Batson静脈叢
・椎体の周囲および脊柱管内に存在する導出静脈のネットワークのこと。外椎体骨静脈叢と内椎骨静脈叢に分けられる。これらは、椎骨静脈(頸部)・肋間静脈(胸部)・腰静脈(腰部)・外仙骨静脈(仙骨部)→上大静脈、下大静脈へと還流する。
・弁構造を持たず、静脈血を貯留し、血流は遅くうっ滞し、その流れる方向は腹腔や胸腔内圧の変化により容易に逆転する。
・上・下大静脈、門脈、奇静脈、肺静脈、腎静脈、骨盤静脈や乳腺・頭頸部・四肢の静脈系と交通を有している。
・この静脈叢を介すると、静脈系のフィルタとなる肝や肺を通らずに直接骨組織に到達し、特に骨盤内臓器から、細菌感染や悪性腫瘍の椎体への転移の経路となる。
代表例)
- 骨盤内炎症、骨盤内手術→化膿性椎体炎、感染性仙腸関節炎
- 前立腺癌、子宮頸癌→椎体骨/骨盤骨転移・脳転移・硬膜転移。
- 腎細胞癌→椎体骨のみの転移(通常下大静脈経由で起こる肺への転移なし。)
- 甲状腺癌、乳癌、気管支の癌→椎体骨のみの転移。(腎含め、縦胸静脈とBastonの連結)※甲状腺癌は頚椎〜上部胸椎、気管支癌・乳癌は下部頚椎〜胸椎、腎癌では下部胸椎〜腰椎に転移しやすい。
- 前立腺癌に対するシード治療→シードの仙骨への迷入。
・椎体骨転移が後方成分に多いのは、椎体周囲の静脈が椎体後方で発達しているため。腰椎に多いのは、特に赤色髄に富むため。