脊椎の感染症で、化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)という疾患があります。
脊椎が化膿してしまう(=細菌感染して膿を作る)というのはどういう状態で、何が原因になるのでしょうか?
また、どのように診断して、治療を行うのか気になるところです。
そこで、今回は、化膿性脊椎炎(英語表記で「pyogenic spondylitis」)について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療
を、図やイラスト、MRI画像を含め、わかりやすく説明したいと思います。
先に結論:化膿性脊椎炎(椎間板炎)とは
- 背骨(椎体)と椎間板に細菌が感染して膿ができる病気です。原因菌は黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)が最も多く、多くは尿路感染・皮膚感染などから血液に乗って広がります。高齢者・糖尿病・透析・免疫の落ちた人に多く、増えています
- 症状は強い腰痛・背部痛と発熱(熱が出ないこともあります)で、進むと膿が脊柱管に広がり足のまひを起こすことがあります
- レントゲンでは初期に異常が出にくく、診断はMRIが最も鋭敏で、椎間板とその上下の椎体がSTIR/T2強調像で白く、T1強調像で黒くなり、終板の破壊、硬膜外膿瘍・腸腰筋膿瘍を確認します。治療は原因菌に合った抗菌薬を長期間(6週間以上が目安)使い、まひや骨の破壊が強い場合は手術を行います。菌を特定するため血液培養や生検が大切です
- 結核性脊椎炎は進行がゆっくりで椎間板が比較的保たれ、多椎体や大きな冷膿瘍を作るのが違いです
※発熱を伴う腰痛・背部痛が続くときや、足のしびれ・力が入らないときは、早めに受診してください。
化膿性脊椎炎とは?
人の背骨(32〜34個の骨からなる)である脊椎(背骨)に起こる骨髄炎のことを化膿性脊椎炎といいます。
脊椎の骨組織や椎間板に、細菌が侵入したことで炎症が起こる疾患です。

- 化膿性脊椎炎(pyogenic spondylitis),感染性脊椎炎=脊椎椎体炎(osteomyelitis)+椎間板炎(discitis)、でありほとんどの症例では、両者が同時に起こる。
- 小児と高齢者の二峰性に多い。
- 好発部位は腰椎>胸椎>頸椎の順。
- 化膿性脊椎炎と結核性脊椎炎では治療法が異なるため、早期に鑑別する必要がある。
化膿性脊椎炎の原因は?
- 黄色ブドウ球菌
- MRSA
- 真菌
などが原因菌となりますが、最も多いのは黄色ブドウ球菌です(中でもMRSAは臨床上特に問題となります)。他、連鎖球菌や、肺炎球菌、サルモネラ菌、グラム陰性桿菌(大腸菌、緑膿菌など)も増えています。ただし、抗菌薬が先に使われているなどで原因菌が検出できないことも少なくありません。
その細菌による感染経路として、そのほとんどは血行感染で、血液中に原因となる菌が侵入して、血流に乗って椎体に達し感染します。
原因として、脊椎外の感染巣からの敗血症によることが多く、感染経路は、通常の経動脈性やBatsonの傍脊椎静脈叢を介する経静脈性経路、隣接感染巣からの波及などが考えられています。
関連記事:Batson静脈叢とは?椎体への骨転移・化膿性脊椎炎の経路
また血行性以外では、手術や検査(開放骨折・穿刺・外科手術など)で直接感染することもあります。
とくに高齢者や術後など、免疫抵抗力が低下した易感染性宿主に増加しています。
そのため、化膿性脊椎炎に感染する人は近年増加傾向です。
参考)脊椎の血流について
- 脊椎に分布する動脈の分布は年齢により異なる。
- 小児では、終動脈は椎体終板を穿通し、椎間腔へ進入する。そのため、動脈からの血行感染では最初に椎間板炎(discitis)を生じる。
- 成人では椎間板の血行は乏しく、椎体の軟骨下に栄養動脈のネットワークが形成されており、通常、椎体前方の軟骨下から炎症が波及していく。
感染の順序(血行性感染)

化膿性脊椎炎の症状は?
- 発熱
- 腰背部痛
- 頸部痛
- 悪寒
- 脊柱の不撓性(ふとうせい:背骨が曲がりにくい)
- 圧痛
- 運動痛
- 神経症状(麻痺)
などがあります。
発熱や腰背部痛・頸部痛などで発症し、スムーズな動きができなくなっていきます。
症状の進行にともない肉芽組織や膿瘍を形成し、膿瘍が脊柱管内に侵入した場合・椎体破壊によって脊柱管が圧迫された場合、神経症状があらわれることもあります。
また、進行し重篤な状況に陥ると、敗血症を併発し、易感染性宿主の場合命に関わることもあります。
化膿性脊椎炎の診断は?
- 血液検査
- 細菌検査
- X線検査、CT検査
- MRI検査
などをおこない診断します。
それぞれについて説明します。
血液検査
- 白血球増多
- 赤沈値亢進
- 炎症反応
がみられます。
その中でも、炎症反応でCRPが陽性となった場合感染症を疑い、細菌検査をおこないます。
細菌検査
原因菌を検出するためにおこなわれる検査です。
通常、血液を培養して菌を検出する血液培養が行われます。血液培養で菌が検出されない場合は、CTガイド下生検などで病巣から検体を採り、原因菌を確かめることが推奨されています(米国感染症学会IDSA 2015年ガイドライン)。
腰椎X線検査・CT検査
- 椎間板腔の狭小化
- 椎体終板の不整像
- 骨融解像
- 椎体の侵食
- 椎体の破壊
を確認することができます。
ただし、これらの骨の変化は発症からしばらくたってから現れるため、初期のレントゲンでは異常が出にくいのが難点です。椎体の骨髄炎が疑われた37人を前向きに調べた研究では、単純X線の感度82%・特異度57%に対し、MRIは感度96%・特異度92%でした(Modic 1985)。CTは骨の破壊や膿瘍(大腰筋膿瘍など)の広がり、CTガイド下生検の計画に役立ちます。
症例 60歳代男性 腰痛、発熱

腰椎CTでL5/Sに椎体終板の不整、骨の融解像を認めています。
MRI検査
早期に病変を描出する際は、MRIが有用です。
- T1強調画像で低信号
- T2強調画像で高信号
- STIR像や脂肪抑制併用T2強調像で、 病変部が明瞭な高信号
となります。
菌が証明された脊椎感染46例の検討では、傍脊椎・硬膜外の炎症(感度97.7%)、椎間板の造影増強(95.4%)、T2強調像での椎間板高信号(93.2%)、終板の侵食・破壊(84.1%)の感度が高い一方、椎間板高の低下(52.3%)やT1強調像での椎間板低信号(29.5%)は感度が低いと報告されています(Ledermann 2003)。椎間腔が狭くなっていなくても感染は否定できません。また化膿性でも16%は複数の椎間レベルに病変があり、典型像がそろわないことがあります。
また、結核性脊椎炎・転移性脊椎腫瘍との鑑別も重要です。
症例 60歳代男性 腰痛、発熱 上の症例と同一症例

L5/SにT1強調像で低信号、STIRで異常な高信号を認めています。
またMRIでも
- 椎体終板の不整像
- 骨融解像
- 椎体の侵食
- 椎体の破壊
といった様子がわかります。
化膿性脊椎炎と診断され、加療されました。
症例 90歳代 女性 発熱・背部痛

Th12/L1にT1強調像で低信号、STIRで異常な高信号を認めています。
T2強調像で椎間板に液体貯留を疑う高信号を認めています。
椎体の背側にもやや液体貯留を疑う高信号あり。
化膿性椎体炎及び周囲炎症波及、膿瘍形成と診断されました。
化膿性脊椎炎の画像所見(総論)
- MRIは非常に有用であり、感度96%、特異度92%、正診率94%と報告されている(Modic 1985)。
- 脂肪抑制T2WIもしくはSTIRが骨髄の浮腫と硬膜外の病変に最も良く、造影後も脂肪抑制が必要である。
- 症状の変化に対応する画像所見を認めない。臨床経過の改善にも関わらず、異常な骨の造影効果は永く残存する。肉芽腫や線維化を反映していると考えられている。
化膿性脊椎炎のMRI所見(詳しく)・結核性脊椎炎との違い
- 1つの椎間板に隣接した上下2椎体に病変が限局することが多い。結核性脊椎炎は3椎体以上の多椎体に信号変化が認められることが多い。
- 化膿性脊椎炎は侵襲性が強く、ほとんどの例で椎間板にも炎症が及ぶが、結核性脊椎炎ではよりおとなしいため、椎間板に浸潤するより前に前縦靭帯下や椎体後部要素へ進展し、椎間板への浸潤が認められる前に診断されることもある。
①椎体の信号変化
【原則】
- 急性期には、浮腫と血流増加を反映して、椎間板および終板近傍の椎体はT1WIで低信号、T2WIやSTIRで高信号となる。
- T1WIにおける椎体の低信号域、終板の不明瞭化、皮質の断裂は典型的所見である。
【variant】
- 椎体がT2で等〜低信号を示すことも珍しくなく、椎体の硬化所見と、骨髄の浮腫の割合によって決まる。
- 若年者の赤色髄ではT1で正常な椎体の信号が比較的低いため、骨髄の浮腫がマスクされてしまうことがある。

症例 50歳代女性

骨髄や椎間板の炎症、浮腫がT1強調像で低信号、STIRで高信号に描出されており、病変は2椎体であることがわかる典型的な化膿性椎間板炎。
症例 60歳代女性



▶まとめ

②椎間腔の変化
- 早期に椎間板の信号上昇あり。進行すると椎間腔の狭小化が顕著となり、intranuclear cleft(髄核内裂)の消失により、椎間腔は全体がT2高信号域に置換される。
- 一方、結核性脊椎炎では、Mycobacteriumが蛋白分解酵素を持たないために、椎間腔が比較的長期にわたり保たれるとされる。しかし、椎間腔の狭小化が見られたとの報告もある。これは、Tbの場合、罹患してからMRIを撮影するまでの期間が長いことも一因だと思われる。
③傍椎体軟部組織の変化
- MRIでは傍椎体軟部組織の変化の描出にも優れる。
- 傍椎体や硬膜外の腫瘤や蜂窩織炎はT1WIで等信号、T2WIで高信号、Gdにて造影される。
- 腫瘤には全体が造影される炎症性腫瘤と、辺縁がリング状に造影される膿瘍がある。
- 結核性脊椎炎よりも、傍椎体の異常信号の境界は不明瞭で、膿瘍の壁は厚く不整である(Jung 2004)。
- また、後方要素(椎弓、椎弓根、椎間関節周囲、棘突起周囲など)へ炎症が広がり、造影されることもある。靭帯下炎症性腫瘤の進展は3椎体未満であることが多い(3椎体以上は結核性85%に対し化膿性40%:Jung 2004)。また結核性で見られるskip lesionは化膿性では通常見られない。いずれにしろ、化膿性脊椎炎はTbよりも侵襲性が強いというイメージを持つべし。

症例 50歳代 女性

造影MRIにおける検査で、椎体の周囲に異常な造影効果を認めており、炎症の周囲への波及を疑う所見です。
椎弓の後方にも異常造影効果があり、後方へも炎症波及あり。

この症例を動画でチェックする。
症例 50歳代女性 化膿性椎間板炎
造影CT

こちらはCTでの所見です。
L4/5の椎間板炎から、両側の大腰筋内に波及して上下方向に膿瘍が形成されている様子がわかります。
また椎体の前方にも膿瘍形成を認めています。
化膿性脊椎炎と結核性脊椎炎のMRIの違い(一覧)
結核性脊椎炎20例と化膿性脊椎炎20例のMRIを比べた研究では、次のような所見の頻度に差がありました(Jung 2004)。
| MRI所見 | 結核性 | 化膿性 |
|---|---|---|
| 傍脊椎の異常信号の境界が明瞭 | 95% | 25% |
| 膿瘍の壁が薄く平滑 | 95% | 15% |
| 傍脊椎・骨内の膿瘍 | 95% | 50% |
| 靭帯下の進展が3椎体以上 | 85% | 40% |
| 複数の椎体に病変 | 60% | 25% |
| 胸椎の病変 | 40% | 10% |
まとめると、境界のはっきりした、壁の薄い大きな膿瘍が多椎体にわたるなら結核性、境界不明瞭な炎症が椎間板を中心に上下2椎体にとどまるなら化膿性を考えます。ただし重なりもあるため、最終的には血液培養や生検で菌を確かめます。
化膿性脊椎炎の治療は?
保存療法と手術療法があります。
保存療法
- 局所安静
- 抗菌薬の投与
- 装具療法
により、回復を待ちます。
抗菌薬は、起因菌を特定した後に選択されます。抗菌薬の投与期間については、菌が確認された化膿性脊椎炎で6週間投与が12週間投与に劣らない(1年後の治癒率はいずれも約91%)ことが無作為化比較試験で示されています(Bernard 2015)。
早期であれば、保存療法で治療できることも多くあります。
しかし、保存療法で回復しない場合や、椎体破壊や麻痺症状があらわれた場合、手術が検討されます。
手術療法
病巣を取り除き、患部の洗浄(除菌)をする必要がありますが、骨破壊が進行している場合には、骨固定術・骨移植が検討されます。
また、手術をおこなった後でも、菌感染に対する管理は重要です。
あわせて読みたい:脊髄硬膜外膿瘍のMRI
参考文献:整形外科疾患ビジュアルブック P135〜137
参考文献:全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P98・99
参考文献:骨軟部疾患の画像診断 第2版P276・277
参考文献:100%整形外科P197〜204
化膿性脊椎炎でよくある疑問(Q&A)
Q. 化膿性脊椎炎は単純MRI(造影なし)でわかりますか?
多くの場合、単純MRIのT1強調像・T2強調像・STIR像で診断の手がかりが得られます。菌が証明された例では、T2強調像での椎間板の高信号の感度が93.2%と報告されています(Ledermann 2003)。造影MRIは、硬膜外膿瘍や傍脊椎膿瘍の広がりをはっきりさせるのに役立ちます。
Q. レントゲンやCTで化膿性脊椎炎はわかりますか?
初期は異常が出にくく、レントゲンやCTで椎間板腔の狭小化や終板の破壊が見えるのは、ある程度進んでからです。発熱を伴う腰背部痛が続くのにレントゲンで異常がない場合は、MRIで確認することが大切です。
Q. 化膿性脊椎炎と強直性脊椎炎は同じ病気ですか?
名前は似ていますが別の病気です。強直性脊椎炎は細菌感染ではなく、背骨や骨盤の関節に慢性の炎症が起こり、背骨が徐々に固くなっていく病気です。化膿性脊椎炎は細菌感染で、発熱や強い痛みで比較的急に発症するのが違いです。
最後に
- 細菌感染が原因で脊椎に炎症が起こる疾患を化膿性脊椎炎という
- 血行感染が多いが、手術や検査による直接感染もある
- 発熱・腰背部痛・頸部痛などで発症する
- 血液検査・細菌検査・X線検査・MRI検査により診断される
- 保存療法もしくは、手術療法が選択される
個人差はありますが、抗菌薬治療は一般に6週間以上続け、回復までには数か月かかることが多いとされています。
また、症状が落ち着いてきたと思っても、ムリをすると再び症状があらわれることもありますので、ムリをせず検査で経過をみながら治療を進めることが重要です。
- Berbari EF, Kanj SS, Kowalski TJ, et al. 2015 Infectious Diseases Society of America (IDSA) Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Native Vertebral Osteomyelitis in Adults. Clin Infect Dis. 2015;61(6):e26-e46. PubMed
- Bernard L, Dinh A, Ghout I, et al. Antibiotic treatment for 6 weeks versus 12 weeks in patients with pyogenic vertebral osteomyelitis: an open-label, non-inferiority, randomised, controlled trial. Lancet. 2015;385(9971):875-882. PubMed
- Ledermann HP, Schweitzer ME, Morrison WB, et al. MR imaging findings in spinal infections: rules or myths? Radiology. 2003;228(2):506-514. PubMed
- Modic MT, Feiglin DH, Piraino DW, et al. Vertebral osteomyelitis: assessment using MR. Radiology. 1985;157(1):157-166. PubMed
- Jung NY, Jee WH, Ha KY, et al. Discrimination of tuberculous spondylitis from pyogenic spondylitis on MRI. AJR Am J Roentgenol. 2004;182(6):1405-10. PubMed
- Zimmerli W. Clinical practice. Vertebral osteomyelitis. N Engl J Med. 2010;362(11):1022-1029. PubMed
- Berbari EF, Kanj SS, Kowalski TJ, et al. Executive Summary: 2015 Infectious Diseases Society of America (IDSA) Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Native Vertebral Osteomyelitis in Adults. Clin Infect Dis. 2015;61(6):859-63. PubMed
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化膿性脊椎炎のMRIの画像を多く診て研究したいので、低と重の違いの画像と予後を学びたいです。よろしくお願い申し上げます。
こまっち。お久しぶりです。現在 化膿性脊椎炎の患者さんを治療中です。実はこの方 糖尿病を5年間放置していました。突然の背部痛でみえ 自分で尿管結石の痛みと同じだと検査を希望されてきました。
CT で 何らかの脊椎炎というコメントを専門家からもらいました。その後MRI をとり診断が圧迫骨折のみ書いてありました。このときは技師さんがSTIRもとってくれて、椎体の周囲にも強く変化が現れて 化膿性脊椎炎で良いと考え治療を開始しました。今はほとんど疼痛がとれ 体も動かすことができるようになりました。
もう一人は 上記の方のすぐ後に、他院で化膿性脊椎炎の治療を経てリハビリのため転院されてきました。
画像をもらってないのが残念。今後のために画像を見せてもらうように 前医にお願いするつもりです。
ごろーさん お元気ですか?
こまっち先生ご無沙汰しております。
私は元気です。先生もお元気そうで何よりです(^^)