5-FU(5-fluorouracil)とは?

  • 5-フルオロラシル(5-fluororacil:5-FU)はフッ化ビリミジン系の代謝拮抗薬に分類される抗癌剤。
  • 誘導体であるカモフールやテガフール、プロドラッグであるカペシタビンを含む。
  • 胃癌、結腸癌などの消化器系癌や頭頸部癌、子宮頸癌などに広く用いられている。
  • 5-FUの代謝産物が、クエン酸からイソクエン酸へ変換する際の酵素であるアコニット酸ヒドラーゼ(アコニターゼ)を阻害してTCA回路を障害し、神経線維の脱髄(髄鞘障害)をきたすとされている。
  • 発症時期は投与後数日〜数週間が多いが、投与開始翌日に発症した報告もある。
  • 5-FUの神経毒性の頻度は5%程度で、白質脳症の推定発現率は(カルモフールの場合)は0.026%といわれている。カルモフール、テガフールは連続投与により中枢神経内に蓄積されるため、5-FUよりも発症頻度が高いとされている。
  • 5-FU(誘導体であるカルモフール、テガフールを含む)の大量投与、代謝酵素の先天欠損患者においての頻度が高い。
  • 初発症状は見当識障害、構音障害やふらつきなどで意識障害が進行すると無動性無言や昏睡をきたす。
  • 病理学的には大脳白質の病巣では髄鞘の破壊がみられる一方、軸索やU-fiberは比較的保たれる。

5-FU脳症(5-FU-induced encephalopathy)のCT、MRI画像所見

  • 画像所見はCT検査では左右対称性の広範囲の深部白質の低吸収域が見られる。
  • MRI検査では比較的早期から大脳深部白質にT2強調像やFLAIR像で左右対称性の高信号が見られ(この際にU-fiberは保たれる)、脳梁に病変が見られるのが特徴的である。他、中小脳脚にも見られることがある。
  • DWIが早期に有用で脳梁の病変は明瞭な高信号を示す傾向がある。(DWIの高信号は髄鞘の層間剥離、空胞変性、浮腫(髄鞘内浮腫)が推測されている。軸索は保たれる)急性期には病変部はADC低下を認める。
  • 画像上は異常を認めない症例もある。
  • 画像所見は非特異的で、HIV脳症、ビタミンB12欠乏症、一酸化炭素中毒後の遅発性神経障害などは類似した大脳白質の高信号をきたすため、薬剤投与歴の確認が第一である。

症例 50歳代男性 大腸癌遠隔転移にて5-FU使用中

脳梁膨大部および膝部、両側深部白質に異常な高信号を認めています。

U-fiberは保たれています。

5-FU脳症と診断されました。

引用:radiopedia

関連記事:薬剤性脳症の原因薬剤と主な障害部位

参考文献:

  • 臨床画像 Vol.34 No.4増刊号,2018 P90
  • 臨床放射線 Vol.63 No.6 2018 P665-666
  • 頭部 画像診断の勘ドコロ NEO P241

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