や関節が痛み、X線やMRIに変化が出ます。

なぜ骨が痛むのか
急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)は、リンパ球のもとになる細胞が骨髄の中でがん化して増える病気です。子どもの急性白血病の多くを占めます(Sinigaglia 2008では122例中102例、83.6%がALL)。白血病細胞が骨髄の中で増えると、骨の中の圧が上がったり、骨膜が持ち上げられたり、骨が弱くなったりして、骨や関節が痛みます。
ALLの骨痛・跛行はどのくらい多い? 骨・関節の症状
小児の急性白血病では、診断時に約4割が骨・関節の症状を訴え、その中心は痛みです。ただし痛む場所とX線の異常のある場所は一致しないことがあります。

子どもの急性白血病122例を調べたイタリアの研究(Sinigaglia 2008)では、診断時に38.3%が骨・関節の症状を訴え、内訳は痛み34.4%、機能障害22.9%、跛行12.3%、腫れ10.6%、関節液のたまり5.7%でした。別の施設の328例(279例がALL)では、22%に骨・関節の症状がありました(Riccio 2013)。
症状とX線の所見は一致しないことがある
Sinigaglia 2008では、症状のある場所とX線の異常のある場所の対応は乏しく、病変の場所も一定ではありませんでした。痛む場所のX線が正常でも、白血病は否定できません。
白血病の骨病変のX線所見: 溶骨・骨幹端の透亮帯・骨膜反応
多いのは溶骨・骨減少・骨幹端の透亮帯で、骨硬化・虫食い状の骨破壊・病的骨折・骨膜反応も出ます。診断時に少なくとも1つの異常があるのは約4割です。
代表的な所見と頻度
| 所見 | Sinigaglia 2008(診断時、122例中) | Riccio 2013(症状のある73例のうちX線異常55例中) |
|---|---|---|
| 溶骨(骨が溶ける) | 13.1% | 18.1% |
| 骨幹端の透亮帯(metaphyseal band) | 9.8% | 5.4% |
| 骨減少・骨粗しょう症 | 9% | 40% |
| 骨硬化 | 7.4% | 9% |
| 虫食い状の骨破壊(permeative pattern) | 5.7% | 記載なし |
| 病的骨折 | 5.7% | 20% |
| 骨膜反応 | 4.1% | 7.2% |
Sinigaglia 2008では、診断時に40.2%の子どもに少なくとも1つのX線の異常がありました。Riccio 2013では、骨・関節の症状のある73例のうち75.3%でX線の異常があり、体幹の症状があった17例のうち11例は椎体の圧迫(つぶれ)でした。
骨幹端の透亮帯はどこに、どう見える?
膝の周りなど成長の速い骨幹端に、成長板(骨端線)と平行な帯状の黒い線として見えます。白血病に特有ではありません。

骨幹端の透亮帯は、膝の周り(大腿骨の遠位・脛骨の近位)など、成長の速い骨幹端に、成長板(骨端線)と平行に帯状の黒い線が見える所見です。白血病の骨病変として知られていますが、栄養状態の悪さや重い病気のあとなどでも見られることがあり、この所見だけで白血病とは決められません。診断時のX線で透亮帯があったのは9.8%(Sinigaglia 2008)で、多くの子どもには見られません。小児のX線で見逃したくない骨所見としての位置づけは、子どものX線で見逃したくない骨所見で、正常の成長線との違いは子どもの骨で「骨折?」と言われやすい正常で説明しています。
椎体の圧迫骨折: 説明のつかない背部痛
強い腰背部痛や歩けなくなることで見つかることがあります。子どもの説明のつかない椎体の圧迫骨折では、血液の病気を考えます。

5歳男児で、軽いけがのあとに強い背部痛と歩行困難があり、腰椎CTでははっきりした骨折がないとされたものの、全脊椎MRIで骨髄のびまん性の浸潤と、頸椎・胸椎・腰椎の多数の病的圧迫骨折が見つかった報告があります(Zou 2026)。末梢血では白血球と好中球が減っていましたが芽球はなく、骨髄検査でB細胞性のALLと診断されました。子どもの説明のつかない椎体の圧迫骨折では、血液の病気を考えます。
引用元の図 ALLの全脊椎MRI(びまん性の骨髄浸潤と多数の圧迫骨折)

引用:Zou D, et al. Front Pediatr 2026(Figure 3)(CC BY 4.0)
5歳男児のB細胞性ALLです。診断時の全脊椎MRIで、骨髄のびまん性の浸潤と、多数の椎体の病的圧迫骨折が見られます。
引用元の図 同じ患者のCTとMRIの比較(第4腰椎)

引用:Zou D, et al. Front Pediatr 2026(Figure 1)(CC BY 4.0)
同じ患者で、第4腰椎の高さのCTとMRIを振り返って比べたものです。(A)CTの位置決め画像で、黄色の線が横断像の高さです。(B)横断CTでは、椎体の濃さが不均一で、わずかな不整な骨の変化があります(黄矢印)。(C)同じ高さのT2強調横断像では、椎体の骨髄に不均一な異常信号があります(黄矢印)。
白血病の骨髄のMRI所見: T1強調像で「年齢のわりに暗い」
T1強調像で低信号・脂肪抑制T2強調像で高信号の骨髄が、骨盤・仙骨・椎体・長管骨の近位に多発またはびまん性に広がるのが手がかりです。子どもはもともと骨髄が暗いので、年齢と広がりで判断します。

骨髄の信号の変化
子どもの骨髄はもともと赤色髄が多く、成人より T1強調像で暗く見えます。そのため、白血病による変化は「年齢のわりに暗い」「広い範囲で均一に暗い」「左右対称に多発する」といった見方で拾います。ALLの子ども11例で椎体の骨髄のT1緩和時間を測った研究(Jensen 1990)では、診断時のT1緩和時間は同年齢の対照より有意に長く、化学療法のあとで正常域に向かって短くなりました。T1緩和時間は骨髄の芽球の割合と相関していました。
骨髄炎のような症状で見つかった急性白血病6例(ALL 4例、ALL再発1例、AML 1例)を調べた研究(Malvestiti 2026)では、6例中5例でMRIの骨髄の信号変化が多発性またはびまん性で、1つの部位にとどまっていませんでした。典型的には、T1強調像で低信号、脂肪抑制T2強調像で高信号で、造影されることが多く、骨盤・仙骨・椎体・長管骨の近位部に多く見られました。周りの軟部組織にむくみが見られた例もあります。

白血病と骨髄炎の違い: MRIで多発・びまん性なら立ち止まる
病変が1か所で骨の外に膿瘍があれば骨髄炎、多発・左右対称・びまん性で膿瘍が目立たなければ白血病を考える方向です。抗菌薬への反応や血球の変化も合わせて見ます。

骨髄炎との違い
| 手がかり | 白血病を考える方向 | 骨髄炎を考える方向 |
|---|---|---|
| 病変の数と分布 | 多発・左右対称・びまん性。痛みのない場所にも広がる | 1か所のことが多い。骨幹端から始まる |
| 骨の外 | 膿瘍は目立たない | 骨膜下や軟部の膿瘍、皮質の破壊 |
| 血液検査 | 血球の軽い減少、LDHや尿酸の上昇。正常のこともある | 白血球の増加、炎症反応の上昇 |
| 経過 | 抗菌薬で良くならない、夜に痛む | 抗菌薬で良くなる |
Malvestiti 2026の6例では、最初の血球数は正常か軽い異常にとどまっていました(抄録では正常4例・軽い異常2例、本文の結果の節では正常2例・軽い血球減少4例と、論文の中で数が食い違っています)。炎症反応は5例、LDHは4例で上がっていました。初診から診断までの中央値は17日(1〜53日)で、診断が遅れた例には、抗菌薬で一時的に良くなったように見えたこと、血液の異常がないこと、MRIで多発していたことが共通していました。
若年性特発性関節炎(JIA)との違い: 関節炎で始まるALL
ALLの約2割は関節の痛みで始まり、当初は反応性関節炎・骨髄炎・JIAと考えられることがあります。血球が下がっている系統の数と夜間の痛みが、見分けの手がかりになります。
関節炎で始まるALL
ALLの子ども286例を調べた研究(Brix 2015)では、53例(18.5%)が限局した関節の痛みで発症し、その半数に関節炎の所見がありました。関節は平均2.5か所で、左右非対称の少数関節炎が多い形でした。当初疑われた病気は、反応性関節炎19例、骨髄炎9例、JIA 8例でした。関節症状のある子どもは血液の病気の徴候が目立たず、血球の減少がない割合は24%(関節症状のない子どもは8%)、診断までの期間の中央値は4週(同2週)でした。
見分けの手がかり
| 研究 | 報告された手がかり |
|---|---|
| Jones 2006(JRA 206例、ALL 71例) | 筋骨格の症状で小児リウマチ科を受診し、のちにALLと診断された71例の75%は、その初診時に末梢血に芽球がなかった。白血球数の低下(4×109/L未満)、血小板数が正常下限寄り(150〜250×109/L)、夜間の痛みの3つがそろうと、ALLの感度100%、特異度85% |
| Brix 2020(関節炎のあるALL 26例、JIA 485例) | 低下の目安はHb 10 g/dL未満、血小板100×109/L未満、好中球1.0×109/L未満。1つ以上の血球の低下はALLの92%、全身型JIAの25%、全身型以外のJIAの10%。下がっている血球の系統が0・1・2・3のとき、ALLの推定リスクは0.2%・9%・67%・100%。この推定リスクは、研究の例数(26例と485例)そのままの割合ではなく、ALLの事前確率を約3%(ALL:JIA=13:485)として補正した値で、一人ひとりの診断を決める数字ではない |

画像では、関節液や滑膜炎だけでなく、関節から離れた骨髄の異常や、痛みのない場所にも広がる多発病変がないかを見ます。関節痛だけでなく、関節以外の骨の痛みや夜間の痛みがあるときは、白血病を考えるきっかけになります(Brix 2015、Jones 2006)。
子どもの骨痛で白血病を疑う手がかり: 血液検査が正常でも否定しない
血液検査が正常でも、X線の透亮帯がなくても、白血病は否定できません。夜間の痛み、軽い血球の低下、多発する骨髄病変、けがと釣り合わない痛みを、画像と血液の両方から拾います。

数字のまとめ(根拠)
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 骨・関節の症状 | 小児の急性白血病122例のうち38.3%に骨・関節の症状。痛み34.4%、跛行12.3%、腫れ10.6%(Sinigaglia 2008) |
| X線の異常 | 40.2%に少なくとも1つ。溶骨13.1%、骨幹端の透亮帯9.8%、骨減少9%、骨硬化7.4%、骨膜反応4.1%など(Sinigaglia 2008) |
| MRI | T1強調像で低信号、脂肪抑制T2強調像で高信号の骨髄が、骨盤・仙骨・椎体・長管骨の近位に多発またはびまん性に広がる(Malvestiti 2026) |
| 見誤り | 関節症状のあるALL 53例の当初の疑いは、反応性関節炎19例、骨髄炎9例、JIA 8例(Brix 2015)。筋骨格の症状で小児リウマチ科を受診したALL 71例の75%は、初診時に末梢血に芽球がなかった(Jones 2006) |
よくある勘違い
Q. X線で骨幹端に黒い線があれば、白血病?
骨幹端の透亮帯は白血病の所見の一つですが、栄養状態の悪さや重い病気のあとでも見られます。診断時のX線で透亮帯があったのは9.8%(Sinigaglia 2008)で、多くの子どもには見られません。血液検査やMRIとあわせて判断します。
Q. 痛む場所のX線が正常なら、白血病は考えなくてよい?
いいえ。症状のある場所とX線の異常のある場所の対応は乏しいと報告されています(Sinigaglia 2008)。痛みが続く・夜に痛むときは、血球の変化やMRIでの骨髄の広がりも確かめます。
Q. 関節炎の所見がはっきりあれば、白血病よりJIA?
関節症状で始まるALLは、半数に関節炎の所見があり、血液の異常はむしろ目立ちにくい傾向でした(Brix 2015)。下がっている血球の系統の数と夜間の痛みが手がかりになります(Brix 2020、Jones 2006)。
今日のまとめ
- 子どもの骨痛・跛行では、痛む場所のX線が正常でも白血病を外さない。X線は溶骨・骨減少・透亮帯・椎体の圧迫骨折を見る。
- MRIは「年齢のわりに暗い・広い・左右対称」のT1低信号の骨髄を、痛くない場所まで探す。
- 骨髄炎・JIAに見えても、多発病変・夜間痛・血球の軽い低下があれば白血病を考える。血液検査が正常でも否定しない。
参考文献
- Sinigaglia R, Gigante C, Bisinella G, et al. Musculoskeletal manifestations in pediatric acute leukemia. J Pediatr Orthop. 2008;28(1):20-8. PubMed
- Riccio I, Marcarelli M, Del Regno N, et al. Musculoskeletal problems in pediatric acute leukemia. J Pediatr Orthop B. 2013;22(3):264-9. PubMed
- Malvestiti S, Muratore E, Wiedemann S, et al. Pediatric acute leukemia mimicking osteomyelitis: clinical and MRI features. Front Oncol. 2026;16:1872357. PubMed
- Zou D, Zhou T, Chen Y, et al. Extensive vertebral compression fractures as the initial manifestation of childhood B-cell acute lymphoblastic leukemia despite limited peripheral blood abnormalities: a case report. Front Pediatr. 2026;14:1945539. PubMed
- Jensen KE, Thomsen C, Henriksen O, et al. Changes in T1 relaxation processes in the bone marrow following treatment in children with acute lymphoblastic leukemia. A magnetic resonance imaging study. Pediatr Radiol. 1990;20(6):464-8. PubMed
- Brix N, Rosthøj S, Herlin T, et al. Arthritis as presenting manifestation of acute lymphoblastic leukaemia in children. Arch Dis Child. 2015;100(9):821-5. PubMed
- Jones OY, Spencer CH, Bowyer SL, et al. A multicenter case-control study on predictive factors distinguishing childhood leukemia from juvenile rheumatoid arthritis. Pediatrics. 2006;117(5):e840-4. PubMed
- Brix N, Rosthøj S, Glerup M, et al. Identifying acute lymphoblastic leukemia mimicking juvenile idiopathic arthritis in children. PLoS One. 2020;15(8):e0237530. PubMed
症例画像は各図の引用元のとおりです。
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