先に結論:縦隔の悪性リンパ腫

  • 縦隔の悪性リンパ腫は前縦隔(CTによる縦隔区分のITMIG分類では血管前区画)に多く、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBL)、古典的Hodgkinリンパ腫、T細胞性リンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)などがあります
  • 画像では大きな前縦隔腫瘤が血管を取り囲んでも押しつぶさないことが多く、周囲のリンパ節腫大・胸水・心嚢水を伴うこともあります
  • 胸腺腫・胚細胞腫瘍との区別には年齢・LDH・可溶性IL-2受容体・腫瘍マーカーが役立ち、診断は生検で行います
  • CT・MRIだけで悪性リンパ腫と正しく言い当てられたのは6割前後にとどまり、画像は候補の絞り込みと生検部位の決定に使います

前縦隔悪性腫瘍

  • 前縦隔悪性腫瘍には大きく3つある。
  • 胸腺上皮性腫瘍・悪性胚細胞性腫瘍・悪性リンパ腫の3つ。
  • 治療法が異なるため、鑑別が重要。

「前縦隔」と「血管前区画」(ITMIG分類)

  • 国際胸腺悪性腫瘍研究グループ(ITMIG)は、CTの横断像で境界を決める縦隔の3区画分類を示しています。血管前区画(prevascular compartment)=従来の前縦隔、臓側区画(visceral compartment)=中縦隔、椎体傍区画(paravertebral compartment)=後縦隔に対応します(Carter 2014)。この記事の「前縦隔」は、血管前区画と同じ範囲を指します。
  • 血管前区画の境界は、上:胸郭入口、下:横隔膜、前:胸骨の後縁、外側:縦隔胸膜、後:心臓を包む心膜の前面で、中には胸腺・脂肪・リンパ節・左腕頭静脈があります。この区画で多い病変は、胸腺の病変、胚細胞腫瘍、リンパ腫です(Carter 2019)。

thymus

縦隔悪性リンパ腫

  • リンパ系の腫瘍は、縦隔腫瘍の主要な一群で、多くは悪性。
  • 非Hodgkinリンパ腫が多い。
  • 国内の1施設で前縦隔に新たに診断されたリンパ腫60例では、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBL:大細胞型B細胞リンパ腫の一型)46%、古典的Hodgkinリンパ腫32%、T細胞性リンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)12%、悪性度の低いMALTリンパ腫(mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma)3%の順でした(Maeshima 2017)。
  • 旧版では「Hodgkinリンパ腫は比較的少ない」としていましたが、この報告では前縦隔リンパ腫の約3分の1を占めていました。
  • 良性のリンパ増殖性疾患は、Castleman病がある。なかでもhyaline vascular型が孤立性の病変を呈することがある。胸腺の他、リンパ節から発生することがある。

縦隔悪性リンパ腫のCT・MRI所見

  • 前縦隔(ITMIG分類の血管前区画)に大きく、比較的均一な軟部濃度の腫瘤をつくることが多く、周囲のリンパ節腫大を伴います。
  • 大きくても大血管を取り囲むように広がり、押しつぶしにくいのが特徴ですが、上大静脈を圧迫・狭窄して上大静脈症候群を起こすことがあります。
  • 胸水・心嚢水、胸壁への進展を伴うことがあります。治療前は石灰化が目立たないことが多いです。
  • 前縦隔腫瘍127例をCT・MRIで読影した検討では、悪性リンパ腫を第一診断で正しく言い当てられたのはCTで55%、CTとMRIを合わせても61%でした(Tomiyama 2009)。画像だけで確定はできず、生検が必要です。

Hodgkinリンパ腫と非Hodgkinリンパ腫の違い

Hodgkinリンパ腫 非Hodgkinリンパ腫
病理 Hodgkin/Reed-Sternberg細胞 B細胞・T細胞性の多様な型
広がり方 隣のリンパ節へ連続して広がりやすい とびとびに広がり、節外病変も多い
縦隔の典型 若年者の前縦隔腫瘤(結節硬化型) 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBL)、T細胞性リンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)

縦隔リンパ節腫大の鑑別

  • 悪性:悪性リンパ腫、肺癌などの転移
  • 肉芽腫性:サルコイドーシス(両側肺門の対称性腫大)、結核(中心の低吸収・石灰化)
  • その他:反応性腫大、心不全、Castleman病

左右対称か、壊死・石灰化があるか、肺や他部位の病変があるかを合わせて考えます。

悪性リンパ腫の臨床病期分類(Ann Arbor分類の考え方)

Ⅰ期:1カ所に限局している。
Ⅱ期:横隔膜を越えず同じ側に限局。
Ⅲ期:横隔膜を越えて逆側にもある。
Ⅳ期:リンパ節病変に加え、連続しない節外臓器への浸潤がある(限局した節外病変はEとして扱う)。
現在の国際標準は2014年のLugano分類で、FDG集積性のリンパ腫ではFDG-PET/CTが正式に病期診断に組み込まれました。Ann Arbor分類の解剖学的な記載は修正して使い、症状によるA・Bの付記はHodgkinリンパ腫のみとし、実際の治療は限局期(I・II期、bulkyでないもの)と進行期(III・IV期)に分けて考えます。

 

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参考文献

  1. Pfau D, Smith DA, Beck R, et al. Primary Mediastinal Large B-Cell Lymphoma: A Review for Radiologists. AJR Am J Roentgenol. 2019;213(5):W194-W210. PubMed
  2. Carter BW, Wu CC, Khorashadi L, et al. Multimodality imaging of cardiothoracic lymphoma. Eur J Radiol. 2014;83(8):1470-82. PubMed
  3. Cheson BD, Fisher RI, Barrington SF, et al. Recommendations for initial evaluation, staging, and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma: the Lugano classification. J Clin Oncol. 2014;32(27):3059-68. PubMed
  4. Tomiyama N, Honda O, Tsubamoto M, et al. Anterior mediastinal tumors: diagnostic accuracy of CT and MRI. Eur J Radiol. 2009;69(2):280-8. PubMed
  5. Carter BW, Benveniste MF, Madan R, et al. ITMIG Classification of Mediastinal Compartments and Multidisciplinary Approach to Mediastinal Masses. Radiographics. 2017;37(2):413-436. PubMed
  6. Carter BW, Tomiyama N, Bhora FY, et al. A modern definition of mediastinal compartments. J Thorac Oncol. 2014;9(9 Suppl 2):S97-101. PubMed
  7. Carter BW, Benveniste MF, Marom EM. Diagnostic approach to the anterior/prevascular mediastinum for radiologists. Mediastinum. 2019;3:18. PubMed
  8. Maeshima AM, Taniguchi H, Suzuki T, et al. Distribution of malignant lymphomas in the anterior mediastinum: a single-institution study of 76 cases in Japan, 1997-2016. Int J Hematol. 2017;106(5):675-680. PubMed
  9. Barrington SF, Mikhaeel NG, Kostakoglu L, et al. Role of imaging in the staging and response assessment of lymphoma: consensus of the International Conference on Malignant Lymphomas Imaging Working Group. J Clin Oncol. 2014;32(27):3048-58. PubMed

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