
先に結論:脳梁欠損症は脳の先天奇形の中で多いもののひとつ。「ほかに異常を伴わない(孤立性)」か「伴う」かで見通しが大きく変わり、胎児MRIはそれを確かめるために行う
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 何か | 左右の大脳半球をつなぐ脳梁が、全部(全欠損)または一部(部分欠損)できていない状態 |
| 頻度 | 報告により幅が大きく、一般人口で1万人あたり0.5〜70人。出生約4000人に1人との報告もある |
| 原因 | 染色体異常や遺伝子の異常、症候群の一部、胎児期のアルコールなどの環境要因 |
| 見通し | 本当に孤立性なら約65%は発達が正常範囲。残りは軽度〜重度の発達の問題 |
| 次にすること | 胎児MRIでほかの脳の異常を確認し、遺伝学的検査とあわせて専門チームと相談 |
脳梁欠損症とは
脳梁(のうりょう)は、左右の大脳半球をつなぐ神経線維の束です。正常な脳梁の形(吻部・膝部・体部・膨大部)とMRIでの見え方は脳梁とは?正常解剖とMRIで解説しています。
脳梁欠損症(agenesis of the corpus callosum: ACC)は、この脳梁ができていない状態で、脳の奇形の中でも多いもののひとつです(Tsai 2023)。脳梁がまったくない「全欠損」と、一部だけない「部分欠損」に分けられ、さらにほかの異常を伴わない「孤立性」と、脳の他の奇形(皮質の形成異常、脳梁脂肪腫、頭蓋内の嚢胞など)や脳以外の異常(眼・顔・心血管など)を伴うものに分けられます(Lieb 2018)。
脳の先天奇形全体の中での位置づけは脳の先天奇形に含まれる疾患群まとめをご覧ください。
原因
原因が特定できるのは30〜45%とされ、そのうち染色体異常が約10%、遺伝性の症候群が20〜35%です(Lieb 2018)。胎児性アルコール症候群のような環境要因も知られています。
胎児で見つかった場合、マイクロアレイ染色体検査で最大12.5%、全エクソーム解析で最大47%に遺伝的な原因が見つかり、脳梁欠損だけが見つかった場合でもエクソーム解析で30%に原因が見つかると報告されています(Tsai 2023)。
症状と見通し
症状の幅は広く、ほかの奇形を伴うかどうかに大きく左右されます(Tsai 2023)。
| 報告 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| Tsai 2023(総説) | 本当に孤立性の脳梁欠損 | 約65%は正常、約35%は軽度〜重度の神経発達の問題 |
| des Portes 2018 | 胎児期に孤立性と診断され、学齢期まで追跡した34人 | IQ85超で通常の学校生活:22人(65%)、境界域・学習の困難:10人(29%)、重い知的障害:2人(6%) |
| Shwe 2022 | 胎児MRIで診断された127例 | 部分欠損と全欠損で発達の遅れやてんかんの頻度は同程度。他の異常を伴う例は伴わない例より経過が悪い |
des Portes 2018の検討では、年少時に低めだった動作性IQが年齢とともに改善していました。一方で、孤立性と思われていても、生まれた後のMRIで追加の異常が見つかる例があります(des Portes 2018)。
画像所見:胎児エコー・胎児MRI・小児のMRI
どの検査で見つかるか
胎児期にはエコーで疑われ、胎児MRIは、診断の確認と、見通しに影響する他の脳の異常(とくに皮質の形成異常)の有無を確かめるのに役立ちます(Tsai 2023)。2025年の国際的な専門家合意(Delphi法)では、ルーチンのエコー検査に脳の矢状断を含めること、脳梁の異常が疑われたら専門施設に紹介すること、形成異常が疑われる場合は遺伝学的検査とMRIを提案することが合意されています(Corroenne 2025)。
胎児MRIで分類した病型が出生後のMRIで確認されたのは73%で(Shwe 2022)、生まれた後の脳MRIも大事です。
MRIの典型的な所見
| 所見 | 見え方 |
|---|---|
| 脳梁の欠如 | 正中矢状断で脳梁が全部または一部見えない |
| Probst束(Probst bundle) | 行き場を失った交連線維が側脳室の内側を前後に走る束。冠状断で側脳室の内側に見える |
| colpocephaly | 側脳室の後角(三角部・後角)が目立って拡大する |
| 高位の第3脳室 | 拡大した第3脳室が左右の半球の間に高く入り込む |
| Texas Longhorn(テキサスロングホーン)形 | 冠状断で左右の前角が離れて角(つの)のように見える |
| 側頭角の鍵穴状拡大 | 側頭角が鍵穴のように広がる |
これらは典型所見としてまとめられています(Lieb 2018)。脳梁形成異常の23人をMRIで検討した研究では、colpocephalyが16人、側頭角の鍵穴状拡大が21人にみられ、高度の神経細胞移動異常を伴う4人ではProbst束が確認できませんでした(Utsunomiya 1997)。前交連の欠損・低形成も多く、Probst束と前交連を確認することは大脳皮質の発達を評価するうえで重要とされています。
合併しうる脳梁脂肪腫の画像は頭蓋内脂肪腫の画像診断で解説しています。
生まれた後に脳梁が細くなる・傷む病気との区別
先天的な欠損と区別すべきものに、血管障害・炎症・治療後などによる二次的な脳梁の変化があります(Lieb 2018)。生まれつき形ができていないのか、いったんできた脳梁が傷んだのかで意味が大きく異なります。
症例 生後13日女児 脳梁欠損症

引用:Radiopaedia(Agenesis of the corpus callosum)
左右の大脳半球をつなぐ脳梁が見えず、左右の側脳室前角が小さく離れています。第3脳室が高い位置まで上がり、大脳半球の間の脳槽とつながっています(症例ページでは冠状断の「ムースの頭(バイキングの兜)」様の形と記載)。
次にすること
胎児期に疑われた場合は、胎児MRIで他の脳の異常がないかを確認し、遺伝学的検査を含めて、胎児医療・遺伝・小児神経の専門家からなるチームと相談することが勧められています(Tsai 2023)。生まれた後は、発達の経過を見ながら必要な支援につなげていきます。
お子さんに発達の遅れやけいれんなど気になる症状があれば医療機関を受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 脳梁がなくても普通に生活できますか?
本当に孤立性の場合、約3分の2は知能が正常範囲と報告されています(des Portes 2018)。ただし学習面の困難が出ることもあり、成長に合わせた見守りが大切です。
Q2. 部分欠損なら全欠損より軽いのですか?
胎児MRIで診断された例の検討では、部分欠損と全欠損で発達の遅れやてんかんの頻度に差はありませんでした(Shwe 2022)。部分欠損でも経過を見ていく必要があります。
Q3. 胎児MRIで「孤立性」と言われれば安心ですか?
見通しはよい方向ですが、生まれた後のMRIで新たな異常が見つかることもあります(des Portes 2018)。生後の検査とあわせて判断します。
一人ひとりの見通しや検査の選び方は、主治医に相談してください。
あわせて読みたい:孔脳症の画像診断
参考文献
- Tsai P, Shinar S. Agenesis of the corpus callosum: What to tell expecting parents? Prenat Diagn. 2023;43(12):1527-1535. PubMed
- Lieb JM, Ahlhelm FJ. [Agenesis of the corpus callosum]. Radiologe. 2018;58(7):636-645. PubMed
- des Portes V, Rolland A, Velazquez-Dominguez J, et al. Outcome of isolated agenesis of the corpus callosum: A population-based prospective study. Eur J Paediatr Neurol. 2018;22(1):82-92. PubMed
- Shwe WH, Schlatterer SD, Williams J, et al. Outcome of Agenesis of the Corpus Callosum Diagnosed by Fetal MRI. Pediatr Neurol. 2022;135:44-51. PubMed
- Corroenne R, Paladini D, Papastefanou I, et al. Prenatal evaluation, diagnosis and management of fetal corpus callosal abnormalities: international Delphi consensus. Ultrasound Obstet Gynecol. 2025;66(5):582-588. PubMed
- Utsunomiya H, Ogasawara T, Hayashi T, et al. Dysgenesis of the corpus callosum and associated telencephalic anomalies: MRI. Neuroradiology. 1997;39(4):302-10. PubMed
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