
先に結論:アーチファクトは「形が臓器の解剖に合わない線・帯・ずれ」。原因の型を知り、別の断面やウィンドウで確かめる
| 種類 | 見え方 | 主な原因 |
|---|---|---|
| ビームハードニング | 骨や濃い造影剤の周りの暗い帯、中心が暗くなる「カッピング」 | X線の低いエネルギー成分が先に吸収される |
| 金属 | 金属から放射状に出る明るい線と暗い線 | X線が届かない(フォトンスタベーション)+ビームハードニング |
| 体動 | 臓器の二重像、輪郭のぶれ、偽の線状影 | 呼吸・拍動・腸の動き・体の動き |
| 部分容積効果 | 小さな病変や薄い壁がぼやけ、CT値が平均される | 1つのボクセルに異なる組織が混ざる |
CTのアーチファクトとは
CTは、いろいろな方向から撮ったX線の吸収の情報を計算して断面にします。この計算の前提から外れるものが体の中や周りにあると、実際にはない線や影が画像に現れます。これがアーチファクト(artifact、偽像)です。ひどい場合は診断に使えない画像になることもあります(Barrett 2004)。
アーチファクトの原因は、次の4つに整理されています(Barrett 2004)。
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 物理に由来するもの | X線が体を通るときの物理現象で起こる | ビームハードニング、部分容積効果 |
| 患者に由来するもの | 体の動きや、体内外の金属で起こる | 呼吸・拍動、義歯・人工関節・ペースメーカー |
| 装置に由来するもの | 装置の不具合や調整のずれで起こる | リング状の偽像(検出器の不具合など) |
| らせん・マルチスライス撮影に由来するもの | 画像を再構成する過程で起こる | 階段状・風車状の偽像 |
装置の工夫やソフトで減らせるものもありますが、患者さんの位置を整えることと撮影条件を適切に選ぶことが、アーチファクトを避けるいちばん大切な要素とされています(Barrett 2004)。読影する側は、画像に出たものが病変か偽像かを判断する必要があります。
読影の順番:偽像を疑うチェックリスト
「おかしな線や影」を見つけたら、まず次の順番で確かめます。病変は臓器の形や血管の走り方に沿って現れますが、アーチファクトは解剖を無視した形になるのが手がかりです。
- 形を見る:直線的・放射状・同心円状・臓器の境界をまたぐ形は偽像のことが多い。
- 近くに高吸収の物体がないか見る:金属、骨、濃い造影剤(静脈や尿路)、腸管内のバリウムなど。
- 前後のスライスを追う:偽像は隣のスライスで形や位置が大きく変わることが多く、本物の病変は連続して追えます。
- 冠状断・矢状断で見る:横断像で見えたものが別の断面でも同じ形で追えるか確かめます。
- ウィンドウを変える:偽像の明暗は表示の幅と中心で見え方が変わります。
- 体動を疑う:同じ臓器が二重に見えたり、骨や血管の輪郭がぶれたりしていないか見ます。
- 前回画像や他の検査と比べる:以前から同じ形で同じ場所にあれば偽像や変異のことがあります。
ビームハードニングと金属アーチファクト
ビームハードニングとは
CTで使うX線は、いろいろなエネルギーが混ざったビームです。体を通ると、エネルギーの低い成分が先に吸収され、残るのは相対的に硬い(エネルギーの高い)X線になります。これがビームハードニング(beam hardening、線質硬化)です。計算はビームが一定の質のままという前提で行われるため、ずれが生じて、骨と骨の間に暗い帯が出たり、臓器の中心部が周りより暗く写る(カッピング)などの偽像になります。
ビームハードニングは濃い造影剤でも起こります。造影剤が濃く入った上大静脈の周りでは、縦隔の脂肪やリンパ節の評価がしにくくなる偽像が出ることがあります(Thater 2025)。腎嚢胞が造影後に本物より濃く(造影されたように)写る偽造影効果にもビームハードニングが関わっており、詳しくは腎嚢胞の偽造影効果(pseudoenhancement)とは?で解説しています。
金属アーチファクト
金属の周りには、暗い筋と明るい筋が交互に放射状に走る像が出ます。金属が大きく濃いと、X線がほとんど検出器に届かなくなる「フォトンスタベーション(photon starvation)」と、ビームハードニングが重なって起こるためです(Katsura 2018)。人工関節、歯科材料、脳動脈瘤クリップ、ペースメーカーのリード、脊椎のインプラントなどでよく見られます。
症例 60歳代女性 脳深部刺激電極による金属アーチファクト

引用:Radiopaedia(Deep brain stimulator)
頭部単純CTです。電極の周りに放射状の明るい線と暗い帯が出て、隣り合う脳の評価が難しくなっています。症例ページでは、両側の脳深部刺激電極(先端は視床)に伴うストリークアーチファクトで、隣接する脳実質の評価が制限されると記載されています。
金属アーチファクトを減らす方法
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 金属アーチファクト低減(MAR)処理 | 金属で乱れた投影データを周りのデータで補う。主にフォトンスタベーションによる偽像を抑える。撮影後にも適用できる(Katsura 2018) |
| デュアルエナジーCTの仮想単色X線像 | 高いエネルギー(keV)の画像ではビームハードニングの影響が小さくなる。使うかどうかは撮影前に決める必要がある(Katsura 2018) |
| 撮影の工夫 | 患者さんの位置や撮影条件を整える(Barrett 2004) |
人工股関節のモデルを使った研究では、反復的な金属アーチファクト低減(IMAR)が、従来の画像再構成やデュアルエナジーCTより、寛骨臼の皮質の見えやすさを改善しました(Kim 2019)。ただし、これは模型の実験で、どの方法が合うかは金属の種類や場所で変わります。デュアルエナジーCTの原理はDual-energy CT(デュアルエナジーCT)とは?を参照してください。
体動によるアーチファクト
CTは短時間で撮りますが、撮影中に動くものがあると像がずれます。見え方の特徴は輪郭のぶれ、臓器や血管の二重像、線状の影です。
| 動きの種類 | 出やすい場所 | 見え方・注意 |
|---|---|---|
| 呼吸 | 横隔膜付近、胸骨、肺底部 | 骨や血管が二重・階段状に見える。胸骨骨折に見える呼吸性アーチファクトが代表例 |
| 心拍動 | 上行大動脈、心臓の周りの肺 | 大動脈の壁が二重になり解離に見えることがある(大動脈解離に見えるもの) |
| 腸の動き | 腸管の周り | 壁や内容物の輪郭が不鮮明になる |
| 体の動き | 撮影範囲全体 | 痛みや意識障害のある方、小さなお子さんで起こりやすい |
胸部CTでは、心臓や呼吸の動きのために肺の評価がしにくくなることが以前から知られており、これを減らす画像処理(深層学習による動き補正)も報告されています(Ozawa 2026)。心臓の動きを抑える撮影は、心電図に同期して撮る心臓CTで行われます。
体動が疑われるとき、自分でできる確認は2つです。(1) 同じ撮影の中で、動いていない骨や血管の輪郭が鮮明かどうか、(2) 疑った部位が別の断面でも同じ形か、を見ます。動きによる偽像は、近くの動かない構造まで一緒にぶれていないかで見分けやすくなります。
部分容積効果
CT画像は小さな立方体(ボクセル)の集まりで、1つのボクセルのCT値は、その中に含まれる組織の平均で決まります。ボクセルが病変と周りの組織にまたがると、病変のCT値が周りの値に引っ張られ、輪郭もぼやけます。これが部分容積効果(partial volume effect)です。
| 状況 | 起こること |
|---|---|
| 小さな嚢胞 | 周りの濃い組織の影響で、本来は水に近いCT値が高く出る |
| 小さな結節 | 大きさの測定が、スライス厚によってぶれる |
| 薄い壁や隔壁 | 実際より薄く、淡く見えたり、途切れて見えたりする |
| 曲面や斜めに走る構造 | スライスの端にかかって、二重に見えたり実際と違う形に見えたりする |
肺結節の体積を測った研究では、スライス厚を変えると、小さな結節(3〜10mm)で測定値が大きく変わりました(Petrou 2007)。また、超高精細CTで検出器の素子を小さくすると、部分容積の影響を減らせる可能性があり、腎嚢胞の偽造影効果が小さくなる可能性が示されています(Hamabe 2022)。ただし、解像度を上げるとノイズが増える点には注意が必要です(Hamabe 2022)。
小さな病変のCT値や大きさを評価するときは、薄いスライスで再構成した画像で確かめ、1つのスライスの値だけで決めないのが基本です。
そのほかの偽像
| 名前 | 見え方 | メモ |
|---|---|---|
| ストリークアーチファクト | 高吸収の物体を結ぶ線状の影 | 金属・濃い造影剤・骨の間に出やすい |
| リングアーチファクト | 撮影の中心を回る同心円 | 検出器の不具合や調整のずれ。装置側の問題(Barrett 2004) |
| コーンビームアーチファクト | 広い範囲を一度に撮るときの歪み | データが足りないために起こる(Tang 2018) |
| ノイズ | 画像のざらつき | 体が大きい、線量が低いときに目立つ。偽像とは別に考える |
FDG-PET/CTでは、CTの情報をPET画像の補正にも使うため、PET側にも別の偽像や正常な集積が出ます。FDG-PETの生理的集積とアーチファクトに詳しくまとめています。
アーチファクトを疑ったときの対応
- 読影する側:上のチェックリストで偽像か本物かを確かめ、レポートには「アーチファクトのため評価困難な範囲」をはっきり書く。
- 撮影する側:外せる金属は外してもらう、腕を挙げてもらう、息止めの練習をする、必要なら再撮影や再構成条件の変更を検討する。
- 検査を受ける側:体の中の金属(人工関節、ペースメーカー、歯の治療など)は、検査の前に伝えておく。外すかどうかは、主治医や検査施設の指示に従う。
再撮影は被ばくを増やすため、必要性は担当の医師が判断します。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. CTのアーチファクトで病気を見逃すことはありますか?
A. 偽像が強いと、画像が診断に使えないほど悪くなることがあります(Barrett 2004)。そのため、偽像が出る原因と範囲を把握し、必要なら別の断面や他の検査で補います。
Q. 金属が体に入っています。CTは受けられますか?
A. 受けられますが、金属の周りは見えにくくなります。金属の種類や場所を検査施設に伝えておくと、撮影方法や画像処理を工夫できます(Katsura 2018)。
Q. 画像に黒い筋があると言われました。体に何かあるのですか?
A. 骨や金属の近くの黒い筋は、多くがビームハードニングなどの撮影上の偽像で、病気ではありません。結果の説明で不安なときは、担当の医師に画像のどの部分かを聞いてみてください。
Q. 部分容積効果は、嚢胞の見分けにどう関係しますか?
A. 小さな嚢胞は周りの濃い組織の影響でCT値が高く出て、水の濃さに見えないことがあります。薄いスライスで確かめることが勧められます(Petrou 2007、Hamabe 2022)。
あわせて読みたい:MPR・MIP・MinIP・VRとは、超音波(エコー)のアーチファクト
あわせて読みたい:比較読影とは
あわせて読みたい:マルチスライスCT(MDCT)とスライス厚、人工関節・プレート・スクリューのレントゲンの見方
参考文献
- Barrett JF, Keat N. Artifacts in CT: recognition and avoidance. Radiographics. 2004;24(6):1679-91. PubMed
- Katsura M, Sato J, Akahane M, et al. Current and Novel Techniques for Metal Artifact Reduction at CT: Practical Guide for Radiologists. Radiographics. 2018;38(2):450-461. PubMed
- Kim YJ, Cha JG, Kim H, et al. Dual-Energy and Iterative Metal Artifact Reduction for Reducing Artifacts Due to Metallic Hardware: A Loosening Hip Phantom Study. AJR Am J Roentgenol. 2019;212(5):1106-1111. PubMed
- Thater G, Frerichs I, Büttner S, et al. Reduction of Streak Artifacts in the Superior Vena Cava for Better Visualization of Mediastinal Structures Through Virtual Monoenergetic Reconstructions Using a Photon-counting Detector Computed Tomography. J Thorac Imaging. 2025;40(4):e0822. PubMed
- Hamabe F, Mikoshi A, Edo H, et al. Effect of Ultra-High-Resolution CT on Pseudoenhancement in Renal Cysts: A Phantom Experiment and Clinical Study. AJR Am J Roentgenol. 2022;219(4):624-633. PubMed
- Petrou M, Quint LE, Nan B, et al. Pulmonary nodule volumetric measurement variability as a function of CT slice thickness and nodule morphology. AJR Am J Roentgenol. 2007;188(2):306-12. PubMed
- Ozawa Y, Takenaka D, Nomura M, et al. Deep learning-based motion correction: cardiac motion artifact and image quality improvements on chest CT. Jpn J Radiol. 2026;44(9):1616-1626. PubMed
- Tang X, Krupinski EA, Xie H, et al. On the data acquisition, image reconstruction, cone beam artifacts, and their suppression in axial MDCT and CBCT – A review. Med Phys. 2018. doi: 10.1002/mp.13095 PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
