メトロ二ダゾールとは?
- メトロ二ダゾール(フラジールⓇ)は嫌気性菌、トリコモナス、赤痢アメーバなどの原虫類や、炎症性腸疾患、ピロリ菌の除菌、偽膜性腸炎などに使用される抗生剤。もともとは抗原虫薬としてのみ使用されていた。
- 2014年から経口薬の他に静注製剤も国内で販売され使用頻度が多くなっている。
- 30-60%が肝臓で代謝されるため、肝機能障害があると代謝の半減期が伸び、脳症を生じやすいとされる。
- 副作用として味覚障害や四肢感覚鈍麻が多いが、意識障害などで発症する脳症を誘発する。
- 最も重要かつ強く知られている副作用が中枢毒性で、投与量が2g/日を超えると神経学的症状が出現する。
メトロ二ダゾール脳症(metronidazole induced encephalopathy)とは?
- 血液脳関門を通過しやすく中枢神経に分布する。
- 症状は構音障害、小脳失調、筋力の低下、意識障害などがみられる。
- 画像所見ではMRIで85%の症例において小脳歯状核にT2延長域が認められ、特徴的。そのほか、中脳蓋(下丘)、橋・延髄被蓋、中脳水道周囲、赤核、視床下核、大脳白質、脳梁(膨大部)、オリーブ核、基底核、視床などにT2WIに高信号、DWIでの信号上昇(ADCは様々)。
- T2強調像やFLAIR像で高信号、拡散強調像での異常信号は軸索内浮腫あるいは血管性浮腫を反映するが、脳梁膨大部ではADC値が低下を示し組織性浮腫をきたすことがある。
- 典型的な異常信号パターンの把握とともに、薬剤歴が診断に必須。
- メトロニダゾールを中止することで完全回復が期待できる。
- 小脳歯状核に両側性に病変を呈する疾患としてWilson病、DRPLA、脳腱黄色腫症、脳梁膨大部に病変を認める場合には一過性脳梁膨大部病変や5-FU脳症も鑑別にあげられるが、臨床経過より鑑別が可能。
- Wernicke脳症は臨床、画像ともに類似する。メトロニダゾールが使用される状況に消化管疾患や肝障害が多く、ビタミンB1の不足を生じやすいことが理由として推測されている。メトロニダゾールは歯状核病変、Wernicke脳症は乳頭体病変がそれぞれ最も特徴的な所見である。
症例 30歳代男性
引用:radiopedia
DWIおよびFLAIRにて両側小脳歯状核および脳梁膨大部に異常な高信号を認めています。
メトロニダゾール脳症と診断されました。
関連記事:薬剤性脳症の原因薬剤と主な障害部位
参考文献:
- 臨床画像 Vol.34 No.4増刊号,2018 P92-3
- 臨床放射線 Vol.63 No.6 2018 P671-2
- 頭部 画像診断の勘ドコロ NEO P236-7