白血病の骨病変 X線・MRIの手がかり

急性リンパ性白血病(ALL)の骨病変とは、骨髄で増えた白血病細胞が骨を内側から押し広げ、弱くして起こる変化で、子どもの骨痛・跛行が最初の症状になることがあります。研修医のハジメくんと一緒に、X線の骨幹端透亮帯・椎体の圧迫骨折、MRIの骨髄の信号、骨髄炎やJIAと見誤らないための手がかりを順に整理します。

先に結論

  1. ALLの骨病変とは、骨髄で増えた白血病細胞による骨・関節の変化。小児の急性白血病では診断時に約4割に骨・関節の症状、約4割にX線の異常がある(Sinigaglia 2008)。
  2. X線は溶骨・骨幹端の透亮帯・骨減少・骨膜反応・椎体の圧迫骨折。MRIは骨盤・脊椎・長管骨に多発・びまん性に広がるT1低信号の骨髄が手がかり。
  3. 血液検査がほぼ正常でも否定できない。夜間の痛み・軽い血球の低下・多発する病変は、骨髄炎やJIAより白血病を考えるきっかけになる。

目的から読む: ALLの骨病変とは / 骨痛・跛行の頻度 / X線所見 / MRI所見 / 骨髄炎との違い / JIAとの違い / 疑う手がかり

急性リンパ性白血病(ALL)の骨病変とは? なぜ骨が痛むのか

骨髄の中で白血病細胞が増え、骨の中の圧が上がる・骨膜が持ち上がる・骨が弱くなることで、骨や関節が痛み、X線やMRIに変化が出ます。

ハジメハジメ(研修医)
白血病って血液の病気ですよね。どうして骨が痛くなるんですか?整形外科の病気みたいに見えるのが不思議で。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
白血病細胞が増える場所はどこでしょう。そう、骨髄、つまり骨の中です。かたい箱の中で中身だけがどんどん増えたら、箱はどうなると思いますか?
ハジメハジメ(研修医)
中から押されて…ふたが持ち上がったり、箱が傷んだりします。それが骨膜や骨そのもの、ということですか。
図1 骨髄で増える白血病細胞と骨の痛み 長管骨の中の骨髄で白血病細胞が増え、骨の中の圧が上がる・骨膜が持ち上がる・骨が弱くなる、の3つの道すじで痛みとX線の変化が出るしくみです。
図1 骨髄で増える白血病細胞と骨の痛み 長管骨の中の骨髄で白血病細胞が増え、骨の中の圧が上がる・骨膜が持ち上がる・骨が弱くなる、の3つの道すじで痛みとX線の変化が出るしくみです。

なぜ骨が痛むのか

急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)は、リンパ球のもとになる細胞が骨髄の中でがん化して増える病気です。子どもの急性白血病の多くを占めます(Sinigaglia 2008では122例中102例、83.6%がALL)。白血病細胞が骨髄の中で増えると、骨の中の圧が上がったり、骨膜が持ち上げられたり、骨が弱くなったりして、骨や関節が痛みます。

ALLの骨痛・跛行はどのくらい多い? 骨・関節の症状

小児の急性白血病では、診断時に約4割が骨・関節の症状を訴え、その中心は痛みです。ただし痛む場所とX線の異常のある場所は一致しないことがあります。

ハジメハジメ(研修医)
子どもの骨痛や跛行で白血病を考える、というのは、まれな話だと思っていました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
白血病の側から見ると、まれではありません。診断時に骨・関節の症状がある子どもは、研究によって2〜4割ほどです。
図2 診断時の骨・関節の症状の頻度 小児の急性白血病122例の棒グラフです。骨・関節の症状38.3%、痛み34.4%、機能障害22.9%、跛行12.3%、腫れ10.6%、関節液5.7%。
図2 診断時の骨・関節の症状の頻度 小児の急性白血病122例の棒グラフです。骨・関節の症状38.3%、痛み34.4%、機能障害22.9%、跛行12.3%、腫れ10.6%、関節液5.7%。

子どもの急性白血病122例を調べたイタリアの研究(Sinigaglia 2008)では、診断時に38.3%が骨・関節の症状を訴え、内訳は痛み34.4%、機能障害22.9%、跛行12.3%、腫れ10.6%、関節液のたまり5.7%でした。別の施設の328例(279例がALL)では、22%に骨・関節の症状がありました(Riccio 2013)。

症状とX線の所見は一致しないことがある

Sinigaglia 2008では、症状のある場所とX線の異常のある場所の対応は乏しく、病変の場所も一定ではありませんでした。痛む場所のX線が正常でも、白血病は否定できません。

ハジメハジメ(研修医)
じゃあ、膝が痛い子なら膝のX線を撮って、何もなければひとまず安心、では足りないんですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです。痛い所の写真が正常でも、骨髄は別の場所で変わっているかもしれません。子どもの足の痛みで考えるほかの病気との並べ方は、子どもの足の痛みと画像検査で骨端線損傷・疲労骨折・骨髄炎と合わせて確認できます。

白血病の骨病変のX線所見: 溶骨・骨幹端の透亮帯・骨膜反応

多いのは溶骨・骨減少・骨幹端の透亮帯で、骨硬化・虫食い状の骨破壊・病的骨折・骨膜反応も出ます。診断時に少なくとも1つの異常があるのは約4割です。

ハジメハジメ(研修医)
白血病のX線所見といえば、骨幹端の黒い線ですよね。あれがいちばん多いんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
有名ですが、いちばん多いわけではありません。表で頻度をくらべてみてください。

代表的な所見と頻度

所見 Sinigaglia 2008(診断時、122例中) Riccio 2013(症状のある73例のうちX線異常55例中)
溶骨(骨が溶ける) 13.1% 18.1%
骨幹端の透亮帯(metaphyseal band) 9.8% 5.4%
骨減少・骨粗しょう症 9% 40%
骨硬化 7.4% 9%
虫食い状の骨破壊(permeative pattern) 5.7% 記載なし
病的骨折 5.7% 20%
骨膜反応 4.1% 7.2%

Sinigaglia 2008では、診断時に40.2%の子どもに少なくとも1つのX線の異常がありました。Riccio 2013では、骨・関節の症状のある73例のうち75.3%でX線の異常があり、体幹の症状があった17例のうち11例は椎体の圧迫(つぶれ)でした。

骨幹端の透亮帯はどこに、どう見える?

膝の周りなど成長の速い骨幹端に、成長板(骨端線)と平行な帯状の黒い線として見えます。白血病に特有ではありません。

ハジメハジメ(研修医)
骨幹端に黒い帯がありました。これで白血病と言っていいですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこで決めないでください。栄養の悪さや重い病気のあとでも出ますし、正常の成長板と見まちがえることもあります。まず「成長板の位置」と「帯の位置」を分けて見ましょう。
図3 骨幹端の透亮帯と成長板 膝の正面X線の模式図です。大腿骨遠位と脛骨近位の骨幹端に、成長板(骨端線)と平行に骨幹端側の帯状の透亮帯があり、正常の成長板と位置で分けます。
図3 骨幹端の透亮帯と成長板 膝の正面X線の模式図です。大腿骨遠位と脛骨近位の骨幹端に、成長板(骨端線)と平行に骨幹端側の帯状の透亮帯があり、正常の成長板と位置で分けます。

骨幹端の透亮帯は、膝の周り(大腿骨の遠位・脛骨の近位)など、成長の速い骨幹端に、成長板(骨端線)と平行に帯状の黒い線が見える所見です。白血病の骨病変として知られていますが、栄養状態の悪さや重い病気のあとなどでも見られることがあり、この所見だけで白血病とは決められません。診断時のX線で透亮帯があったのは9.8%(Sinigaglia 2008)で、多くの子どもには見られません。小児のX線で見逃したくない骨所見としての位置づけは、子どものX線で見逃したくない骨所見で、正常の成長線との違いは子どもの骨で「骨折?」と言われやすい正常で説明しています。

椎体の圧迫骨折: 説明のつかない背部痛

強い腰背部痛や歩けなくなることで見つかることがあります。子どもの説明のつかない椎体の圧迫骨折では、血液の病気を考えます。

ハジメハジメ(研修医)
軽く転んだあとから背中が痛くて歩けない5歳の子で、腰椎CTは「はっきりした骨折なし」でした。打撲として帰していいですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
けがの軽さと痛みの強さが釣り合っていませんね。そこが引っかかる所です。実際に、同じような経過でALLが見つかった報告があります。
マルオマルオ(技師)
撮る側からひとことです!腰椎CTを撮った範囲の外にも、つぶれた椎体があるかもしれません。痛みが強くて説明がつかないときは、全脊椎をまとめて見られるMRIを考えてもらえると助かります!
図4 多発する椎体の圧迫骨折 全脊椎の矢状断の模式図です。頸椎・胸椎・腰椎の複数の椎体が扁平につぶれ、骨髄の信号がびまん性に変わっています。腰椎だけの範囲では一部しか入りません。
図4 多発する椎体の圧迫骨折 全脊椎の矢状断の模式図です。頸椎・胸椎・腰椎の複数の椎体が扁平につぶれ、骨髄の信号がびまん性に変わっています。腰椎だけの範囲では一部しか入りません。

5歳男児で、軽いけがのあとに強い背部痛と歩行困難があり、腰椎CTでははっきりした骨折がないとされたものの、全脊椎MRIで骨髄のびまん性の浸潤と、頸椎・胸椎・腰椎の多数の病的圧迫骨折が見つかった報告があります(Zou 2026)。末梢血では白血球と好中球が減っていましたが芽球はなく、骨髄検査でB細胞性のALLと診断されました。子どもの説明のつかない椎体の圧迫骨折では、血液の病気を考えます。

引用元の図 ALLの全脊椎MRI(びまん性の骨髄浸潤と多数の圧迫骨折)

5歳男児のB細胞性急性リンパ性白血病の全脊椎MRI。びまん性の骨髄浸潤と多数の椎体の病的圧迫骨折
引用:Zou D, et al. Front Pediatr 2026(Figure 3)(CC BY 4.0)

5歳男児のB細胞性ALLです。診断時の全脊椎MRIで、骨髄のびまん性の浸潤と、多数の椎体の病的圧迫骨折が見られます。

引用元の図 同じ患者のCTとMRIの比較(第4腰椎)

ALLの第4腰椎のCTとT2強調MRIの比較。CTでわずかな不整、MRIで不均一な骨髄信号
引用:Zou D, et al. Front Pediatr 2026(Figure 1)(CC BY 4.0)

同じ患者で、第4腰椎の高さのCTとMRIを振り返って比べたものです。(A)CTの位置決め画像で、黄色の線が横断像の高さです。(B)横断CTでは、椎体の濃さが不均一で、わずかな不整な骨の変化があります(黄矢印)。(C)同じ高さのT2強調横断像では、椎体の骨髄に不均一な異常信号があります(黄矢印)。

ハジメハジメ(研修医)
CTでは「わずかな不整」くらいなのに、MRIでは椎体の中がはっきり変わっていますね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
CTが見ているのは骨の形、MRIが見ているのは骨の中身です。白血病が最初に変えるのは中身のほう、と覚えておくと、次のMRIの話につながります。

白血病の骨髄のMRI所見: T1強調像で「年齢のわりに暗い」

T1強調像で低信号・脂肪抑制T2強調像で高信号の骨髄が、骨盤・仙骨・椎体・長管骨の近位に多発またはびまん性に広がるのが手がかりです。子どもはもともと骨髄が暗いので、年齢と広がりで判断します。

ハジメハジメ(研修医)
子どものT1強調像って、大人より骨髄が全体に暗いですよね。白血病で暗くなっても、違いがわからない気がします。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
いい所に気づきました。子どもの骨髄は、血をつくる赤色髄が多いので暗く見えます。だから「暗いかどうか」ではなく、「年齢のわりに暗いか」「広い範囲で均一に暗いか」「左右対称に多発しているか」で見ます。
マサマサ(技師)
……T1の骨髄の暗さは、同じ画像の椎間板や筋肉とくらべると判断しやすいんですよね。大人だと椎間板より暗い骨髄は置き換わりを疑う手がかりになります。ただ乳児は正常でも暗いので、そのくらべ方をそのまま当てはめないほうがいいです。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
大事な注意ですね。T1強調像で椎間板とくらべる見方はびまん性骨髄置換性病変のMRI鑑別で、乳児の椎体の正常な見え方は子どもの脊椎・脊髄MRIの落とし穴で症例と合わせて確認できます。
図5 年齢による骨髄の見え方とALL 腰椎矢状断のT1強調像の模式図で、乳児・学童の正常とALLをくらべます。ALLでは椎体の骨髄が年齢のわりに均一に暗く、椎間板との差がなくなります。
図5 年齢による骨髄の見え方とALL 腰椎矢状断のT1強調像の模式図で、乳児・学童の正常とALLをくらべます。ALLでは椎体の骨髄が年齢のわりに均一に暗く、椎間板との差がなくなります。

骨髄の信号の変化

子どもの骨髄はもともと赤色髄が多く、成人より T1強調像で暗く見えます。そのため、白血病による変化は「年齢のわりに暗い」「広い範囲で均一に暗い」「左右対称に多発する」といった見方で拾います。ALLの子ども11例で椎体の骨髄のT1緩和時間を測った研究(Jensen 1990)では、診断時のT1緩和時間は同年齢の対照より有意に長く、化学療法のあとで正常域に向かって短くなりました。T1緩和時間は骨髄の芽球の割合と相関していました。

骨髄炎のような症状で見つかった急性白血病6例(ALL 4例、ALL再発1例、AML 1例)を調べた研究(Malvestiti 2026)では、6例中5例でMRIの骨髄の信号変化が多発性またはびまん性で、1つの部位にとどまっていませんでした。典型的には、T1強調像で低信号、脂肪抑制T2強調像で高信号で、造影されることが多く、骨盤・仙骨・椎体・長管骨の近位部に多く見られました。周りの軟部組織にむくみが見られた例もあります。

図6 ALLの骨髄病変が多い場所 子どもの全身骨格の模式図です。骨盤・仙骨・椎体・大腿骨や上腕骨の近位に左右対称に多発する骨髄の変化を色で示し、痛む場所の外にも広がります。
図6 ALLの骨髄病変が多い場所 子どもの全身骨格の模式図です。骨盤・仙骨・椎体・大腿骨や上腕骨の近位に左右対称に多発する骨髄の変化を色で示し、痛む場所の外にも広がります。

白血病と骨髄炎の違い: MRIで多発・びまん性なら立ち止まる

病変が1か所で骨の外に膿瘍があれば骨髄炎、多発・左右対称・びまん性で膿瘍が目立たなければ白血病を考える方向です。抗菌薬への反応や血球の変化も合わせて見ます。

ハジメハジメ(研修医)
熱があって、骨が痛くて、MRIで骨髄が光っていたら、骨髄炎として抗菌薬でいいですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
熱は白血病でも出ます。Malvestiti 2026の6例でも、最初の受診で熱があったのは半数でした。見てほしいのは、病変の数と、骨の外に膿がたまっているかです。それと、痛くない場所の骨髄も見ましたか?
ハジメハジメ(研修医)
…痛い膝しか見ていませんでした。反対側や骨盤も見ないといけないんですね。
図7 骨髄炎と白血病の見分け方 2つをくらべた比較図です。骨髄炎は1か所の骨幹端から始まり骨膜下や軟部の膿瘍を伴い、白血病は多発・左右対称・びまん性で膿瘍が目立ちません。
図7 骨髄炎と白血病の見分け方 2つをくらべた比較図です。骨髄炎は1か所の骨幹端から始まり骨膜下や軟部の膿瘍を伴い、白血病は多発・左右対称・びまん性で膿瘍が目立ちません。

骨髄炎との違い

手がかり 白血病を考える方向 骨髄炎を考える方向
病変の数と分布 多発・左右対称・びまん性。痛みのない場所にも広がる 1か所のことが多い。骨幹端から始まる
骨の外 膿瘍は目立たない 骨膜下や軟部の膿瘍、皮質の破壊
血液検査 血球の軽い減少、LDHや尿酸の上昇。正常のこともある 白血球の増加、炎症反応の上昇
経過 抗菌薬で良くならない、夜に痛む 抗菌薬で良くなる

Malvestiti 2026の6例では、最初の血球数は正常か軽い異常にとどまっていました(抄録では正常4例・軽い異常2例、本文の結果の節では正常2例・軽い血球減少4例と、論文の中で数が食い違っています)。炎症反応は5例、LDHは4例で上がっていました。初診から診断までの中央値は17日(1〜53日)で、診断が遅れた例には、抗菌薬で一時的に良くなったように見えたこと、血液の異常がないこと、MRIで多発していたことが共通していました。

ハジメハジメ(研修医)
表には「抗菌薬で良くならない」とありますけど、一時的に良くなることもあるんですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうなんです。抗菌薬が効いたように見えても、多発する病変があれば、それだけで安心しないでください。骨髄炎の典型的なMRIは骨髄炎のMRI画像診断で症例と合わせて見られます。

若年性特発性関節炎(JIA)との違い: 関節炎で始まるALL

ALLの約2割は関節の痛みで始まり、当初は反応性関節炎・骨髄炎・JIAと考えられることがあります。血球が下がっている系統の数と夜間の痛みが、見分けの手がかりになります。

ハジメハジメ(研修医)
関節が腫れていて、関節炎の所見がはっきりあるなら、白血病よりJIAですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
関節炎の所見があることは、白血病を外す理由になりません。関節症状で始まるALLは、むしろ血液の異常が目立ちにくいと報告されています。

関節炎で始まるALL

ALLの子ども286例を調べた研究(Brix 2015)では、53例(18.5%)が限局した関節の痛みで発症し、その半数に関節炎の所見がありました。関節は平均2.5か所で、左右非対称の少数関節炎が多い形でした。当初疑われた病気は、反応性関節炎19例、骨髄炎9例、JIA 8例でした。関節症状のある子どもは血液の病気の徴候が目立たず、血球の減少がない割合は24%(関節症状のない子どもは8%)、診断までの期間の中央値は4週(同2週)でした。

見分けの手がかり

研究 報告された手がかり
Jones 2006(JRA 206例、ALL 71例) 筋骨格の症状で小児リウマチ科を受診し、のちにALLと診断された71例の75%は、その初診時に末梢血に芽球がなかった。白血球数の低下(4×109/L未満)、血小板数が正常下限寄り(150〜250×109/L)、夜間の痛みの3つがそろうと、ALLの感度100%、特異度85%
Brix 2020(関節炎のあるALL 26例、JIA 485例) 低下の目安はHb 10 g/dL未満、血小板100×109/L未満、好中球1.0×109/L未満。1つ以上の血球の低下はALLの92%、全身型JIAの25%、全身型以外のJIAの10%。下がっている血球の系統が0・1・2・3のとき、ALLの推定リスクは0.2%・9%・67%・100%。この推定リスクは、研究の例数(26例と485例)そのままの割合ではなく、ALLの事前確率を約3%(ALL:JIA=13:485)として補正した値で、一人ひとりの診断を決める数字ではない
図8 下がった血球の系統の数とALLの推定リスク 関節炎のある子どもで、下がった血球の系統が0〜3のときのALLの推定リスク(事前確率約3%で補正した推定値)の棒グラフです。
図8 下がった血球の系統の数とALLの推定リスク 関節炎のある子どもで、下がった血球の系統が0〜3のときのALLの推定リスク(事前確率約3%で補正した推定値)の棒グラフです。
ハジメハジメ(研修医)
画像の側では、JIAと見分けるために何を見ればいいですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
関節の中だけで終わらせないことです。

画像では、関節液や滑膜炎だけでなく、関節から離れた骨髄の異常や、痛みのない場所にも広がる多発病変がないかを見ます。関節痛だけでなく、関節以外の骨の痛みや夜間の痛みがあるときは、白血病を考えるきっかけになります(Brix 2015、Jones 2006)。

子どもの骨痛で白血病を疑う手がかり: 血液検査が正常でも否定しない

血液検査が正常でも、X線の透亮帯がなくても、白血病は否定できません。夜間の痛み、軽い血球の低下、多発する骨髄病変、けがと釣り合わない痛みを、画像と血液の両方から拾います。

ハジメハジメ(研修医)
血液検査が正常なら、白血病は否定できますか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
否定はできません。筋骨格の症状で小児リウマチ科を受診したALL 71例では、その初診時に75%で末梢血に芽球がありませんでした(Jones 2006)。骨髄炎のような症状で見つかった6例でも、最初の血球数は正常か軽い異常にとどまっていました(Malvestiti 2026)。症状が続けば、検査を繰り返したり、骨髄検査を考えたりします。
ハジメハジメ(研修医)
関節炎として治療を始める前に、白血病を除外しておくべきですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
関節症状で始まるALLは、診断までの期間が長くなる傾向がありました(中央値4週と2週、Brix 2015)。血球の低下はJIAとの区別の手がかりになります(Brix 2020)。どの検査で確かめるかは、血球数や症状をもとに主治医が判断します。画像の側からは、多発する骨髄病変があれば、そのことをはっきり返すのが役目です。
図9 子どもの骨痛で白血病を考える順番 流れ図です。けがと釣り合わない痛み・夜間痛・多発病変を拾い、X線、MRIの骨髄の広がり、血球の系統の数を順に確かめ、骨髄検査を考えます。
図9 子どもの骨痛で白血病を考える順番 流れ図です。けがと釣り合わない痛み・夜間痛・多発病変を拾い、X線、MRIの骨髄の広がり、血球の系統の数を順に確かめ、骨髄検査を考えます。

数字のまとめ(根拠)

項目 ポイント
骨・関節の症状 小児の急性白血病122例のうち38.3%に骨・関節の症状。痛み34.4%、跛行12.3%、腫れ10.6%(Sinigaglia 2008)
X線の異常 40.2%に少なくとも1つ。溶骨13.1%、骨幹端の透亮帯9.8%、骨減少9%、骨硬化7.4%、骨膜反応4.1%など(Sinigaglia 2008)
MRI T1強調像で低信号、脂肪抑制T2強調像で高信号の骨髄が、骨盤・仙骨・椎体・長管骨の近位に多発またはびまん性に広がる(Malvestiti 2026)
見誤り 関節症状のあるALL 53例の当初の疑いは、反応性関節炎19例、骨髄炎9例、JIA 8例(Brix 2015)。筋骨格の症状で小児リウマチ科を受診したALL 71例の75%は、初診時に末梢血に芽球がなかった(Jones 2006)

よくある勘違い

Q. X線で骨幹端に黒い線があれば、白血病?

骨幹端の透亮帯は白血病の所見の一つですが、栄養状態の悪さや重い病気のあとでも見られます。診断時のX線で透亮帯があったのは9.8%(Sinigaglia 2008)で、多くの子どもには見られません。血液検査やMRIとあわせて判断します。

Q. 痛む場所のX線が正常なら、白血病は考えなくてよい?

いいえ。症状のある場所とX線の異常のある場所の対応は乏しいと報告されています(Sinigaglia 2008)。痛みが続く・夜に痛むときは、血球の変化やMRIでの骨髄の広がりも確かめます。

Q. 関節炎の所見がはっきりあれば、白血病よりJIA?

関節症状で始まるALLは、半数に関節炎の所見があり、血液の異常はむしろ目立ちにくい傾向でした(Brix 2015)。下がっている血球の系統の数と夜間の痛みが手がかりになります(Brix 2020、Jones 2006)。

今日のまとめ

  1. 子どもの骨痛・跛行では、痛む場所のX線が正常でも白血病を外さない。X線は溶骨・骨減少・透亮帯・椎体の圧迫骨折を見る。
  2. MRIは「年齢のわりに暗い・広い・左右対称」のT1低信号の骨髄を、痛くない場所まで探す。
  3. 骨髄炎・JIAに見えても、多発病変・夜間痛・血球の軽い低下があれば白血病を考える。血液検査が正常でも否定しない。

参考文献

  1. Sinigaglia R, Gigante C, Bisinella G, et al. Musculoskeletal manifestations in pediatric acute leukemia. J Pediatr Orthop. 2008;28(1):20-8. PubMed
  2. Riccio I, Marcarelli M, Del Regno N, et al. Musculoskeletal problems in pediatric acute leukemia. J Pediatr Orthop B. 2013;22(3):264-9. PubMed
  3. Malvestiti S, Muratore E, Wiedemann S, et al. Pediatric acute leukemia mimicking osteomyelitis: clinical and MRI features. Front Oncol. 2026;16:1872357. PubMed
  4. Zou D, Zhou T, Chen Y, et al. Extensive vertebral compression fractures as the initial manifestation of childhood B-cell acute lymphoblastic leukemia despite limited peripheral blood abnormalities: a case report. Front Pediatr. 2026;14:1945539. PubMed
  5. Jensen KE, Thomsen C, Henriksen O, et al. Changes in T1 relaxation processes in the bone marrow following treatment in children with acute lymphoblastic leukemia. A magnetic resonance imaging study. Pediatr Radiol. 1990;20(6):464-8. PubMed
  6. Brix N, Rosthøj S, Herlin T, et al. Arthritis as presenting manifestation of acute lymphoblastic leukaemia in children. Arch Dis Child. 2015;100(9):821-5. PubMed
  7. Jones OY, Spencer CH, Bowyer SL, et al. A multicenter case-control study on predictive factors distinguishing childhood leukemia from juvenile rheumatoid arthritis. Pediatrics. 2006;117(5):e840-4. PubMed
  8. Brix N, Rosthøj S, Glerup M, et al. Identifying acute lymphoblastic leukemia mimicking juvenile idiopathic arthritis in children. PLoS One. 2020;15(8):e0237530. PubMed

症例画像は各図の引用元のとおりです。

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