
骨髄異形成症候群(MDS)とは、骨髄の造血幹細胞の異常で形のおかしい血球がつくられ、うまく育たずに血球が減る病気です。診断は骨髄検査で決まりますが、MRIでは骨髄全体の細胞の多さを広く見られます。研修医のハジメくんと一緒に、STIR像のまだらな信号、再生不良性貧血との違い、FDG-PET、輸血による鉄過剰の見え方を順に整理します。
先に結論
- MDSとは、造血幹細胞の異常で異形成のある血球がつくられ血球が減る病気。診断と病型は骨髄検査で決まり、MRI・PETは補助。
- MDSの骨髄はSTIR像で不均一な高信号(まだら)が多い。再生不良性貧血は脂肪髄で均一な低信号になりやすく、脂肪の割合(fat fraction)もMDSより高い。
- 輸血を続けると鉄がたまり、肝臓の鉄過剰が多い。T2* MRIで評価する。骨髄が暗いときは輸血歴を確かめる。
目的から読む: MDSとは・画像の役割 / 骨髄MRI(STIR) / 再生不良性貧血との違い / 脂肪の割合(fat fraction) / FDG-PET / 輸血による鉄過剰 / 線維化・白血病化
骨髄異形成症候群(MDS)とは? 画像検査の役割
MDSは、造血幹細胞の異常で形のおかしい血球がつくられ、血球が減る病気です。診断・病型・白血病への進行の判断は骨髄検査で行い、MRIやPETは骨髄全体を広く見る補助の検査です。
MDSとは
骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)は、骨髄の造血幹細胞の異常によって、形のおかしい(異形成のある)血球がつくられ、うまく成熟できずに血球が減る病気です。高齢者に多く、貧血・感染しやすさ・出血しやすさで見つかります。一部は急性骨髄性白血病(AML)に進むことがあり、骨髄に線維化を伴う型もあります。WHO分類第5版(2022年)では骨髄異形成腫瘍(myelodysplastic neoplasms)と呼ばれ、略称は同じMDSです。骨髄の細胞が少ない低形成の型(MDS-h)も、病型の1つとして挙げられています(Khoury 2022)。
診断と病型の決定、白血病への進行の判断は、血液検査と骨髄検査(骨髄穿刺・生検、染色体・遺伝子の検査)で行います。MRIやPETは、骨髄全体の様子を広く見られる点で、生検の補助として研究されてきました。
骨髄の見え方の基本: 細胞と脂肪のどちらが多いか
骨髄の信号は、造血細胞と脂肪のどちらが多いかでほぼ決まります。細胞が増えるとT1強調像で暗く・STIR像で明るく、脂肪が増えるとその逆になります。

成人の椎体や骨盤の骨髄は、造血細胞と脂肪が混ざった赤色髄です。T1強調像では脂肪のために明るく、脂肪を抑えたSTIR像では暗く見えます。造血細胞が増えて脂肪が減ると、T1強調像で暗く、STIR像で明るくなります。反対に、造血細胞が減って脂肪髄になると、T1強調像で明るく、STIR像で暗くなります。年齢による骨髄の変化は赤色骨髄と黄色骨髄(脂肪髄)の違いで説明しています。
MDSの骨髄MRI: STIR像はまだらな高信号が多い
MDSの骨髄は、STIR像で細胞の多い所と少ない所が混ざった「不均一な高信号」になりやすく、MDS 35例中25例がこのパターンでした(Kusumoto 1997)。

STIR像の4つのパターン
日本の施設で、MDS 35例と再生不良性貧血13例の下位胸椎・腰椎をSTIR像(1.5T・矢状断)で調べた研究(Kusumoto 1997)は、骨髄の信号を4つのパターンに分けました。
| パターン | STIR像の見え方 | 報告された傾向(Kusumoto 1997) |
|---|---|---|
| 1 | 均一な低信号 | 再生不良性貧血13例は、最初の検査で全例がこのパターン |
| 2 | 辺縁が高信号 | 治療に反応した再生不良性貧血6例とMDS 5例がこのパターンになり、正常の骨髄の分布に近かった |
| 3 | 不均一な高信号 | MDS 35例中25例が、最初の検査でこのパターン |
| 4 | 均一な高信号 | この研究では、特定の病気との対応は示されていない |
MDSの骨髄は、細胞の多いところと少ないところが混ざった「まだら」の信号になりやすい、ということです。同じ研究では、くり返し撮ると信号の変化を追え、治療の経過を見るのに使えることも示されています。
生検は1か所、MRIは全体を見る
MRIと骨髄生検の細胞の多さの評価は79%で一致しましたが、MRIで骨髄の過形成が全体に広がっていない例もありました(Depaoli 1992)。

生検とMRIの一致
MDS 22例でMRIと骨髄生検を比べた研究(Depaoli 1992)では、骨髄の細胞の多さの評価が79%で一致しました。一方、5例では、MRIで骨髄の過形成が全体に広がっておらず、場所によって違うことがわかりました。骨髄生検は腸骨の一か所から採るため、まだらな病変では、採った場所によって結果が変わりうることになります。
MDSと再生不良性貧血の違い: MRIでの見分け方
再生不良性貧血は脂肪髄化して均一な低信号(STIR)になりやすく、MDSはまだらになりやすい、という傾向の違いがあります。難しいのは細胞の少ない「低形成MDS」で、MRIのパターンが区別の手がかりになりえます(Negendank 1991)。

低形成のMDSと再生不良性貧血
MDSの中には、骨髄の細胞が少ない「低形成MDS」があり、再生不良性貧血との区別が難しいことがあります。低形成の骨髄の病気24例に脊椎・骨盤・大腿骨のMRIを撮った研究(Negendank 1991)では、生検で低形成とされ、再生不良性貧血と臨床診断されていた8例で、MRIが予想外の「不均一」または「びまん性に細胞の多い」パターンを示しました。その後の骨髄検査や染色体検査で、このうち7例が低形成MDSと診断されています。著者らは、MRIで再生不良性貧血と低形成MDSを区別できる可能性を示しました。
再生不良性貧血の典型的なMRIは、再生不良性貧血の骨髄MRI画像所見にまとめています。
骨髄の脂肪の割合(fat fraction)を数値で測る
水と脂肪を分けて測るMRI(IDEAL-IQ)では、腸骨の骨髄の脂肪の割合(fat fraction:FF)は再生不良性貧血で高く、MDSで低い結果でした。ただしMDSと健常者の差ははっきりしませんでした(Zeng 2021)。

脂肪の割合を数値で測る
水と脂肪を分けて測る撮像法(IDEAL-IQ)で、腸骨の骨髄の脂肪の割合(fat fraction:FF)と、鉄の指標のR2*を測った研究があります(Zeng 2021)。対象は再生不良性貧血57例、MDS 21例、健常者24例で、3.0Tで撮像されました。
| 群 | 脂肪の割合(FF) | R2*(鉄の指標) |
|---|---|---|
| 再生不良性貧血 | 79.46% ± 15.00% | 145.38 ± 53.33 /秒 |
| MDS | 42.78% ± 30.09% | 171.13 ± 100.89 /秒 |
| 健常者 | 65.50% ± 14.73% | 135.99 ± 32.41 /秒 |
再生不良性貧血のFFは、MDS・健常者より有意に高い値でした。MDSと健常者のFFには有意な差はありませんでした。R2*は3群で有意な差がありませんでした。FFは再生不良性貧血とMDSの区別に役立つ可能性がありますが、MDSと正常を区別する指標にはなりにくい、という結果です。
引用元の図 再生不良性貧血とMDSの骨髄の脂肪の割合

引用:Zeng Z, et al. J Magn Reson Imaging 2021(Figure 1)(CC BY 4.0)
左後上腸骨棘の骨髄に関心領域を置いて測った例です。(A、D)FFは、再生不良性貧血で86.98%、MDSで25.84%でした。(B、E)R2*画像から求めた鉄の指標は、117.91と147.98/秒でした。(C、F)組織像では、MDS(F)に比べて再生不良性貧血(C)で脂肪細胞(黒矢印)が多くなっています。
MDSのFDG-PET: 骨髄のびまん性集積
造血因子製剤を使っていないのに骨髄にびまん性のFDG集積があり、MDSと診断された2例の報告があります(Inoue 2006)。ただしびまん性集積の原因はほかにも多く、集積だけでMDSとは判断できません。

PETでの骨髄
FDG-PETでは、造血因子製剤(G-CSFなど)を使ったあとに骨髄全体の集積が強くなることがよく知られており、骨髄転移のように見えることがあります。造血因子製剤を使っていないのに骨髄にびまん性のFDG集積があり、MDSと診断された2例の報告があります(Inoue 2006)。著者らは、骨髄のびまん性のFDG集積が、造血組織の腫瘍性の病気を示すことがある、と述べています。
ただし、骨髄のびまん性のFDG集積は、貧血からの回復、炎症、造血因子製剤など、さまざまな原因で起こります。集積だけでMDSと判断することはできず、血液検査・骨髄検査とあわせて考えます。造血髄の集積が転移に見える例は、FDG-PETの偽陽性(造血髄・サルコイド様反応など)で、ほかの紛らわしい集積と合わせて見られます。
MDSの輸血による鉄過剰: T2* MRIでの評価
輸血を続けると鉄が肝臓・骨髄・脾臓・心臓にたまります。MDSでは肝臓の鉄過剰が多く(71例中68%)、心臓は1例だけでした(Mantovani 2019)。評価にはT2* MRIを使います。

なぜ鉄がたまるのか
MDSでは貧血が続くため、赤血球の輸血を繰り返すことがあります。輸血した赤血球に含まれる鉄は体の外にほとんど出ていかないため、肝臓・骨髄・脾臓・心臓などにたまります(輸血後の鉄過剰、ヘモジデローシス)。
MRIでの見え方
| 臓器 | 報告されていること |
|---|---|
| 肝臓・骨髄 | 輸血による鉄沈着(サラセミアの小児3例)で、肝臓と骨髄のスピンエコー像の信号が異常に低くなった。MRIの信号は、たまった鉄の量のおおまかな目安になる(Brasch 1984) |
| 肝臓(MDS) | MDSと慢性骨髄単球性白血病の71例のT2* MRIで、68%に肝臓の鉄過剰。血液検査で鉄過剰の徴候がない例にも見られ、肝臓の鉄過剰は生存率の低さと関連した(Mantovani 2019) |
| 心臓(MDS) | 同じ71例で、T2*の値が心臓の鉄過剰を示したのは1例だけだった(Mantovani 2019) |
肝臓の鉄沈着の見え方と、ヘモクロマトーシス(体質による鉄の吸収過剰)との違いは、ヘモクロマトーシスとは?ヘモジデローシスとの違いでCT・MRIの所見と合わせて見られます。
骨髄が暗いときは輸血歴を確かめる
鉄がたまった骨髄は、T1強調像でもT2強調像でも暗くなります。腫瘍の浸潤や線維化と見誤らないよう、輸血歴を確かめてから読みます。
骨髄の信号を読むときに、輸血歴を確かめておかないと、腫瘍の浸潤や線維化と見誤ることがあります。また、貧血が続くと、造血を補うために脂肪髄が赤色髄に戻る変化(再転換)も起こり、骨髄の信号が変わります。こちらは骨髄再転換(赤色髄化)のMRI画像診断で扱っています。骨髄が全体にT1で暗いときの見分け方(椎間板と比べる・化学シフト画像)は、びまん性骨髄置換性病変のMRI鑑別で整理しています。
MDSの線維化・白血病化と画像の限界
線維化が強い骨髄はT1強調像・T2強調像ともに暗くなります。ただし、MRIの信号から線維化の程度や白血病への進行を判断できる十分な根拠は、調べた範囲ではありませんでした。進行の判断は骨髄検査で行います。

骨髄線維症・白血病化との関係
MDSの一部は骨髄に線維化を伴い、また一部は急性骨髄性白血病に進みます。線維化が強い骨髄は、T1強調像・T2強調像ともに暗くなり、骨髄線維症と似た見え方になります(骨髄線維症(myelofibrosis)の画像診断)。白血病に進むと、骨髄の脂肪が失われて信号が変わることがあります。
ただし、MRIの信号の変化から、線維化の程度や白血病への進行を判断できるという十分な根拠は、調べた範囲の文献にはありませんでした。進行の判断は、血球数の変化と骨髄検査(芽球の割合・線維化の評価・染色体)で行います。画像は、骨痛や腫瘤など骨髄の外の変化を調べるときに役立ちます。
根拠(もう少し詳しく): 報告された数字の一覧
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| STIR像のパターン | MDS 35例中25例が「不均一な高信号」。再生不良性貧血13例は全例「均一な低信号」(Kusumoto 1997) |
| 生検との一致 | MDS 22例で細胞の多さの評価が79%一致。5例は過形成が全体に広がっていなかった(Depaoli 1992) |
| 脂肪の割合(IDEAL-IQ) | 再生不良性貧血79.46%、MDS 42.78%、健常者65.50%。MDSと健常者の差は有意でなかった(Zeng 2021) |
| 低形成のMDS | 生検が低形成で再生不良性貧血とされた8例のうち、MRIで細胞の多いパターンを示した例から、7例が低形成MDSと診断された(Negendank 1991) |
| 鉄過剰 | MDSなど71例のT2* MRIで、肝臓の鉄過剰は68%。心臓の鉄過剰は1例のみ(Mantovani 2019) |
よくある勘違い
Q. MRIでMDSの診断はできる?
できません。MDSの診断には、血液検査と骨髄検査(骨髄穿刺・生検、染色体検査)が要ります。MRIは、骨髄全体の細胞の多さや、生検の場所による違いを見るための補助です(Depaoli 1992)。
Q. 再生不良性貧血とMDSは、MRIで区別できる?
傾向の違いは報告されています。再生不良性貧血は脂肪の多い均一な骨髄(Kusumoto 1997、Zeng 2021)、MDSはまだらな骨髄になりやすいとされます。ただし重なりもあり、最終的な判断は骨髄検査と染色体検査で行います。
Q. 血液検査で鉄過剰がなければ、肝臓に鉄はたまっていない?
いいえ。MDSの患者では、血液検査で鉄過剰の徴候がなくても、T2* MRIで肝臓に鉄がたまっていた例がありました(Mantovani 2019)。検査の時期や方法は、輸血の量と経過を見て主治医が決めます。
今日のまとめ
- MDSの診断は骨髄検査。MRIは骨髄全体の細胞の多さと、生検の場所によるずれを見る補助。
- STIR像はMDS=まだらな高信号、再生不良性貧血=均一な低信号が多い。生検が低形成でもMRIがまだらなら低形成MDSを考える。
- 骨髄がT1・T2とも暗いときは輸血歴と鉄を確かめる。鉄過剰は肝臓のT2*で評価する。
参考文献
- Kusumoto S, Jinnai I, Matsuda A, et al. Bone marrow patterns in patients with aplastic anaemia and myelodysplastic syndrome: observations with magnetic resonance imaging. Eur J Haematol. 1997;59(3):155-61. PubMed
- Depaoli L, Davini O, Foggetti MD, et al. Evaluation of bone marrow cellularity by magnetic resonance imaging in patients with myelodysplastic syndrome. Eur J Haematol. 1992;49(2):105-7. PubMed
- Negendank W, Weissman D, Bey TM, et al. Evidence for clonal disease by magnetic resonance imaging in patients with hypoplastic marrow disorders. Blood. 1991;78(11):2872-9. PubMed
- Zeng Z, Ma X, Guo Y, et al. Quantifying Bone Marrow Fat Fraction and Iron by MRI for Distinguishing Aplastic Anemia from Myelodysplastic Syndromes. J Magn Reson Imaging. 2021;54(6):1754-1760. PubMed
- Inoue K, Okada K, Harigae H, et al. Diffuse bone marrow uptake on F-18 FDG PET in patients with myelodysplastic syndromes. Clin Nucl Med. 2006;31(11):721-3. PubMed
- Mantovani LF, Santos FPS, Perini GF, et al. Hepatic and cardiac and iron overload detected by T2* magnetic resonance (MRI) in patients with myelodisplastic syndrome: A cross-sectional study. Leuk Res. 2019;76:53-57. PubMed
- Brasch RC, Wesbey GE, Gooding CA, et al. Magnetic resonance imaging of transfusional hemosiderosis complicating thalassemia major. Radiology. 1984;150(3):767-71. PubMed
- Khoury JD, Solary E, Abla O, et al. The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Myeloid and Histiocytic/Dendritic Neoplasms. Leukemia. 2022;36(7):1703-1719. PubMed
症例画像は各図の引用元のとおりです。
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